わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

阿佐ヶ谷再開発に事業者が着手!杉並にタワマンはいらない(2020年11月19日一般質問しました)

 2020年11月19日杉並区議会第4回定例会で一般質問しました。阿佐ヶ谷再開発計画(区画整理事業)は、10月に東京都と協議(一般でいう許可)が整ったことにより、施行者は事業着手しました。今回の質問は、

○屋敷林のみどりをどうやって保全するか。

○そのためには設計コンペが必要ではないか。

また、

○阿佐ヶ谷だけでなく、杉並区の各駅周辺で今後心配される超高層マンション建設など「市街地再開発事業」について指摘するとともに対策を求めました。

 杉並区は、「病院の設計はまだ決まっていない」といいながら、これ以上の樹木の保全はできないといい、「A街区(杉一小用地等)に何が建つかは白紙」といいながら「計画ずみのことなので、アイディアコンペは行わない」というなど、答弁に矛盾が目立ちます。

 多分「決まってない」とか「白紙」というのがウソなのでしょう。

 なお、今議会初日から、田中良区長は体調不良により1週間欠席、区長とのやりとりができなかったことは残念です。 

(以下質問原稿です。実際の発言とは異なる部分があります)

1.阿佐ヶ谷駅北東地区再開発について

 一般質問をします。第一に阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発についてうかがいます。

 10月5日に「東京における自然の保護と回復に関する条例」についての協議が整い、東京都が計画に同意しました。区画整理事業は、すでに昨年杉並区長により施行認可されており、これにより、事業着手が可能となりました。

【区民を無視した事業、いよいよ着手】

 けやき屋敷の伐採、杉一小の軟弱地盤、汚染地への移転、さらに杉一小用地の民間転用等に対し、多くの疑問と危惧の声が上がっているにもかかわらず、それらの声を全く無視して、計画案を微塵も修正することなくその実現に邁進する杉並区の在り方は、住民自治をないがしろにしたものと指摘します。

  東京都の同意後、間髪いれず、予定地では作業が始まり、ボーリング作業などが見られますが、これから文化財および土壌汚染の地歴調査が行われるものときいています。

 そこでまずうかがいますが、文化財調査はいつから始まりどのように進行するか。当該地域では、河北病院分院建設時の2002年、すでに阿佐谷本村遺跡が発掘されていますが、今回の開発対象地区においても文化財が見つかった場合、本格的に発掘を行う「本掘」をするか否かの判断はいつごろとなる見通しでしょうか。仮に本掘する場合にはどの程度の期間を要するでしょうか。説明を求めます。また、阿佐谷本村遺跡の概要についても説明を求めます。(Q1-1、2)

【緑地保全「決着ついた問題」は間違い】

 さて、問題の森の保全についてうかがいます。先の決算特別委員会での吉田副区長の「緑地の保全はすでに決着のついた問題」という発言については同委員会の意見開陳でも触れましたが、この認識は全く間違いだということを再度指摘します。これが区役所共通の認識だと困った事になります。

【東京都の同意は条件つき】

 というのは、東京都は同意にあたって11項目の特記事項を上げ、「希少動植物の保護について、協議時点では事業計画の詳細が確定していない部分がある」ため、今後、さらに東京都と協議することや、モニタリング計画の実施等を求めています。また、協議書に記載した「緑化の将来予定」を実現すること及び残留緑地の管理について、新築建物の事業者に働きかけ、東京都に計画提出、報告することも求められており、都は、これら多数の課題を残した、条件つきの同意という認識です。「決着がついた問題」どころか、これからの工事にあたって、また事後も、区は共同施行者とともに、東京都が求める条件を誠実に履行しなければなりません。

 これからが森の保全の本番であって、事業着手はあくまでそのスタートラインだとの認識にたち、気を引き締めてあたらなければならないのです。

【いのちある樹木を1本でも多く残すために】

 けやき屋敷の大径木127本中62本を残置または移植する計画であることが明らかにされました。しかし、残り半分以上の大径木については伐採されてしまうということです。いったいそれらはなぜ残せないのでしょうか。

 決算特別委員会において、私は「けやき屋敷の所有者は、一本でも多くの木を残す努力されているときく。いのちある樹木なのだから、少しでも多くの木に生き延びてもらうため、区も事業者と協力して精一杯努力をしていただきたい」と要望しました。以下、その観点から考えてみます。

【健全な木も「移植不適」?】

 都に提出した協議書のリストを見ると、移植不適とされた樹木の多くは外観の診断では、移植可能なAまたはB1ランクと診断されています。病害虫や空洞があるものを除外しても40本近くは健全な状態ではないかと思われます。それなのになぜ、残せないのか。

 そこでうかがいますが、移植する樹木はどのような診断項目により決定したのでしょうか。中に、根鉢の確保困難というものがありますが、確保できないのはどういう理由があるのでしょうか。(Q1-3)

【杉一小側の2本のシラカシ

 移植不適とされた木の中でも、木そのものが健全なものは、移植せず現在地に残置すれば伐採しないですむと考えますがいかがか。

 なかでも、杉一小側(緑地1号)のNo.116、117のシラカシですが、評価はAランクとB1ランクであり、現在地に残置すれば問題ありません。問題は、予定道路にかかっていることですが、かかっている部分はわずかです。これらを残置することは可能ではないかと思われますがいかがか。

f:id:waku2:20201121130244j:plain


【密集したケヤキは設計変更で残置を】

 また、現在のけやき屋敷北東部にNo.19~23の密集したケヤキがありますが、伐採される計画です。敷地外からうっそうとした緑が見え、森のボリュームを感じさせる部分だと思います。これらは樹木相互が接近しすぎていることが移植不適の理由と考えられますが、病害虫や空洞はなく、診断結果はすべてAランクです。移植せず現在地に残せば生き残れる木です。

 病院の建築案の図面を見ると、この部分が車両の入口になっているため除却するようです。病院の設計はまだ定まっていないとのことですから、車両の入口を変更することでこれらの木は4~5本は残せると考えられますが、いかがか、うかがいます。(Q1-4)

 樹木とそのあしもとにある土壌、400年以上続いた生態系を一体で保全する意味からも、現在地での残置を進めるべきです。

【河北病院分院部分を緑地に】 

 更に、現在の分院の部分ですが、病院の建築案では駐車場とする計画のようです。建物を建てないのであれば、この部分は新たに木を植えて新しい森を創出すべきではないでしょうか。なお、東京都は「開発許可の手引き」で新たに木を植える場合は在来種を選択するように求めています。神明宮の森とけやき屋敷の間にある分院部分に在来種を新植してみどりのつながりをつくる、あるいは、駐車場にする場合でも樹木を多く植えて「森の中の駐車場」として設計するよう、検討を求めますがいかがかうかがいます。(Q1-5)

【区が緑地を賃貸借して管理すべき】

 ところで、地区計画緑地は病院の敷地に入るのか、また誰が管理するのかについて、以前質問した際には、決まっていないとのことでした。

 病院敷地とするなら施行協定書に従い河北病院が整備を行い、竣工後の管理も当然病院の責任において行うことになります。一方、緑地に関しては区が管理するほうが適切という考え方もありえます。緑地部分は病院敷地とするのではなく、区が土地所有者の欅興産から賃貸借して保全するほうがより適切な管理が行えるのではないかとも思えます。もちろんその場合、病院には別に25%の緑地を確保していただくことになりますが、このような手法は可能と考えますがいかがかうかがいます。(Q1-6)

【コンペで知恵を集めて「森の中の病院」に】

 建物の設計を優先し、邪魔にならない部分だけ植栽をするというような考え方ではなく、都条例でも求められているように樹木と土壌をできるだけ現在のまま残しつつ病院を建てるには知恵を集める必要があります。

 ツミ保護の点からも、現在の9階建て案では、十分な環境配慮がなされるとは考えられません。高さを抑えるための工夫が必要です。そのために、病院の設計案については区も協力して公開コンペを行うことを提案しますがいかがか。(Q1-7)

 すぐれた建築は、病院にとってもステイタスであり財産となります。

【杉一小用地の利用方法もコンペで】

 さらに、設計案だけでなく、何が建つか白紙とされている杉一小用地も含めたA~C街区全体にわたる利用方法についてもアイディアコンペを行うことが望ましいと考えますがいかがか。所見をうかがいます。(Q1-8)

 現在の杉一小敷地を中心とするA街区は、換地後も杉並区が4分の1の土地を所有するものであり、たとえば杉一小の教室など学校機能の一部をA街区に置く、あるいは、民間所有分を生かして病院機能の一部をA街区に配置することで、けやき屋敷における病院の容積を減らし高さを抑えることもできます。

 こうした柔軟な発想を公募することで、権利者だけの一方的な決定によるまちづくりではなく、区民や専門家の知恵を集め、阿佐ヶ谷のまちのありかたを皆で考える契機ともなります。それこそが住民自治ではないでしょうか。

【「民間の事業」?いえいえ】

 こういうことをいうと、民間の事業であり、外部から口をはさむべきではないとの声が聞こえてきそうです。もちろん、河北病院が現在地で建て替えを行うだけならば、私も、また多くの区民もあれこれ意見をいうことはなかったでしょう。しかし、建築規制の緩和を受け、さらに杉一小をまきこみ、学校の配置の変更、そして駅前の一等地の再開発にまで発展してしまった以上、プライベートセクターの話ですむものではありません。

規制緩和区画整理の恩恵を受ける事業者】

 この間も指摘してきたように、容積率の300%への引き上げ、街並み誘導型地区計画の導入等の規制緩和によりはじめて、河北病院は、必要とする32000平米以上の建物が建てられるようになりました。また、土地所有者にとって懸案だったと思われる、病院跡地の処分については、杉一小用地にすることで解決するなど、この事業は規制緩和区画整理による敷地の入れ替えという公的制度の利用なしには成立しなかったものであることは間違いありません。

【区は億単位の負担の上に人件費支出】

 また、民間の計画といいながら、区の負担は多大なものです。

 事務事業評価の数字だけみても、人件費としては本事業には毎年1.5~1.6人前後の人件費1300~1400万円が投入されており、ばかにならない金額です。実際には1.5人どころではない大勢の方がこの事業のために動いており、管理職だけでも兼任とはいえ4名の方が直接かかわっています。

 この間の様々な手続きを見ていると、区の担当者の労力は大変なものです。都条例の協議も区職員が交渉を行ってきました。

 事業地に立てられた看板には「区画整理事業の事務所にご用の方へ」とありますが、施行者会の事務所ではなく区役所の電話と職員名が書かれています。施行者会の事務所は欅興産の事務所に置くとされているのに、区役所の職員を便宜的に電話番に使われたのではたまりません。是正すべきです。

 その上、協定により、事業費は基本的にいったん杉並区が立て替えたうえで最終的に保留地売却により精算となっています。そのため、区の立替金は2017~2019年の3年間ですでに約1億円にのぼり、さらに今年度は単年度で1億5000万円を出費する予定です。

【実態は公共施行。私たちも口を出す】

 つまり、個人施行の区画整理事業にもかかわらず、まるで公共施行のように、区職員が動き、窓口も区が引き受け、区の資金を用いて事業を行っているわけで、これでも民間の事業なのだから口を出すなというのでしょうか。

 実態的には限りなく公共施行に近いのであって、であるからには、我々区民、区議会は、この区画整理事業に対して、また、土地利用計画について、特に緑地の保全や施設の利用計画について、おおいに口を出す権利があるというものではないでしょうか。

