わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

阿佐ヶ谷開発批判に対し区長が「デマ」よばわり(2020年度予算案等に対する意見開陳)

  2020年3月16日杉並区議会予算特別委員会のおわりにあたり次年度予算案と区政運営についての意見を述べました。

 阿佐ヶ谷北口開発において、仮換地計画が、杉並区にとって不利(損)なものになっていることを、独自の計算によって明らかにしたほか、児童館、施設使用料、学校図書館などについて言及しました。

 阿佐ヶ谷北口開発をめぐっては、賛否両方の委員から質疑が相次ぎました。他の委員からは「政治献金をもらっている事業者を優遇して容積率の緩和を行ったのではないか」との追及も。区長が批判に対して「デマだ」と感情的に答弁する一幕もありました。この問題は引き続き追及していきます。

(以下は発言原稿です。実際の発言と違う部分もあります)

 杉並わくわく会議として、来年度予算案についての意見を述べます。

(1)新型コロナウィルス対策について

 冒頭に、新型コロナウィルス対策について述べます。

 日々変わる状況に追われながら、対応して下さっている職員の皆様に心より敬意を表します。

【改正特措法に対する全国市長会等の危惧】

 改正新型インフルエンザ特措法が施行されました。緊急事態宣言時には私権が大幅に制限され、自治体はきわめて重い責任を負うことになります。全国市長会は、同改正法成立直前の3月11日、全国知事会全国町村会とともに声明を出し、緊急事態宣言発動の判断基準の明確化等を求めているところですが、法成立を受けて、さらに、宣言の発動・解除への国会の関与などを、区としても国に強く求める必要があります。

【予測される経済的打撃。休業補償を国に求めるべき】

 同じ声明ではまた、リーマンショックを超える地域経済への打撃を予期して、国に一時支給金創設等を求めています。

 政権与党の自民党内からも、若手議員の会が、30兆円規模の補正予算の編成、中小企業、個人事業主、労働者に対する休業補償、消費税を当面ゼロ税率に、等を政府に求めています。

 今回のコロナ問題は、日本経済に深刻な打撃を与える可能性が高まっています。杉並区、区議会としても他自治体と連携しつつ、これらを政府に対し要求していくことが緊急に求められています。

(2)阿佐ヶ谷駅北東地区開発について

 それでは、以下、来年度予算案と区政運営についての意見を述べます。最初に、阿佐ヶ谷北口再開発について述べます。

【杉並区の資産はマイナスに】

 今回、私は、区が調査委託した不動産鑑定書を情報公開により入手し、検討したところ、昨年行われた仮換地指定と、不動産鑑定とでは、仮換地の方が杉並区にとって大幅に不利であることを確認しました。鑑定された地価で計算し直した金額をもう一度のべます。

 区の保有面積かける単価つまり資産の総額は、93億円から88億円へ5%マイナス。民間は、208億円から212億円へ2%プラス(*詳細はこの項目の末尾)。

 仮換地では同等とされているのに、鑑定では、このような格差が出ます。

容積率の変更でさらに損】

 さらに、この鑑定は用途地域変更前なので、実効容積率を300%と見て計算しています。しかし、現在、すでに杉一小の容積率が全面的に500%に引き上げられ、しかも緩和型地区計画が導入されたことにより、実効容積率もほぼ500%を使い切ることができるので、単純に土地の価値が1.67倍に評価されると考えれば、5%どころではない、大損の計画です。換地という手法を使ったことにより区有財産が毀損されることは明らかです。このような権利交換は許されません。

【区長の「デマ」発言】

 区長は阿佐ヶ谷開発について「様々なデマが流されている」あるいは「政争の具にしている人たちがいる」と答弁しました。何がデマか、何が政争の具か。反対している人たちは、阿佐ヶ谷の将来を心配して言っているのであって、それをデマとは失礼千万、それこそがデマです。反対意見はすべてデマと切り捨てる、公人としてあるまじき姿勢です。

【「賛同する議員」だけ?】

 区長がこの調子ですから、理事者までがとんでもない発言をしました。「この計画にご賛同いただいている議員の皆さんと共に進めて行きたい」。つまり、区の方針に忠実な議員以外は要らないといっているわけです。

 今議会の一般質問で私は区長の「反対する人に説明するほど人手はない」という発言を批判しました。なぜ批判されたのか、この理事者、そして区長は全くわかっていないようです。再度申しますが、これは区長から独立した決定を行う議会に対する介入であり、区長に反対する立場の議員だけでなく、議会全体を侮辱した言葉です。おふたりに猛省を促します。

【屋敷林の「保全」がわかっていない】

 また、屋敷林の保全についての他会派の質問に対する答弁もいただけません。地区計画の25%以上、が議論になりましたが、これはあくまでも「緑化計画」であり保全ではありません。しかも沿道緑化など緑を創出するからいいんだと開き直った答弁も出ました。所管の理事者なのに、法の本旨を全く理解していない答弁です。保全の手法は、特別緑地保全地区など、様々定められています。区は本気で保全に取り組むべきです。

【抑えようのない自然の力】

 水害についても質疑がありました。たしかに河北病院、旧桃園川において、実際の浸水被害は何十年も起きていません。しかし問題は地盤です。谷底低地である河北病院は以前指摘したように、今も地盤沈下が続いている場所です。それは抑えようのない自然の力です。侮ってはなりません。

【自然に対する畏怖と歴史への敬意】

 阿佐ヶ谷の北口は、平安時代からという説もある神社、お寺、そして何百年もつづく屋敷林おかれてきて、大宮八幡からパールセンターを経由して北上してくる鎌倉古道につらなる、最もいい土地に杉並区最初の杉一小学校が建設されました。それは地形や水利など自然条件に従って形成されたまちの成り立ちであり、改変にはきわめて慎重でなければならないものです。自然への畏怖の念を忘れず、阿佐ヶ谷のまちの歴史にたいする敬意をはらっていただきたいと思います。

*:杉並区の不動産鑑定結果(業務委託による)を用いた資産総額

仮換地は地権者全員の資産増加率が平等になるように計算されるが、算出された土地の面積を「鑑定評価による地価」にあてはめると、区の財産が減額、民間が増額する。

<杉並区有地>

換地前 約93億円…ア 

内訳:A街区 5435.51平米×164.4万円/平米=89億4000万円 

   B街区 336.15平米×100.9万円/平米=3億4000万円

換地後 約88億円…イ

内訳:A街区 1433.28平米×181.0万円/平米=25億9000万円

   C街区 6359.86平米×98.0万円/平米=62億3000万円

イ/ア=94.6% ←区有地総額が5.4%マイナスに!

<民有地合計>

換地前 約208億円…ウ 

内訳:A街区 524.18平米×164.4万円/平米=8億6000万円

   B+C街区 19754.16平米×100.9万円/平米=199億3000万円

換地後 約212億円…エ

内訳:A街区 3714.13平米×181.0万円/平米=67億2000万円

   B街区 12606.77平米×98.0万円/平米=140億円

   C街区 468.94平米×98.0万円/平米=4億6千万円

エ/ウ=101.9 ←民間の財産は2%増

(面積は阿佐ヶ谷駅北東地区土地区画整理事業の資料のうち、仮換地調査書等による)

 (3)児童館について

 次に児童館の再編について述べます。

【杉並に児童館があってよかった

 コロナ対策で小中学校が休校になり、放課後等居場所事業も休止された中、杉並ではまだ多くの児童館が残されていたことで、子どもたちも親も助かりました。児童館という専用施設の存在は、多くの人たちの救いになっています。

【「学校という広いフィールド」は自由に使えない】

 児童館を再編して、学校の中で学童クラブと放課後等居場所事業が行われることについて、杉並区はこの案が出された2013年からずっと「学校という広いフィールド」を利用して、児童館と同じどころか、児童館のような狭い施設ではできない事業展開ができますよと説明してきました。しかし、4つの児童館が廃止・再編されたもとで、いま、再編の実態は区民の目に明らかになってきました。

 放課後等居場所事業の現実は、校庭、体育館などが毎日自由に使えるわけではなく、引率者に従っていかなくてはならない。また、校庭・体育館を使う予定になっていても学校の都合次第で変更されて使えなくなったりする。お菓子、ゲームが持ち込めない、自転車で来れないなどの違いは、行政にとってはささいなことなのでしょうが、子どもにとっては重大です。子どもの行動の制約となっています。

【児童館と居場所事業は違う】

 学校施設の活用により、子どもの居場所が増えるとすればいいことですが、児童館とは違う事業です。区議会のこの間の議論を聞いていても、児童館と放課後等居場所事業は実質が違うということは、行政と議会、そして区民の共通理解になってきたと思います。

 区はこれまでの説明を改め、児童館と学校の居場所は違うものだということを区民に対し明確に説明するべきです。その上で、児童館全館廃止の方針を転換し、児童館を存続していくよう、施設再編計画の見直しを強く求めます。 

(4)施設使用料の改定について

 次に、施設使用料について述べます。

【アンケートでは7割が「区民負担を軽く」だったのに】

 区が行ったアンケートについて質疑しました。無作為抽出の約400人のうち「公共施設は区負担を増やし料金を安くする」に賛成の人は44%。しかしアンケート全体の1900人でみると7割近くが賛成しています(*詳細はこの項目の末尾)。ですが、公開されたのは無作為抽出の400人の結果だけ、他は議会にも報告がありませんでした。区の考え方に反し、都合が悪いから公開しなかった、意図的に操作したと言われても仕方がありません。

 昨年の決算特別委員会では、私は、公共性・市場性、必需性・選択性の4分類について整理しなおしていただきたいと要望しました。また、パブコメでも様々な意見がありましたが、考え方はいっさい修正されていません。同様の区分方法をとっている他自治体では、法令で無料とする図書館、学校、公園など、また、法令で算定方法が定められている住宅、保育園、福祉施設などを除外した上で、区分を行っています。杉並区の示した区分方法は論理が通っていません。この区分による料金の改定には反対です。

 前回改定で割引きが廃止された団体利用については廃止のままです。団体割引には、団体結成を誘導し、地域活動、社会活動が活性化され、また、高齢者にとっては外出機会や生きがい、健康増進につながります。団体割引は必要であり、今後の再検討を求めます。 

*:公共施設の使用料等に関するアンケート(杉並区)

