わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

「無理が通れば道理が引っ込む」(決算に対する意見を述べました)

2017年10月12日、決算に対する意見開陳を行いました。主に保育のことから情報公開、説明責任について言及し、すべての決算の認定に反対しました。(賛成多数で認定に決定)
(以下は質問原稿です。実際の発言とは一部異なるところがあります。)
 杉並わくわく会議として、決算に対する意見を述べます。
認定第1号平成28年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか5件の認定に対しては反対とし、以下その立場から意見を述べます。
【1】当該28年度の問題点
 当該平成28年度はなんといっても待機児童緊急事態宣言が大きな問題となった年でした。子どもたちが多く利用し愛着を持っている公園をつぶして保育園をつくるという暴挙は、地域に深い傷と不信感を残しました。これだけとっても決算を認定しない理由になるほどで、断じて認めることはできません。
 さらに問題は公園ばかりではなく、区内各地でことごとく住民の意思をないがしろにして政策が進められ、田中区長の独断的な区政運営がきわまった年でありました。
 大義なき「あんさんぶる荻窪」の財産交換は、地元地域をはじめとして多くの区民の反対の声をうけながら準備のための新しい複合施設が着工されました。
 高円寺小中一貫校をめぐっては、近隣住民との合意のないままに住民を出し抜いてボーリング調査を強行、さらには工事に至る経過も強い反対を押し切り進行していきました。住民に対し虚偽の暴行事件を工事業者がでっちあげた件は区の強硬姿勢の象徴といえます。
 保育園の民営化をめぐっては、対象とされた上井草、杉並両保育園の保護者に対して民営化計画が知らされることもないままパブコメが始まる始末。反対の声は一顧だにされません。
 まさに「無理が通れば道理が引っ込む」のことわざ通り。「問答無用」を絵に描いたような区政となりはてています。
【2】委員会で追及したこと
 こうした経緯をふまえて、以下何点か述べます。
(1)保育待機児
 まず今年度もひきつづき厳しい状況にある保育の問題です。何度も言っていることですが、元々、国の待機児童の定義は認可保育園に入れなかった人という基準でした。杉並区でいえば1800人にものぼり到底1年で解決できるものではありません。それを1年で解消するかのような「緊急事態宣言」は区長の政治的なパフォーマンスにすぎず、地域住民、子どもの生活環境はその犠牲にされました。
(2)保育料
 そして、今後は保育料の値上げと区立保育園の民営化がダブルで利用者を襲います。
 保育料は20年間値上げをしていないと説明されていますが、この20年はデフレの時期であり、消費者物価の上昇はほとんどゼロです。それに対して1〜3割の大幅な値上げは容認できません。
 しかも所管の保健福祉委員会にすら方針が示されただけで、具体的な保育料表はいまだ提案されていません。まして区民に対しては、全く周知がされていません。「広報すぎなみ」では保育料値上げの文章は最も小さい文字で表記されており、よほど気を付けないと読み過ごしてしまいます。
 保育園入園希望者に対しては、保育料と民営化についての手紙が保育園利用案内に差し込まれましたが、在園の保護者からはそのような手紙は届いていないと聞いています。当事者が知らないうちに決定してしまう、杉並区お得意のやりかたでしょうか。
 住民税非課税世帯に新たに負担を課す、また0歳児に対する利用料を2割引き上げるとの方針は特に問題です。
 そもそも保育とは就労支援でもなければ救貧対策でもありません。あくまでも、児童福祉法にもとづき、保育に欠ける子どもの生活と健やかな成長を保障することを目的とします。就労支援なのだから対価を払うのが当たり前とか、あるいは逆に救貧対策だから生活に困っている人だけ助ければいいというのはどちらも間違いです。
 区は応益負担と応能負担を併記して説明していますが、このような趣旨から応能負担を原則としてきました。なかでも23区はとんでもなく高すぎる国基準保育料を大幅に軽減する政策を長年にわたってとってきました。それに対し、今回の値上げ案はコスト論に偏っており福祉の視点から大きくはずれています。
(3)保育民営化
 次に、区立保育園の民営化について述べます。区は平成36年までに6園を民営化し、かつ指定管理の7園も並行して民営化していくとのことです。7年間にすべての指定管理園が更新期を迎えるので、計画期間内にほぼ全園が民営化される可能性がありいっきに13園の民営化が行われることになります。
 質疑では区の進め方が問題を引き起こしている上井草保育園民営化について質しました。
 保護者説明会で出たあまたの疑問が解決されず、そして保護者の皆さんが話し合って対応を模索しているさなか、区は見切り発車で事業者選定委員会を発足しました。その選定委員会の結果、不調に終わったことを、区長や区幹部の皆さんは、保健福祉委員会でも当委員会でも口々に選定委員個々人の責任であるかのように非難しました。区長に至っては「政治的な意図をもって反対している人が0点をつけた」という趣旨のことを何度も述べています。しかし、こうした結果に帰したことは、全体として、区長や区担当者が結果責任を負うべきものではないでしょうか。
 そのあげく「標準偏差」による選定です。何度も言ったことなので細かくは申しませんが、常識外れのやりかたに唖然とします。結果として1位2位が逆転するに至ったこと、また選定された法人が上井草園に法人本部を設置する計画であることを考えあわせると、この選定には大いなる疑問があると言わざるをえません。このような選定をまのあたりにしたとき、今後の区立保育園の民営化にあたって、公平公正に、質の高い保育事業者を選べるかどうか極めて疑わしいものです。