 また、病院にとって、ひいては土地所有者にとっても、多くの知恵を集めて計画を練ることは、先々の資産評価にも好影響を与え、メリットがあると考えられます。区民参加、一般公開によるコンペの必要性と、その価値について前向きに検討するよう求めるものです。

【工事説明は町会長2人だけ?】

 次に、杉一小敷地内の工事用通路について述べます。

 最近、この通路についての説明が、杉一小PTAの実行委員会の席で行われたとうかがいました。しかし、会議に参加している保護者は役員とクラス委員などごく少数で、大多数の保護者には伝わっていません。また、町会に関しては、お二人の町会長にだけ説明が行われたと聞き驚きました。お二人以外の住民にはいまだに一切説明がなく、これで終わりなら、あんまりではないでしょうか。

【世尊院前の交差点が危険に】

 世尊院前の交差点は、阿佐谷北の住民なら誰もが毎日通る場所といっても過言ではありません。小学校の登下校はもちろん、近隣の幼稚園の登園退園、一般の車両、歩行者の通行すべてに影響します。

 そういう場所で、来年早々にも現地の民間建物の解体が始まり、給食室の設置、解体、通路の工事と、それだけでも1年以上続く連続的な工事です。

 そして、通路の使用が始まれば、毎日工事車両が通り、しかも、中杉通りからこの通路への車両進入の危険性はもちろん、通路からつながる公道を一部逆走する部分も生じるため、通行する人は安全の確保に神経をとがらせなくてはなりません。その状態がしかも、計画では2028年まで長い間続く予定です。

【保護者および地域住民への説明会を求める】 

 これらのことを小学校の保護者はもちろん、地域住民にきちんと説明もないまま、見切り発車で工事に入ることは許されません。

 杉一小保護者および地域に対して早急に公開の説明会を行い、通路工事および通路利用の計画とそれに伴う危険について説明するよう求めますがいかがかうかがいます。(Q1-9)

【給食室の借地料は区が負担?】

 また、費用の問題があります。先の補正予算は設計費と工事費の一部ということでしたが、来年度予算に計上予定の工事用通路の予算は何と何を含むのか。杉一小の北側は擁壁となっているが、その部分の施行はどのようにするのか。通路と学校敷地の仕切りはどうなるのか。それらのおおむねの金額はどのように予定しているのかうかがいます。また、プレハブのために民間から土地を借りるわけですが、その借地料は区の負担となるのでしょうか。(Q1-10)

【通路を必要とするのは病院だけ】

 また、現在けやき公園で行われている阿佐谷地域区民センターの工事では青梅街道から馬橋通りを経る搬入路が使われていることを考えると、先々予定されている杉一小の新築工事は、こちらのルートを使えば中杉通りから道路を逆走する必要もなくむしろスムーズです。杉一小敷地内の通路は使わずにすみます。通路を必要とするのは河北病院の工事だけであって、杉一小敷地を使う口実として、杉一小の工事にも使うといっているにすぎないのではないでしょうか。

【通路工事、なぜ区が費用負担?】

 そう考えると、病院と区の負担分が折半というのは受け入れがたいものです。

 そもそも小学校の敷地の中を工事用車両が通行することじたいが考えられないことですし、給食室の解体・移設は学校として全く必要ない無駄な工事であるばかりか、むしろ工事騒音等学校には迷惑ばかりです。地域、保護者に知らせないうちに強引に進めるならば必ず禍根を残すものと指摘します。

2.多心型まちづくりについて

 第二に、多心型まちづくりについてうかがいます。多心型まちづくりとはあまり一般的な言葉ではないように思いますが、区の計画では重要なワードとなっており、阿佐ヶ谷の再開発もその一環で深い関係があります。まず、多心型まちづくりとはなにか、また、区の行政計画の中ではどのように位置づけられているか、説明を求めます。(Q2-1)

 かつて80年代ころから東京都の行政計画の中で多心型都市構造が唱えられ、新宿、渋谷、池袋、そして立川など、いくつかの「心」となるまちを中心としたまちづくりが提唱されました。しかし、今世紀に入るころから、東京都の計画は都内だけでなくひろく東京圏を意識しつつ、地域では各駅周辺など拠点集約型というものに変わったようです。

【各地で問題となっている「市街地再開発事業」】 

 いま都内各地で行われている再開発手法に市街地再開発事業があります。たとえば、以前から紹介している田町の区有地を活用した区画整理事業もその上に市街地再開発をかぶせることで大規模なビル建設に至っていますし、板橋の大山ハッピーロード商店街を分断する補助26号線沿線開発や、葛飾区立石の駅前など枚挙にいとまがありません。どこも、市街地再開発の手法をつかって超高層ビルタワーマンション建設が進められて地域に問題を引き起こしています。例えば千代田区の通称日テレ通りでは、近隣の私学3校から超高層ビルに反対する要望書が提出されたとつい昨日報道されたところです。

JR中央線駅前開発で100mのタワマンが!】 

 先日、荻窪まちづくり会議の会合で、区側から、駅周辺まちづくりの一例として、市街地再開発事業の紹介がありました。国分寺武蔵小金井など、駅周辺開発によりタワマンがたてられているという話をきいて、検索してみると、武蔵小金井では、野村不動産の26階と29階、高さ100mのツインタワー、国分寺では、住友不動産による35階と36階、高さ135mのツインタワーと凄まじいことになっていました。

 まちづくり会議での区のお話では、杉並区がそういった手法に追随するかは別、とのことでちょっとほっとしましたが、ここで市街地再開発についての説明を求めます。市街地再開発事業とはどういうものか。また、第一種市街地再開発事業においては、権利変換が行われますが、どういう仕組みか説明してください。(Q2-2)

【駅周辺タワマン販売でディベロッパーが巨額利益】

 多くの事例で、道路や公園などの公共施設の設置とひきかえに規制を緩和してもらい、かつ、国や自治体からの補助金を得て建てた高層ビルをマンションとして販売することでディベロッパーは巨額の利益を得ています。ビルの中には商業施設等とともに、公共の集会所などの施設が入ることで、さらに資金的にも安定する上に、多くの事案では権利変換の仕組みのなかで、公共施設の負担を割高にして、その分、販売用マンションの仕入れ減価を割安にするといったことが普通に行われています。公共用地が種地となる場合が多く、例えばお隣の中野駅周辺は、駅南北でいくつもの市街地再開発事業が認可されており、100m以上の超高層ビル、マンションが計画されています。

【地権者と公共を食いものにする錬金術

 つまりは、地域の地権者と公共の持ち分を食い物にすることで大手ディベロッパーがタワマン販売で手っ取り早くもうける、まるで錬金術のようなまちづくりです。長期的なまちの発展、都市計画を考えるのではなく、むしろまちを壊す、目先の金目当ての投資を国ぐるみで応援しているということです。

【杉並はディベロッパー垂涎のフロンティア】 

 中央線では、国分寺武蔵小金井、また、三鷹にも再開発の波が押し寄せており、吉祥寺はもとからの繁華街。また東を見れば中野、そのはざまにある杉並区のJR4駅は、まさにディベロッパー垂涎の不動産開発のフロンティアに見えているのではないでしょうか。

 4駅はそれぞれ開発の火種を抱えています。阿佐ヶ谷ではさきほどから述べてきた北東地区開発により、杉一小用地を利用した高層ビル建設が心配されます。また、高円寺では、都市計画道路建設に伴うまちの改変が心配です。荻窪はいうまでもなく、区が「都市再生事業」と特別に位置づけており、いずれは大規模な再開発が行われることでしょう。

西荻窪では地上げの動きも】

 西荻窪は、補助132号線の建設にともなう駅周辺の開発が懸念されます。昨年の春には、市街地再開発のための準備組合をつくる動きがあることが表沙汰になりました。当時暴露された図面には南口の旧来の商店街を撤去して高層ビルを建てる構想が示されていました。その後、この動きは水面下にもぐっているようですが、地上げが進んでいるとの情報もあります。

荻窪西荻窪で、市街地再開発事業を行うか?】 

 再開発一般が悪いわけではありません。必要な再開発もあるでしょう。問題は、まちを壊す、まちにそぐわない、たとえばタワマンが林立するような再開発です。

 区は杉並のまちが不動産ディベロッパーの草刈り場にならないよう、良好な住宅都市を実現するため、まちの課題を解決し、まちの個性がより生かされるための再開発をめざすべきです。

 たとえば荻窪の課題を例にとると、南北交通が不便であるという声が長年にわたってきかれますが、いっこうに解決しません。その一方、南口の良好な住宅地を高層化することなく、安全なまちづくりをしてほしいとの要望も根強くあります。

 そこで、特に、区長の年来の公約である荻窪西荻窪駅周辺まちづくりについて、まちの課題はどういったことがあると認識しているか、また、市街地再開発事業を取り入れる可能性があるか、答弁を求めます。(Q2-3)

【高さ制限などまちづくりルールが必要】

 中央線の東西から再開発の圧力が迫る中、他地区の経験に学び、杉並区の良好な住宅都市としてのありようを守るため、今から、駅前開発における高さ制限、緑地・公園の確保などの新たなルールづくり、たとえばまちづくり条例の強化などを検討するべきではないかと考えますが、いかがか見解をうかがっておわります。(Q2-4)

阿佐ヶ谷開発に驀進した昨年度の決算認定に反対しました(2020年10月12日決算特別委員会における発言)

 2020年10月12日、決算特別委員会の最終日にあたり、決算の認定に反対する意見を述べました。

 決算審査の対象となった昨年2019年度は、年間を通じて阿佐ヶ谷再開発を最大課題として区が驀進した年であり、区民の声どころか、法令順守もけちらし、違法すれすれの手法がまかり通ったのです。おさらいの意味でごらんください。

 区がなぜそこまで急ぐのか理解できません。病院が急いでいるのでしょうか。行政たるもの、公金を投入する事業なのに、周到さのかけれもみられず、このような出たとこ勝負のような進め方は許されません。

 ところで杉並区は区政100年の2032年をめざして区史編纂の検討を始めています。本格的な区史の編纂を求めたところ、田中区長から前向きな答弁がありました。珍しく私と区長の意見が一致した瞬間です。

(以下は質問原稿です。実際の発言とは異なる部分があります)

 杉並わくわく会議として、決算に対する意見を述べます。認定第1号令和元年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか4件の認定に対しては反対とし、以下その立場から意見を述べます。

(1)阿佐ヶ谷駅北東地区再開発

 決算当該2019年度は、なんといっても、阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発にむけて、手続きがいっきに進んだ年でした。ですので、このことを中心に述べないわけにはいきません。

【いっきに駆け出した開発】

 4月には私たち区議会の改選がありましたが、その後のこの問題の進行を私は6月の議会で次のように述べました。

「私たち区議会議員の選挙が終わったとたん、区役所はこの計画の実現へむかっていっきに駆け出したようです。開票から3日目には都市計画審議会が開かれ、10連休をはさんで連休明けの7日に土地利用構想の届け出、公告・縦覧開始、そして先々週は7日間の間になんと4回もの説明会およびオープンハウスが開かれるというハードスケジュールでした。」

 この発言を読み返し、考えるいとまを与えないような当時の前のめりな事業の進行を、あらためて思い出します。その後、7月には杉並区まちづくり条例による土地利用構想の意見募集、公聴会、8月には、土地区画整理事業を区長が施行認可、10月にははやくも仮換地指定が行われました。