問10(要旨)公共施設にかかる経費の利用者負担について。あなたの考えに近いものを選んでください。A税金の負担を高くし使用料を安くする。B税金の負担を安くし使用料を高くする。

無作為抽出 A180人 B233人 ※A=44%

ホームページ A112人 B36人

集会施設 A402人 B83人

スポーツ施設 A399人 B161人

児童館 A44人 B8人

ゆうゆう館 A71人 B11人

区民事務所 A18人 B7人

合計 A1226 B539 ※A=69.5%

(5)学校教育に関連する質問の補足

 次に学校教育に関連する質問について補足します。

【牛乳パックリサイクル】

 第一に牛乳パックリサイクルについてです。リサイクルをする余裕があるなら実施に反対はしません。しかし、現場の先生たちからは、子どもと先生の時間がさらに削られる、と反対の声が上がっています。ひとりがパックを開く時間は1分以内との答弁もありましたが、子どもがただ、機械のようにパックを開いてくれるでしょうか。余計な指導の手間、ときにはトラブルも予想されます。アレルギーの子も心配です。

【リサイクルが常に最善ではない】

 そもそもリサイクルは常に最善策とはかぎりません。再製品化には膨大なエネルギ-を使います。公害も伴います。本当に環境に優しいのかは、様々な要素を比較衡量する必要があります。もちろん、ものを大切にするのはいいことですし、私も個人としては牛乳パックのリサイクルも行っています。しかし、それを教育課程で全員一斉に行うことはまた別な話です。

【リサイクルすれば森を伐ってもいいのか】

 そうでなくても、学校というところは、いいことだから、といってどんどん業務が増えていきます。だからこそ、いま、教員の働き方改革、学校の棚卸しが叫ばれているのではないでしょうか。教育課程から見て本当に必要なことなのかという観点で再検討すべきです。区長は、私への答弁で、緑を切るなと言っているくせにリサイクルに反対するのかと言いました。しかし私のほうから見れば完全に逆で、区長はリサイクルを熱心にやれば、どんなに木を切っても免罪されると言っているようにしか聞こえません。

【富士見丘中校舎に学校図書館を】

 第二に、富士見丘中の学校図書館についてです。地域の意見を踏まえて、小中一貫校ではない、と宣言した学校改築なのに、図書館ばかりか、給食室も、家庭科室も小学校側に1つしかありません。議事録を確認したところ、そのことについては、検討懇談会の中でも多くの疑問の声が出ていました。計画されている学校図書館は小学校優先の設計プランになっているため、少なくとも図書館については、中学校単独の図書館が必ず必要ということは指摘しておきます。図書館のない学校として発足したとしても、今後50年から80年使う校舎です。必ず中学校の図書館が必要という声が上がり、作らざるを得なくなることでしょう。それくらいなら、今、設計変更をしておくことです。

(6)福祉施策についての補足

 その他、時間がなく質疑できなかった問題について述べます。

【移動支援事業の見直し】

 第一に移動支援事業についてです。見直しが進んでいるようですが、保健福祉委員にすらその方向性は一切示されません。当事者、事業者の団体にも問い合わせましたが、意見を聞かれたが、やはり見直しの方向性は示されないとのことでした。これでは、当事者が参加しての見直しにならず、一方的な通告になるのではないかと危惧しています。現在の区の移動支援については、通所・通学、ショートステイの送迎に使えない、精神障害者はほとんど支給認定されない、など、他の自治体で行われているのにできないことが多いと、もう10年以上も前から毎年、当事者団体に指摘され続けてきました。当事者の意見を尊重した見直しを期待します。

【学校内のふれあいの家退去について】

 次に、ふれあいの家についてです。区長は10年前からの懸案といいましたが、私も事業者からずっと話を聞いてきました。2000年の介護保険制度スタートを前に、デイサービスが不足する心配と、学校施設の有効利用で区との協働事業として始まったのは紛れもない事実です。事業などやったことのない区民が、区に頼まれて、難しいNPO組織の設立手続きを行い、精一杯事業を進めてきました。区の期待に応えて、小学生と高齢者の交流事業も行い、学校から高く評価されています。営利企業ではできないサービスの質も確保されてきました。

 学童クラブの待機児童解消で学校内に学童を設置するためという答弁もありましたが、たとえば西荻北学童クラブは待機児童どころか110名定員に対し60名しか在籍していません。急ぐ必要は全くないと指摘します。

(7)社会教育と自治

 最後に、基本構想に関連して社会教育の重要性について述べます。

【杉並区に欠けている「住民自治」】

 質疑で取り上げましたように、「杉並区教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価(平成30年度分)報告書」には社会教育と自治についての重要な言及がありました。

 最初にのべたように、再開発を最優先し議会を軽視する区長の姿勢や、住民軽視の空気が杉並区政を覆っています。住民自治は見失われ、団体自治のみが抜け殻のように残っています。自治体として決定的に欠けているものがあるということです。

 教育行政に関する指摘ではありますが、学識経験者の先生のコメントは、区政全般のありかたに通じるものであり、以下、引用します。

【学びを通して住民自身がまちをつくる】

「この点検・評価においては、自治体としての区の団体自治は意識されているが、団体自治の基盤であり、また団体自治によって保障される住民自治についての把握が不十分なのではないだろうか。」

(中略)「学びは住民自治の基盤なのであり、学びを通して住民自身が地域をつくり、支え、経営することで、自治体そのものが本来の住民自治に定礎された確かな団体自治を実現するものへとつくりなおされていく」

(中略)「地域社会は、従来のような地縁団体や組織ではなく、むしろ住民自身の互いの承認や思いの実現によって生まれる楽しさに駆動される、信頼と自治のプロセスとして再構成され、学びはその基盤をつくりだすものだといえる。ここに、子どもを含めた住民が主役としての位置付けを得られる地域社会がつくられるのである」

【住民自治に根差した杉並区政に】

 この指摘には、真の住民自治に根ざした生き生きとした自治体という希望を見ることができます。新たな基本構想策定にあたり、社会教育に裏付けられた住民自治の視点から、区政を見直し、真に自治のまちといえる杉並区を築いていきたいものです。区長、区役所の皆さん、そして区議会が区民と共にその作業を始める来年度であってほしいと願ってやみません。

 以上の意見を付して、杉並わくわく会議として、令和2年度杉並区一般会計予算ほか4予算には反対とします。関連議案のうち、議案第6号および議案第42号については反対、他の議案については賛成とします。

 終わりにあたり、職員の皆様には、コロナ対応で通常よりもいっそう大変な業務の中、多数の資料を調整いただき、また様々な問題について丁寧にご教示いただきましたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

区長のいびき等についての答弁

 田中良区長の議会に臨む態度(いびきかいて爆睡したり、議員の質問中に妨害ヤジをしつこくとばすなど)を改めるよう質問したところ、答弁が噴飯ものだったのでここに掲載します。しかも本人でなく総務部長に答弁させるという逃げっぷり。質問内容はこちらから。

【一般質問に対する答弁】(答弁者は総務部長。*は引用者コメント)

 区長の議会での発言等についての一連のご質問にお答えいたします。

 区長は、執行機関と議会は区政運営の車の両輪であるとの認識のもと、つねに真摯に(*1)議会に臨んでおります。

 また、ご指摘の保健福祉委員会での発言につきましては、正午を大幅に回っているのにもかかわらず、質問が延々と続けられている状況に対して、出席者の体調等を懸念し(*2)常識的な議会運営(*3)の観点から発言させていただいたものでございます。次に、先の第4回定例会における区長の答弁は、(中略)議案審査にあたっては委員会の場でご質問に丁寧にお答えしているなかで、さらなる事前説明(*4)を求められましても、お答えしかねる旨を申し上げたものでございます。

*1:常に真摯に臨んでいる人がいびきかいて爆睡するとか、大声で発言を妨害するとか。

*2:12時を20分くらいまわったところで「いつまでやるんだ、飯にしろ」と言ったんですよ。人の健康を気遣う言葉ではありませんね。

*3:委員長の運営に対して「常識がない」と言っているわけですね。

*4:さらなるも何も、あの段階では仮換地について区議会で全く、一言も、説明していないから要求したのですが。

 この答弁を書いた人(本人のはずはない)は、もはや受け狙いだったのではないかと思ってしまうほどあほらしい答弁ですね。これが議事録に残るのですよ。末代までの恥。

田中区長の議事妨害、いびきなどについて質問しました(2020年2月18日杉並区議会本会議)

  2020年2月18日、杉並区議会第一回定例会において一般質問を行いました。(動画配信はこちらです。)

 昨年の保健福祉委員会で区長が私の発言を執拗に妨害したこと、またその後はいびきをかいて爆睡していたことなど冒頭に指摘しました。このようなレベルの低い問題に本会議の貴重な質問時間を割くことは不本意でしたが、委員会での発言妨害があまりにもひどかったため本会議に持ち出しました。田中区長は最初の質問には答弁しなかったのですが(総務部長が答弁)、再質問に対して登壇し、「議案と関係ない質問をした」などと誹謗の上塗りをしました。許せません(議案と関係ないかどうか、議事録を見てください。私の質問と議案の関連性が理解できない区長のほうに問題があることがわかると思います。)

 田中区長は気に入らない議員に対して答弁に立たないくせに、再質問で答弁して持論を展開することがままあります。この日もそうでしたが、杉並区議会のルールで再質問が終わると議員側は発言の機会がなく反論できないとわかっているからです。議員席からは「最初から答弁に立て」というやじが飛びました。

 このほか、阿佐ヶ谷北口再開発、児童館、新たな科学の拠点について質問しました。

(以下は原稿です。実際の発言とは異なる部分があります。)

1.区長の政治姿勢について

1)区長と区議会の関係について

 一般質問をいたします。まず、区長の政治姿勢について。区長と区議会の関係について、区長の見解をただします。 

 区長と区議会は区政の両輪といいます。地方自治体においては、それぞれの選挙で選出される首長と議会とが相互に牽制し、また互いに敬意を払って意見交換し、多様な住民の利益にかなう施政を実現していくことが求められています。

【田中区長の居眠り、いびき。そんなに疲れているのか】

 ところが田中区長の区議会に臨む態度は、区議会への敬意を払っているのか疑わしいものです。とりわけ、議場における区長の居眠りが日常の風景になりつつあることは、嘆かわしいことです。議場で区長のいびきがとどろいたときにはぎょっとしましたが、そればかりか、昨年11月26日の保健福祉委員会までも、議案に対する意見開陳の最中に、いびきの音がひびき、耳を疑いました。

