わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

決算認定に反対する意見

10月15日決算委員会の「意見開陳」において、決算認定に反対する立場から意見を述べました。児童館やあんさんぶる荻窪など施設再編整備計画を通して、区政のさまざまな問題点が明らかになったと思います。
(以下は原稿です。実際の発言とは違う部分もあります)
 杉並わくわく会議として、平成26年度決算について意見を述べます。
 昨年は、安倍内閣により7月に集団的自衛権行使容認の閣議決定がなされた年であり、一方、沖縄県の4つの選挙で辺野古新基地反対の民意が明確に示された年でもありました。日本の国のあり方が大きく変わろうとする中、独立・自主の国の進路が求められています。
 4月には消費税率の引き上げが強行され、アベノミクスによる物価上昇とあいまって、国民生活は苦しくなりました。杉並区においても例外ではありません。杉並区民の所得が一定の時期から低下してきていることは、私も様々な統計資料により確認してきたところです。こうした趨勢にあるなか、区に求められるのは、公的サービス、公的施設により、区民の生活と営業を支えることであり、その重要性はいよいよ大きくなっているとの観点から意見を述べます。
【施設再編整備計画「説明した」というが】
 質疑の中でも、時間を割いてまいりましたが、昨年度は、なんといっても、施設再編整備計画の初年度ということを抜きには語れません。
 一昨年秋、区民にとっては、突如示された施設再編整備計画でした。
 区政全般にわたり、これまでの杉並区を根底から変えてしまうような計画であり、しかも、児童館、ゆうゆう館、科学館、あんさんぶる荻窪などをめぐって、多くの疑問が呈されたにもかかわらず、最初の提案からわずか半年で確定されて、計画は実施段階に入りました。
 区はことあるごとに、説明会を開いてきた、パブコメをやった、手続きはちゃんとふんでいるといいますが、区民としっかり対話したとはとうてい言えないと思います。
 私自身一昨年の素案発表以来、できるかぎり説明会には参加してきましたが、疑問の声があっても、すべて「決まったことなので」と却下される様子を目の当たりにしてきました。327回の説明会を開いたというので、リストをいただきましたが、その多くは、個人に対する説明約90回や事業者、官庁、職員団体に対する説明約20回、町会など地域団体の定例会に参加しての説明約120回などであり、実質的な説明会はきわめて数少ないことがわかりました。
 計画に対する区民意見募集(パブリックコメント)も行われましたが、481項目中、児童館廃止反対の意見が60項目、あんさんぶる166項目、科学館65項目が提出されたにもかかわらず、無視して計画は進められてきました。
【あんさんぶる荻窪財産交換に疑問の声】
 委員会質疑の中で、施設再編にかかわる個々の問題をとりあげました。特に、あんさんぶる荻窪荻窪税務署等用地の財産交換については時間をとって質疑いたしました。そもそもこの財産交換については、大きな疑問があります。駅前の一等地を手放すこと、まだ築10年しかたたない新しい施設をやめてしまうことの無駄、それにかわる新しい施設を30億円もかけて建てることの無駄など、誰が見ても区政にとってお得ではない案がなぜ計画決定されてしまったのでしょうか。
 あんさんぶる荻窪の財産交換、それに伴う児童館の廃止、桃二小の改築と話が広がるにつれ、地域には疑問の声がわいています。
荻窪町会の要望書作成に区が関与】
 昨年の夏に提出された荻窪南口の7人の町会長連名の要望書については、一般質問でも取り上げましたが、すでに2つの町会が要望を取り下げ、また他の町会長さんも「あんさんぶる荻窪の交換に同意した覚えはない。こんなことになってしまうとは思わなかった。桃二の建て替えだけだと思った」と悩んでおられます。区長のおっしゃった「あんさんぶるの財産交換を前提として」という地元の総意は、仮にあったとしてもすでに破たんしました。
 この要望書に区職員が関与していたことも明らかになりました。そうした経緯についての説明会での回答と議会答弁の食い違い、また面積にかかわる説明の誤りなど、区側の場当たり的で不正確な説明がさらに混乱を招いていることも指摘したいと思います。
 もうひとつ、この問題で、区が、連合町会の内部に不和のたねをまいていること、また、荻窪のまち全体を見わたしたときにも、荻窪の南と北での財産交換が、住民どうしの摩擦まで引き起こしていることも指摘しなくてはなりません。区長と区役所の責任は重大です。
荻窪北児童館の存続を求める】
 荻窪北児童館の廃止にともなう代替施設について、町会の方々は「桃二小を改築すれば、児童館が丸ごとすぽっと入る」と言われ、それを信じていました。いまでも、そう思っている人もいるのです。しかし、現実には、改築された桃二小に学童クラブ、保健所に乳幼児居場所事業が移るだけで、あの広い体育室や子どもたちがのんびりくつろぐエントランスホールを含む児童館の他の機能は廃止されることが明らかになりました。
 あんさんぶる荻窪地元の町会、保護者の皆様は、荻窪北児童館の存続を強く求めています。いまJR中央線から見える南口の2つの商店街のアーチには「子どもの居場所を守ろう」「税務署ストップ」という横断幕が張られています。
