2018年11月21日杉並区議会第四回定例会で一般質問しました。
◎保育について
区内保育園の財務書類(2017年度分)を東京都から情報公開にて入手した結果を述べました。保育園の人件費は運営費の7割程度といわれていますが、驚くことに、情報入手した私立認可保育園53園のうち、7割を超したのはわずか7園でした。53園の平均では6割に届きません。区が支払っている多額の予算の4分の1は、保育園の運営に使われず運営法人の利益あるいはストックになってしまっています。これじゃ保育士のお給料が上がるワケがない。
区立保育園の民営化については主に事業者選定の際の「ガイドライン」について質問しました。民営化するとしても、選定を厳しくし、せめて質の高い事業者が選ばれるようにしなくてはならないと思います。
◎清掃行政について
今年の夏の酷暑の中で、清掃委託の派遣の方々は「休憩所ナシ」「休憩時間とれず」「休憩は車の中」「その車は冷房オフ」という地獄のような環境で働いておられました。もちろん違法ですね。
1.保育について
一般質問をいたします。最初に保育について質問します。杉並区はこの間、私立認可保育園をはじめ、保育施設を大量に建ててきました。それ自体は必要なことですが、質の低下が問題となっています。施設がふえても、児童福祉は後退しているのではないかと心配です。
先の決算特別委員会で、私は2016年度の区内保育園の財務状況について指摘しました。東京都は「保育士等キャリアアップ補助金」を受けた施設に対し、人件費比率などを含む財務状況の報告書提出を義務づけています。ジャーナリストの小林美希さんはこの報告書を東京都から情報開示して分析をまとめました。その初出は雑誌「世界」の今年2月号、3月号、その後岩波新書「保育格差」として出版されています。これにならい、私は杉並区内の保育施設の財務書類を請求して分析しました。決算特別委員会のあと、新たに昨年度2017年度分、すなわち最新の財務書類を入手しましたので、本日は、その数字からいくつかのポイントを指摘しておきたいと思います。
なお、認可外も含めた全提出書類を調査しましたが、本日は問題をわかりやすくするため、認可保育園53園のみを対象として論じます。
また、入手した数字は保育課に提供しましたので、今後の参考にしていただければ幸いです。
さて、指摘すべき第一は、決算特別委員会で指摘したように私立認可保育園に投入される公費のかなり多くの部分が、その園の保育に使われずに流出してしまっていることです。保育園の運営費は基本的に、人件費、事業費、事務費の、それぞれに必要な経費を見積もって公定価格が積算されています。しかし、国は規制緩和により、運営費を他の用途へ流用することを認めました。そのため合法的に流用ができてしまうわけです。
今回開示された2017年度提出分のうち認可保育園53園の総額は約26億円、事業活動収入の総計が101億円なので、約26%、つまり公費の4分の1以上が流出しています。この26億円の内訳は、積立資産支出、事業区分間・拠点区分間・サービス区分間繰入金支出、そして、当期末支払資金残高を合計したものです。積立資産支出は、事業者が積立に回すもの。事業区分間・拠点区分間・サービス区分間繰入金支出とは、同一法人が経営する他の園、他の分野、例えば介護の事業など当該保育園とは別の区分に繰り入れるものです。
実態としては、そのかなりの部分は企業や法人の本部経費に回され、あるいは、新園開設のための資金として流用されています。
なお、事業費の内訳をみると、業務委託費が1割以上にのぼる園がいくつもあります。給食や習い事などを外部化して関連会社に支払い、そちらの収益となるビジネスモデルもあるのです。
国の規制緩和により、保育園というバケツには大きな穴があけられ、投入された公費の4分の1以上が園の外へ流出してしまう、すなわち、企業・法人の他の部門の収入となってしまうという仕組みです。次々に保育園をつくれる裏にはこういう錬金術があるわけです。これでは子どもの福祉のための保育園ではなく、保育園を経営する企業の経営拡大ための保育園です。以上、資金の流出の状況について述べましたが、区はこの実態をどのように考えるか。所見を伺います。(Q1-1)
(人件費について)
第二に、肝心な人件費です。先ほど述べた保育園の資金流出は、最も大きな支出であり、かつ削りやすい人件費を犠牲にすることによって行われています。
現在の保育制度を設計するにあたり、国は保育園・幼稚園を調査し、全体として人件費が7割程度かかっているとの結果を発表しました。こうした調査をもとに公定価格においては人件費が7~8割になるよう設計されています。ところが、区内保育園の財務書類を分析したところ、なんと驚くことに、人件費7割以上の認可園は、53園中7園しかありませんでした。しかも、この場合の人件費は施設長、事務職員など子どもに直接かかわらない人も含んでのものです。前述の小林美希さんにならって、これを便宜上「全体人件費」とよびます。全体人件費比率が5割を切っている園が11園、うち社会福祉法人1園、企業10園と5分の1にのぼります。53園のうち最低の値を記録したのは、区有地につくられた社会福祉法人の保育園で41.6%となっています(この園は昨年開設したばかりですが、大量離職も起きています)。53園の平均では、58.3%と6割を割り込んでいます。