 区長はご自分の提出した議案の帰趨は気にならないのか、委員の意見を真摯に聞く気はないのか、眠っていても、どうせ議案は可決されるとタカをくくっているのか。

 あるいは、まじめに聞きたい気持ちがあるのに、睡魔に抵抗できないほどお疲れなのか。議案審議以上に重要な、どんな公務でそんなに体力を消耗しておられるのでしょうか。

【児童館の議案審議中に発言妨害】

 この委員会では、5つの児童館の廃止という重大な議案が審議されました。その議案に対する私の質疑の最中に、突然、区長が、いつまでやるんだ、と大声で不規則発言したので驚きました。委員長の指示を仰いで質問を続けると、再度大声で、昼を回ったので休憩すべき、と発言され、またも発言を止めざるを得ませんでした。その後も、私の発言中に「議案と関係あるのか」とか「中高生は児童館に行ってない」などと執拗に発言妨害を繰り返し、そのたびに止まる議事。私個人へのヤジにとどまらず委員会の議事妨害です。 

【安倍首相より悪質な議事妨害】

 国会では、安倍首相が「意味のない質問だ」などと野党に対してやじったことから、謝罪に追い込まれましたが、田中区長の不規則発言は議事妨害という点で安倍首相以上に悪質です。

 区長は議会と議員に対して相応の敬意を払い、態度を改めること、また、こうした発言への謝罪、及び、今後は、議員の発言を妨害することなく謙虚に耳を傾けるよう求めますが、いかがか。区長の答弁を求めます。

  このような低レベルの問題に本会議の貴重な時間を費やすことは私も本意ではありません。しかし、保健福祉委員会での発言妨害はさすがに放置できず、全体で共有すべきことと考えてあえて取り上げたものです。

【反対する議員に説明するほど暇じゃない!?】

  さらに、昨年第四回定例会における私の質問に対する区長答弁についてです。

 「何を説明しても賛成いただく見込みのない方に対しては、それは、こちらも人手が余っているわけではありませんので」云々というくだりです。これには驚きました。後で述べる杉一小敷地の仮換地に関する私の質問に対する答弁でしたが、そもそも、仮換地にかんして、私個人ではなく、議会全体に対する説明を求めたものです。それに対して、反対する人に説明をつくすほど暇じゃない、といわんばかりのこの発言です。単に私に対する反論にとどまらず、区議会は区長に賛成さえすればいいという主張は、議会の存在意義そのものを否定する態度です。

 この発言について区長は議会に対し陳謝し、発言を撤回するよう求めますがいかがか、答弁を求めます。

 2.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

 次に阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて述べます。これまで指摘してきたように、JR阿佐ヶ谷駅至近の立地、かつ、小学校、屋敷林、病院を擁する公共性の高いこの地域の計画は、地権者だけでなく、駅や学校、商店街を利用する多くの区民の生活に多大な影響を与えることから、本来なら公共施行で行うべき事案ですが、区はあえて個人共同施行を選択しました。

【公共施行すべきところなぜ個人施行】

 そもそも個人施行に地方公共団体が1施行者として参加することの意義は何でしょうか。民間だけだと、乱開発につながったり、民間の利益だけが追求されたり、また資金的に脆弱だったりするリスクがある中、土地区画整理事業の目的である公共性を担保することにあるのではないでしょうか。いかがか。区としての所見を伺います。

  ところが本計画は、区が参入したことによって、かえって、公共の利益を害することになりました。特に、計画のキモといっていい仮換地が、区議会・区民の知らないうちに実施され、その後も情報が公開されないことは重大な問題です。

【仮換地情報は2か月待たされて真っ黒】

  第四回定例会一般質問への答弁で「このあとの総務財政委員会に報告する」とのことだったので、待っていると、総務財政委員会の資料は区の従前従後図だけであとは黒塗りというナメたものでした。

 そこで、情報公開請求すると、2か月も待たされたあげく、これがまあなんと真っ黒なんですよ。

【杉一小は誰の手に?全く不明】

 この間、杉一小の敷地は河北病院の敷地と交換すると説明されてきましたが、土地区画整理事業は単純な交換ではなく、区画全体の中での全員の所有権の再配置です。ですから、小学校の移転先が河北病院だからといって、必ずしも、そこの所有者と取り換えたとは限らない。つまり、杉一小の土地はいま、誰だかわからない人に仮換地され、知らないうちに売られてしまう可能性さえあるわけです。

【港区では仮換地情報を事前に議会に説明している】

  港区では同じ個人共同施行でありながら、民間事業者の東京ガス東京モノレールの換地先について、少なくとも図面だけは議会に提出しています。かたや杉並区は真っ黒。区長以下区の幹部は港区と比べて恥ずかしくないんですか。最低でも、区有地が、今後誰のものになるのか説明するのは公有財産を預かる公務員としての義務です。あらためて施行者3者の換地先について、黒塗りを撤回して明確な資料を提供するよう求めます。

【法人等の事業活動情報は原則開示対象】

  区は、換地情報非開示の理由として「公開することにより当該法人に著しい不利益を与えるとみとめられる事業活動情報に該当する」としています。しかし、杉並区情報公開・個人情報保護制度事務手引には、「法人その他団体等に関する情報については原則公開」とあります。さらに「杉並区情報公開懇談会提言」では「企業の財産権保証が常に「知る権利」に優先するという理由は存しない」としています。

【著しい不利益、とは?】

  また、区は「著しい不利益」といいますが、「著しい不利益」とは何か。事務手引によれば、「著しい不利益」は「一般抽象的な可能性が推測されるだけでは足りず、客観的・具体的にその合理的理由が必要」とされています。

【客観的具体的、合理的な理由がなければ非開示処分はできない】

  港区は同じ個人共同施行の換地情報を民間事業者の分も含めて区議会の場に、しかも事前に公開しましたが、これらの事業者に「著しい不利益」は生じていません。いったい、欅興産、河北医療財団にとっての「著しい不利益」とはなんですか。東京ガス東京モノレールは開示してもいいが、欅興産と河北病院は開示できない理由はなんですか。事務手引に従って、一般抽象的な可能性の推測ではなく、客観的・具体的にその合理的理由を説明してください。

 また区は同時に、非開示の理由として「事務の目的が達成できなくなり、または適切な執行を著しく困難にするおそれがある行政執行情報に該当し、公開できない」とも述べていますが、こちらはどうか。

【行政情報も原則開示対象】

 まず条例の規定は、行政情報一般ではなく、「取締り、立入調査、選考、入札、交渉、訴訟等の事務に関する情報」と限定されています。換地情報はあてはまりません。また、事務手引には「行政執行に伴う情報については原則公開」とされています。すなわちこの条文は非開示の理由にはなりません。また、先ほどのケースと同じく「著しく困難」は、一般抽象的な可能性の推測ではだめです。客観的・具体的にその合理的理由を説明してください。

【施行者会任命の評価員が誰だかわからない】

  仮換地の数字どころか配置図すらも公開されない、おかしいじゃないか、というと区はなんと説明するか。「施行者会が任命した3人の評価員が確認している」の一点張りです。では、その3人って誰ですか?

 私は情報公開請求しましたが、3人の評価員の名前は黒塗りでした。そこで「所属先」を請求しましたら、こちらも非開示でした。3人の人たちが、どこの誰なのか、本当に中立の人なのか、欅興産や河北病院と利害関係はないのか、調べることもできないし、調べる以前に、本当にこの3人の評価員という人たちは実在しているのでしょうか。もしかしたら架空の人物かもしれません。

【架空の人物かもしれない評価員】

 架空の人物かもしれない3人の評価員が「大丈夫です」といったところで、誰が納得するでしょうか。3人の氏名・所属を公開せずに証明はできません。しかもその報酬は区も税金で負担する業務です。つまり契約の相手先ですから、公開しないことは不当です。

【個人でも、事業情報は公開対象】

 個人情報の保護といいますが、この場合は、個人の事業に係る情報であり、事業に係る情報は、先の企業・団体の「事業活動情報」と同じ扱いですので、公開した場合の「著しい不利益」については、同じく一般抽象的な可能性の推測ではなく客観的・具体的に合理的な理由が必要です。説明を求めます。

【杉一小と河北病院の地価は本当に1.5倍か】

 さて、大変乏しい情報の中から、先の仮換地が正当かどうかを検証しなければなりません。第四回定例会において、杉一小用地と河北病院用地の平米あたり指数を求めたところ、167,700点と117,100点との答弁を得ました。すなわち、両方の土地の価値は1.5倍の開きがあると評価されたということです。

 ところで、以前にも述べたように、路線価でみると、杉一小は平米あたり102万円。河北病院は47万円と2倍以上の開きがあります。仮換地の評価は低すぎるのではないか。

【プロの判定は3~4倍の価格差】

 そこで、ある不動産鑑定士さんに、情報を提供して、財産鑑定をしたらどのくらいの値段になりそうか、概算をたずねたところ、杉一用地は坪あたり500~600万円。河北病院用地は坪あたり150~180万円というところだろうとのお答えでした。プロの目から見て、3倍から4倍の開きがあって当然という結果でした。ちなみに現地にも土地勘のある方です。しかもマンション、商業ビルなどの用地に関しては、容積率が上がるほど地価があがるそうですから、現実にはさらに開きが出てきます。

容積率500%が評価されていない】

 杉一小は今後、容積率が500%に引き上げられます。他方、換地先の河北病院用地は300%ですから、5:3すなわち、1.67倍に評価されてもいいはずです。ところが、換地計算では1.2倍弱にすぎません。容積率だけみても、仮換地は、売買の際の不動産鑑定の価額に比べ、これほど低い評価になっています。

【とびぬけて優良な杉一小用地を安売り】

 本計画区域内の中でも最も駅に近く、大通りに面しており、整形地で地盤も水利もよい、とびぬけて優良な土地が、換地という手法をとったため、不当に低い評価をつけられ、杉並区は大損するかっこうになっています。不当な財産の処分、民間事業者への利益供与にほかなりません。このような仮換地は認められません。仮換地を撤回し、計画全体をもう一度見直すべきと指摘しますが、いかがか伺います。