 【前日にルール変更、対象者に知らせず】

 7月の土地利用構想の手続きでは、公述人の選定ルールが公聴会の公示前日に突然変更され、しかも公述の希望者には告知もされませんでした。旧ルールでは、希望者の中から10人を抽選で選び、希望者は抽選の立ち会いもできるとなっていたものが、新ルールでは区長の指名となりました。結果、28件の公述希望者のうち、賛成者は4人しかいなかったのにその全員が発言し、85%を占めた反対意見のうちからは6名しか選ばれませんでした。しかも、4人の賛成者がそれぞれ区と関係の深い団体の代表者や役員だったことは、出来レースを思わせました。

【区長が申請して区長が認可する茶番】

 8月、土地区画整理事業の施行認可が決定されました。杉並区を含む3法人による申請であり、杉並区長が申請して杉並区長が認可するという、一人二役の茶番でした。申請者と認可権者が同一人では公正な審査が行われるはずもありません。JR阿佐ヶ谷駅前であり、学校、病院、お寺、神社、そして貴重な森が存在するきわめて公共的な場所の開発ですから、本来なら公共施行で行うべき事業なのに規制のがれのため個人施行で行っている結果です。

【関係法令順守の確認を待たず】

 さらに、この時期はまだ、東京都の「東京における自然の保護と回復に関する条例」の義務付ける自然環境調査を行ったばかりで保全計画などまだまだ先でした。土地区画整理法は認可の条件として関係法令に違反がないこととしていますが、その点で都との協議が整っていない、即ち違反がないことが確認されていないのに認可されたことは脱法的な行為だったといえます。

 【仮換地の情報は秘匿されたまま】

 10月には仮換地指定が行われました。私は、この事業が提案された2017年、6月の一般質問の時点から、照応の原則に反する換地であることを指摘してきました。駅前一等地の杉一小と、軟弱地盤であり土壌汚染対策法の対象となる病院用地の交換は照応の原則が成り立ちません。しかし、杉並区は杉一小の土地の大半を河北病院用地と交換する仮換地指定に同意しました。

 この仮換地指定において、他の地権者の情報が秘匿されているため、価格や地積の上でも適正な交換であったかの確認はいまだとれません。これまで紹介してきた港区の例では、1年前から区議会に仮換地計画を説明してきたこととあまりの違いです。さらに、杉並区はこの土地評価は施行者会が指名した3人の評価員が了承していることをもって正当化していますが、3人の氏名・所属も秘匿されているため、そもそも実在の人物かどうかも知ることができません。そのため情報の公開を求める訴訟を起こしたことは先に報告したとおりです。今後この点については、司法の判断を求めていく事になります。

 一方、地区計画については、先ほども引用したように都市計画審議会が区議会選挙の開票3日後から矢継ぎ早に開かれ、区都計審による都市計画決定、さらに東京都の都計審により、容積率の緩和が3月に決定されました。

【阿佐ヶ谷の事業の進め方だけでも反対理由になる】 

 当該年度のこうした動きを振り返るとき、事業着手にむけ強引に驀進していった区の姿勢を痛感します。その結果、区民はいまだこの事業について十分に知ることなく、地域における合意形成もなされていません。換地そのものだけでも区の財産を大きく毀損する事業をなぜここまで全力で進めるのでしょうか。この事業は、現在と将来の杉並区民のための事業ではなく、地域の一部の有力者と開発に携わるであろう大企業、金融機関のための事業でしかなく、この一事のみをもってして、決算認定に対する反対理由に足るというべきです。

【杉並の医療をどうみるか】 

 質疑の中でこの事業にかかわるいくつかの議論がありましたので、言及します。

 まず、河北病院と杉並の医療についてです。新型コロナウイルス対応において、河北病院始め、区内医療機関、その職員の皆さんが奮闘して下さっていることには、頭が下がる思いです。しかし、そのことと、再開発は別です。

  今年3月の予算特別委員会では、他会派の委員から「阿佐ヶ谷から総合病院がなくなってしまったら、区の診療体制はいったいどうなってしまうのか」との質問があり、所管外の部長から「大きなダメージとなる」との答弁がありました。このやりとりに私は疑問を感じました。

【医療は区内だけで考えない】

 杉並区民の医療体制は杉並区だけで保障されるものではなく、国・都の医療計画において、杉並区は区西部二次医療圏に属する形で医療の提供量を保障されています。区単位だけで考えるものではないことは、区役所の人ならわかっていると思います。もちろん病院が近所にあったほうが便利には決まっていますが、それは区内にかぎりません。阿佐ヶ谷では中野区に移転してきた警察病院が近いので近年そちらを受診する方も増えています。

 また病院が区外に移転することだけで「大きなダメージ」というなら、中野区から杉並区に佼成病院が移転してきたことは中野区には大きなダメージになったのか。決してそんなことはないはずです。

 河北病院には私も子どものときから現在までお世話になっていますから、できるだけいい病院であってほしいという願いはあります。多くの住民の方もそうだと思います。しかしそれをもって、河北病院のために区は犠牲も払うべきという話になるなら違うのではないでしょうか。

容積率緩和は明らかに河北病院優遇】 

 また、容積率の話がありました。今回、河北病院が計画している病院は400床以上、32000平米以上の規模が予定されています。約1万平米の敷地に対して、従来の容積率200%では実現できなかった規模ですから、300%への容積率引き上げは、明らかに、河北病院の新築のために行われたといって過言ではありません。

容積率の影響を論じる以前に情報公開を】

 容積率の引き上げは土地取引の上で有利に働くことは常識ですが、河北病院には財産上の利益はないという趣旨の答弁がありました。普通に考えれば私もそれには賛成です。

 ただし、今回のケースで河北病院が財産上の利益を得るかどうかは、換地情報が公開されていない以上、判断することができないとしかいいようがありません。そういう議論をしたいなら、まず換地情報を公開して、公然と議論をなさるのがよろしいかと存じます。情報のない中で人の発言を「臆測だ」とかいってみても、仕方がないのではないでしょうか。

【自然保護「決着ついたこと」ではない】 

 この項目の最後に、本委員会の開催期間中に、ついに東京都との間で「自然保護条例」の協議が整ったとの報告がありました。質疑で述べたのでここでは詳細にはふれませんが、地権者の方と協働して、区は400年続いた森の保全のために力を尽くすべきであることを再度指摘します。

 なお、他委員に対し、吉田副区長から「決着した問題だ」などという発言がありましたが、病院の緑化計画もまだ定まらず、緑の保全はこれからが肝心と自覚して区の皆さんには取り組んでいただきたいと思います。

 (2)児童館・学童クラブ

 つぎに、児童館・学童クラブについて述べます。当該年度末の今年3月をもって、5つの児童館がいっきに廃止されました。暴挙というほかありません。

 私の地元でも、東原児童館が廃止されて、学童クラブは杉九小学校内へ移転、しかも民営化、それだけでも大変なのに、新型コロナ対応でクラブの閉鎖、利用自粛が重なり、児童、保護者は大変な思いをしました。6月に学校が再開した途端、事故が起きたことは先に一般質問で述べたとおりです。

【学童クラブの職員体制は人数だけではない】

 地元の学校での再編が行われたことで、これまで見えなかったことを保護者の方に教えていただきました。学童クラブの体制についてです。

 これまでも、学童クラブが民営化されると、私は必ず人員体制を確認してきました。そして、その都度、多くの人数が当てられていることに安心してきました。しかし、実はそれで満足してはいけなかったとわかりました。

【毎日勤務の職員が少なすぎる】

 今回作成していただいた資料を見て驚いたのは、民間委託学童クラブを運営している4社のうち、1社だけは非常勤も含めてほぼすべての職員が5日勤務となっているのに対し、他の3社では、5日勤務は常勤のみ、5日勤務の非常勤は全くいなかったことです。すなわち非常勤の職員さんたちは、勤務日数が4日以下、多くは2日、3日の勤務で、学童クラブ、放課後等居場所事業に参加する子どもたちは、毎日入れ替わる大人と付き合っていたということが、はじめてわかりました。

 この問題については、一般質問を行い、また他の委員の質疑に対する答弁からも、区も問題意識をもって臨んでいることを知りました。子どもたちが大人と信頼関係を結び、学童クラブ・放課後等居場所事業が安心できる居場所となるように願っています。

【学童クラブ委託にも公契約条例適用を】

 しかし、なぜ、このような体制になってしまうのか。そこには、社会保険料の節約という経営側の意識、また、待遇がよくないために、毎日働ける人材を確保できないという事情があるのではないかと思います。

 そこで、公契約条例について質疑しました。現在のところ、学童クラブは公契約条例の対象となっていませんが、人材確保の観点から、あらためて前向きの検討を要望します。

【「スヌーズルーム」って??】 

 児童館の廃止に関連して、子ども子育てプラザ高円寺の「スヌーズルーム」について質問しました。照明をおとし、アロマなどでくつろぐ部屋なのだそうです。妊婦さんの時期から来館してほしいとの考えもあることを伺っています。スヌーズとは居眠りのことだそうです。妊婦さん、乳幼児をかかえるママがリラックスする機会がもてることは大事なことだと思います。しかし、それはこの施設でやることなのでしょうか。

【子ども子育てプラザは大人のための施設】

 私は高円寺の施設を内覧したとき、この一部屋が余っているなら、小中学生に開放すればいいのにどうして!?と驚きました。そしてこの施設が子どものための施設ではなく、大人のための施設だということを痛感しました。

 プラザは児童厚生施設との位置付けです。しかし、大人がリラックスするための部屋を設けるなら、少なくともそこは児童厚生施設ではありません。

 子育て支援の施設と子どもの施設、子ども支援の施設は全く違います。区政は大人のニーズだけでなく、子どものニーズにこたえる責務があることを自覚していただきたいと思います。

【さらなる児童館廃止は見直しを】 

 来年の春もさらに3か所の児童館の廃止が予定されていますが、いったん立ち止まり、計画を見直すべきです。昨年の例ですと、第四回定例会に廃止条例が提案されるのでしょうか。早すぎると思います。半年前に廃止を議決してしまうことの意味はなんでしょうか。決まってしまったからと区民、子ども達を諦めさせることに狙いがあるのではないでしょうか。議案を提出する区の側はもちろんですが、議会の側も慎重に対処すべきです。

(3)公文書管理と杉並区史

 最後に、公文書管理と杉並区の区史についてのべます。今回質問を準備する過程で、すでに23区中2区が、また、都内では八王子市も公文書管理条例を制定したことを知りました。杉並区も準備にはいる時期ではないでしょうか。

【公文書管理条例、2区が制定】

 図書館について調べたことを契機に、各種審議会の記録が5年保存で年限をすぎたものは残っていないことを知り愕然としました。板橋区であれば公文書館に歴史的文書として保存されているものです。たった5年前の歴史しか残らないならば、行政の継続性どころか、自治体としての体をなしていないといわなければなりません。

 廃棄された資料は回復することができません。区は今すぐにも、公文書管理規程を見直し、区政の貴重な記録が保存されるようにすべきです。

【なぜ歴史と記録が大事なのか】

「過去に目を閉ざすものは現在にも盲目となる」という有名な言葉があります。ナチス戦争犯罪について語った言葉ですが、あらためて含蓄のある言葉だと思います。

 歴史を知ることはなぜ重要か。単なる興味でももちろんいいのですが、それだけでなく、現在の物事の本質を知るには歴史やなりたちを知ることだということです。

 例えば阿佐ヶ谷で、400年続いた地主さんの森とその周囲の寺社、学校、それらの場所にはどういう歴史があり、どういう意味があったのかを知れば、その土地への尊敬の念が生まれ、やすやすと開発に供することはできないはずです。