ちなみに、これは先の書籍に紹介されていた数字ですが、仙台市は2016年度実績で平均74.8%とあり、杉並区の6割未満というのは、23区全体の傾向ともいえますが、かなり非常識に低いものです。
次に施設長などを除いた、子どもに直接かかわる保育士や調理士、看護師などの「保育士等人件費」の比率を見ます。53園の平均では47.9%と5割を切っています。最も高いところで69%、逆に低いほうは、下から26.9%、29.5%、31.3%がワースト3です。園によってかなり格差があることがわかりますが、保育士人件費が3割に満たない認可園があるのには恐れいります。
そこで質問します。人件費比率が7割を超えている認可園は確認できた53園のうち7園しかなく、平均は6割を切っています。このことについての所見を伺います。また、流用されている費用は人件費にまわすように指導すべきではないでしょうか。区としての対策はあるかうかがいます。(Q1-2)
以上のような公費の流出や人件費比率は、保育士賃金、保育の質に直接響いています。これは国が行ってきた規制緩和に問題の根源があります。都や他自治体と協力して規制強化へと国が政策転換するよう求めるべきと考えますがいかがか、うかがいます。(Q1-3)
保育を企業の草刈場にした国が悪いのですが、杉並区もまたそれにのっかっているともいえます。ひとしきり問題となった区長後援会のゴルフコンペにも、いくつかの保育園運営事業者が参加しており、これらの企業と区長、副区長が仲良くゴルフをする関係だとすると、資金の流出を止めることは残念ながらなかなか難しいと言えるかもしれません。区政の転換があらためて必要であると感じるところです。
次に、区立保育園の民営化についてうかがいます。いま述べてきた民間保育園の資金流出と人件費の削減を考えると、民営化がかしこい選択とはとうてい言えないと思います。
現在の区の計画では、今後6年間でさらに6園を民営化、区立を27まで減らすことになっています。しかし、他区では、民営化をしないところもあります。 前にも指摘しましたが、文京区は1園民営化したのち、民営化をやめています。世田谷区も数園を民営化しましたが、当面は予定がありません。その他にも民営化をしない区がいくつかあります。これらの状況をみると、杉並区がなぜ休息に民営化を進めなくてはならないのか理由は不明確です。
民営化された園の保護者からよくうかがうのは、区が説明会で「民営化しても変わりません」と説明していたが、実態はそうではなかった、ということです。上井草保育園の民営化後、保護者から、朝夕の保育補助の人員が減り、また、区立ではおかれていた用務の職員がいなくなり、用務や保育補助の仕事まで保育士がこなしており、多忙化しているとの指摘がありました。
また、中瀬保育園の民営化にあたっての説明会では「公募要項の基準が公募時は満たされていても、のちに満たされなくなった場合、区は対応してくれるのか」との質問に対し「信義則として公募要項の要件を守るよう働きかけるが、罰則などはない。運営開始後に保育士の退職などはありうる」との回答、朝夕パートについても「運営費の中でどのように人を配置するかは事業者の判断」などの説明がなされており、これは、区立同様の水準を選定時に定めても、結局ザルだということです。
このように「区立の保育水準を変えない」ことが保障されないなかでは、区立保育園を民営化することにより、保育の体制、保育の質に必ず影響が出てしまいます。現在予定されている民営化計画については立ち止まり、見直すよう求めるがいかがか。見解を求めます。(Q1-4)
次に民営化ガイドラインについてうかがいます。保護者のグループからの提案を受けましたので、それをふまえて提案します。まず、ガイドライン改定にあたっては、区役所内部だけでなく、外部の専門家や保護者代表を含む公開の審議会で行うべき、ということです。次に、内容について提案します。
第一に、公募要項の改善により、事業者の選定をより厳正に行うことです。このかん、上井草保育園、杉並保育園の事業者選定に際しては、保護者選出の選定委員の要望に応える形で、公募要項の改善が図られてきました。事業者の応募条件として、認可保育所の運営実績を、杉並保育園では10年以上、上井草保育園では6年以上としました。民営化ガイドラインでは1年以上とされているのと比べ、厳しい内容で募集されました。また、全ての既存園の実績で人件費がおおむね70%以上であるという条件や、有休、育休の適切な付与などの労働環境に関する条件も付されていました。