 3.施設再編整備計画について

1)児童館・学童クラブについて

 次に、施設再編整備計画について、第一に児童館・学童クラブについて質問します。

【杉並区の児童館廃止計画にマスコミが注目】

 2月8日付の朝日新聞で杉並区の児童館全館廃止の問題が報道されました(消える児童館に懸念 杉並区、コスト削減で再編)。また、翌日の9日にはTBS「噂の東京マガジン」でも取り上げられ、全国的にも注目されています。

【保健福祉委員会で東原学童クラブの陳情を審査】

 昨年11月の保健福祉委員会では、東原児童館ほか4児童館の廃止の議案、及び、東原学童クラブの保護者からの陳情が審査されました。残念ながら、児童館廃止の議案は可決され、また、陳情は不採択となりましたが、審議の過程では、児童館廃止に賛成の立場の委員も含め、「保護者の理解は得られているのか」と懸念する意見が多く出されました。この審議を経て、子ども家庭部長、児童青少年課長からは、これまでの対応について反省の弁も聞かれたのは重要なことでした。

 そこでうかがいますが、この反省にもとづき、学童クラブの保護者意見交換会やその他の保護者グループとの話し合いなどの機会において、区からはどのような情報提供が行われてきたでしょうか。その後の変化を具体的に説明してください。

【児童館の事業が学校に移ったら】

 ところで先日、杉二学童クラブと放課後等居場所事業を見学する機会を得ました。子どもたちが校舎内や校庭で元気に遊んでいる様子を見ることができました。しかしながら、区がいうように「児童館の事業を学校内で継承・発展し、これまでと変わるところなく子どもの居場所は保障される」とはいきません。

【学校内で自由に遊ぶことはできない】

 第一に、子どもの往来が自由ではないことです。この日は確かに校庭を使って子どもたちが遊んでいましたが、きくと、学童も放課後居場所も、今から校庭に行く人、と募って指導員が引率して校庭に出る、帰る時も一緒に帰るという形です。途中から「僕も行きたい」と加わったり、逆に「やっぱり部屋で遊びたい」と途中で抜けることは原則的にはできないようです。見学していた保護者の方がうまい表現をされていましたが「バスに乗り遅れたら遊びにいけない」のです。

【高学年の授業中は、静かに】

 さらに、高学年の授業中は、校庭で遊ぶことはできません。児童館なら、自分の授業が終わって児童館にくれば、好きな場所で遊ぶことができます。玄関や廊下のスペースも子どもたちがところ狭しと走り回り、一輪車を乗り回しています。こうした騒々しい遊びは授業中の学校ではできません。

 そこでうかがいますが、すでに実施されている学校内学童クラブ、例として杉二学童クラブでは、校庭及び体育館の利用日数、時間の実績はどうなっているでしょうか。説明してください。

【子どもの名前は覚えられない】

 また、室内で子どもたちの受付をしている職員さんにきくと、子どもたちの名前は覚えていないそうです。放課後等居場所事業では、子どもの人数が多いわりに、職員のほとんどがパート、アルバイトということもあり、継続的な関係づくりは難しいと感じました。

【教室をそのまま転用した学童クラブ】

 学童クラブの部屋も見せていただきましたが、教室をそのまま転用しているので、専用施設としてつくられた児童館と比べると、あたたかみや、居心地の良さが劣り、授業が終わっても教室の中にいる感覚は拭えません。

【児童館と違い制約が多い学校内】

 さらに、先日のTBSの番組では、区民から「児童館のときよりも制約が増えている」等のご意見が寄せられることがあると、区自身が認めていることが紹介されていました。具体的には、学校内には携帯ゲームやおやつの持ち込みができないこと、ビブスを着用しなければならないことなどへのご意見です。児童館でできたことができていません。

 すでに4つの児童館が廃止されて学童クラブと放課後等居場所事業が実施され、現場の実情が次第に見えてきました。マスコミが注目してくれたのも、現場を実際に体験して問題を感じた保護者の声が高まってきているひとつの現れだと思います。

【児童館廃止は考え直すときに】

 区は「児童館の廃止」を「継承、発展、充実」と糊塗してきましたが、現実を前にその虚構は破綻しました。児童館と学校では事業の内容が変わってくること、そして、それは子どもたちの領域を狭める方向に働いていることを区は率直に認めるべきです。児童館を残していくべきではないのか、検討しなおす時期に来たということだと思います。

【学童クラブの民間委託で職員配置は?】

 さて、東原学童クラブの保護者の方々からは、移転・民営化に対して多くの疑問が私のところにも届いています。新たな陳情を提出された方々もいらっしゃいます。

 まず、職員配置についてです。移転後の杉九学童クラブは最大受入数160名になりますが、民間委託先の職員は常勤、非常勤、それぞれ何名配置されるでしょうか。また、施設長は放課後居場所事業と兼任するのか否か。学童クラブの民間委託ガイドラインでは、160名に対し、常勤4名、非常勤12名と示されていますが、この配置は必ず守らなければいけない配置なのか否か、お答えください。

【3年以内で職員が交代】

 東原学童クラブの保護者会において、委託先に予定されている株式会社明日葉の本社の方が説明に来られ、職員体制に関する質問に対し、職員は最長3年程度で入れ替わると説明したので、大変驚いたと保護者の方からうかがいました。区としては職員がころころ入れ替わるような対応は容認できないと思いますがいかがか。また、区として委託事業者の在籍年数、勤続年数についての基準はどのように設定しているか説明を求めます。

【施設長が長期休職、つぎつぎ交代…】

 また、保護者の方の調査により、この事業者が他の自治体で受託した学童クラブにおいて、施設長が長期にわたって休んだ、1年の間に3人も施設長が入れ替わった、指導員が1年後には1名を残して全部入れ替わってしまった、などのケースがあったことがわかりました。この数年で学童の委託をいっきに増やし、現在100カ所以上を請け負っている会社ですので、人材確保に無理があるのではないかと心配になります。また、この会社は前身が葉隠勇進という会社で学校給食を請け負っており、杉並区でも受託実績がありますが、過去に他自治体で食中毒を起こして業務停止になっていたこともわかりました。

【食中毒も起こしている】

 こうした情報は、選定段階で選定委員の耳に入っていたのでしょうか。お聞きします。私が聞いた選定委員は知らなかったと言っています。もしこれらの情報が知らされていたとしたら、この事業者が選ばれたでしょうか。杉並区が学童クラブの委託要件を株式会社にも拡大した第一号がこの会社です。緩和は明らかに質の低下を招いているのではないでしょうか。強い懸念をもって、保護者の方々ともども、見守っているとお伝えしておきたいと思います。

2)科学館と新たな科学の拠点について

 最後に、施設再編の項目のうち、科学館と新たな科学の拠点についてうかがいます。

 2016年春、日本一の科学教育センターとうたわれた杉並区科学館が幕を閉じました。多くの区民が反対の声をあげ、区議会に陳情が出され、関係各学会から区長へ要望書が出されましたが、顧みられることなく、廃止が決まってしまいました。その後4年間がたって、いまやっと、新たな拠点の計画が動き出そうとしています。しかし、その目指すところが、どうも漠然としていてわかりませんので質問します。

【新たな拠点は科学館の実績の上に】

 区はこの間「出前型、ネットワーク型」を標榜して、出前授業や移動式プラネタリウム、そして毎年のサイエンスフェスタなどを科学館の代替事業として行ってきたので、今回の拠点はその継続の上に構築すると説明しています。

 しかし、杉並区がまず科学の拠点構築の基盤とすべきは、47年間にわたって、すぐれた科学教育を内外から賞賛されてきた旧科学館の実績ではないでしょうか。

【科学館を語るのがタブーになっている】

 科学館のよかったこと、継承すべきことは何か、反対に、何が不足だったのか、新たに行うべきことは何か、その振り返りをしないで、次の施設はつくれないはずです。しかし、この議論がタブーのようになっているから、次の施設に対する明瞭なビジョンが出せないのだと思います。

【学校ではできない本物の迫力】

 科学館が提供してきた、学校ではできない流水実験や解剖、また、夏休みの科学教室は、本物のもつ迫力、専門的な講師の講義とともに、今も多くの卒業生の記憶に強く残っています。それだけでなく、科学館は教員の研修、教材の手配、さらには、科学教育団体へのアドバイスやサポートも行い、区全体の科学教育を推進する拠点となっていました。

 そうした科学館に対し、新たな科学の拠点は、機能、位置付けがどう変わるのでしょうか。特に、学校教育との連携はどのように考えているのでしょうか。説明を求めます。

【運営事業者は何をする?】

 新たな拠点で、教育委員会は何を実現したいと考えているのでしょうか。具体的なポリシー、あるいはコンセプトは何か。主なターゲットとする年齢層、利用者像はどういった方々なのでしょうか。 

 今後、運営法人が公募されるとのことですが、区と事業者との関係は、指定管理、業務委託、建物賃貸のどれにあたるか。また、予定地の杉四小敷地では、集会施設としての活用等もなされると聞きますが、法人が運営する範囲はそのうちのどの部分か説明を求めます。

【科学教育団体の活動が機能するように】

 3月1日に第5回を迎えるサイエンスフェスタは毎回、参加団体も参加者も増えて、大盛況です。年に一度のフェスタだけでなく年間を通して実行委員会のメンバーが会合をもち、私も実行委員会の一員としてずっとかかわってきましたが、団体の皆さんとは、連帯感の感じられる、いいネットワークが形成されていると思います。これらの団体と新たな拠点のかかわりはどうなるのでしょうか。科学教育に関わる人々のネットワークが有効に機能するためには、運営事業者や教育委員会との連携、この拠点における区民の運営協議会のような協働のしくみが必要と考えますがいかがか、所見を求めます。

【資料は持たないのか。雑誌は?】

 新たな科学の拠点は博物館的な機能は持たせないと聞いていますが、しかし、一切資料を持たないというわけにはいかないと思います。特に、調べ物に使う書籍も必要ですし、また、雑誌に関しては、科学雑誌は一通りここで読めるというくらいのものは持たないと、新たな拠点の名が泣くと思います。

【科学館のお宝はどこへ】

 そういえば科学館には多数の標本や資料がありました。これらはいまどうなっているのでしょう。たとえば貝類の標本、鉱物標本はどこにあるのか。また、プラネタリウムでは多くのプログラムが上演されていましたが、その中には、「2001年宇宙の旅」や「幼年期の終わり」で知られるアーサー・C・クラークの生前の生インタビューなどというお宝もあったそうですし、また、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)、これは宇宙観測によって詳細な全宇宙地図をつくろうという壮大な全世界的プロジェクトだそうですが、その中で杉並区立科学館が分担した部分、世界に1枚しかない分光板があったとも聞きました。これらはいまどこにあるのでしょう。そもそも、科学館の資料のリストはどこにあるのでしょうか。それらも活用することはできないでしょうか。

