わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

代替運動場に1億3千万円は不当な利益供与(決算特別委員会の質疑まとめ)

 2017年9月29日から10月12日まで開催された杉並区議会決算特別委員会で行った質疑のまとめです。質問のテーマは以下のとおりです。★印はさらに下に要旨を掲載しました。一人会派の私は各回5〜6分の持ち時間(発言時間のみ)でこれらの項目をこなすので大変です。なお、杉並区議会ホームページより録画配信がありますので、あわせてご参照ください(こちらが動画リストです)。
1回目(10月2日)
●待機児童対策(公園をつぶさなければ500人の待機児童が出ていた、と区が言っている数字のトリック)
●持続可能な行財政運営(大規模工事のムダづかいを見直すべき)
2回目(10月3日)
★●地域区民センター(運営委託業者の労働法令違反発生)
●プロポーザル選定(上井草保育園民営化の事業者選定に疑問があること)
★●議事録(プロポーザル選定委員会の議事が全く記録されていない問題。公文書管理条例制定を求める)
3回目(10月5日)
★●保育料値上げ(0歳児を中心にすべての利用者1〜3割値上げに反対)
★●区立保育園の民営化(平成36年までに6〜13園を民営化する計画に反対)
4回目(10月10日)
★●杉一小改築計画(全く使わない代替運動場に1億3千万円払った件)
★●学校エアコン(同じ金額の1億3千万円をけちった話)
●阿佐ヶ谷のまちづくり
★【地域区民センター】
 ある地域区民センターで運営委託事業者が常勤者に対して残業代を払っていない問題が発生しました。この質問をした時点では未払い分の賃金がすでに支払われて解決されていましたが、事業者との契約では、不正行為があれば契約解除の条件ともなります。区としては改善されたので処分は考えていないとの答弁でした。
 杉並区では委託・指定管理事業者に対して社労士による「労働環境モニタリング」で労働法令違反がないかのチェックを行っています。問題の事業者に対しては昨年実施したものの、今年度法令違反が発生していたことを区は把握できていませんでした。モニタリングの回数、頻度を増やす必要があります。
★【議事録】
 上井草保育園民営化の事業者選定におけるプロポーザルでは異例の「標準偏差」の手法が用いられました(この件の詳細はこちら)。この選定についての議事録を情報公開請求したところ1枚ピラで、議題しか書いてないようなものでした(画像参照)。
 これに対し例えば港区ではちゃんと議論の経過がわかる議事録になっていますが、杉並区は他の分野でも議事録がまともに残っていないことが多々あります。
 公文書管理法では34条に地方公共団体の責務、4条に行政文書の作成が定められており(※)、国の機関は意思決定の過程がきちんとあとづけられるようにしなくてはならないというルールがあります。区もこうした条例、公文書管理条例を定める必要があります。区の答弁は「34条は公文書管理条例の努力規定ではあるが、条例を施行している自治体もある。歴史的文書の保存、公文書管理館をどうするかなどさまざまな課題がある。必要性も含めて検討している」とのことでした。
※公文書管理法 第34条 地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。
第4条 行政機関の職員は、第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
★【保育料値上げ】
 保育料は上がるし、民営化はするし、保育園の利用者はふんだりけったりです。広報すぎなみの10月1日号は保育園の特集でしたが、民営化、保育料については、一番小さい字で見つからないように書いてあります。具体的には
・引き上げ率:0歳児については2割程度、1〜3歳児については1割程度、4・5歳児については1〜3割程度の見直しとなる。
・住民税非課税世帯:これまで負担0だったが今後負担を求めていく方針。23区内での前例は6区にすぎない。
★【区立保育園の民営化】
 区立保育園の民営化方針(「今後の区立保育園の役割と民営化の方針について 保育のあり方検討部会報告」)が発表されましたが、これも報告書を見ても審議の経緯が全くわかりません。杉並区は意思形成過程が本当にブラックボックスです。以下報告書の内容にもとづき質疑で確認しました。
・7地域ごとの2園は区立保育園として存続する(計14園=現在の区立園の約1/3のみ)
平成36年までに6園を民営化する。具体的には、上井草、杉並のほかに新たに中瀬、井荻保育園が指名された。
・これまでは保育園の老朽建て替え時に民営化していたが、今後は園舎の新しい園も民営化する。その場合、土地建物は区有のまま賃貸する。
・指定管理の7園もさらに民営化する。これは上記6園とは別枠(つまり36年までに最大13園を民営化)。
 ちなみに、公立と私立では人件費(賃金)が全く違うといわれますが、杉並区は公設民営園の人件費すらつかんでいません。今回報告書に経費の概略が出たので推計してみました。
 区立保育園運営費のうち人件費は82億3200万円(平成28年度)。事務職の人件費を除いて約80億円余り。一方、私立保育園は補助金総額が53億円と書かれています。私立の場合人件費が7割を切るのが普通と言われるので、30数億円と推定。園児数を勘案(区立:私立=5:4)して、人件費(賃金)が約2倍と推計できました。保育の質と保育士の待遇改善のためにも公立園(公務員保育士)の存続・拡大は必要です。
★【杉一小改築計画】
 河北病院の移転改築経過に伴い(という動きもヘンな話なのですが)杉一小改築計画が抜本的に変更されました。しかし、すでに変更前の案に従って2億円が執行されていました。うち1億3千万円が代替運動場の賃貸料でした(月880万円、平成28年度1億500万円、29年度(3か月)2600万円)。当初計画で仮設校舎の運用は30年4月からの予定でしたが、使用予定の2年も前から借りており、しかも使用された実績はゼロで完全にムダな出費となりました。
 区は駐車場管理会社に転貸し月340〜360万円の賃貸料を得ていましたが、区が借りる前から同地は駐車場であり地主さんは同額程度の賃貸料を得ていたと思われます。それなのに、区が借りた際には1か月当たり550万円も上積みされています。
 そもそも学校建て替え時に代替運動場を借りた例はなく、現在工事中の桃二小も他の学校の校庭などを借りています。杉一小の場合だけわざわざ代替運動場を確保するのは不自然です。
 さらに、仮設校舎予定地のけやき公園からは馬橋小学校・馬橋公園グラウンドが至近であり、借りていた民間駐車場と距離は変わりません。ますます必要がなかったと考えられ、不当な利益供与と見られても仕方がありません。
★【学校エアコン】
 28年度の小中学校特別教室エアコン設置は小学校14校、中学校9校、金額は1億3700万円余。理科室はすべて設置済みですが、家庭科室、図工室は約半数。中学校の美術室はまだ相当数が残っています。そこで今年度残りを行う計画だったのですが、途中で変更が生じました。今年度は小学校2校、中学校1校のみ、金額では2800万円のみ実施でした。
 教育委員会からは「教育の機会均等のため29年度で小学校の家庭科室、図工室、中学校の家庭科室をつけたかったが、実行計画改定の中で計画外となった経過がある。今年度小中学校PTA協議会や保護者から強いご要望をいただいているので、来年度にむけては十分検討していきたい」との答弁でした。
 この質問をしたのは、学校の図工の先生から、今年エアコンがつくと思っていたのにつかず、非常に困ったという話を聞いたことがきっかけでした。図工室が暑くて授業ができず、毎時間重たい教材をかかえて冷房の入っている普通教室に移動しており非常に大変とのことでした。
 前項の駐車場賃貸と変わらない金額です。優先順位が間違っています。