 かりに税務署が移転してきたとしても、2階の荻窪北児童館だけは存続させてほしいという要望に対して、区はこれまでセキュリティ上の問題を挙げていましたが、各地の税務署の例をみればそれは理由にならないこと、また、面積的にも1フロア程度の面積がゆうに余ることが質疑で明らかになりました。荻窪北児童館の存続を区は真剣に追求すべきです。
【児童館の「再編」で子どもの居場所がなくなる】
 和泉児童館、荻窪北児童館の廃止に際して、事業がどのように継承されるのかも確認しました。児童館といううつわがなくなることで、事業はきわめて貧弱になり、貴重な子どもの居場所が失われます。中高生の居場所が大きな話題となりましたが、杉並区がこれまで他の自治体よりもぬきんでてすぐれていた児童館事業を今後は順次廃止していくことで、中高生の居場所が失われていくだろうことは明らかです。 新たな中高生の居場所を云々する前に、現在ある子どもたちの居場所をどう守っていくかを考えなおすべきと指摘します。
 児童館ばかりでなく、区民と区政が営々と努力して作り上げてきた杉並区の文化を区役所のつくった一片の作文によって葬り去ってよいものでしょうか。
【事業の削減、人員の削減】
 施設再編整備計画そのものが、いまの区政のありかたをそのまま体現した計画です。
 区民のニーズにこたえる事業の発展よりも、事業の削減、人員の削減が優先される。そして、浮いたお金は施設の無用なスクラップアンドビルドに使われる。
 老朽化のなかで、施設を効率的に建て替えていく施設再編自体は私も必要だと思いますし、否定しません。しかし、一昨年からの動きをみる限り、計画は、特定の事業を廃止したり、人員削減を行ったりするための便法になっており、本当に効率的な行政を実現するためのものになっていません。また、廃止する、統合するといわれても、その後の施設の姿、また、跡地利用などが不明瞭なままでは、賛同する気持ちになれないのは当然なことです。こうした点からも、もっと発展的で希望のもてる計画へと、今後大幅な見直しが必要であることを指摘します。
【施設再編に縛られる】
 しかも、施設再編整備計画にすべての事業が拘束されています。さまざまな分野について、所管の職員さんがたと意見交換するたびに、「それは施設再編担当にきかないとわかりません」と何度言われたことでしょうか。 
 本来、事業部門の需要にこたえ、また、各部門の調整を行うのが企画、財政部門であるはずです。しかし、今の杉並区では、施設再編が大手を振って通り、そのわきで、区民に直接かかわる事業を所管する部門が遠慮して小さくなっています。これは自治体のありかたとして転倒しているのではないでしょうか。
【言い換えても「廃止」は「廃止」】
 さらに、施設再編整備計画をめぐる議論の中で、本当にまずいと思うのは、実際には廃止されたり、中身が薄くなったりする計画なのに、「継承・発展」とか「充実」と、言葉のうえで糊塗していることです。
 児童館を例にとると、区は当初の案で児童館を「廃止」としていたところ、利用者から猛反発が出たので「児童館機能の継承・発展」という表現に変え、「廃止」という言葉を使わないようにしました。しかし、来春には和泉児童館が(仮称)子どもセンターに再編される計画であり、そのさいには条例上児童館を「廃止」することが明らかになりました。
 こうした言葉の使い方一つとっても、区民に対して不誠実であり、改めるほうがよいと指摘します。「継承・発展」のことばでごまかさず、「廃止」なら「廃止」の計画であることをかかげて、正々堂々と区民と対話していくべきです。
【反対意見こそ「宝の山」】
区がどうしても廃止しなくてはならない事業だと考えているなら、反対する人たちを、時間をかけても、説得する覚悟を区長はじめ区役所の皆さんはもってほしいと思います。対話の中で、なるほどと区民が納得するかもしれません。区役所も区民の側もお互いに一定の譲歩をすることもあるかもしれません。あるいは、話し合いの中で、もっとすぐれた計画に昇華していけるかもしれません。俗に「クレームは宝の山」ともいいます。反対する人は少数であり無視してもいい、という今の区の進め方は、自ら発展の芽をつんでいるということです。
【区長の不規則発言】
 そうした点で、私は久しぶりに区議会にもどってきて、今委員会、区長の不規則発言に驚き、また悲しく感じました。たとえ意見が違う相手でも、自分にない発想の源かもしれません。排除せず、対話することで自らも成長、進化するという度量をもっていただきたいと思います。あえて苦言を呈しました。受け止めていただければありがたいと思います。
【おわりに】
 今委員会の審議では、あまり述べることができませんでしたが、今進められている各分野の行き過ぎた民営化、また、区民負担の増加、区独自の福祉サービスの削減などについても問題は大きいと考えます。これらについては、今後の議論の中で問題提起していきたいと考えます。
 以上をもちまして、杉並わくわく会議として、平成26年度一般会計、国民健康保険事業会計、介護保険事業会計、後期高齢者医療事業会計、中小企業勤労者福祉事業会計の各決算について、認定には反対いたします。
 決算委員会にあたり、多数の資料を調整していただきました。多くの職員の皆様にお世話をかけ、貴重な資料を作成していただきましたことに心より御礼申し上げます。
 区民が主権者であるこの杉並区の区政を、職員のみなさんと共に、大いに議論もして、よりよいものにしていきたいとの呼びかけをもちまして、意見といたします。