わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

ゼロにならない待機児童、高円寺小中一貫校めぐり前代未聞の住民運動(2017年度予算に対する反対意見)

 2017年3月15日予算特別委員会において来年度予算に対する反対意見を述べました。内容として(1)保育(2)杉一小と阿佐ヶ谷のまちづくり(3)高円寺小中一貫校(4)施設再編整備計画(特に児童館と永福図書館について)他について、質疑の中で言えなかったことを中心に発言しました。特に(2)については当面の重大な問題です。皆さまのご注目をお願いします。
(以下は原稿です。実際の発言とは違うところもあります。)
 杉並わくわく会議として、平成29年度杉並区一般会計予算及び特別会計予算に対しては反対とします。質疑の中では時間がなく十分触れられなかった点もありますので、それらも含めて、以下、意見を述べます。
(1)保育
 第一に保育についてです。今年も保育園の入園希望者が480人増え、待機児童問題はひきつづき深刻です。区は待機児童ゼロをめざして今年緊急対策を行ってきたのになぜ待機児童が発生するのかということにはにわかに納得できない向きもあるかと思います。
【達成できない本当の待機児童】
これについては、待機児童の定義に関してやや混乱があるのではないかと思い、質疑しました。決算特別委員会のときも言いましたが、待機児童には新定義・旧定義のふたつがあり、杉並区がめざす「待機児童ゼロ」は認可外施設に入った人などを数えないいわゆる「新定義」のものです。まだ結果は出ていないものの、あれだけ無理をして保育園をつくったのですから、当然、このゼロは達成できるものと期待します。
 一方、旧定義すなわち法の定める保育義務に忠実に考えればいわゆる「隠れ待機児童」、ちなみに昨年の春で2100人以上に上りますが、これを解決しないことにはゼロになりません。あれだけ無理をして保育園をつくっても、もともと達成の見込みはありません。
【待機児童問題はPRのネタではない】
 しかし、4月になれば区は「待機児童ゼロ達成」と華々しく発表するでしょう。そしてそのために、子どもたちの遊ぶ公園が犠牲になったことも「仕方なかった」と。
 「待機児童対策をがんばる区長」は受けがいいとお考えかもしれませんが、PRのために待機児童対策をかかげることはいいかげんにやめていただきたいと思います。「待機児童」はキャンペーンのネタではありません。行政は淡々とそして着々と保育所整備を行わなければならない。それは法に定められた義務なのであって、今だけ行うとか緊急に行うとかいう性質のものではありません。
【井草、久我山への地域偏在の結果】
 質疑では、認可保育園の2歳児、3歳児の空きを分析し、それが井草と久我山・高井戸に集中していることも指摘しました。これだけ入園が厳しいのに公立保育園の2歳に空きがあるなど考えられませんが、井草地域は2園に空きがあります。地域偏在については、昨年の計画当初から多くの議員や地域の方が指摘してきたことですが、ひとつの結果が出たと思います。
 区長は私の指摘に対して「つくる必要がなかったというのか」と言いましたが、私はそのようなことは言っていません。地域の入園希望者にとっては幸いだったと言ったはずです。予断をもって人の発言を歪曲するのはやめていただきたいと指摘します。
 「政治的な意図をもっての発言」とも言われましたが、これもいかがなものかと思います。住民も私たち議員も、杉並区の良さを守り発展させたいために言いにくいことも言っているのであって、それを政治的に解釈し、敵視することは問題です。もっと謙虚に耳を傾けていただきたいと思います。
 保育の質についても、特に新設園の保育士さんの人材確保に関しては大変心もとないものがあります。まだ認可が下りていない保育園がかなりあるようですが、無事開園できるよう祈ります。
【数さえそろえば「なんでもあり」では困る】
 民間の保育園については、労働環境についてどう考えているのかと思うような企業も入っています。区内に小規模保育園を開園するある企業は経営理念に電通事件で問題となった「鬼十則」を掲げています。また別の小規模保育園はフランチャイズチェーンですが、都内および近郊では突然閉鎖した園もあるそうです。認可園の建設を予定している高円寺の土地は、接道面が短く、両側に民家が軒を接しています。とても保育園を建てられる土地の規模、形状ではありません。こうした例を見ると区は保育園の数ばかりをおいかけて、なんでもありになっているのではないでしょうか。子どもたちを安心して預けられる保育園になるのか、大変不安です。
【民営化と補助金の関係】
 次に、保育園の民営化についてのべます。質疑の中では補助金について説明を求めました。区は公立保育園の運営費、建設費の国庫負担が小泉政権時代の三位一体改革によりカットされ、そのため私立にシフトせざるをえないと説明してきましたが、当時の都区制度改革のなかで、三位一体改革もふまえて区への分配率が引き上げられたことを確認しました。以降、都区財調の基準財政需要額のなかに区立保育園の運営費も含まれています。直近では55億円程度が算定されていることも確認しました。財調の仕組みの中なので全額が財調でカバーされるわけではありませんが、区立は区の独自財源だけでまかなうかのような表現は正確ではないことを指摘しました。