 杉並区が誇るべき科学館の歴史をもう一度振り返り、その遺産の上に築かれる新たな拠点こそ、知的興奮に満ちた、区民の学習、活動の場となることと信じます。そのような場の実現を願って質問を終わります。

天皇即位賀詞決議に反対しました(2019年12月6日本会議)

 杉並区議会2019年第4回定例会が閉会しました。最終日に審議された「天皇即位賀詞決議」を求める陳情とこの陳情にもとづく決議案に私は反対しました。理由は原稿にある通りです。

 そもそも、杉並区議会では決議案を出す場合は原則全員が賛成できることという不文律があり、賀詞決議についても2か月ほど前から話がありましたが、反対する会派があるため決議案の提出を見送ったと理解しています。ところが、今議会の中日11月22日に突然上程された陳情(神社庁の方から出されたもの)が29日には委員会で採択されてあっというまに決議にまで至ったという経過は逸脱です(指摘する議員に対して「陳情だろ」というヤジが飛んでいましたが、それは詭弁というものです)。

 これまで、少数派が決議案を出したくても合意が得られないからと断念したことが何度もあります。しかし、今回このような逸脱があったからには考え直さなくてはなりません。下記発言の最後の補足はそういうニュアンスをこめています。

(以下原稿です。実際の発言とは異なる部分があります)

 「1陳情第39号」の採択に反対する立場から意見を述べます。本陳情は、新天皇の即位にともなって杉並区議会が賀詞を発することを求める陳情です。

 わが国は国民主権に基づいており、日本国憲法では天皇は日本国の象徴、日本国民統合の象徴とされている一方、国事行為のみを認められ、それ以外の国政に関する権能を有しないとされています。即ち天皇は君主ではなくこの国を治めるものでもありません。この国を治めるのは我々国民です。

 したがって天皇即位に際し、あたかも臣下であるかのように、我々国民が賀詞を奉ずることは、国民主権基本的人権の理念に反するといわなければなりません。

 そもそも憲法基本的人権の規定において、すべて国民は身分、門地等によって差別されないとされている中で、天皇の地位だけが世襲によるとされていることが矛盾しています。天皇をいただく日本国民という構図は、封建的な身分制度を肯定するものであり、現代の日本社会における多様性、とりわけ民族的多様性を排除していくことになりかねません。

 また、信教の自由の観点からも問題があります。天皇制は特に明治以降、国家神道と一体のものとして存在してきました。今般の即位関連儀式の多くもきわめて宗教的な色彩の濃厚なもので、こうした儀式を国民全体の負担でまかなうことについては、信教の自由を侵すものとして、これまでも違憲訴訟も行われているように、違憲性を免れません。

 神話時代から数えて126代の天皇という点については委員会でも異議が述べられていましたが、杉並区議会が神話と歴史とを混同するような陳情を採択してはならないのではないでしょうか。

 さらに、戦前の大日本帝国憲法下で行われた侵略戦争昭和天皇の戦争責任問題はいまだに日本社会で十分な共通認識となっておらず、そのことが繰り返されるヘイトスピーチアジア諸国との関係構築の困難さにつながっていることも指摘しなければなりません。

 おめでたいことだから祝いたいという人がいるのは否定しません。しかし、こうしたさまざまな問題に対して、区民の中にも多様な意見があります。本陳情は、杉並区議会に対し、区民を代表して賀詞を決議するよう求めていますが、区民全体でなく一部の区民の意見を区議会が代弁することは区議会として行うべきではありません。

 以上をもって反対とします。

 なお、本陳情は改選後39号とのことですが、これ以前に多数の陳情が出ているのにいっこうに審査が進まない中で、出されたばかりのこの陳情だけが優先的に審査されたことには違和感を否めません。賀詞決議に対して区議会全体の合意が得られないなかで、陳情を足場にして強引に決議を提案することは円滑な議会運営にも不協和音を来す行為であることを指摘しておきます。

誰も知らないうちに区長が土地を処分(一般質問しました)

 2019年11月22日、杉並区議会第四回定例会において一般質問しました。

 誰も知らないうちに杉一小と河北病院の土地の権利交換(土地区画整理事業の「仮換地」指定)が終わっていました。私たち区民の土地である学校の土地処分なのに、区議会には一切の説明がなく、終わったあとの報告もいまだにありません。

 区有地を区長が勝手に処分してしまったわけです。森友学園も真っ青です。

 区議会もなめられたものです。ここで怒らなくてどこで怒るんでしょうか。

 (以下質問原稿です。(1)はややこしい話なので、ご用とお急ぎの方は(2)からどうぞ!)

<一般質問 阿佐ヶ谷北東地区のまちづくりについて>

【誰も知らない間に仮換地指定】

 一般質問をいたします。阿佐ヶ谷北東地区のまちづくりについてです。

 土地区画整理事業が8月末に施行認可されたと思ったら、誰も知らない間に仮換地指定が終わっていました。例えれば、親の土地を、自分が知らない間に兄弟が勝手に売ってしまったようなもので、とんでもない話です。

【区議会に一切の情報提供なし】 

 これが売買であれば、財産鑑定が行われ、財産価格審議会の審査を受け、かつ、区議会の議決を経なければ取引できないところ、それらすべて法的な義務でないとしてノーチェック。しかも、区議会に対しては一切の情報提供のないままに、杉一小、阿佐ヶ谷児童館の土地は、実質的な所有権の移転である仮換地の指定まで終わっていました。公共用地の処分としてあってはならないことと厳しく指弾します。

(1)施行認可

【けやき屋敷とツミの保護計画はいまだに】

 最初に、8月末の施行認可について述べます。果たして認可は適切であったかをあらためて検証します。

 阿佐ヶ谷では歴史ある屋敷林の消滅を許すのかということが大きな焦点になっています。「東京における自然の保護と回復に関する条例」(以下、都条例)は、「何人も開発に当たっては……損なわれる自然を最小限にとどめ、自然が損なわれた場合は、その回復を図らなければならない」としており、樹林地等の自然地を含む3000平米以上の開発に際して「既存樹木等の保護の検討に必要な調査が行われ、当該調査に基づき、当該既存樹木等をそのまま残し、又は行為地内において移植することについて適正な検討が行われていること」を許可の条件としています。

  阿佐ヶ谷の計画の場合はどうか。都条例の定めにより、昨年秋、今年春の2回、自然環境調査が行われ、さらに、猛禽類ツミの生息が確認されたため6月に追加でツミの調査が行われました。環境省猛禽類保護の進め方」には更に来年の営巣期まで調査を行うことが求められており、必要な調査はまだ終わっていません。

【自然保護の協議待たず認可した杉並区】

 都条例の求める「保全計画書」どころか、その前提とされる調査が未了、当然、開発許可の条件となる都との協議も未了です。にもかかわらず、区は土地区画整理事業の施行認可を行いました。

 土地区画整理法運用指針では「事業化のあり方」の項で、環境の保全における留意事項として、施行規則を引用して、施行地区及びその周辺における環境保全のため、樹木の保存、表土の保全その他の必要な措置を求め、また、関係法規が定められている場合はこれに準拠すべきとしています。これらに照らせば、都条例協議未了の状態は施行認可にあたっての条件を満たしたとはいえず認可は尚早であったと考えますがいかがか。

 また、仮に今後、同様の民間事例が出てきたときにもやはり、協議未了でも認可してしまうことになるのでしょうか。それを考えると行政自らが悪しき前例をつくることは許されないと考えますがいかがか。見解を求めます。(Q1)

【土地区画整理は開発行為】

 都市計画法によれば、開発行為、即ち建物を建てるなどの目的のために土地の区画形質の変更をしようとするものは、開発許可を得なくてはなりません。

 阿佐ヶ谷の計画の場合も開発行為ですが、土地区画整理事業都市計画法29条但し書きで開発許可を必要としないとされています。しかし、それは許可でないからいいかげんでいいとか、条件がゆるいとかいう話ではありません。

 区は土地区画整理事業が開発行為でありながら開発許可を要しない理由をどのように考えているのでしょうか。見解を伺います。(Q2)

 そもそも、戦前の都市計画法が生きていた1954年に土地区画整理法はつくられました。1968年にやっと現在の都市計画法がつくられ、開発行為は開発許可によってコントロールされることとなりましたが、土地区画整理事業についてはすでに存在する土地区画整理法により審査が担保されるということが前提で除外されたと理解できます(注)。ネットで見た埼玉県の解説によれば「都市計画上十分な監督のもとに行われることから開発許可不要とされたものです」とされています。

【基準を満たしていない計画を認可した】 

 区のいいぶんは、土地区画整理事業の場合には開発許可でなく施行認可だから違法でなければ認可しなければならないというものです。しかし、それは違います。 

 開発行為は各基準をクリアしないと許可されません。土地区画整理法9条は関係法令違反のないことが認可の要件としています。当然、都条例についても許可が必要です。土地区画整理事業の場合には施行認可が開発行為の計画審査でもあります。従って施行認可とはいえ、内容的には許可と同等の審査が前提となっているものです。東京都もこの認識は共有しているとききました。

【協議未了で安直に認可してはならない】 

 さらに区は、都条例についても、同様に許可ではなく協議なので、着工までに整えばいいといいます。しかし、都条例の「開発許可の手引き」には協議をもって許可にかえるとし、「協議にあたっては、許可等の基準要件を準用して行います」とあるので、審査の内容は同等です。

  仮に協議が不調となり、保全計画が受理されない場合を考えてみましょう。その場合には認可された事業そのものが成り立たなくなります。そのような認可を安直に出してはならないということです。ちなみに、不調となる可能性はおおいにあります。なぜなら、条例をそのまま読めば木は切れない、特にツミの営巣地から半径350m以内は切れないので、簡単に都と事業者が折り合うとは考えにくいからです。

【施行認可の撤回を求める】

 都条例協議が整うどころか、調査も未了の現段階での施行認可は時期尚早であり、撤回すべきですが、いかがか見解を求めます。(Q3)