 保育園の大量増設の中で、ハード的にも問題のある保育園が増えています。このかん敷地が100坪に満たないにもかかわらず60名、70名といった最低基準ぎりぎりの保育園の提案が目立ちます。区は定員さえ確保できればいいとの姿勢でこれらを次々に認めていますが、保育園は荷物のように子どもを預かればよいわけではありません。数だけを追いかける区の保育園増設はもう限界です。
 23区には人材確保の面からも、むしろ区立保育園を増設している区や、民営化は行わないと決めている区もあります。これらの区に学んで方向転換をはかるべきです。
(4)児童館
 児童館について、質疑の時間が足りなかったので補足します。杉並区は児童館すべてを廃止する計画で、当該28年度には和泉児童館が初めて廃止され、子ども子育てプラザ和泉が発足、児童館の代替措置ということで学校内の放課後等居場所事業が始まり、今年度から本格実施されています。
 区はこのかん、児童館事業は「継承・発展」させていくとして、あたかも児童館で行われていたことが小学校でもそのままできるかのような説明をしてきました。
 たとえば一昨年の決算特別委員会において「学校の図書館、音楽室などが児童館のように自由に使えるのか」との私の質問に対して「学校にも当然ながら図工室、音楽室があり、そうした特別教室の使い方なども学校と協議をしていく」との答弁がありました。
 しかし、和泉学園における放課後等居場所事業の実績を調べますと、図工室、音楽室、図書室などの特別教室の利用実績は全くありません。やはり学校側が容易には使わせてくれないのだと思います。また、和泉学園の場合には校庭、体育館も週1回程度しか使えていないこともわかりました。
 放課後等居場所事業では児童館よりも参加人数が増えたとの報告もありました。しかし、その裏で、学校で行う事業だから来られなくなった子もいるのではないでしょうか。また、中高生委員会が最も盛んな館だったのに、中高生対象の事業は段階的に縮小されていくようです。
 放課後等居場所事業で学校施設を活用すること自体は悪いことではないと思いますが、区が説明するような児童館の代替にはなりえないことがはっきりしたと思います。児童館とは全く別物なのです。
(5)財政規律
 これら子どもの施設にかかわる負担の引き上げや民営化、再編などは財政健全化をかかげて行われています。しかし、その一方で、大型の建設事業や政策目的にふさわしくない支出があることも指摘しました。
 高円寺小中一貫校建設に80億円の予算が投入されます。施設一体型小中一貫校ではなく住民が提案してきたように分離型小中一貫校にすれば、まだ新しい杉四小の校舎は今後30〜40年は建て替えの必要がなく、高円寺中の建て替えのみ、半額以下ですんだはずです。あえて巨大で使いにくい区者と狭い校庭の一体型にしたのはなぜか。教育よりも建設利権が優先されています。
 あんさんぶる荻窪の財産交換にいたっては、全く必要のない交換をするために新しい複合施設建設と桃二小の改築であわせて70億円もの予算が投入されます。30億円かけたあんさんぶるの建設費も無駄になります。保育園や児童館にかけるお金は少しでも削っていこうとする一方で、これら大規模工事の巨額予算がドンブリではどうしようもありません。
 杉一小の改築計画変更にともない不要となった駐車場の賃貸契約についても質しました。賃借料が不当に高く、期間も不必要に長いこと、また、仮設校舎の予定地であったけやき公園からは馬橋小学校、馬橋公園も間近であり、代替運動場は必要なかったことも指摘しました。現在建て替え中の桃二小の例を見ても近隣の学校の運動場などを利用しており独自の仮設校庭などありません。杉一小についてだけこの駐車場をわざわざ借りて、総額1億3千万円。地主さんはハンコひとつでこれだけの賃料を得たわけです。
 持続可能な行財政とか、財政規律とか、経常収支比率とか、委員会で議論されましたが、そういうコツコツの積み重ねがいっきに吹っ飛んでしまうようなこの1億3千万円です。これも区民が負担しているのかと思うと怒りを通り越して悲しくなります。
【3】姑息で卑怯な区政
 平成28年度を振り返るとき、この区政がいかに区民をないがしろにし、独善的に政策を進めてきたかを改めて痛感します。あんさんぶる荻窪、科学館、けやきプールなど、廃止する施設に関しては説明会すら行わず、多くの利用者が知らない間にこっそりと廃止する姿勢も、つくづく姑息で卑怯な区政だと思いますし、反対する住民はすべて政治的意図を持っている反対派だときめつける区長の態度は、さまざまな立場、考えをもつ多様な住民をまとめる立場にある自治体の首長としてあるまじきものです。
 区民に対する説明責任も果たされません。質疑の中では上井草保育園のプロポーザル選定委員会の議事録を例に示しましたが、議事録と呼べるような代物ではありません。これは、この委員会だけではなく、あんさんぶる荻窪の財産交換に関連してまちづくり連絡会議の議事録を情報公開請求した人は、議題と席順だけしか記録されていない文書を見て唖然としていました。杉並区ではどこでどのような議論を経て決まったのか、どんな分野においても、それをあとづけることが不可能といっていい状態です。政府の情報公開のひどさを国会では「のり弁」と揶揄されますが、杉並区のはもとから記載がないので「から弁」とでも言えばいいのでしょうか。
 国の公文書管理法では行政機関について「意思決定に至る過程、事務・事業の実績を合理的に跡付け、検証することができるよう文書を作成しなければならない」との定めがあり、また、地方公共団体についてもこの法律の趣旨にのっとり文書管理を行うようにとも定められています。区政の基本となる説明責任を放棄している区政を改め、逃げずに説明する区政に転換するためには法的整備が欠かせません。公文書管理条例の制定を求めます。
 以上をもちまして反対意見とします。最後になりましたが、審議にあたり、多数の資料を作成して下さり、さまざまな問題についてご教示くださり、また連日丁寧に答弁してくださった職員の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。