【区長は区史編纂で見識ある答弁】 

 杉並区は比較的新しい都市なので、区役所も区民も、杉並の歴史なんて、と思っているフシがどうもあるような気がします。その点、区長は区史編纂に前向きの答弁で、見識を示されたと思います。

 行政と区民が杉並の歴史を知り、杉並をもっと深く理解していくために、記録の保存と本格的な区史の編纂を望みます。

 以上をもちまして意見とします。

 審議にあたり多数の資料を作成して下さり、また、さまざまな問題について丁寧に説明、さらに答弁してくださった職員の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。

 また、新型コロナウイルス対策において、連日の激務にあたっておられる職員の皆様、エッセンシャルワーカーの皆様に、改めて感謝と敬意を表明し、結びといたします。 

あくまで森の伐採ヘと進む阿佐ヶ谷開発(2020年9月14日一般質問しました)

 2020年9月14日杉並区議会第三回定例会において一般質問しました。動画はこちらに掲載されています。

 発言の概略は、

1.阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発

 あまりにも情報隠しがひどいので、裁判に訴えることにしました。

 質問内容としては、今回突然、しかも補正予算で提案された「工事用通路」について。なんと杉並第一小学校の敷地に工事専用通路を通す。給食室はどうなるのか!?と思ったら、7年間しか使わないプレハブの代替給食室をわざわざ建てる。疑問だらけです。

 それよりなにより、絶滅危惧種「ツミ」がいることまでわかったのに、あくまでも森の伐採を進めるという。

 これはもう、どこに公共性があるのか。民間のために税金と区の所有地を使って行う利潤追求事業ではないのでしょうか。

2.図書館について

 杉並区の図書館事業全般を司る中央図書館長・次長の人事がひどすぎる。現在の中央館長は次長とさらに別のポストの3役を兼務しています。そんな中央図書館長は他区には一切いません。(中央館長がいない、という区はあるのですが)

 前任の図書館長・次長は1か月で異動、要するに人事のつじつま合わせを図書館でやっている。軽視もはなはだしいです。

3.児童館、学童クラブについて

 杉九学童クラブでは学校始まって2日目に骨折事故が起こりました。職員体制は常勤8名、非常勤28名の体制。人数が多くていいんじゃない?と思ってしまいますが、非常勤の人たちは毎日日替わりです。子どもたちとの信頼関係は築けるのか。子どもの個性を把握できるのか。上記のような事故が起こるのも体制と関係あるのでは。
(以下原稿です。実際の発言とは異なる部分があります。) 

1.阿佐ヶ谷駅北東地区再開発について

  一般質問をいたします。冒頭に、阿佐ヶ谷の土地区画整理事業に関して、杉並区に対し情報公開を求める訴えを起こしたことについて申し上げます。

【情報公開を求め裁判をします】

 この事業は、みどりや土壌汚染、軟弱地盤など様々な問題を指摘されているところですが、区議会として最も問題にしなければならないのは、貴重な駅前の一等地である杉一小の土地の大半が民間に権利移転され、再開発に供されることの是非です。

 区有地は区民の共有財産でありその処分に関して、区長は区民と区議会に対する説明責任を負っています。あんさんぶる荻窪荻窪税務署の交換も筋の悪い財産処分でしたが、少なくとも財産鑑定を行って値段がついた上で、区議会の議決を経て実施されました。あんさんぶるよりも規模が大きく、ずっと高価な、杉一の土地を、土地区画整理事業というブラックボックスを用いて、議会が関与できないような方法で民間に提供すること自体が不当です。

 区はこの間、「個人情報」「法人事業情報」などの理由をつけて仮換地の数値を公表しようとしません。しかし、この事業の参加者は区画整理事業という公的制度による優遇、及び区有地の利用という二重の大きなメリットを得ます。利益を得ながら、説明責任については「個人情報」では通りません。

 裁判に訴えることは私の本意ではありません。以前お示しした港区のように、杉並区も議会に対して説明責任を果たしてくれれば私がこんな余計な労力を使わなくてすむのにうらめしいです。区長はいたずらに裁判を長引かせずに誠実に対応し、早急に情報を公開することを期待します。

【自然保護の対応策、都との協議は】 

 さて質問に入ります。まず、自然保護の問題です。自然環境調査の進行状況、および、「東京における自然の保護と回復に関する条例」による東京都との協議の見通しをうかがいます。(Q1-1)

 昨年、第4回定例会で指摘したように、同条例においては3000平米以上の開発事業について、東京都の許可が必要ですが、区画整理事業は適用除外で都との協議をもって代えるとしています。協議だから位置づけが軽いわけではなく、許可と同等の内容を求められるばかりでなく、区画整理法において行政庁による、いっそう厳密な監督が前提であることを、再度指摘しておきます。

【タカ類のツミの保護】

 ところで、東京都指定絶滅危惧種1A類のツミについては、条例に関する「開発の手引き」により、営巣中心域について伐採は原則として行わないとされており、営巣中心域を観測できなかった場合には営巣地から半径350mの範囲を設定するとされています。けやき屋敷は営巣地から350mの範囲に入ることは間違いなく、原則を適用すれば伐採は一切行えません。しかし、先の第二回定例会で示したように、河北病院の建築計画では、地区計画緑地以外の既存樹木のほとんど全部を伐採する計画であり、そのまま進められれば、ツミはこの地域で生息できなくなります。

【けやき屋敷は伐採するのか】 

 そこでうかがいますが、けやき屋敷の樹木は伐採するのか。仮に伐採するとしたら、その代替措置は何か。また、工事は10年も続くし、病院はヘリパッドも計画していますが、騒音防止はどのように考えているか。さらに、けやき屋敷の場所に建設される高さ40mの病院は、保存される樹木の2倍の高さですが、ビルの緑化や目隠しについてはどのように計画しているかうかがいます。(Q1-2)

 自然保護について東京都と協議がまとまると、いよいよ、事業着手となります。着手の最初は今年度予算措置された文化財の調査、さらには土壌汚染調査ですが、そのスケジュールをうかがいます。(Q1-3)

【杉一小の敷地に工事用通路】 

 次に、今議会に提案された補正予算に計上されている杉一小北側の工事についてうかがいます。工事現場への重機や資材の搬入、残土の搬出などのため、区と施行者は杉一小敷地内に工事用通路を設置することにしたとうかがいました。これは衝撃です。工事が続く間、何年もずっと杉一の敷地を工事車両が毎日行き来するのです。

 うかがったところによると、杉一小児童の登下校の動線と工事車両の動線がどうしても重ならざるをえないということです。大変危険です。もちろん、車だけでなく、工事の騒音・振動などが学校の教育活動にも多大な影響があることはいうまでもありません。工事最優先で子どもたちの安全と教育環境は二の次とするこのような工事を強行するのでなく、いったん立ち止まって全面的に見直す必要があります。

【児童の安全がおびやかされる】

 そこでうかがいます。杉一小敷地内の工事用通路の概要をお示しください。杉一小の北側部分は擁壁ですが解体するのでしょうか。またスケジュールをお示しください。特に問題となるのは給食室の解体ですが、どのくらい期間かかる計画でしょうか。(Q1-4)

【通路の工事費用は区画整理と別に区が出費?】

また、この通路の工事費用ですが、杉並区と河北病院の2者で按分するのだそうです。しかし、この通路は区画整理事業のために必要欠くべからざるものです。当然区画整理事業の事業費として、保留地売却益でまかなうなど、事業参加者全体で負担すべきものですが、なぜあえて別の費用として区が負担するのでしょうか。説明を求めます。(Q1-5)

【エリアマネジメントとは】

 次に「阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりの取組手法等検討支援業務」の委託公募についてうかがいます。エリアマネジメントも視野にということですが、内容についてわかりやすい説明を求めます。また、公募要項には業務内容として関係団体からのヒアリングが含まれています。町会、商店会、まちづくり団体などを対象に4回程度、とされていますが、本来のエリアマネジメントの趣旨からすれば、緑地の管理等は、既存団体に限らず、広く地域住民に門戸を開き、活動への意見と協力を求めていくべきと考えますが、いかがかうかがいます。(Q1-6)

【いまだに不明の杉一小跡地利用】

 さて、冒頭述べたように、何よりも気になるのは杉一小の跡地です。区がこの計画を決定して3年もたつのに、いまだに土地利用計画が示されません。杉並区が保有する最も地価の高い土地を提供するのに、その利用目的が全く明らかにされていないのは不自然です。最低でも、ビルの高さ、ボリュームや、公共施設、商業施設、住宅などの用途を示さないまま事業に着手することは許されません。

容積率緩和は重大な利権】

 港区田町駅東口の再開発では、阿佐ヶ谷同様、駅前一等地の区有地を権利移転する区画整理の後、さらに市街地再開発という手法で、容積率が500%から950%にいっきに引き上げられ、オフィス、店舗、ホテルなどが建設されました。ちなみに千代田区長が刑事告発された事件も、もとはといえば区長権限による容積率緩和の利権問題です。

 今後、千代田区や港区のように、市街地再開発計画をかぶせて、容積率が大幅に緩和され、杉一の場所に超高層マンションが建つような、過激な再開発計画になるのではないか心配です。

【阿佐ヶ谷にタワマンは似合わない】

 低層の良好な住宅地をめざす阿佐ヶ谷のまちにタワマンは似合いません。

 いったい、杉一小の跡地利用計画はいつ定まるのか。また、市街地再開発事業等のさらなる建築規制緩和が導入されるおそれはないのか、この項の最後に伺います。(Q1-7)

2.図書館について

 次に、図書館についてうかがいます。

 9月5日杉並区立中央図書館がリニューアルオープンしました。前日の内覧会に私もうかがいました。きれいで明るい図書館になり、工事に携わった職員さん、事業者さんには本当にご苦労様でしたと申し上げます。

【中央図書館リニューアルで何をめざす?】 

 中央館改修にあたって寄せられた区内団体、個人の皆さんからの意見を取り入れ、特に、閲覧席が193席から394席とほぼ倍増され、使いやすい図書館になったと思います。

 そこでまずうかがいますが、中央館リニューアルに際して、特に改善に努めたことは何でしょうか。また、工事竣工はスタートにすぎません。新装なった中央館を中心に、教育委員会はどのような図書館行政を達成しようと考えているか、うかがいます。(Q2-1)

【「図書館サービス基本方針」の実現へ】 

 中央図書館は杉並区全体の図書館行政を推進していくという大きな役割を担っており、中央館改修の基本計画には「杉並区立図書館サービス基本方針」の具現化をめざす、とかかげられていました。サービス基本方針は2012年度に策定され「図書館は進化する」の表題のもと、10年計画で目指すべき図書館の姿とそのための方向性を定めたものです。

 そこでうかがいますが、計画の10年目を見据えて、サービス基本方針の中間総括はどのように行われているでしょうか。(Q2-2)

【外部の専門家による図書館評価を】 

 また、策定から7年が経過したいま、基本方針実現へむけての達成度を評価するためには、図書館学の専門家、大学図書館長など外部の専門家を招いてアドバイスを得て現状評価を行い、達成へむけてのロードマップを立案すべきと考えます。これまで図書館協議会の委員を務められた大学の先生や図書館長とのつながりも豊富なので、十分可能ではないかと思いますがいかがか、うかがいます。(Q2-3)

 【図書資料あっての図書館】

 私は今回あらためてサービス基本方針を読みなおしましたが、杉並区立図書館の果たすべき使命、いまの杉並区の図書館に必要とされていることが、大変バランスよく網羅されていることに感心しました。

 ところで、図書館法は第二条に「図書館とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設」と規定しています。サービス基本方針は「学びの場」「知の共同体」「楽しい交流空間」の3つの視点から構成されていますが、法の定義に従うなら、何をおいても「学びの場」が第一に置かれなければなりません。

