わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

森友問題と同根、文書隠蔽から始まった財産交換(予算に反対しました)

 今議会冒頭で自民党が区長3選支持を表明、6月の区長選は楽勝と思っているのか、議会での田中良区長の慢心ぶりが半端ではありません。本会議では区長のゴルフコンペも暴露されましたが、杉並区政も「お友達政治」のぬるま湯にひたりきっていますね。でもそれ私たちの税金なんですが。
 「あんさんぶる荻窪」の財産交換が議会で可決されました。区長が国に「無料でビルを用意する」と約束したところから始まった問題ですが、その最初の文書は隠蔽されていました(このあたりの事情はこちらに)。国有財産の不明朗な取引という点であり、文書改ざんでは森友問題と同根と指摘しました。
 交換財産の鑑定も行われず(鑑定ではなく「価格等調査」を行った)、あんさんぶるは不当に安売りされる結果となりますが、このことを問題にする議員があまりにも少なすぎます。そもそも価格調査報告書を読んでいるのか…? 民営化大好き、行革をうるさくいう人たちがなぜこんな損な取引をだまって受け入れるのか、不明朗なものを感じます。
(以下原稿です。実際の発言とは異なる場合があります。)
<予算案に対する意見>
【田中区長自身の公私混同等】

 杉並わくわく会議として、予算特別委員会付託議案についての意見を述べます。その前提として、田中区長の区政運営について、どう見るかが問われます。
 今議会ほど、区長自身の問題が様々に議論されたことはありませんでした。他会派の発言の中で、政治資金パーティー、ゴルフコンペ、公用車の使用などについて、公私混同および、区補助団体や委託事業者との癒着を疑わせるとの指摘が数多くなされました。
 区長という重い職責を担い、総額3000億円にも及ぼうかという巨額の予算の決裁権者として、疑いを持たれることだけでも、深く恥じ入るべきところ、違法ではないと開き直る区長の態度には、区民のひとりとして大きな失望を禁じえません。
【文書隠蔽から始まった財産交換】
 さて、最初に議案第21号あんさんぶる荻窪の財産交換について述べます。多くの問題点のなかでも、いまの田中区政の問題点をもっともよく表しているものと考えるからです。
 いま国会では森友問題の文書改ざんが大きな問題となっていますが、あんさんぶるの問題も振り返れば2010年の区長文書の隠蔽、廃棄から始まったのであり、同様の病根の深さを感じます。
【区長が言い出せばどんなことをしても遂行】
 財産交換については、これまで何度となく、かつさまざまな視点から問題点を述べてきたところですが、
・区民全体には不利益であっても、区長が言い出したことだから、どんなことをしても絶対に完遂する。
・そのためには予算もつぎこむ。建てなくてもよい施設を建て、まだまだ使える施設を解体、廃止する。
・行きがけの駄賃で、それらの工事は、一部の建設会社の利益につながる。
・区民の疑問の声には「反対派」とレッテル貼りしてシャットアウトする。町会からどんなに要求されても必要な説明会を開催しない。パブコメでどんなに反対の声が出ても「55万区民からみれば少数」と無視する。
などの特徴は、公園を強引につぶしての保育園建設、高円寺3校の統廃合と一貫校建設などにも共通しています。
財務省も経験したことのない非常識な交換】
 あんさんぶるの財産交換は、現に使っている施設どうしの交換という財務省の担当者も経験したことがないと言っている、前例のないきわめて非常識な交換であること、また、区にとっては築後13年の区民施設を不当に安く手放す不利益な交換であるばかりか新たなビル建設、学校改築に70億円もの費用を余分に費やしたこと、さらに、児童館がはじめて物理的にも廃止され、地域の子どもたちを犠牲にするものであること、区が喫緊の課題と述べた特養については他の整備手段があり、かつ、喫緊のわりに計画発表後8年も整備されないことなど、簡単に述べてもこれだけ多岐にわたる大きな問題があり、仮に交換が行われたとしても、これらの問題は決して消えないことを指摘します。
【町会から苦言、3000筆の署名が】
 先に紹介したように地元の町会からは「この財産交換に対して地元は取り返しのつかない犠牲を払った。区は不手際を深く反省し、二度と繰り返さないように」との要望書が区長あてに提出されました。
 また、昨日は「荻窪 子どもの居場所を守る会」から、「税務署来るな。無慈悲にこどもからあんさんぶるを取り上げるな」とのメッセージを添えて3000筆余の署名が田中区長に提出されました。財務省理財局にも持参したとお聞きしました。これだけ根強く、区民、とりわけ荻窪地域の方々が今もあんさんぶるの存続を願っているという重みを区長、感じてください。
【不動産「鑑定」ではない】
 委員会質疑では、いくつかの点に絞って質問しました。まず、財産評価にかかわる問題です。今回は不動産鑑定ではなく、評価基準に則らない「価格等調査」の手法が使われました。報告書には「鑑定評価を行った際には異なった結果が出る可能性がある」との注意書きがあります。
【あんさんぶるは4分の1に割り引き】
 評価それ自体にも多くの疑問があります。
 市場性修正率8割の根拠は、あんさんぶるが容積率を使い切っていないこと、事務所には適さないスペースがあることなどを理由に44%と大幅に割り引かれたことでした。それに加えてあんさんぶるの建物は減価償却を見込んでさらに53%に減額されました。築浅にもかかわらず、あんさんぶるの評価がなんと23%、4分の1以下に減額されていることは、全く不当な評価というほかありません。
