わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

杉並保育園民営化に関する陳情を審査しました

 2017年2月21日区議会保健福祉委員会で「杉並保育園の民営化に関する」陳情」を審査しました。保育園保護者の方々が1000人の署名を集めて提出されたものですが、賛成少数で不採択となりました。
 私は、 
○計画性がない
 民営化の具体的な計画がない中で、なしくずしに1園、2園と民営化が進められている。
○進め方が問題
 そのため、園の名前がいきなり発表されて「決まったことです」と言われる。保護者が意見を言っても全くとりあってもらえない。
○杉並保育園は民営化しないはずだった
 杉並保育園はすでに園舎の建設が済んでいるため建設費補助金がもらえるメリットもない。しかも以前「民営化しない」と区が説明していた。
○区役所が議会軽視の発言
 区役所は保護者説明会で「議会が決定するものではない」「区がすでに決定したこと」と議会軽視ともとれる誤った説明をして保護者があきらめるようしむけている。
 などの論点を追及しました。

(以下要旨)
◆計画性がない問題
(松尾)杉並保育園の民営化は公設民営で指定管理か、廃止して民間にするか。
渡辺保育課長)公立としては廃止して民営化する。
(松尾)民営化の計画を決める「保育園あり方検討会」について。
 いま質疑を聞いていると、去年の3月ごろにはほぼ報告書ができていた。しかし、行革の観点をあわせて検討する必要が出てきたということだが、もっと減らせみたいな話があったということ?
渡辺保育課長)新支援制度の中で公立園には連携園という役割が求められるということで検討してきた。しかし、最後にまとめようというとき、もう少し行革の観点でいかないとという意見が出たので、来年度行革本部会の検討の中でやっていくという形に変わった。
(松尾)区役所の皆さんがこれだけ時間をかけて結論を出せないのであれば、この際、外部の専門家や区民の代表、区の現場職員をまじえてオープンな審議会などを設けて検討すればよいのではないか。
渡辺保育課長)あくまでも行革本部会としてまとめていく。子ども子育て会議の意見も聞くので、いっさい外部の意見をいれないということはない。
(松尾)陳情者も、またこれまでの公園の問題でも必ず住民の方がいうのは、区の人といくら話しても「もう決まったことです」としかいわないと。保育園は子どもたちの生活、いのちにかかわること。もうひとつ前の段階で「まだ決まってないんですが、どうですか」と区民に意見を聞く手続きが必要だ。
 平成17年に10園民営化を計画したというが、10年間で10園という締め切りはどっちにしろ過ぎている。ならば残っている2園含めて次の計画年度でやるのが普通。断絶した2つの計画みたいに考えるのは筋が通らない。先の計画の見直しだったはずでは?
◆「あくまでも10園民営化は必須」
渡辺保育課長)あくまでも10園は既定の方針。行財政改革推進計画のローリングの中ではさらに2園という話も出ており、10園については予定どおり行う。
(松尾)行革推進計画であと2園をやることこそ矛盾で、ありかた検討会の方針が出ていない、来年行革本部会でやります、というのにプラス2園やることは決まっている。何の根拠もなくやってるということになるんじゃないか。主客転倒だ。トータルに、こういうふうにやりたいんです、ということが出てくれば、良い悪いは別としてわかる。しかし、今回の9月の案(杉並、上井草保育園)でも、この2園は何なの?まだ計画もないのに、となる。杉並と上井草の2園とりあえず最後にやりますというが、普通に考えたらそこは止めて次を考えるべき。
 陳情ではプロセスをいったん停止してくださいと述べられている。ありかた検討会できちんと議論して、区民に受け入れられた段階でリスタートすればよい。
(有坂保健福祉部長)ありかた検討会で17年には10園民営化と決めた。10園は必須と思っている。
◆民営化についての説明は
(松尾)杉並保育園が民営化に決まった経緯に関して。保護者説明会の議事録を読んだが、コスト面の話が読み取れないが、保護者に対してはどういう説明をしたのか。
(高沢保育施設担当課長)阿佐ヶ谷南、阿佐ヶ谷北、上井草、杉並の4園の改築の中で地域バランス、障害児指定園など検討して最終的に結論にいたった。
(松尾)財政的な面は。
(高沢保育施設担当課長)一般財源の11.08%まで保育の経費がかさんでいるので、次の世代にも保育を整備するため、行革効果の話をした。
(松尾)こういう話は理念でやっても仕方がない。数字として、いくら浮くのか、どのくらいの財政効果があるのかという説明はしているのか。
渡辺保育課長)そのときにこの数字を出したかどうかはわからないが、運営費のコストでいくと事業別コスト計算書で区立1人あたり240万、100人だと2億4千万。指定管理者では210万、2億1千万程度。民設民営の場合には、建設費を国が2分の1、都が4分の1負担、100人規模で5000万円くらいが公定価格分になるので3700万円くらい補助があり、さらにコスト面で有利。
(松尾)建設費に関して、民設だと建設費がかなりの部分補助金でまかなえるというが、説明会の議事録をみると、杉並保育園の場合には、園舎をすでに区が建てているので、建設費面のメリットはない。だったら区立のままでもいいんじゃないかという意見もある。
渡辺保育課長)杉並保育園建設費の補助はない。運営費のほうでみると、民設民営が有利。
◆杉並保育園は民営化予定ではなかった
(松尾)同じく議事録から。馬橋保育園を民営化する際の説明会で、杉並保育園は民営化しないと言っていた、という発言が出てくる。これは事実か。
(高沢保育施設担当課長)一昨年の3月だったと思う。
(松尾)そのあと、変更があって杉並保育園が対象となった?