 そこで、まず「学びの場」について質問します。図書館は文字通りあらゆる資料にどんな人でもアクセスできる機能をもたなくてはなりません。そしてどの図書館も展示や掲示物、面出しやサインで書架配置を駆使して、訪れた人に発見をもたらす本との出会いを演出しています。開館したばかりの中央図書館は、その点、まだ素っ気なく、ものたりないですが、今後に期待したいと思います。

【電子資料、デジタル化、ICタグの検討は】

 ここで質問したいのは、サービス基本方針に書かれている電子化についてです。電子資料の収集、紙資料のデジタル化とネットを通じた提供、ICタグや貸出機による資料の管理などについて、今後どのように計画されているでしょうか。また、視聴覚資料について、他の自治体では積極的に収集し提供している図書館も多く見られますが、杉並区の収集方針はいかがかうかがいます。(Q2-4)

【地域資料の収集は待ったなし】

 次に「知の共同体」です。まず地域資料についてです。今回改修で、地域資料室が1階に移転して利用しやすくなりましたが、以前とかわらず杉並の地域資料がきわめて乏しいと感じます。

 私は2015年第三回定例会において、図書館について質問した際、地域資料についてとりあげ、高齢化が進む中、区民が保有している貴重な地域資料の積極的な収集が急がれることを指摘しましたが、現状はどうなっているでしょうか。また、杉並区には公文書管理条例、および公文書館がないため、行政文書の収集も中央図書館の重要な使命であり強化すべきです。

図書館協議会の議事録が廃棄されていた!】 

 実は先日、この質問をするため、過去の図書館協議会の議事録を閲覧しようとしたところ、ホームページには2011年度以前のものが掲載されておらず、図書館に問い合わせると、なんと文書保存年限基準に従いすでに廃棄されており、電子データでも残っていないとのことでした。

【公文書収集、保存は図書館の使命】

 これには驚きました。

 現在進行中のサービス基本方針の策定経緯や当時の議論を知りたくても、記録がすでに廃棄されてしまっています。資料収集の専門機関である図書館ともあろうものが、自身の記録すら保存できていないということに暗たんたる思いです。公文書の保存、公開が注目される今日、区においては、区の施策の検証のためにも、すでにいくつもの自治体で制定されている公文書管理条例および公文書館の設置が急がれますが、当面の措置として歴史的文書を図書館が保存できるようなしくみだけでも考えていかなくてはなりません。

 「知の共同体」に計画されている地域資料の収集について、利用者団体との協働について、それぞれ、中央図書館としての中間評価はいかがか、うかがいます。(Q2-5)

【図書館モニター、ボランティアについて】 

 第三に「楽しい交流空間」では、図書館モニターを募って意見を反映する、ボランティアの協力による多様なサービスなどにより「区民が楽しみ、主体的に参画する図書館」をつくっていくとされていますが、実現されているでしょうか。評価をうかがいます。(Q2-6)

【図書館の専門家育成・活用が重要】 

 サービス基本方針の最後に「取り組み推進のための基盤整備」があります。特に、専門家の育成・活用は重要です。なかでも、中央館長・次長の管理職は杉並区立図書館全体の事業を推進する役割を担っており、いわば杉並の「文化の中心人物」ともいえる、きわめて重要なポジションです。

【中央図書館長・次長が1か月で交代】

 ところが、近年、館長・次長ともに頻繁に交代しています。直近では現館長が8月1日に着任したばかり、前任者の在任はなんと1か月でした。そこでおうかがいしますが、最近10年間に館長・次長を務めた方の人数、および各人の在任期間をのべてください。(Q2-7)

 現館長はなんと次長を兼務、さらに生涯学習担当部長も兼務という大変多忙な境遇です。有能な方なので職務の遂行に支障はないと考えたのかもしれませんが、そうはいっても、もともと別々の方が専任で行っていた職務ばかりをいっしょにしたわけですから、3人分の仕事をしろとは言えません。

【図書館を軽視した人事】

 もともと杉並区は部長級の館長、課長級の次長が専任でおり、それでも図書館経営は容易でなかったと記憶しています。しかも、今年は新型コロナウイルス対応という特殊な状況はあったにせよ、図書館長・次長が1か月ワンポイントで異動してしまうという人事は、その職責の重さを鑑みればあまりにもいい加減です。図書館の軽視も甚だしいと思います。

【地域の生活を支える図書館】 

 図書館は医療や福祉よりも緊急度が低いとお考えなのかもしれませんが、それは間違っています。

 東日本大震災のあと、南相馬市の市役所職員とお話しする機会がありました。当時新設されたばかりの南相馬市立図書館も震災被害にあいましたが、数か月で再開し、地域の方々の生活の支え、心の支えとなったとお聞きしました。いざというときのためにも、日頃から図書館を充実させていく必要があるのです。これは一例にすぎません。

【図書館次長の配置を求める】 

 新館長には期待しますが、あわせて、元通りに次長を配置して兼務を解除し、少なくとも3年程度は続投していただき図書館の体制をしっかりと落ち着かせていただくことを希望します。

【区独自の司書採用を】 

 さらに、専門職の育成方針はどうなっているでしょうか。図書館の運営には、資料とシステムに精通した司書の存在が欠かせないことはいうまでもありません。指定管理や委託が進み、意欲と能力のある司書の方々が、民間企業の低賃金で働き、官製ワーキングプアの代表とまでいわれる図書館の現場は変えなくてはなりません。同時に、区職員の育成も必要です。自治体によっては、司書を専門職採用しているところもあります。杉並区が独自に司書職採用を行うことはできないでしょうか。見解をうかがいます。(Q2-8)

【新宿区の「エキスパート職員」制度】 

 実は、以前新宿区の図書館を見学したおりにうかがったことでしたが、新宿区には「エキスパート職員」という制度があるそうです。特定の部門に精通した職員を異動させずにその業務に従事させるものです。現在は司書のほか、選挙管理委員会、情報システム、介護保険などにエキスパート職員がおり、なかでも司書が半数近くを占めるとのことでした。専門職採用ができないとしても、新宿区のこの手法は、司書に限らず区の事業効率化、サービスの向上に資するものとして検討に値すると思いますので、この項の最後に紹介させていただきました。

3.児童館、学童クラブについて

 最後の項目として、児童館・学童クラブについてうかがいます。

 私の近所の東原児童館がこの春で廃止され、新たに杉九学童クラブと放課後等居場所事業が杉並第九小学校内に設置されました。ただでさえ、場所がかわり、民間委託で先生たちが全部いれかわる、という状況に加え、コロナ対応のために事業の休止、縮小を余儀なくされ、子どもも親も翻弄されました。

【企業委託の学童クラブ2日目に事故】  

 そんな中、緊急事態宣言が解かれて学校が再開した6月、学校が始まって2日目に、学童クラブの子どもが校庭の遊具から転落、骨折する事故が起きたとお聞きしました。見守りは適切だったのでしょうか。また、当日は受診することなく帰宅させ、転落について保護者には連絡がなく、翌日保護者が受診させて骨折が判明したとのことでした。こうした対応は適正なものとは思えません。保護者とはすでに話し合いをもたれたとのことで良かったと思いますが、あらためて区の.児童館・学童クラブについて見解をうかがいます。(Q3-1)

 民間委託だから事故が起きたとはいいませんが、はじめて株式会社を導入した杉九のケースです。子どもたちの安全、保護者との信頼関係が心配です。

【毎日職員が入れ替わる学童】 

 また、杉九学童クラブ・放課後等居場所事業では、民間委託の職員36名中28名が短時間パートとのことです。人数が多いからいいかと思うと、毎日の職員数が多いわけではなく、週に1、2回の人を含めて入れ替わり立ち替わりとなっているようです。

 他校を見学させていただいた際、放課後等居場所事業の職員さんが、子どもの顔と名前は憶えていないと言っていました。職員さん自身が週1回か2回しか来ないからです。杉九も同じです。

 おそらく、低賃金の短時間勤務の仕事に週5日入ってくれる人は少なく、結果、毎日人が入れ替わるような状況になっているのだと思います。応募する方が少ないとすると、適切な人材を選抜できているのかも心配です。

 特に学童クラブの子どもたちにとっては、安心して毎日の生活をゆだねられる、信頼できる大人との関係がなかなか形成できないのではないかと思います。児童館とかわらない保育ができているとはとうていいえません。これこそが保育の質の低下です。区の責任において改善するよう求めます。また、区はこの体制でよいと思っているのか、見解をうかがいます。(Q3-2)

【大宮児童館廃止、代替施設を】 

 次に大宮児童館についてうかがいます。8月29日、大宮児童館廃止に伴う「意見交換会」が開催され、私も参加させていただきました。大宮児童館は大宮保育園の2階部分に設置されている小さな児童館ですが、保育園の園児や周辺5校の小学校の子どもを中心に利用され、地元大宮二丁目自治会の方々もボランティアとして子どもたちの活動を支えてきた、地域コミュニティの中核をなす活発な施設です。

 意見交換会当日は、区側の説明のあと自治会から、新たにできる保育園の中に、地域の子どもたちが集える施設を区としてもうけてほしいとの要望が出されました。この要望書は区長に提出され、また私たち議員にも送付されています。区からは、新たにできる保育園は民営化される予定のため、事業者の考え方によるとの回答でしたが、ぜひ設置を実現するよう要望します。いかがでしょうか。また、スペースだけあっても子どもは遊べません。信頼できる大人が運営に携わり、遊びを提供することが重要です。二丁目にはそうしたボランティアの力も十分おありのようですが、しかし、ボランティアだけで運営することはできません。児童青少年センターや子ども子育てプラザの職員のバックアップ、サポートが必要と考えますが、いかがか、うかがいます。(Q3-3)

【永福図書館の乳幼児室は児童館とは違う】

 当日の説明で、大宮児童館の乳幼児室の代替として、新築される永福図書館の乳幼児室が紹介されていました。しかし、この部屋は図書館の内部にある、いわゆる「お話の部屋」であって、児童館の乳幼児室のように「ゆうキッズ」事業を行ったり、子どもが大きな声を出して走り回ることはできないのではないかと思いますが、いかがか、うかがいます。(Q3-4)

 児童館同等の活動が全くできないのに、代替施設のように説明するのは区民の誤解をまねくのでやめていただきたいと思います。

【児童館廃止の検証が必要】 

 今回は2つの児童館および児童館後継事業についてうかがいましたが、施設再編計画が策定されて以来すでに6年になります。児童館事業と児童館の再編について、図書館の項でも申し上げましたが、そろそろ振り返って中間評価を行うため、検討組織を設けるべきと考えますが、いかがか。

【児童福祉、児童心理の専門家に意見を】

 その際、特に、児童福祉や児童心理の専門家を招き、評価基準を設定すること、公開の場で多くの区民の意見を聞いて検討することが必要と考えますがいかがか。

【児童館後継事業のデータをきちんととる】

この間、区は、利用人数が何倍になった、ということばかりを強調してきましたが、人数だけでなく、子どもたちに遊びを通じてどれだけ満足を与えられたか、豊かな人間形成、健康と情操の成長をもたらすことができているか、多面的に評価する必要があります。そのためには、人数だけではないデータの蓄積が必要です。現状では資料を請求しても民間の学童クラブの活動内容、活動場所は記録がないということで、明らかにされません。学童クラブ・放課後等居場所事業における日々の記録の充実を求めますがいかがか、うかがいます。(Q3-5)