 今回の土地区画整理事業では、区が行うものなのに個人共同施行だったり、区長が申請して区長自身が認可する一人二役、そして施行認可についても、いま述べてきたような問題があります。

 この計画は、公共減歩がわずか4%と公共性が極めて薄く、公共施設整備のためというよりは、土地区画整理事業という仕組みを利用して、公共の土地を不当に安く、民間の土地を不当に高く権利交換する、豊洲市場と全く同じ構造の汚染地のロンダリングだと指摘してきました。

 違法でなければ何をしてもよいというのは、民間ならともかく行政の姿勢としてありえないことです。法の網の目をかいくぐるようなやり方は、まるでディベロッパーがやっているかのようで、きわめて問題です。

(2)換地設計

【区議会へ一切事前の報告なく】

 さて、施行認可を得た事業者3者は足早に次の段階に進みました。冒頭言ったように、我々区議会が何も知らないうちに、仮換地指定まで行われていたのです。

 ここで、田町で行われた土地区画整理事業について、港区の対応を紹介しましょう。JR田町駅東口開発のケースは、小学校などのある区有地を東京ガスの土地と交換するものでした。阿佐ヶ谷と同じく、区と民間との個人共同施行で行われた土地区画整理事業で、駅前の小学校を移転させ、その用地と東京ガスの汚染地を交換した汚染地のロンダリングの手法まで阿佐ヶ谷とそっくりです。

 ところでこのケースでの港区の対応にはいくつか学ぶべき点があります。

 1点目は、仮換地指定の1年前から仮換地計画をちゃんと議会に説明していること。

 2点目は、施行者まかせにせず、不動産鑑定機関による検証を行っていること。

 3点目は、東京ガス跡地への小学校移転をやめたことです。

【港区の姿勢に学ぶ】

 まず1点目。港区ではこの計画の仮換地指定への同意を2012年3月23日に行いましたが、その前日に、区議会の特別委員会で、仮換地の詳細を報告し、議会の審議に付しています。そのことにまず驚きました。杉並区と全く違うのです。

 港区は詳細な資料を議員に配布して委員会審議を行っています。売買ではないといっても、公有財産を処分するのだから、当然のことです。ところが、杉並区からは今に至るまで全く情報提供がなく、私は、情報公開により、杉並区にかかわる換地規定等の書類を入手しました。しかも、それはあくまで仮換地指定後のことです。

【仮換地の1年も前に区議会に説明】

 さらに驚いたのは、港区議会では仮換地指定からさかのぼることなんと1年も前の2011年の3月にも仮換地に関して実際に決定されたのとほぼ同じ内容の説明がなされていたことです。通常、換地計画は1年くらい前にはできているというのが常識だそうですから当然可能だったのでしょう。

 阿佐ヶ谷のことを考えれば、昨年11月には3者協定を結んでおり、この段階では換地計画はできていたと考えるのが自然です。仮換地同意の時点はもちろんですが、もっと前の段階で、杉並区議会に対しては情報を明らかにして説明すべきだったのです。

【議会の委員会開催を待った港区】

 田町の場合、仮換地指定通知と同意依頼が2012年2月10日に出されたのに対し、1カ月以上後の3月22日に議会報告、翌日の3月23日に区の同意回答しました。議会の特別委員会開催を待っての同意となっています。

【区議会休会中を狙った?杉並区】

 これに対し、阿佐ヶ谷の場合は、本年10月10日の指定通知と同意依頼に対して、約10日後の同月21日にさっさと同意の回答を行い、事前の議会報告なし。議会に報告するため日程を待つどころか、逆に、閉会中を狙ったかのようなスケジュールで同意を行いました。事後もいまのところ書面での情報提供すら一切ありません。 

 私は前回定例会において、仮換地の情報は事前に議会に報告されるべきと追及しましたが、区側は行わないと答弁しました。しかし、それが行政としてまったく非常識なふるまいだったことは、港区の例をみればよくわかることでしょう。

 港区でできたことがなぜ杉並区でできないのか。あるいはしないのか。同じ23区の行政として、また区長として、恥じるべきだし、こんな議会軽視、区民軽視のやり方を認めるわけにはいきません。区議会へのひとことの説明もなく行われた区有財産処分には正当性がなく、区は仮換地指定への同意を撤回すべきと考えますがいかがか、見解を求めます。(Q4)

 【不動産鑑定機関による検証】

 田町のケースの2点目は、不動産鑑定です。これについても私は、先の一般質問で「不動産鑑定を行うのか」と質問しましたが、区の答弁は鑑定は行わないというものでした。

 しかし、港区は区議会で仮換地指定の1年も前に計画について説明し、「日本不動産研究所に検証を依頼して妥当なものであると保証されている」旨、述べています。

 同じ個人施行の土地区画整理事業でありながら、港区は公有財産の処分において、不動産鑑定機関に評価を依頼して正当性の保証としています。わが杉並区は闇の中の取引です。

 そこで改めて不動産鑑定を行い、河北の土壌汚染の可能性も視野に入れた正当な価格を公表することを前提として仮換地指定をやりなおすよう区に求めますがいかがか。うかがいます。(Q5)

【土壌汚染地の学校建設をやめた港区】

 港区のケースでもうひとつ指摘すべきは、東京ガス跡地の汚染を調査した結果、小学校の用地としては使わない決断をしたことです。浄化に時間がかかり、小学校の移転の時期が見通せないというのがその理由でした。普通の行政なら、少なくともこの程度の見識はもっていてしかるべきです。

 ひるがえって杉並区はどうか。すでに築60年を超えた杉一小は本計画のために建て替えが10年延びました。「今すぐ建て替えないと子どもたちの命が危ない」かのように煽っていた区の説明はなんだったのかと、地域では不信の声がうずまいています。

 土壌汚染に至っては、法令上土壌汚染対策を求められる施設であるにもかかわらず、いっこうに汚染の実態を把握しようともしません。意図的にサボタージュして書類上の調査すら進めようとしていません。

 港区の決断と比べるとき、杉並区の学校の扱いのぞんざいさを痛感します。

【土地の価値は広さだけではない】

 しかも、杉一小じたいには移転する理由がない。現地で建て替えれば今すぐにでも着手できるのです。区は広くなる、広くなるといいますが、いまの杉一小のスペースの中で、長年十分に充実した教育活動が行われてきました。10月には運動会が行われ、私も拝見しましたが大変盛り上がって挙行されておりました。

 浸水地、汚染地ということを無視して、少しくらい広くなるからいいだろうというのはおかしいと素人でもわかります。「あんさんぶる荻窪」の時もそうでしたが、区長は、土地の価値は広さだけじゃないということが、どうしてもわからないらしいので、誰か教えてあげてください。

【杉並区が損する換地】

 さて仮換地です。ざっくり言って、区はずいぶんと損をする計画になっていると思います。

 区はこれまで杉一小の土地に3割の区の権利が残るといっていました。しかし、仮換地指定では杉一に残る区の土地は1433平米であり、面積は4分の1たらずです。しかも中杉通り側ではなく裏側なので相対的に安く、さらに権利は小さいのです。

 正面路線価では倍以上の差があるのに、仮換地の従前従後の面積で比較すると約1.3倍にとどまっています。

 仮換地指定通知記載の地積を参照して改めて路線価で計算してみると、現在の杉一小敷地のうち4割近く、2000平米くらいの価値が残るはずです。1433平米とはかなり安く評価されたと見ることができます。

【欅興産、河北財団の換地情報も公開を】

 それにしても、今回開示された情報は、区の従前従後の土地に関する情報だけで、欅興産と河北病院に関する情報がないため、その当否を正確に判断しようがないという面もあります。他の地権者はともかくとして、事業主体である欅興産と河北の仮換地指定通知や換地図など換地に関する情報は公開すべきと考えますが、いかがか。うかがいます。(Q6)

【売買なら平米200万円にも】

 その上、これが売買だったらこんなものではありません。「あんさんぶる荻窪」は財産交換の際の鑑定で、開発法で平米当たり200万円と評価されました。荻窪駅阿佐ヶ谷駅の違いを差し引いても、阿佐ヶ谷駅から1分のこの場所であれば、同程度の評価になるでしょう。マンション用地として購入すれば総額100億円以上の土地ということです。換地した先の土地にはたして100億円の価値があるでしょうか。

 そこでお尋ねしますが、仮換地の計算では、杉一小と河北河北病院の土地はどのくらいの格差がついて評価されたのでしょうか。価格では出していないということなので、平米あたり指数でお答えください。また、容積率や環境条件の修正係数はどのように設定されたのでしょうか。(Q7)

 また、区の計画では今後、地区計画をかけ、容積率の変更が行われる予定です。特に杉一の土地は現在の200%、300%の土地がすべて500%に変更されます。つまり利用価値が上がるのでこれを反映して換地計画を行うべきと考えるがいかがか、見解を求めます。(Q8) 

【田町で港区は土地を大安売り】

 先に述べた田町のケースを再度参照します。区議会への対応では評価しましたが、計画自体は大変問題があるものでした。議事録を見ると換地の説明に対して「実は再開発等促進区をかけて容積を大幅に引き上げるのではないか」との質問が出ていましたが、その時点では区はだんまり。ところが、仮換地後、容積率の引き上げは現実となって、なんと940%にまで引き上げられ、結果としてみると、港区は土地を大安売りしたことになってしまいました。

【杉一小跡地にできるのはマンションでは?】

 さて、阿佐ヶ谷で同じことが起きない保証が果たしてあるでしょうか。田町では業務用の巨大なビルが建てられました。阿佐ヶ谷はどうなのか。大規模商業施設が入るのではと心配する向きもあるようですが、収益性を考えれば、あえて大型商業ビルを作るよりはむしろマンションではないかと思います。

【駅近だけが売れるマンション】

 11月19日付日本経済新聞に「マンション高値 駅近人気が支え 首都圏新築、売れ行きは鈍く」という記事が出ていました。マンションの販売価格が過去最高に近づく一方、売れ行きは鈍っているという内容です。NHKも10月のマンション販売が1973年以来最低に落ち込んだと報道しました。

 他方、「駅近」物件は人気で、日経の記事によれば今年1月~6月の販売戸数のうち、最寄り駅5分以内の物件が5割に迫る勢い、これらが需要を支えているのだそうです。

 このような市場の構造にあって、とりわけ住宅販売に力を入れている不動産ディベロッパー各社は、駅前好立地の土地を安く購入できないかと、血眼で探しているはずです。杉一小5600平米の土地は、ディベロッパー垂涎の土地でしょう。