しかし、これらの条件が中瀬保育園の公募要項では後退してしまっているのは残念なことです。今後は上井草・杉並の選定をスタンダードとして、書き込んでいくべきではないでしょうか。その点でもガイドラインの改定が必要となります。
また、上井草保育園の選定にあたっては、園長の条件として実務7年以上の上に、1年以上の施設長経験を求め、さらに、「運営に関する条件」として、
・区立上井草保育園の保育目標や行事の継承、近隣の学校との連携
などについて詳しく書かれています。これらは子どもを守るための最低限の条件であって、今後の選定にも生かしていくべきことではないでしょうか。
(選定の手法)
次に、選定のやりかたについてです。お隣の中野区は区長がかわり、保育園民営化についても見直しが行われました。このたびの民営化では公開プレゼンテーションが行われたそうです。また、中野区の選定委員会では、保育士、栄養士、看護師ら現場の職員が現地施設に派遣され、一日の保育をチェックして評価する、ということです。これは素晴らしいと思いました。区の選定委員会においても、これらの手法に学ぶことが必要と考えます。
また委員会の会議録については、これまでにも指摘してきましたが、選定委員会は非公開であり、内容を知ることができません。しかも、会議録を開示しても、議論の内容は全く記録されていません。そのため、上井草保育園の選定では「標準偏差」という奇抜な手法が導入されたことが誰の提案だったのか、なぜそのような結論に至ったのかの検証が全くできませんでした。区は民営化を進めるのであれば、区民・利用者に対する説明責任をきちんと果たしていくべきと考えます。
(移行のしかた)
第三に、民営化への移行の仕方です。練馬区などでは、行政・保護者・事業者の3者による協議会を立ち上げて、民営化のプロセスがスムーズに進むように、進行管理を行っていくとのことです。
また、合同保育について、現在のガイドラインでは合同保育は民営化前の4か月を目安とするとされていますが、それでは短いとの指摘があります。具体的には民営化前の6か月、民営化後の6か月の計1年間は最低限必要と考えます。民営化後も区職員の保育士を派遣して共同で保育にあたることになりますが、これはすでに、武蔵野市、日野市など多くの自治体で実際に行われている例があります。また、合同保育が終わったあとも、行政の保育士が毎日巡回して指導に当たっている自治体もあります。子どもたちの心の安定を考えれば、こうした手厚い引継ぎが必要です。
第一に、区立保育園民営化ガイドラインの改定時期はいつごろか。また、改定にあたり、保護者、学識経験者を交えた審議会等の設置を求めるがいかがか。(Q1-5)
第二に、保護者等の意見により公募要項に盛り込まれてきた保育園運営年数、施設長の経験年数などの改善を改めてガイドラインに取り入れ、今後引き継いでいくことを求めるがいかがか。(Q1-6)
第三に、運営事業者選定の際、公開プレゼンテーションなどの手法を導入するよう求めるがいかがか。(Q1-7)
第四に、民営化移行時の合同保育期間の延長を求めるがいかがか。以上、見解を求めます。(Q1-8)
なお、杉並の民営化ガイドラインにはめざす保育の在り方が全く述べられていないという大きな問題があります。世田谷区のガイドラインを前にも紹介しましたが、
・区立の水準を守れる事業者を選定する
・児童福祉法の理念、子どもの育ちを重視した質の高い保育、質の高い職員
などが具体的に書かれています。杉並区のめざす保育はただひたすら数だけなのでしょうか。そうではないというなら、理念をしっかりと書き込んでほしいと思い、この項の最後に要望します。
2.清掃行政について
この夏は、本当に記録的な猛暑であり、不要不急な外出は避けるようにというよびかけまでなされるような状況でした。他の議員からも発言がありましたが、このような過酷な環境の中、毎日のごみ、資源の収集に当たられた職員の皆様には、心から感謝いたします。
ところで、この過酷な夏に、さらに過酷な環境に置かれていたという、委託先の派遣労働の実態をうかがう機会がありました。
清掃事業の委託先企業へ運転手、作業員を派遣している労働組合、いわゆる労働者供給事業、労供とよばれる形態をとる新産別運転者労働組合(新運転)および日本自動車運転士労働組合(自運労)は、あまりに過酷な労働環境をなんとか改善しなくてはと、23区の区議会議員によびかけて8月に勉強会を開催されました。そこでお聞きした要望などにもとづき、以下質問します。
・汗をかいても着替えができない。
・車内で休憩するしかないが、清掃車両が路上に停まっていると苦情が入る
・アイドリングオフを守るため、エアコンが使えず、車内は高温で耐えがたい
・作業量が増えており、時間までに終わらせるために猛暑の中、走り続けなくてはならない