【子どもの意見を聞いて】 

 また、児童館や学童クラブのユーザーは子どもです。子どもの権利条約には子どもの意見表明権が宣言されており、子どもたちは自分たちにかかわる問題に発言する権利とその力をもっています。

 今後の児童館再編の評価検討にあたっては、子どもの意見をしっかりと取り入れること、そのための場を設定することを求めますがいかがか、最後にうかがって質問をおわります。(Q3-6)

杉並区を提訴しました

 このたび、東京地方裁判所に情報公開の訴えを申し立てましたので、皆様にご報告します。
 訴えの内容は、阿佐ヶ谷の「土地区画整理事業」に関して区有地(杉一小等)の
①土地交換情報が非公開とされたのは不当なので撤回せよ
②非公開とされた情報を公開せよ
の2点を求めるものです。

【いくらで交換されたか不明】
 そもそも区有地を売買する場合は、高すぎても安すぎてもいけないので、不動産鑑定を行った上で、区の財産価格審議会、さらに区議会で審査を受けないと実行できないのですが、今回は「土地区画整理」による交換のため、鑑定すら行われず、闇の中です。民間事業者への過大な利益供与の可能性があります。

【誰と交換したかさえ不明】
 区議会でも再三説明を求めてきましたが具体的な土地評価の説明はなく、情報公開請求したところ、公開された資料は黒塗りで、杉一小の土地を誰と交換したのかすらわからないのです。(下図)
 いわんや、適正な交換になっているのかの検証などできません。これでは公共財産を守るという区議会議員としての責務を果たしきれないと考えました。

 

f:id:waku2:20200829220338j:plain

f:id:waku2:20200829220411j:plain

【杉並区にも「のり弁」】
 国の情報隠しについては、「のり弁」といわれる真っ黒にぬりつぶされた資料が報道されています。自衛隊の日報や森友学園問題など、記憶に新しいところです。しかし、杉並区の情報公開でこんな真っ黒な資料が出てきたことは、少なくとも私は経験がありませんでした。
 阿佐ヶ谷の土地交換にはよほど都合が悪いことがあるのだろうかと勘ぐりたくなります。

【田中区長は説明責任を放棄】
 田中区長は昨年11月の区議会で私の質問に対し「納得できないのなら裁判するしかないだろう」と答弁しました。お金がかかる裁判はどうせできない、情報隠しは追及しきれないだろうと、高をくくり、説明責任を放棄した開き直りの発言です。そこでやむなく提訴に踏み切った次第です。
 皆様、どうぞご支援をよろしくお願いします。

阿佐ヶ谷北口 開発ありきの地区計画に反対(2020年6月17日反対討論)

 阿佐ヶ谷駅北口開発について条例改正の議案に反対の立場から発言しました(2020年6月17日杉並区議会第2回定例会本会議)。

 この議案は、阿佐ヶ谷駅北口の「地区計画」のうち建築規制に関わる部分を条例に定めて強制力をもたせるものですが、残念ながら、阿佐ヶ谷北口開発の是非を問うものではありません。

 実は、区議会でこの開発について賛否を決めることは今後とも一切ありません。また、杉一小の敷地を河北病院の敷地と交換することについても、議会は賛否をいうことができません。「土地区画整理事業」という枠組みで、区長の決定だけで進められる、そういう手法をわざわざ選んでいるからです。

 駅前一等地の杉一小の土地(おそらく、約100億円の価値があると考えられる)を民間に譲るからには区議会が当然審議するものと思っておられる方が多いと思いますが、議会の決定は必要ないのです。

 これはおかしい、と私は一貫して言ってきましたが、区議会の大多数の皆さんは沈黙しています。区有地は区長が好き勝手にできるものだと思っているかのようです。それなら、区議会はいらないじゃないですか。

 この発言の中では、森の保全についても訴えています。区役所は「森を伐採してもまた木を植えるのだから問題ない」とごまかして、区長が進める開発を正当化していますが、その欺瞞について述べました。

 少数の大企業や地域の有力者のために区民の財産を安売りし、歴史的なまちのありようを壊す開発は許せません。

(以下は原稿です。実際の発言と違うところがあります)

 議案第61号杉並区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例について意見をのべます。

  本議案は、先に都市計画決定された阿佐ヶ谷駅北東地区地区計画を受けて、建築制限に関する規定を条例に定めるものです。この地区計画は「街並み誘導型地区計画」という緩和型地区計画です。この地区計画を導入し、同時に容積率用途地域の変更が行われたことにより、けやき屋敷には容積率300%、高さ40m、また、杉一小敷地には、容積率500%、高さ60mの、これまで建てられなかったビルを、しかも斜線制限等の緩和により容積を使い切って建てることが可能となりました。

【開発ありきの地区計画】

 河北病院の建設、及び杉一小跡地を利用した開発行為は、従来の建築制限では不可能でしたが、これらの緩和によって初めて可能になったものです。したがって、この地区計画は開発ありきの地区計画、開発のための地区計画、もっといえば、河北病院と欅興産という民間のパートナーを利するための地区計画でしかなく、阿佐ヶ谷のまちの発展および環境保全に寄与するものとは全く考えられません。

 阿佐ヶ谷北東地区の開発に関しては、これまでも論じてきたところではありますが、区議会の議決事項としてはこれが最初にして最大の賛否の場ですからあらためて述べます。

  本件開発は、けやき屋敷の樹林の消滅、杉並第一小学校の移転先の土壌汚染の可能性と軟弱地盤、さらに杉一小が移転した跡地に高層ビルの建設という3つの敷地それぞれに対する疑問と批判があります。しかも、駅前の一等地である杉一小と土壌汚染の可能性があり軟弱地盤である河北病院の敷地を権利交換することは区にとって不利な取引だということもさんざん指摘してきました。

豊洲市場と同じ「汚染地ロンダリング」】

 汚染の可能性のある土地と、駅前の一等地の交換を、それぞれの土地の売買ではなく、土地区画整理事業という形で行い、価格が明示されないように、うやむやにして行うという手法は、悪名高い豊洲市場敷地をめぐって東京都が行ったのと同様の汚染地のロンダリングだということも指摘してきましたが、民間事業者に不当な利益を供与するものとして、あらためて指弾するものです。

 しかも、個人施行の土地区画整理です。杉並区が地権者として加わり、しかも、駅前のきわめて公共性の高い場所の開発です。仮に土地区画整理事業を行うにしても、どう考えても公共施行として、都市計画決定により公明正大に行うのは当たり前のことです。ところが、区は個人施行を選びました。

【田中区長が申請して田中区長が認可】 

 その結果何が起きたか。都市計画決定を要しないばかりか、施行認可に関しては、都知事の許可をとる必要がなく、田中区長が申請して田中区長が認可するというひとり二役が可能になりました。さらに、換地にかかわるほとんどの情報は、個人情報、企業情報として議会の目から、また区民の目から隠されました。

 1つ1つの土地が鑑定評価にもとづき売買されるのではなく、点数による相対評価、しかもその評価の正当性を保証するはずの3人の評価員の姓名はいまだに公表されていません。

 常識的な鑑定では、杉一小の土地は河北病院用地に対して坪当たり3倍から4倍の価値があると考えられるのに、換地計画では極めて低く評価され、杉一小用地に残る区の土地は現在の4分の1程度にすぎません。当初区が説明していた3割にも届きません。予算特別委員会で指摘したとおり、区が委託した鑑定価格で計算してさえも、区の取り分が減ってしまう結果が出ています。

【土壌改良、杭打ちで、学校改築予算は二倍に】

 しかも、土地区画整理法に規定された「照応の原則」を全く逸脱しています。仮に河北病院の土地に小学校を建設するとすれば、区の委託により試算されている土地の除去費用7億円余に加え、さらに、土壌改良及び杭打ちに20~25億円がかかるだろうと言われ、それはすべて区の持ち出しとなります。これだけで新しい学校が1つ建つ金額であり、杉一小の移転は通常の2倍の予算がかかる可能性があります。

これら、全く不当な土地交換かつ無駄な出費であり、区民の財産を毀損するものとして、絶対に認められません。

 【「緑化」は森の「保全」ではない】

 さて、議案に戻ります。本議案には、緑化率の最低限度が規定されています。都市緑化法の制度を利用し、地区計画区域に対して緑化率の規制を設けるものであり、それ自体は有効な施策と評価します。また、本件開発において、けやき屋敷のみどりを守ろうと努力されたであろう所管の職員さんの努力には敬意を表します。

 しかし残念なことに、法に規定された25%ではけやきの森は守れないのです。これについては、先日の一般質問でも詳しく述べましたが、再度概括します。

 まずみどりの「保全」と緑化は違うということです。けやき屋敷の森は「保全」すべき森であり、はだかの土地に新たに生み出す「緑化」ではありません。

 私が入手した河北病院の建築案には緑化率28%とありました。25%はクリアしていますが、わずかです。しかも、緑化率ですので、樹木が保存される保証はありません。新しく植える緑、管理にお金のかからない低木や、極端な話、芝生になってしまう可能性もあります。したがって、私は先の一般質問で「地区計画緑地保全条例」の導入を求めましたが、区の答弁は否定的なものでした。

 また、地区計画において、拘束力はないながら地区計画の「整備開発及び保全の方針」の部分に25%より高い、例えば30%以上の緑化率を書き込む方法もあり、緑化率条例は本件開発において、必ずしも最善とは言い切れません。

【「木を切ってもまた植えればいい」とのいいぐさ】 

 緑化に関してこの間杉並区は、木を伐っても、沿道緑化など緑の創出も行うから問題ないという言い方をよくします。しかし、保全と緑化の違いが分かっていれば、こんな言い分はお笑い種です。森は木だけで構成されているわけではなく、特にこのけやき屋敷は、400年以上の歴史を刻んできた中で長く保たれてきた生態系がそこにはあります。

 一般質問でも指摘したように、区内でもあまり見られなくなった動植物がここには生息できています。人工林ではあるものの、自然更新の二次林として安定した生態系が形成されている森は、現在の杉並区、特に阿佐ヶ谷地域にとっては、失ったら二度と戻らない貴重なものです。それを「木を伐ってもまた植えればいい」などといういいぐさには怒りを覚えます。

 都市環境委員会の質疑の中で、吉田副区長は、ここの森を伐採しても、他方で馬橋公園の拡張で木を増やすから、地域をトータルで見れば緑は増えるじゃないかという趣旨のことを発言していました。これは二重、三重に誤りです。

 まず、先にのべた生態系の保全という意味で、森を伐ってはならないということと、新たに木を植えることは全然、意味も価値も違うということ。第二に、馬橋公園は高円寺地域に属し阿佐ヶ谷地域ではないということ。第三に、阿佐ヶ谷地域は、区の調査により、区内でも最も樹林率が低い、高円寺地区よりも樹林率が低い地域です。その阿佐ヶ谷の樹林をさらに減らそうとしている誤りです。

 吉田副区長は都市整備畑を歩いてきた方であり、現在も副区長二人制の下で、都市整備部門をその所管としている副区長です。ですから、いま述べたようなことはご存じないわけがないだろうと思います。知っていてなお、委員会において、このような発言をされることは、氏の専門的識見には私も敬意を抱いているだけに残念です。

【歴史的な汚点】

 伝統ある杉一小学校、お寺、神社、そして病院と緑の森が位置するこの場所は、鎌倉古道に沿った由緒あるまちの中心であり、杉並区の中でも特別な場所です。軽々しく開発に供してはならない場所です。それがいま、田中区長のもとで愚かにも開発されていこうとしていることは、歴史的な汚点です。