 また、職員削減という点を見ても、これまでも指摘してきたように、この10年間で区の人件費総額約20億円削減する間に委託費が90億円近く増えており、金額的には行革効果は全くないどころか、かえってお金がかかっています。このように保育園の民営化の財政的な根拠はきわめて薄いものと考えます。
【公立・私立の保育士配置には違い】
 保育の質の面からいっても、区はこれまで「公立も民間も同じ認可であって質は変わらない」という趣旨の説明をしてきましたが、現実は違います。民間団体の調査に対し区が回答した資料をみると、保育士の加配に関して、充実・休憩保育士、朝夕保育士、延長保育など、区立と私立では明らかに配置に差があります。
 では何のための民営化かと考えると民間企業のビジネスのために公的な資源を提供するためでしかありません。
 区は新年度行革本部会で保育園の民営化について検討、決定するとしていますが、これ以上の民営化については立ち止まるべきと指摘します。
(2)杉一小と阿佐谷地域のまちづくり
 第二に、杉一小と阿佐谷地域のまちづくりについて述べます。
 私たち阿佐谷の人間にとって、阿佐ヶ谷は駅前に杉一小があり、けやき屋敷があって、その先に河北病院があること、そのものが阿佐谷のまちです。それが大きく変わろうとしています。河北病院の移転じたいは、民間の計画でありやむをえないものとしても、行政主導でこの一帯を全く違う町にすることには慎重であるべきと考えます。
容積率引き上げは慎重に、高さ制限が必要】
 提示されたB案では、杉一小の現在の敷地を用途変更し、容積率を引き上げて13階建てのビルを建てる可能性が示されています。規制を緩和する方に変更するわけですが、行政は本来、民間の開発行為に規制をかけることが役割です。むしろ自ら高さ制限を設けるなどして、景観に配慮したまちづくりに誘導することが望ましいと考えます。
 阿佐谷の南口は13階と16階のマンションが相次いで建ち、景観が一変しました。そのとき区はなんら規制の手段がなく手をこまぬいているだけでした。北口も同じようになってしまうのか。しかも、行政の主導で行うのでしょうか。杉並区は景観条例にも高さ制限がありません。区長のいう良好な住宅都市としての杉並を守っていこうとするならば、どこにでもあるビルの林立するまちへと開発するのではなく、杉並らしいおちついた景観を守るための努力こそがいま求められているのではないでしょうか。
 学校の建て替えも急がれています。たしかに移転すれば学校の環境はよくなるでしょうが、他方、10年待つことが果たしてよいのかは疑問です。
【なぜ6月議会まで待たないのか】
 議会の意見を聞くスケジュールも理解できません。なぜ6月の第二回定例会を待たずに計画決定するのか。2月の総務財政委員会にB案が提示されたので、一般質問には間に合わず、教育、産業、まちづくりなど各所管の常任委員会での議論も行われていません。議会でじっくりと意見交換することは最低限必要と考えます。
 また、区は地域の人たちと話し合ってきたといいますが、それは団体の代表者など限られた人たちです。ほとんどの住民はまだこの計画を知りません。周辺の地権者はもちろんですが、阿佐ヶ谷駅や周辺商店街の利用者など離れたところの住民にとっても、影響の大きい計画です。
【区民の意見を生かして、C案、D案の可能性も】
 決定するまえに、区民に計画の存在を周知し、幅広く意見をつのり、つのるだけでなく、その意見を生かしたまちづくりを行うことを求めます。いつものように「もう決定しました」ですませるのはやめてください。
 病院の移転という大きな要素はチャンスともとらえられますが、病院のスケジュールに無理やり合わせることにより、まちづくりにひずみが生まれる可能性もあります。土地の交換をあきらめ病院の移転の影響を最小限にとどめるまちづくりを考えることも一案かと思います。C案、D案の可能性も探ることが必要です。
(3)高円寺小中一貫校
 第三に、高円寺小中一貫校について述べます。
【1か月半つづく住民のスタンディング】
 予定地である高円寺中では、もう1か月半もの間、連日、近隣の方々がスタンディングを行い、区役所と話し合いを継続しているのだから、一方的に工事を強行しないようにと訴えています。
 これも何度も言ってきたことですが、区が工事をするのにお隣のおうちにもあいさつにいかないような不遜な態度でやっているから、こんな前代未聞の住民運動になってしまったのです。生活権、財産権を守ろうとする住民の主張は正当であり、区役所は住民と誠意をもって交渉すべきです。区議会では「住民とは丁寧に話し合いをしていく」とすばらしい答弁をされるのですが、実行が伴っていません。
 他の委員がおっしゃった「もう決まったことなのだから、あきらめて受け入れて」などというのは言語道断で、住民に対して大変非礼な言い分だと思いますし、民主主義の否定です。この方のおっしゃるように当事者の利害を無視し、当事者の意思を押し切って進めるならば、仮に学校ができても地域との関係が冷たいものになるだろうことを危惧します。