野村不動産の分析】

 区役所の目の前にいま「プラウ南阿佐ヶ谷」を建設中の野村不動産は、ご存じのように、以前、阿佐ヶ谷住宅の再開発で再開発等促進区の制度を利用して第一種低層住宅専用地域に6階建て575戸のマンション群を建設しました。阿佐ヶ谷駅の南口駅前にも「プラウド」ブランドの13階建てのマンションがあり、阿佐ヶ谷と縁の深い会社です。主要不動産会社のなかでは、特に住宅販売の比重が大きいという特徴があるといい、この野村不動産が「用地の仕入れ環境の悪化」「長期的な用地ストックが足りていない状況」などと述べていることは参考になりそうです。

【小学校跡地を「割安」売却でマンションに】

 小学校跡地のマンションという前例として、中野区の東中野小学校跡地のマンションがあります。こちらは東京建物と三菱地所の共同開発ということですが、ブログ記事の取材に答えて会社側は「区からの土地取得価格が容積率100%当たり坪73万円と割安だった」と述べています。

 相対的に安値で取引されたと考えられる今回の杉一小の土地が、10年後、東中野のようにマンション開発に利用される可能性はきわめて高いと考えます。即ち、河北病院移転に始まったこの計画が、究極、不動産会社、建設会社、金融機関などの都心の大企業のもうけのために阿佐ヶ谷の一等地を安く売り渡したという結果に終わるということです。

【仮換地後の土地を売却できる】 

 ところで注意しなければならないのは、仮換地後、登記上は変更されなくても、欅興産は杉一の土地を実質的に売ることができるようになったということです。区役所も知らない間に売られてしまった等ということがないか心配です。

 もとの持ち主の了解なしに売れば違法だという判例もあるそうです。特に、不動産ディベロッパーに売却されるようなことがないようにしていただきたい。仮に欅興産が売却するなどというときには、当然区には情報が入るものと思いますが、大丈夫でしょうか。確認します。(Q9)

(3)防災

【軟弱地盤の河北病院用地に避難所?】

 最後に防災です。すでに複数の議員から指摘があったので簡単にしますが、杉一小の移転先である河北病院の地質は私も心配です。

 J-SHISのハザードカルテによると、河北病院は谷底低地、軟弱地盤、地盤増幅率は1.65で揺れやすさは全国の上位7%以内でDランク。それに対して現在の杉一は、ローム台地、地盤増幅率1.45、揺れやすさは全国の上位9%以内でCランク。震災救援所としてどちらが適切かは明らかです。

 また、水害ハザードマップでも河北病院は浸水域です。両者は標高で3~4m違うので、大雨のときには杉一から河北へ向かって道路を雨水が滝のように流れます。他の議員に対して、河北の土地は水害の避難所として問題ないかのような答弁がありましたが、あの水量を見たら、ちょっと信じられないことです。

 震災救援所として、水害避難所として、果たして河北病院の場所に移転した杉一小は利用が可能なのでしょうか。また、内閣府の避難所運営ガイドラインには避難所の掲示が求められているが、水害避難所、震災救援所の掲示はなされるのでしょうか。(Q10

 そうでなくても、阿佐ヶ谷北口は木密地域と言われます。ただでも避難所の受け入れ人数が足りない地域です。先ほど述べたように駅前に巨大なマンションでもできて数百人からもしかして1000人もの人口が増えたら防災上も大変な問題になりかねません。将来にわたる安全なまちづくりの観点からも、杉一小の病院用地への移転は間違っていると言わざるをえません。

 本計画は立ち止まって抜本的に見直すべきと改めて指摘して質問を終わります。

注:後日、以下の記述を専門家からご教示いただきました。「それぞれの根拠法により都市計画上必要な規制が行われるので、開発許可については適用除外とされている」(「都市計画法規概説」p.75,荒 秀,小高 剛編,信山社出版,1998)

佐々木千夏議員の発言取り下げについて(2019年9月24日議会運営委員会における発言)

 2019年9月24日杉並区議会議会運営委員会理事会及び議会運営委員会が相次いで開催され、佐々木千夏議員の発言取り下げを審議する本会議の開催が決定されました(26日本会議が開催され、発言取り下げを認めるとともに、井口かづ子議長が異例の議長コメントを述べました)。

 私は、理事会を傍聴(理事会の傍聴は議員のみ)し、議員運営委員会で委員外議員として発言しました。以下は発言の要旨(発言メモ)です。

 

〇9月12日の本会議一般質問における佐々木議員の発言は、全編これヘイトスピーチといってもいい内容のもので、杉並区議会の品位を傷つけるだけでなく、そもそも公の場であってはならない発言であり、決して容認されるべきものではない。

〇具体的には、朝鮮通信使の問題、また、日韓併合創氏改名は朝鮮から頼まれて仕方なくやったことであるとか、日本の植民地支配という歴史的事実をまっこう否定するものであって決して許容できるものではない。

〇さらに、なんら具体的事例を示すことなく「在日朝鮮人から子どもがいじめを受けた」と一方的に誹謗中傷し「やられっぱなし、殴られっぱなし、これでいいのか」とあおる発言もあった。

〇これらすべてが特定の民族に対するヘイトスピーチであり、とりようによってはヘイトクライムの扇動ともなる。人種差別、人権侵害であり、区議会として、これを許容することは断じてできない。

〇今般、佐々木議員が自ら削除を申し出たと報告があった。削除について異存はなく、本会議の開催は必要なものと考える。しかし、この問題はこれで終わりではない。先ほど委員の皆さんからも発言があったが、私自身も、まだ途中経過にすぎないという認識である。

〇佐々木議員の真摯な対応をさらに求めるとともに、区民の前に陳謝すべきと指摘する。

 また、杉並区議会として、ヘイトスピーチを断じて許さない、認めないという明確な姿勢を示す必要がある。
 そのため、個々の議員、会派としても、また、議会全体としてもさらなる対応が求められていることを指摘する。

使用料改定、阿佐ヶ谷開発…区政にとって公共とはなにか(2019年10月11日決算意見開陳)

 2019年10月11日、杉並区議会決算特別委員会で決算に対する反対意見を述べました。今回の決算審議でのポイントは「公共性」だと思って追及してきました。阿佐ヶ谷の開発問題では区が行うのに「個人共同施行」と、あたかもプライベートな事業であるかのように、情報が公開されません。河北病院の土壌汚染調査はその最たるものです。ひどいなあと思っているところに公表された「施設使用料見直し案」では公共施設の意味を見失い、民間の貸し会議室と変わらないかのような認識です。

 税金で行われる事業は公正性、公平性、公共性が担保される方法で行わなくてはならないのは、いうまでもないことですが、杉並区はその認識すら危うくなり、区長がやるといえば何でもアリになっているように思います。

 最後にヘイトスピーチについて述べました。本会議でとんでもないヘイトスピーチを行った佐々木千夏議員は、いまだに謝罪を行っていません。問題はまだ終わっていないのです。区議会議員全員が責任を負っていると思います。(議会運営委員会における発言はこちら

(以下発言原稿です。実際の発言とは異なる箇所があります)

 (1)当該年度の区政について

 杉並わくわく会議として、決算に対する意見を述べます。当該2018年度を振り返ると、あんさんぶる荻窪荻窪税務署の財産交換が行われ、高円寺小中一貫校においては、引き続き工事が進められ、さらに、事業者選定など手続きをめぐって問題が指摘されてきた上井草保育園が民営化され、他にも杉並保育園などの民営化の手続きが進められた年でした。住民、利用者の強い批判や反対の声を無視し、強行されてきた事業が当該年度継続され、また完遂されたというわけです。阿佐ヶ谷開発、西荻窪の補助132号線拡幅計画が本格的な準備段階に入り、地域の反対の声が募ってきた年でもあります。

 8月に発表された区立施設再編整備計画第二次プランをめぐっては、区内各地で、児童館の廃止を中心として、区民から多くの異論が出されたにもかかわらず、当初の案どおり、9つの児童館、3つのゆうゆう館の廃止を含む計画が決定されました。年度末には下井草児童館が廃止され、来春にはいっぺんに5つもの児童館の廃止が計画されています。

 また、前年度中に決定された保育料の値上げ、介護保険料、国民健康保険料の値上げと、いっそうの区民負担がのしかかった年でもあります。

 このような区政のあり方は容認できるものではなく、認定第1号平成30年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか4件の認定に対しては反対とします。
(2)施設使用料

 さて、質疑に関連して述べます。ここでは「公共性」がキーワードとなります。最初に施設使用料の見直しについてです。

【施設建設費を使用料に転嫁】

 論点の1つ目は、今回の最も大きな変更、施設建設費を使用料算出のベースに算入することです。

 これまで杉並区は施設建設費を使用料に転嫁することはせず、前回の大幅な見直し時でさえも

「施設に係るすべての経費を受益者負担とすることは、かえって公平性を欠くことになりかねません。このため、区では間接的人件費や減価償却費などは、算定経費には加えていないものです」

と述べています。転嫁するのはランニングコストのみという考え方をとってきました。ところが、今回施設建設費を算入するという大きな変更を行いました。その理由を質問しましたが、明確な答弁はありませんでした。

【税金の二重取り】

 公共施設は区民の税金でつくられるものです。つまり、利用者はすでに建設費を払っているのであり、使用料にこれを算入するのは税金の二重取りといえます。質疑のなかで紹介しましたが、ある自治体はこのように述べています。基本的な考え方ですから、もう一度読み上げます。

「公の施設は住民の福祉を増進する目的をもって設置された市民全体の財産であり、設置目的に合致する限り誰でも利用できる施設であるため、減価償却費は『資産の取得に要する費用』として公費で負担する」

 これは、従前の杉並区の考え方とも一致しています。前回の使用料見直し時には、公の施設は「誰もが利用することができ、受益者となりうるものであり、公費負担とする」と述べています。

 今回の案では負担率50%とされた集会施設等は現行より安くなるところも多いですが、負担率はいくらでも変更でき、今後の大幅値上げも懸念されます。前回の見直し時の考え方に立ち戻り、建設費を算定から除外するよう求めます。