 いったん立ち止まって、まちの在り方、みどりの森と調和した病院の移転、まちづくりのありかたをもういちど考えなおすことを改めて訴えるとともに本議案には反対の意見といたします。

阿佐ヶ谷・河北病院と緑地の配置は?ヘリは?(2020年6月3日一般質問)

 2020年6月3日、杉並区議会第2回定例会で「阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくり」について一般質問しました。動画はこちらです。

http://suginami.gijiroku.com/voices/g07_Video_View.asp?SrchID=6537

 今回、河北病院の建築案をたまたま入手しましたが、建物はやっぱりめいっぱい40mだったり、つくらないことになっている「ヘリポート」が記載されていたり、屋敷林は区の規制以外はほとんど残らないとか、やりたい放題じゃないかと思ったわけです。

 杉並区は、病院に対して高さを下げろとも言うつもりはないとの答弁。何のために共同施行者になっているのでしょう。容積率をサービスしてあげたのだから、せめて建物や緑地の配置については、意見を言ったらどうか。区は病院の僕なのでしょうか。

(以下は原稿です。実際の発言とは異なる部分があります。なお、文中の図は、河北病院の建築案の図面から松尾が作成したものです。)

阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて>

(1)屋敷林について

 一般質問をいたします。阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについてうかがいます。

 昨年の施行認可、仮換地指定、さらに今年3月には地区計画決定と、関連する大きな手続きが行われました。事業に具体的に着手するのは今年度後半、10月頃の予定とのことですが、この土地区画整理事業については、これまで何度も、多くの問題があることを指摘し、抜本的な見直しを求めてきたところです。事業着手の前に残された時間は少なく、問題は大きすぎますが、この時点で特に考えるべき論点をとりあげたいと思います。

【河北病院の建築案を入手】

 まず、なんといっても、屋敷林のみどりの問題です。

 先ごろ決定された阿佐ヶ谷駅北東地区地区計画ではその目標として「阿佐ヶ谷の歴史と文化が調和したみどり豊かなまち」を掲げ、方針として「地域のシンボルである屋敷林のみどりを将来にわたって可能なかぎり保全する」旨、うたわれています。では、現実の河北病院の建築計画においてはどうなのか、まず確認してみたいと思います。

 実は、私は最近、とある方から、病院の建築案の図面を入手しました。そのまま出すわけにはいかないので、その図面をもとに作成した図を提示します。まず立面図です。

f:id:waku2:20200603213252j:plain

河北病院計画案の立面図

【制限いっぱい40mのビルは高すぎる】 

 建物の高さは、制限いっぱいの40m、9階建てとされています。さらに屋上にはヘリポートの記載がありました。地区計画の高さ制限は上限であって、目一杯建てるとは限らないというのがこれまでの区の説明でしたが、病院側はやはり、40mを目一杯使う計画です。

 この地域に突然高さ40mの建物が出現することは異様です。こちらに保存樹と書かれているけやきの樹高が20~25mであることと比べ、ほぼ倍の高さとなり、環境保護の観点から容認できません。

 そこでうかがいます。杉並区は、河北病院の建築計画を把握しているでしょうか。建物、緑地の配置などを具体的にご存じでしょうか。また、建物の高さについて、区は、環境保護の責任者として、また共同の事業者として、病院に対して高さを抑えるよう求めていくべきと考えますが、いかがか。見解をうかがいます。(Q1-1)

【屋敷林のうち残る部分は少ない】 

 次に配置図を示します。

f:id:waku2:20200603213417j:plain

河北病院計画案の配置図

 緑の部分は緑地とされています。一見、緑の部分がけっこうあるように見えるのですが、問題はその中身です。

 敷地の西側部分は地区施設に指定されている緑地1・2であり、いやおうなく緑地としなければならない部分です。一方、東側の部分はどうでしょうか。図ではそれなりに緑地が認められますが、ここは現在は駐車場で、舗装されているので木はありません。つまり、新しく植える緑ということです。現在の屋敷の東側には、西側に劣らず大径木が集中していますが、その一帯は配置図では建物部分となります。つまりこの一帯の木はすべて伐採されることになります。そして、おそらくは手のかからない低木、例えばつつじなどを植えるのではないかと思われます。

 杉並区や病院側は、新しい病院を「森の中の病院」と称しています。そういわれると木立のなかに、2階建てくらいの白い建物がひっそりと見え隠れするようなイメージですが、現実の設計図を見ると全く逆で、先ほどの立面図に見たとおり、広大な病院の建物の端に、せいぜい建物の半分くらいの高さまでの木がへばりつくように残るだけです。

 【「緑化」は「保全」ではない】

 緑地の確保には保全と緑化の2つの方向性があります。保全とは既存の緑地、既存の自然を残し、守っていくことです。緑化とは、緑のない地面に緑を植えて、緑を確保すること、さらにいうと緑化率の義務づけとしての建築規制でもあります。この間、議会や説明会の場で区役所側は繰り返し緑を創出するので問題ないと説明してきましたが、それは「緑化」の数字をクリアするということであって「保全」とは違います。

 【35年間つづく「杉並区自然環境調査」】

 そこで、自然環境調査にあらためて注目します。

 東京都の「東京における自然の保護と回復に関する条例」に従い、昨年度から現地の自然環境調査が行われ、今年も、まさに今、調査が継続されています。

 東京都レッドリスト指定のツミが注目されていますが、それ以外にも貴重な動植物が現地で見つかっています。レッドリスト記載の生物としてはアズマヒキガエルやイモリなどですが、実は、杉並区として注目すべき種はほかにもあります。

 今回の調査とは別に、杉並区には1985年から35年間にわたる杉並区自然環境調査があります。この調査は、昨年度で第7次となり、他自治体には見られない大変貴重な調査です。この調査の特徴は、民間のボランティアの皆さんに支えられていることです。「杉並メダカ」を発見したことでも知られる故須田孫七先生をはじめ、専門家のアドバイスをいただきながら、多くの方々がいまも調査員として関わっています。私の知人もそのひとりです。プロの自然調査員でもあるこの方に、けやき屋敷周辺の自然環境調査報告書を見ていただきました。

 【シンミズヒキ、オオルリなど貴重種がみつかる】

 この方のご意見として、「植物では、特にシンミズヒキが注目される。現在の東京都区部レッドリストからは外れているものの、改定前のレッドリストには挙げられていた植物であり、杉並区第7次調査では、18カ所の調査地域の中で1カ所のみの確認。それも、区内で保護移植したものであり、それ以外には確認されていない貴重な種である。

 また、ヒメミカンソウは2地点、アマチャズルは5地点、マルバスミレは7地点の確認で、いずれも区内では数少ない在来種である。

 鳥類については、渡りのピークから外れた時期の調査で、しかも少ない調査日数にも関わらず、ウグイス、オオルリビンズイが確認されていることが注目される。  特にビンズイの確認は杉並区では珍しく、第7次調査でも特筆されている。オオルリは第一次調査で確認されて以来、確認されておらず珍しい。他にも、樹林地を好む鳥が非常に多く確認されているといえる。」などでした。
【森がなくなれば希少種が生きられない】

 杉並の自然をずっと観察してきたこの方の所見として、レッドリスト指定ではなくても、区内ではほとんど見られない貴重な植物や鳥が、けやき屋敷周辺の調査から指摘されたことは重要です。

 森がなくなれば、ツミだけでなく、これらの貴重な種は、生き延びることができません。都条例には土壌の保全も責務とされています。これらの動植物をいかに保護していくか、区としての考えをうかがいます。(Q1-2)

【400年続いた森の存亡のとき】 

 私は、ちょうど10年前の6月、一般質問で杉並区自然環境調査を取り上げ、以下のように述べました。

「決して自然が豊かとは言えない我が杉並区ですが、それだからこそかえって、都市環境の中の自然、生き物がどのように生息し、またその状況がどのように変化していくか、継続して調査していくことには、極めて大きな意味があると言えます。また、そんな中にも多くの希少な植物、動物がまだまだ息づいています。これらを保護する意味からも調査は重要です。」

 400年以上続いた貴重な屋敷林の存亡がかかるいま、まさに、この視点が必要だと思います。

 このたびの新型コロナウイルスについても、自然破壊の結果ではないかという指摘もあります。自然保護、生物多様性とは、単に珍しい種を愛でるという話ではなく、私たちの生命にかかわる環境の問題です。区の真剣な取り組みを期待します。

【緑化率を条例に定めるが】 

 さて、今議会には、阿佐ヶ谷駅北東地区地区計画に関連して条例が提案されています。この地区計画は「街並み誘導型地区計画」という緩和型地区計画ですが、条例案では高さ制限等に加えて緑化率が規定されています。都市緑地法の定めにより、緑化率の最低限度を強制力のある規制とするためには地区計画等緑化率条例を制定する必要がありますが、それを取り込んだ提案となっています。

 地区計画等緑化率条例については、この開発計画の当初、必要性を指摘してきたことでもあり、地区計画条例に包含する形で設置すること自体には必ずしも否定的ではありません。しかし、けやき屋敷の緑化率が25%でいいのかという問題は残ります。

【30%以上の緑化率も定める方法がある】

 都市緑地法では、条例に定める率の上限を25%と規定しており、これ以上引き上げることはできません。一方、あえて条例に定めず、別の形で地区計画に盛り込む手法もあり、例えば他自治体では、地区計画の中の「整備開発及び保全の方針」の部分に30%以上の緑化率を書き込んだケースもあります。今回の計画は当事者が少数の法人ですので、定めたルールを守らないとは考えられず、条例で強制しないこの手法でも十分有効であり、考慮に値いします。

【既存樹木は守れるのか】 

 しかも、ここで注意すべきはやはり、保全と緑化の違いです。私たちは、地区施設として緑地が定められたことで、なんとなく、既存樹木の保全が図られるように受け取ってしまいますが、緑化率イコール既存樹木の保全を意味するわけではありません。新しく木を植えてもよいし、極端な話、芝生であっても緑化率には問題ありません。すなわちこの緑化率規制だけで既存樹木、既存の自然環境が本当に守られるのだろうかという疑問がわいてきます。

 そこで調べてみると、都市緑地法には、また別に地区計画等緑地「保全」条例という制度があります。まず、この制度はどういうものか、説明を求めます。また、けやき屋敷の緑地保全のためには緑化率だけでは足りず、保全条例を導入すべきではないかと考えますがいかがか、伺います。(Q1-3)

 【緑地は誰が管理?】

また、管理者も問題です。今後、事業が開始された場合、地区施設の緑地1・2の管理は誰が行うのか。欅興産か、河北病院か、または杉並区のいずれとなるのでしょうか。また、区が買い取ることはあるのか。さらに、買い取らなくても、市民緑地として一般に開放し、活用する可能性はあるかうかがいます。(Q1-4)

 もっとも樹林を開放することが適切かどうかは議論のあるところです。開放することで、公園のように誰もが緑に親しむことができる一方、人が踏み固め、土地が乾燥してしまうため、従来の生態系を守るためには、閉鎖して保全するほうがよいとの意見もあり、検討が必要です。

【じゃり道のけやき並木を保全すべき】 

 さらに、けやき屋敷の外側になりますが、屋敷の南側のじゃり道に沿うけやきの並木について、たびたび近隣の方々から大切なので保全してほしいとの要望を聞きます。地権者と協定を結ぶなどして、病院敷地の緑地と一体のけやきの並木として積極的に保全、整備していくことを提案したいと思います。