(高沢保育施設担当課長)当時は地域バランスを中心に検討、その後、障害児指定園ということを検討する中で杉並は民営化ということになった。
(松尾)杉並保育園の保護者にとって、不信感、不安に結びつく。1年で決定が変わっていく一貫性のなさ。
 引き継ぎについて。4か月で長い目にとっているから問題はないという話だったが、保護者からは半年くらいはほしいという希望が出ていることは重ねて申し上げる。
◆「民営化は議会の議決を得るものではない」と説明
 次に、議事録から。1月15日、2度目の説明会、50番目の質問として保護者が「2月の議会で決めるのですか」。答「民営化については区の方針としてきまっています。民営化について改めて議会にはかって議決を得るという性格のものではない」と答えている。
(高沢保育施設担当課長)最終的には3月の本会議で予算が議決されなければ実際にことは進められないと説明している。
(松尾)民営化を決定するのは区議会じゃないという認識でいいのか。
(高沢保育施設担当課長)そのあとに「最終的に3月の本会議で…」と回答。
(松尾)認識が全然違うと思う。次に53番の説明「議決事項ではなく報告事項ですので。この民営化についてはご意見を受けて進めていく」、54番「保健福祉委員会というのは結局ただの報告なんですか?」という質問に対して「掘り下げての審議というのはたしかにもうありません。こういった計画関係というのは議会のチェックが入りすぎてしまうとものが進まなくなってしまう」と答えている。
 これを見て愕然とした。区議会の報告、議論は、意見を聞きましたという話であって、決定には関わらないという認識でいるのか。
(有坂保健福祉部長)私は議会のチェックがありますという話をしてきた。説明不足だったのは廃止条例、これは必ず議会のチェックがかかる。また指定管理も議会のチェックがかかる。もちろん議会のチェックはある。ただ、方針は区のほうで決めるということ。
(松尾)そうだと思う。最終的には、保育園を条例上廃止する場合、また指定管理の場合も指定管理者の指定は議決をみなければいけないので、最終的には区議会が決める。そんなの当たり前ですよ。それをなぜ説明しないのか。区役所が決めた、議会は関係ない、だからこのまま進む、そういう説明をしてる。
(有坂保健福祉)私はそういうつもりではない。あくまでも、保健福祉委員会でも議論する、予算の場でも議論できる。廃止条例、指定管理の話がもれてしまったが。
(松尾)全く基本的な、議会制民主主義の基礎。議会の議決事項の問題。うっかり忘れたのかも知れないけど、私は意図的だと思うけど、うっかり忘れるようなことじゃない。議会軽視としか言いようがない。
 57番「9月のパブリックコメントを経て(行財政改革推進)計画を決める議会というのがあるんですか」との質問に対し、何と言っているか。「いえ、議会の議決をみています」と言っている。議会で決定してないですよ、これ間違いですよね。
(有坂保健福祉部長)すぐに打ち消すべきだったが、決して議会軽視というつもりはないし、手続き上の瑕疵がないよう努めたい。
◆意図的に誤った説明?