【「使わない人に不公平」?】 

 論点の2つ目は、区が一貫して値上げの根拠としてあげる「使う人と使わない人の不公平」の問題です。

 いま述べたように、公共施設とは「誰もが利用することができ受益者となりうる」ことが前提です。今日まで使ったことのない人でも明日は使うかもしれない。図書館だろうが体育館だろうが、集会所だろうが、いつでも門戸は開かれている。それが公共施設です。区もそう考えていたはずです。まさか、区民の中に使う人と使わない人という画然とした線引きがあるとでも考えているのでしょうか。

【「特定の個人のため」?】

 そもそも区は何のために集会施設や体育館を建てているのでしょうか。それは区が今回述べているような「特定の個人の生活を快適にするため」ではありません。もちろん、公共施設の目的に区民個々の生活を豊かなものにすることが含まれてはいます。しかし誰にでも開かれている以上、「特定の個人」のためと表記するのは大きな間違いです。変更を求めます。また大事なのは、そのことが単に個人の生活を豊かにするのみでなく、地域社会を豊かにすることに直結しているということです。

【公共施設は社会を豊かにする】

 趣味やスポーツ、勉強などの活動は、それ自体、個人のみならず社会を豊かにすることでもありますし、グループで集れば、地域のつながりを形成することになります。活動の中で気づいたこと、学んだことを行政に提言したり、ボランティア活動などにつながっていけば、具体的に地域社会を改善していくことにもつながります。元来、社会教育活動とはこのような住民自治の仕掛けとして設計されているものであり、そのために教育文化施設、地域施設が各地にもうけられてきたのではないでしょうか。

 ところが、今回の見直しにおける区の主張は、個人が民間サービスのかわりに公共サービスを利用しているのだから、民間サービスと同じように、整備費用まで負担すべきと論じていることと同じです。そこには社会的な意義づけと、それだからこそ求められる公共の役割が抜け落ちています。

 今回の見直し案を読むと、杉並区の公共性に関する認識が怪しくなっているのではと心配になります。税金でまかなわれる公の事業は対価を得て販売する商品ではないし、区長は中小企業のオーナー社長ではありません。公務員はいうまでもなく単なる区長の部下ではなく全体の奉仕者です。当たり前のことですが、その当たり前にいま一度立ち戻って考えていただくよう求めます。

 (3)阿佐ヶ谷開発

 質疑では、阿佐ヶ谷の開発問題について時間を割きました。これもまた公共とはなにかを深く考えさせられる問題です。

【公共性を無視した「個人共同施行」】

 阿佐ヶ谷の問題については、これまで定例会のたび毎回のように問題点を追及してきました。屋敷林が伐採されてしまうことも、阿佐ヶ谷の人間にとってはつらいことですし、杉一小がなぜ水はけの悪い、土壌汚染の可能性がある場所に移転しなければならないのか、理不尽に思っている卒業生やその保護者、関係者も多いのです。

 なぜこのような理不尽な計画がなされるのかといえば、公共性を無視した手法がまかり通っているからです。区役所が関与するのに、あえて個人共同施行として行い、換地情報をはじめとして、重要情報を区民に公開しようとしません。また、制度の盲点を突くように、区長が申請して自身で認可するという一人芝居は、違法でないとはいえ、区民に説明できるものではありません。

【不動産鑑定評価も区議会の審査もしない】

 仮に杉一小の土地と河北病院用地が売買されるのであれば、不動産鑑定評価が行われ、区の財産価格審議会で審議され、最終的に区議会で審議して議決しなければなりません。ところが、土地区画整理事業というブラックボックスの中ですべてが行われるため、不動産鑑定すらもおこなわれず、いわんや区議会は蚊帳の外。すべてが終わってから事後承認をするしかないのです。公共の土地の権利移転でありながら、公正さを担保する仕組みが見事に全部外されています。

 この事業そのものの公共性自体がきわめて低く、そのことは公共減歩4%という数字に表れていると一般質問で指摘しました。河北病院と地主さんに対する利益供与と指摘してきましたが、いずれ杉一小学校の移転後行われる、同用地をタネ地とする開発事業に至れば、地元の有力者どころではなく、大手不動産ディベロッパー、大手金融機関が顔をあらわすことでしょう。駅前の一等地で140年以上地域の人たちに愛されてきた、地域のシンボルであった小学校を彼らの利益のために差し出すことの引き換えに区民は何を得られるのでしょうか。

【河北病院の土壌汚染は不明のまま】

  河北病院用地の土壌汚染調査についても質問しました。区は河北病院が移転するまで土壌汚染調査を行わないといっています。だとすれば、この土地は汚染のあるものとして扱うことが不動産鑑定の常識であることは何度も指摘してきました。

 副区長の言葉を借りれば「掘ってみなくちゃわからない」のにもかかわらず、換地計画において汚染によるマイナス評価はせずに、交換価値を計算する、すなわち普通地として扱うというのが区のこれまでの一貫した答弁です。これが地主さん及び地上権をもっている河北病院に対する優遇でなくて何なのでしょう。

 河北病院の土壌汚染問題について、区長は「風評被害」だなどと的はずれなことを言っていましたが、河北病院くらいの規模の大きな病院であれば、土壌汚染対策法及び東京都環境確保条例に定められた特定施設等に該当することから、汚染がある前提で関係者が行動するのは当然だと言っているだけです。仮にも小学校を建てようなどという者がその程度の心得もないとすればとんでもなく危険なことです。

 病院の都合で移転をするのですから、病院側からすすんで情報公開を徹底し、汚染の有無をふくめて逐次状況を明らかにして、区民の信頼を得るように努めるのは当然のことですが、現在やっていることは正反対です。わかっているはずの地歴を公開せず、また、サンプリングもいっさい行わない。区の事業パートナーとしての姿勢が問われます。まして小学校の移転予定地です。区は最低限、地歴調査、有害物質の使用履歴情報を求めて、区民に提供すべきです。

【汚染地のロンダリング 

 土壌汚染を解明しないまま、普通地として換地計画を進めるならば、それはまさに豊洲市場田町駅前で行われたのと同じ手法、公共用地をからめた「汚染地のロンダリング」にほかならないと指摘します。

 阿佐ヶ谷の計画については、まちの人たちが次第に問題のありかに気づきはじめ、全区的な問題になりつつあります。あらためて、計画の全面的な見直しを求めるものです。

 (4)保育園

 保育園についても質疑しました。

【「民営化しなければ財政破綻」はウソ】

 区長は議会での民営化に反対する意見にたいして、たびたび、民営化を否定すれば財政破綻する、と発言していますが、本当にそうなのかを数字で確認しました。

 質疑では、区立保育園の民営化1園あたりの行革効果は1億円弱という外部監査の報告を確認しました。当該年度実績で約260億円の保育経費に対し、1億円では、焼け石に水とまでは言いませんが、全体に大きな影響を与える金額とはいえません。民営化しなければ財政破綻などという脅し文句を軽々しく使うべきではないと指摘します。民営化にはもっと別の意図があるだろうと思いますが、時間の関係で、また別の機会に譲ります。

 【私立保育園への加算金】

 もうひとつは、私立保育園に対する区独自の加算金についてです。やはり外部監査報告によれば、区独自加算は私立認可保育園の運営費の35~40%を占めており、これをやめればほとんどの私立園は経営が立ち行かなくなる、と指摘されています。私はこの加算金については減らすべきではない、むしろ、拡大すべきであると考えています。

 しかし、同じ外部監査の意見の中で独自加算について見直しを求められたことから、区は見直しを行っているとのことです。多くの園では加算金が減額になる可能性が高く、経営への影響を心配する声も聞きます。

 区は民間にできることは民間に、とこれまで民営化を積極的に進めてきましたし、また膨大な数の私立保育園を新設してきました。がしかし、それらの園は国・都・区の負担する公定価格分の公費はもちろんですが、さらに区の独自加算もなければ経営が立ちゆかないのです。保育こそは本質的に公共的な分野であることを改めて痛感します。見直しにおいては慎重に行うよう求めます。

 (5)産業、西荻窪補助132号線

【消費税インボイス制度】

 産業に関してひとこと述べます。質疑では、消費税のインボイス制度についてうかがいました。産業部門がこの問題にほとんど関心なく、危機感を持っていないことは残念ですし、そうでなくても、消費税の引き上げにより商売が厳しくなるなか、区内の零細事業者、フリーランスの皆さんの営業を今後守れるのだろうかと心配になります。今後の対策強化を求めます。

補助金不正事件】

 商店街の関連では、西荻窪商店会連合会の補助金不正事件の解明も急務です。領収証の偽造は論外ですが、5年前にも都から指摘を受けていた協賛金の取扱いについて、翌年以降も問題のある取り扱いがされていたことは、区の指導責任であり、知らなかったですませられることではありません。ことの露見からおよそ半年がたちました。今後すみやかに事実を解明し、責任の所在を明らかにするよう求めます。

 【補助132号線】

 このほか区政の課題はあまたありますが、特に、事業認可が迫る西荻窪の補助132号線問題は問題です。再開発との関連も指摘されているところです。まちづくり全体のなかで必要性の有無から検討しなおす必要があることを指摘します。

 (6)ヘイトスピーチについて

 最後にやはりひとこと述べておかなくてはならないのは、ヘイトスピーチについてです。

 委員会でも他の委員からヘイトスピーチについての質疑がありましたが、杉並区議会の本会議において、日本に居住する外国籍の方々に対するヘイトスピーチが行われたことは許されることではありません。

 本件については、すでに議会運営委員会の席上、委員外議員として意見を述べましたので、繰り返しませんが、朝鮮通信使に対する侮辱、日本の植民地支配などの歴史的事実の否定、なんの根拠もなく在日の方々を犯罪者扱いするような発言は典型的なヘイトスピーチです。

 私は超党派の議員有志の一員として、当該議員に対して発言の取り下げと謝罪を申し入れましたが、今日現在、ご本人からは回答をいただいていません。真摯な対応を求めるものです。 

 民族差別をはじめとするあらゆる人権侵害を許さないという点では、議員の皆さん、また区役所の皆さんとは思いを同じくしているものと思います。とりわけ、今回の井口議長の迅速な対応には心よりの感謝を表明するものです。

今後、杉並区議会において、また杉並区政において、ヘイトスピーチ、人権侵害を二度と起こさないと強く決意するものです。

  以上意見といたします。

 終わりにあたり、今回の決算審議にあたり、多くの資料を調整し、ご教示くださり、また数々の質問に根気よく答えてくださった職員の皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。