などをうかがいました。現場のようすの一端を伝えるものとして、新運転東京地方本部の機関紙から抜粋して紹介します。
「収集作業員はいつ緊急搬送されても不思議ではない状態。実際に収集作業中に体調が悪くなり緊急車両を要請するか現場で判断する状況となっている件数が、週に3件から10件ある」「午前10時から14時の最も危険な時間帯に90分にも及ぶ灼熱地獄での収集が続けられている環境もある」さらに「午前中の炎天下での作業を終えて昼の休憩をとるにも、十分に体を休める施設等があまりにも不足している」そのため「路上に車両を止め、東京都の条例を守りエンジンを停止した状態の車両の中で、50度を超える状況で待機をしています」というのです。聞いただけで汗がしたたってくるような気がします。
そこで伺いますが、資源回収等、委託先の労働環境について、特に今夏の猛暑の中で、このような状況で、労基法に定められた休憩時間すら適正に守られない違法状態であることを区は把握しているのでしょうか。(Q2-1)
また、先ほどの意見にもありましたが、資源回収の作業手順が厳しくなっているとのことです。猛暑の中を作業員が走り続けていると聞き、そう思ってみると、確かに資源回収の日、作業員さんが走って収集している姿が目につきます。歩いて収集したのでは時間までに仕事が終わらないのだそうです。こうした実態を区は把握しているのでしょうか。(Q2-2)
このような状況は、車を増やし、人を増やして、作業量を減らしていくことでしか解決できないのではないでしょうか。
区は委託先事業者及び労供と協力して、着替えや休憩場所の確保などの労働環境を整備し、また作業手順を適正に見直すように求めるが、見解を伺います。(Q2-3)
新宿区では清掃事務所の地下駐車場や民間の駐車場借り上げで休憩場所として提供しているそうです。杉並区も各区も最低限その程度のことはすべきではないでしょうか。委託先とはいえ、清掃事業は区の事業であり、その労働環境において違法状態を解消する責任があります。
(2)車付き雇上
次に、「車付き雇上」についてうかがいます。
杉並区は今年から清掃事業に「車付き雇上」を導入しました。「車付き雇上」とは耳慣れない言葉ですので、少し説明します。
23区の清掃作業では、区有車両のほかに「雇上会社」とよばれる委託企業が清掃車両と運転手を供給するというやりかたが、移管前の東京都の清掃事業時代から行われてきました。当初は車両と運転手だけで、区職員の作業員を積んで現場にいくというやり方だったのですが、次第に、作業員までも雇上会社が供給するケースが増えてきました。これが「車付き雇上」です。ちなみに、この雇上会社の運転手や作業員として、先ほど述べた労供の方々が派遣されてきているわけです。
杉並区はこれまで「車付き」は行ってこなかったのですが、今年から導入したとききました。そこで伺いますが、今年度は何人、また何組の「車付き」を導入したのでしょうか。また、来年度以降「車付き」を拡大する予定はあるのでしょうか。(Q2-4)
これまで、車付きを導入してこなかったのには、それなりの理由があったと思います。特に、清掃事務所職員の皆さんのがんばりで、業務を支えてきたことが大きかったのだと思います。しかし、2000年の区移管から18年が経過し、職員の減少、高齢化は限界にきているのではないかと思います。そこで、区清掃職員の状況について、区移管時と現在の清掃職員の人数、平均年齢をお示しください。(Q2-5)
杉並区ではこの間清掃職員の新規採用を行ってきたでしょうか。また、他区において新規採用しているところもあるとうかがいます。区が把握している状況をお示しください。(Q2-6)
他の議員の質問にもありましたが、ごみ・資源の収集作業は、きわめて高度な専門性が要求される仕事です。先日、東京清掃労組から、私たち議員に対して、参考資料を配布していただきました。そのなかに、大東文化大准教授・藤井誠一郎さんの著書「ごみ収集という仕事――清掃車に乗って考えた地方自治」がありました。この本には大変生々しく、清掃現場の作業の様子が描かれ、しかも、いかに専門的な知識と経験が必要な職かということがよくわかります。
以前、新潟で豪雨の折に、23区の清掃職員が派遣されたというお話を聞いたことがあります。派遣先の自治体は清掃業務を民間委託しており、民間事業者が災害ごみの運搬を行っていたが、いっこうにはかどらない。そこへ、23区の手練れの職員さんたちが行き、初めて行く場所にも関わらず、たった3日で片付け終わってしまったという劇的な活躍でした。先の西日本豪雨においても、杉並区は総社市への清掃職員の派遣を行いました。こんなことがいきなりできるのも、専門家である職員さんがいるおかげです。
清掃職員の高齢化で、今後こうした技術の継承ができるか心配です。災害対応の点からも、清掃職員の若返り、新規採用が必要と考えますがいかがか。最後に見解を伺って質問を終わります。(Q2-7)