 けやき屋敷の森の大半が伐採されてしまうとすれば、区はせめて新しく緑地を作り出す努力をすべきです。そして、管理に関しても、これまでのように地権者まかせでなく、手入れの費用などについてもっと支援を行うべきではないでしょうか。見解を伺います。(Q1-5)

【河北病院屋上ヘリポートはあり?なし?】 

 つぎに、関連してヘリポートについてうかがいます。

 2017年秋に、私は河北病院のイベントに参加し、病院の理事長さんの講演を聞く機会がありました。その際、示された図には、ヘリコプターの絵が描かれていて、病院がヘリを利用する計画が当然のように語られていましたが、その後、区議会の質疑の中では「病院に確認したがヘリポートはつくらない」との答弁が繰り返されていて、不思議に思っていました。

 ところが、このたび入手した立面図や他の資料には、ヘリポートがやはり明記されています。

 ちなみに、航空法上のヘリポートには「公共用ヘリポート」と「非公共用ヘリポート」があり、ドクターヘリ専用の病院のヘリポートや警察のヘリポートなどは「非公共用」に該当します。病院ではあえて常設のヘリポートを設置せず、「飛行場外離着陸場」(臨時ヘリポート)で対応しているところも多いそうです。このほか、屋上などのヘリパッド「緊急離着陸場」もあります。

 いったいヘリポートはつくられるのでしょうか。病院はもしや、緊急離着陸場なのでヘリポートではないという解釈をしているのかもしれません。ヘリパッドはどうでしょうか、答弁を求めます。(Q1-6)

 【ヘリポート設置は自然保護条例違反では】

 ツミをはじめとする生き物の保護には、先に述べたように、40mの高層の建物も問題ですが、さらに問題なのはヘリコプターの発着です。「自然の保護と回復の条例」の観点からは屋上ヘリポートの設置はできないと考えますがいかがか、答弁を求めます。(Q1-7)

(2)施行協定について 

 さて次に施行協定についてうかがいます。

 秋からの事業着手を計画する土地区画整理事業の施行者会は、近く施行協定を結ぶと聞いています。そこでまず、施行協定を結ぶ意義、目的について説明を求めます。(Q2-1)

【土壌汚染対策と民法改正】 

 ところで、河北病院跡地の汚染問題について、後から汚染が発見された場合はどうするのかとの質問に対し、区は瑕疵担保責任の条項を施行協定に盛り込む旨、これまで答弁してきましたが、昨年の決算特別委員会で述べたように、今年4月に民法が改正されました。瑕疵担保責任の条項は契約不適合責任と名称もかわり、法に規定された権利等も変更されています。

 そこで、新旧制度の主な違いについて説明を求めます。また、河北病院敷地の汚染対策について、法改正による影響はあるのか、うかがいます。(Q2-2)

【土壌汚染対策の責任を明記すべき】 

 桃井原っぱ広場や馬橋公園拡張用地の土壌汚染については2年間の瑕疵担保責任条項で対応したということですが、今回の河北病院用地に関しては、期間はどうなるのか。

 河北病院用地が更地になって、杉並区に管理が移される時点を起算点として、工事期間だけでなく、学校が開校して以降も当分の間、例えば10年なりの間、汚染については河北病院が責任を負う旨を協定で明らかにしておく必要があります。

【汚染状況の把握が遅すぎる】 

 事業着手後、河北病院の汚染に関しては調査をすることが予定されているそうですが、本来なら施行認可以前に汚染の状況については明らかにしておくべきでした。当初から土壌汚染対策の必要を指摘されていながらここまで引き延ばした区の責任は重大です。

 なお、田中区長は昨年の決算特別委員会で私の質問に対し、「病院の土地が汚染されているかのような発言で風評被害だ」とか「政争の具」だとかいう発言をしましたが、これは大変失礼な発言です。

 河北病院ほどの規模の病院は、法律的にもまた都条例においても土壌汚染対策を求められる特定施設あるいは指定作業場に指定されているのであって、だからこそ私は調査を求めているのですし、まさに区長ご自身も、自らの責任で結んだ協定においてわざわざ土壌汚染について定めているのではありませんか。ひとの発言をデマよばわりするのはやめていただきたいと思います。

 【施行協定は、今議会に報告を】

 さて協定に戻ります。施行協定は5月末ころに締結すると聞いていましたが、いつ締結されるのか、うかがいます。また、当然区議会に報告するものと思いますが、9月議会では事業着手の直前すぎて、間に合いません。今議会中に報告して審議に付すことが当然と考えますが、いかがか、うかがいます。(Q2-3)

 【施行認可、仮換地…区議会には事後報告】

 本計画については、認可申請と区長による施行認可が昨年の区議会休会中の7~8月に行われ、区議会には事後報告でした。さらに、10月の仮換地指定とその確認についても事後報告で、例えば港区が同様の個人施行の土地区画整理事業において、区議会に説明したのちに仮換地指定の確認を行ったことと比べ、議会軽視であり、このように隠れて事業を進める態度は容認できないと、何度も指摘してきたところです。またも、区議会を無視して、勝手に協定を結ぶようなことは、今度こそあってはならないと指摘しておきます。

(3)情報公開について 

 最後に、仮換地の情報公開について述べます。

 先の第1回定例会において私は、仮換地に関する情報公開決定について質問し、公共用地すなわち区民の財産を権利交換する重大な内容であるにもかかわらず、企業活動情報、個人情報等を理由に一部非公開としたことは、杉並区自身が定めた情報公開の手引きに照らしても、具体性、客観性の点で不当であり、公開すべきであると指摘しました。

【「2年前の不服請求を処理中」!?】 

 残念ながら、区の答弁では、不当な処分が改善される様子はないので、不服審査請求を提出しました。

 ところが、請求書の提出時に驚くことを聞かされました。いま、2年前の請求を処理しているので、かなり待っていただくことになる、との説明を受けたのです。まさかそんな状態だとは思いもよりませんでした。

 例えば本件の場合、仮に2年後に黒塗りを不当として情報を公開すべきとの結論が出たとしても、その時には多分工事が始まっていて、情報は何の役にも立ちません。これでは、区が公開しないと決めたら、それがどんなに不当な決定であっても、逃げ得ということになってしまいます。

【不当な処分は区の「逃げ得」に】 

 行政不服審査法の目的は、法第1条に「国民が簡易迅速かつ公正な手続きの下で不服申し立てをすることができるための制度を定め、国民の権利利益の救済を図るとともに行政の適正な運営を確保すること」とされています。迅速さはこの法の目的の1つでもあります。

 ところが、杉並区においては不当な処分が行われても、時間がかかりすぎて、権利利益の救済が実質的に不可能になっている実態があります。この状況をこのまま放置しておくことはできないので以下質問します。

 【なぜ審査に2年もかかるのか】

 まず、杉並区においては、情報公開に関する審査請求は情報公開・個人情報保護審査会、それ以外については行政不服審査会がもうけられています。それぞれの審査会の構成、委員の人数および各人の専門資格について説明を求めます。(Q3-1)

 次に、情報公開請求に関する審査請求について、平成28年度以降、年度ごとの請求件数、処理件数について、説明を求めます。また、処理に要した期間について最も短いものと最も長いものを示してください。(Q3-2)

 情報公開請求に関する審査請求が2年以上も滞っているのはなぜでしょうか。その理由について説明を求めます。(Q3-3)

 近年、多数の情報公開請求が集中したため業務過多になっているとの話も聞きましたが、情報公開請求の件数はいかがか。推移をお示しください。(Q3-4)

【知る権利ないがしろ、意図的なサボタージュ

 普通に考えて、これだけ業務が滞っているのは、業務量に対して職員が不足していることが容易に想像されます。そこで、情報公開にあたる職員、および審査請求にあたる職員の人数および職位を確認します。(Q3-5)

 情報公開は、区政の公正さを担保する大変重要な業務です。請求が増えて審査請求ができないなどといういいわけで、情報公開に対する不服申立てを実質的に封じている現状は、区民の知る権利をないがしろにする、意図的なサボタージュといわれても仕方ありません。

【情報公開の人員が足りない】

 情報公開の窓口で対応されている職員さんは、皆さん、大変誠実、かつ丁寧に対応して下さいます。しかし、見るからに人数が足りないのがわかります。この問題は、担当職員の個人的な努力で解決できることではありません。杉並区の人事として、情報公開に関する職員の体制を大幅に増強し、人材の育成を進める必要がありますがいかがか。

 また、審査請求に関しては、法の趣旨に照らして少なくとも3か月程度で回答できるよう標準審査期間を定めることが必要です。早急に体制を整えるよう求めますがいかがか、うかがいます。(Q3-6)

【「個人施行」が隠れ蓑に】

 阿佐ヶ谷の区画整理事業について述べてきました。駅前のきわめて公共性の高い場所の開発であり、しかも、駅前一等地の公共用地の処分にかかわることでありながら、個人施行という制度に隠れて、区議会にすら十分に報告しない姿勢は言語道断であり、民間事業者への利益供与が優先されていることを想像させます。先の予算特別委員会においても他の議員から、容積率の引き上げに関して一部の事業者への優遇ではないかとの指摘もあったところです。

 そうではないというのなら、区長は議会、区民に対して正々堂々と情報を公開し、かつ、意見を率直に受け止めて計画を見直していくべきです。真摯な対応を求めて質問を終わります。

杉並区は早急に商店街支援を(補正予算案に賛成しました)

 2020年4月30日杉並区議会第2回臨時会において補正予算(第2号)(10万円の特別給付金など)に賛成の討論を行いました。特別給付金は国の政策ですが、杉並区としても、早急に中小企業、特に商店街への支援を行うよう求めました。

(以下は原稿です)

 議案第50号令和2年度杉並区一般会計補正予算(第2号)について意見を述べます。本議案は、新型コロナウイルス感染症対策として、国の特別定額給付金の支給を行う等に関するものであり、必要な事業であることから賛成します。

 なお、経済の収縮、事業活動の自粛により一人1回10万円の給付だけでは生活が成り立たない方も多数いらっしゃいます。区としても、国に対してさらなる国民生活支援を求めることを要望します。

 ところで、今回の補正予算第2号において産業政策とりわけ商店街支援が盛り込まれなかったことは残念です。今後に向けて要望を述べます。

 この間の自粛要請のため、小規模事業所とりわけ個人商店は厳しい経営状況に追いやられています。緊急事態宣言は来月も継続する方向で検討されていると伝えられています。すでに区内でも廃業を決めた店舗が何軒もあると聞いています。休業が延びれば延びるほど、こうした事業所が増えていくものと思われます。大きな産業のない杉並区において、商店街の重要さは指摘するまでもありませんが、このままでは、その大切な商店街が壊滅状態に至る可能性すらあります。

 他区においてはすでに商店街支援として、たとえば、プレミアム商品券の追加実施、あるいはクラウドファンディングによるサポートなどが発表されています。

 杉並区も、国、都の政策を待つだけでなく、独自の産業支援策を打ち出すべきと考えます。早急にご検討いただくよう要望します。

 東京都の感染拡大防止協力金や国の持続化給付金も支給されることになりますが、そもそも個店には情報がなかなか届かない、また、手続きが煩雑で申請に苦労するとうかがっています。必要とする方が迅速に手続きをとれるよう、区は産業振興センターの人員を増強し、また、休業中の区施設を利用して予約制の相談窓口を増設するなど、きめこまかな制度の周知、および手続きのサポートを行うべきと考えます。

 コロナウイルス感染対策による経済的な打撃は、リーマンショック以上といわれています。区は今後、区内事業所の実態を調査し、しっかりと把握して経営のサポートを行っていくよう求めて賛成討論といたします。