(松尾)我々はこういうのを読むとぴきっと来るけど、そういうことを言っているんじゃなくて、要は保護者の皆さんに誤った説明をしたということ。私はいつも、こういう相談を受けるとなんというかというと「議会が決定するまでは決定ではありません」といってご説明する。区議会が廃止するまではこの園は存続する。でも区は、区役所が決めたんだから、もう廃止の手続きに入っていくんです、決まったことです、と言っている。これは全然ルールが違うんです。間違った説明を前提に、結局、保護者の方たちは「もう決まっちゃったのか、仕方がないんだな」とあきらめる。それをねらってるんじゃないか。廃止についても、指定管理についても、最後は議会が決めるんだということを保護者に対してはきちんと説明をしていただきたい。もしも、最後のところで杉並保育園の廃止条例が杉並区議会で否決されたら民営化はできない。そのことをどうして区民、保護者の皆さんにきちんと伝えないのか。
 いま部長がまさにおっしゃったように方針を決めるのは役所。確かに議会に決定権はない。だけど、それなのに保護者に対しては「議会の決定をみています」とか誤った説明をして、それを訂正してない。そうすると保護者の皆さんは「もう決まっちゃったことなら反対してもしょうがない」と黙ってしまうことだってある。そういう影響を与えたことが問題だと思う。
(高沢保育施設担当課長)この57番は指摘の通り。誤解を招き失礼しました。
(松尾)いま、間違っていたと認めていただいた。書面で保護者の皆さんにきちんとお伝えいただきたい。
◆選定委員会には上井草同様に保護者4名の参加を
 最後に選定委員会のこと。上井草では保護者4名が認められて積極的に活動していると聞く。杉並保育園の保護者が希望すれば同様に4名入ることは可能か。
(高沢保育施設担当課長)上井草は特例で期間が短いので4名が入った。杉並は従来どおり2名で参加していただきたい。
(松尾)上井草で4名で入れたことはよかったと思う。公募要項についても保護者の視点が入れられて改善された点がある。今後、杉並保育園、その後民営化があるとすればそういう園に対しても2名でなく、もっと大勢いれてもらうよう要望する。
◆運営事業者公募要項の改善
(松尾)次に、選定の公募要項について。園長の要件、人件費比率、離職率など、今回の公募要項ではどうなっているか。
(高沢保育施設担当課長)追加・変更がさまざまある。認可保育園の運営実績1年以上をおおむね6年以上としたこと。事業者の運営費にしめる人件費の割合がおおむね70%。年休、育児休業の適切な付与がなされているか、提出書類の中に、人件費比率、離職率のわかるもの、こういった部分が追加された。
(松尾)園長に関しても保育所における1年以上施設長の経験があるという項目も入った。人件費比率、離職率について直近3年間の書類ということで、客観的な判断ができるようになった。こうしたことは、小さなことのようだが、今後民営化を進めていくのであれば、優良な事業者を選んでいくうえで大事なこと。ガイドラインもつくるということだが、今後とも杉並の保育園についてはこの公募要項の経験を活かしていただきたい。
◆選定委員会と区役所の関係
(松尾)関連して、上井草から出た陳情に書かれていることなので詳しくは述べないが、ある項目が、選定委員会で議論されていないのに事務局サイドで勝手に削除されてHPにアップされていたという件、もうひとつは保護者からたくさんの提案項目に対して、会議にのせる以前に事務局、役所サイドからかなり否定的な意見が全委員にまわされたという点、事務局としての区役所サイドのあり方について越権ではないかという指摘がされている。
(有坂保健福祉部長)削除した項目は「参加意思表明」という実務的な事務局サイドの項目。私の判断で削除した。そのへんの認識は整理して選定委員に知らせている。
(高沢保育施設担当課長)後段の保護者からの意見について。限られた時間の中で議論をするので事務局が整理させていただいたもの。1回、2回とも4時間近く議論いただいて、最終的にいいものができたと思う。
(松尾)公募要項を決めるのはあくまでも選定委員会。事務的なもの、たしかにそれ自体が大変な影響があるという意味で言っているのではないが、選定委員が項目を精査した結果、公募要項ができるわけなのであって、それをゆるがせにしてはいけない。独断で削除するのはどうかと思う。もうひとつ、改善項目のリストに対し、コメントをつけただけというが、あらかじめ役所から否定的なコメントがついてくると委員の皆さんも「やっぱりだめかな」というほうに傾く。
 上井草も、杉並もそうだが、みなさんに選定委員に入ってもらってそこで皆さんの意見を反映していい公募要項をつくり、いい業者を選んでいきたいと区はいう。ところが、選定委員に入ってみたら日にちがなく、意見を出しても事務局からそんなの無理ですと言われたり、自分たちが話し合っていないことが削除されたり、そういうことが起こるようでは結局選定委員に入っても形だけのことになってしまう。事務局は事務局の分に徹していただきたい。

<意見 採択を主張>
 理由の第一、杉並保育園が民営化に選ばれたことについての合理的な説明が得られないこと。
 ありかた検討会の報告書が来年度末まで発表されないという中、なぜこの園か。区内的なバランスからも疑問がなげかけられている。民営化の根拠を区が示せない点に大きな問題がある。
 第二に、なぜ民営化を進めなければならないのかという点にも納得いく説明が得られない。民間は経費が安上がりという説明があったが、ではそれでトータルどのくらいのメリットがあるのか、数字をふまえたきちんとした議論が行われていないことは問題。
 杉並保育園についてはすでに建物ができていて、建設費の面でのメリットもない。あわせて、今後区立施設の更新費用が大きな負担になるということがいわれているが、この負担のかなりの部分は学校という大きな施設の問題。保育園の1つ1つの建設費がそれほど大きな負担になるとは思えない。今後、財源的な説明が必要。
 第三に、園の廃止および民営化に反対する立場から。民間であっても同じ認可で質の面で違いがないという説明がされるが、明らかに質は違う。なぜなら保育士の経験年数が違う。配置についても区立であれば加配がある。質疑の中で経験年数がある人もいるという答弁もあったが、何年かという質問に対して把握していないと答えている。私たちの知るさまざまな指定管理、私立の園では、経営的な問題からどうしても保育士の経験年数が短くなる傾向があり保育の質に直結するところから、民営化には慎重であるべきと考える。
 最後に、説明会の中で区議会の役割について間違った説明をしていること、あるいは意図的に誤解を招く説明をしていることは大変に遺憾なことであり猛省を促したい。