【ボーリング報告書の誤りの原因は依然不明】
 ボーリングの報告書に誤りがあり訂正されたことを確認しました。しかし、この誤りがなぜ引き起こされたかは依然として明らかになりません。報告書を作成した設計事務所文科省とも関連の深い学校建築に通じた設計者と聞きます。そういった設計者が中低層と高層もうっかりとり違えるとは考えにくいことです。設計事務所にペナルティは要求しないとのことですが、そんな軽い問題なのかということも疑問です。
【和泉学園の検証を待つ必要がある】
 小中一貫校について、和泉学園の検証結果が出ました。しかし、区側も言っているようにこの検証は開校1年間のものであり、教育的効果などについては、まだ何もわからないといっていい状態です。同じ施設一体型小中一貫校であり、しかも、和泉学園よりも校地が狭く環境の悪い高円寺小中一貫校を進めることに対し、性急すぎるのではないか。和泉学園の数年間の検証を待ってからではいけないのか。この点も問題です。
 75億円の総工費のうち、国・都の補助金は満額でも8億円余りとの答弁も受けました。
 そうであれば、工費を節約するためにも、建物規模の見直しを行うべきです。それは近隣住民のためにもなることです。この事業をこのまま強行せず、見直すべきと指摘します。
(4)施設再編整備計画
 第四に、施設再編についてのべます。
【児童館の廃止、分散移転について】
 まず児童館です。児童館を廃止し機能を分散移転するという区の計画を見直し、杉並区の重要な資産である児童館を維持していくべきとこれまでも指摘してきましたが、区は計画を進めながらも、ここへ来て、児童館に頼らざるをえない現実を抱えています。
 保育園の定員が膨れ上がる中、学童クラブの定員不足がもうすでに問題となっています。区は4月から児童館へのランドセル来館を実施しますが、学童クラブに入れない年長児童の受け皿ともなります。児童館があるからこんな緊急対応もできるのです。たくさんの児童館があって、本当によかったですね。児童館に感謝して、廃止の方針を見直すべきと指摘します。
【放課後等居場所事業では学校施設を使えるか?】
 児童館の分散移転先のひとつである放課後等居場所事業のモデル事業について質問しました。区は「図書室、図工室、音楽室、体育館、校庭などが使えてダイナミックな遊びができる」などとたびたび説明してきましたが、実際は、あたりまえですが、学校施設を自由に使うことはできず、学校との事前調整のうえ決められた場所を使っていることがあきらかになりました。毎日、朝から夕方までいつ行っても自由に遊戯室、図書室、図工室などが使える児童館は、子どものために考えぬかれた自由な遊びのできる場所であり、今後も守っていく必要があることを指摘します。
【永福図書館の複合化に反対】
 図書館について。永福図書館の再編が打ち出されています。大変不思議に思うのは、なぜ永福図書館を移転しなければいけないのか。そしてなぜ複合施設にしなければいけないのかです。移転せず現地で建て替えれば、休館が必要にはなりますが、それでもいいのではないでしょうか。中央図書館ですら休館を予定しているのです。問題は、移転後の永福図書館が複合施設として計画されているため現在よりもかなり狭くなることです。
 杉並区はかつて図書館の延べ床面積は1100平米と基準を示しています。これを遵守するよう求め、永福図書館の縮小には反対します。
【産業振興計画と産業政策】
 第五にその他の問題について簡単に述べます。まず産業振興計画と産業政策についてです。杉並区の産業政策が弱いことは以前から指摘してきました。振興計画の見直しを契機に、政策の強化が図られることを期待します。
【清掃事業の民間労働者の保険適用】
 次に、清掃関連の労働問題についても指摘しました。労働者供給事業の労働者が違法な年金逃れのはざまにいることが明らかになりました。区は契約当事者として、23区清掃協議会と連携して、問題の解決にあたるよう求めます。
【プロポーザル選定委員会の委員名は公表せよ】
 また、プロポーザル選定委員会について指摘しました。選定委員の氏名公表は、選定の透明性、公正性を確保するための基本の「き」で、こんなことを役所の人たちに何度も言わなければいけないことがはずかしいくらいですが、わからないようなので念をおします。氏名の公表ができないということは、架空の人物かもしれない、区が事業者とつるんで結果を創作しているかもしれないといわれても仕方がないのですよ。
 プロポーザル選定委員会に関しては早急に委員の氏名公表を求めます。
 以上をもちまして意見開陳とします。なお、関連議案につきましては、議案第12号国民健康保険条例の一部を改正する条例、については反対、その他の議案については賛成とします。
 最後になりましたが、このたびも、多数の資料を作成して下さり、さまざまな問題をご教示くださり、また連日丁寧に答弁してくださった職員の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。