【工事費上昇を反映せず】
 次に、建物評価の根拠となる再調達価格について、建設工事費の上昇が考慮されず、一昨年と全く同じ単価をもって積算されていることも、価格を押し下げる要因となっていることを指摘しました。
 また、土地価額の算出にあたり、参考としたマンション価額が税務署とあんさんぶるのどちらも南荻窪や高井戸など同じ地域であり、税務署の価額が高く算出されている可能性があることも指摘しておきます。
 以上、あんさんぶる荻窪の土地建物と税務署土地との差額4000万円では不当な安売りです。
【単純な価格変更ではないのに】
 また、他の委員の質疑において、一昨年の財産交換の議決は、それ単独で交換を成立させるものではなかったとの指摘があり、再度これを質したところ否定する答弁は得られず、今回の議案が単なる価額の変更であるとの区の説明は誤りであると考えます。このような2段階議決のやりかたも、議会と区民を無用に混乱させるものです。
【児童館廃止の説明会、成田西では二度も開催】
 荻窪北児童館の廃止に際しては、一昨年の議決の際には「今後説明会等は行っていく」と答弁したのに、説明会を、結局一度も開いていません。地元町会も再三にわたって説明会を要求してきましたが、区は言を左右にして逃げ回りました。
 施設再編計画の中でやったとか、学校改築の説明会をしたとか言っていますが、成田西児童館では、廃止・再編を前に、当該小学校の全校生徒に案内が配られた上で、ちゃんと児童館で説明会が行われたことを知りました。成田西では2013年、施設再編整備計画策定以前にも説明会が行われており、二度にわたり説明会が行われたことになります。
【反対の声を封じるため児童館を閉鎖】 
 同じ児童館の廃止・再編でありながら、成田西と荻窪北の違いは何なのか。要は会を開けば反対の声が上がるから、開けないという、区長の姑息かつ卑怯な判断ということです。
 荻窪北児童館が条例上では31日まで存続しているのに17日で閉鎖してしまうという運用の不当も、同様に、利用者の声を封じてしまいたいということなのでしょう。
【落成式に町会長招かず】
 荻窪地域の施設であるにもかかわらず、ウェルファーム杉並の落成式には荻窪南口の町会長さんたちが招待されなかったことを確認しました。これも区が批判的な声をいかに嫌っているかの証左です。
 耳の痛い批判の声は一切シャットアウトして、仲間内だけで都合のいい政策を進めていくやりかたは、冒頭指摘した田中区政の問題点と重なります。
 以上の理由、またこれまで指摘してきた多くの問題点をふまえ、あんさんぶる荻窪の財産交換については不当、かつ区にとって不利益なものと判断し、断固として反対いたします。
【広報にあんさんぶる廃止の説明なし】
 なお、あんさんぶるの児童館を除く諸機関の引っ越し先であるウェルファーム杉並の落成にあたり、区は広報すぎなみ臨時号まで発行して宣伝しました。その紙面には「あんさんぶる荻窪」から移転する説明は一言もありません。全く新しい福祉の拠点ができるかのような宣伝は誇大広告です。
「これまで縦割りだった相談を1か所でできる」というPRがなされていますが、あんさんぶるも1か所で、生活、就労、福祉、子ども、さまざまな相談が可能です。区の窓口ではこれまでも、複数の問題を抱える人について異なる部署間の必要な連携は十分行われてきました。「横串」は今でも機能しています。この施設ではじめて実現するかのような表現は、財産交換をどうしても正当化したいための言い訳としか受け取れません。
【「ゆうキッズ」は廃止?】
 荻窪北児童館の廃止に関連して「ゆうキッズ」はどうなるのか、他の委員からも質疑があったので、あらためて正確なところを所管に確認しました。
 桃二小完成後も保健所4階の乳幼児の居場所は残るが、管理は同所にある子どもセンターが行う予定、また「ゆうキッズ」に相当するプログラムは天沼プラザからのアウトリーチを検討しているが、プラザ職員は常駐せず、荻窪北児童館ほどの回数は見込めない予定。さらに「ゆうキッズ」の名称を引き継ぐかどうかは検討中とのことでした。いずれにせよ荻窪児童館での事業には全く及びません。そもそも保健所という場所が子どもの居場所にはふさわしくないことはこれまでにも指摘してきました。
 議員の皆様にはこれをふまえで、正確な情報提供を行ってくださるようお願いいたします。
【新たな子どもの居場所を南口に】
 あらためて、あんさんぶるの児童館の代替として、子どもたちの居場所になる公共施設を南口駅前に確保することを求めます。
 これは区長自身が区議会の答弁で「あんさんぶるに似たような、類似の資産というものは、今後将来区は取得することは可能性としては大いにあろうかと思う」と答えたものなので責任もって実行するよう求めます。
介護保険国保、保育料の増大】
 あんさんぶる以外の問題について述べます。
 第一に区民負担についてです。議案第16号の介護保険料引き上げ、議案第37号の国保料引き上げなど、区民負担が大幅に増大します。また、昨年第4回定例会では保育料の引き上げも議決されており、これも大きな負担増です。
 さらに、区民センターの利用率について調べていただいたところ、大幅に利用率が下がっていることがわかりました。2015年から3段階の値上げにより、ついに昨年団体割引がなくなりました。1回借りるにも2000円、3000円とお金がかかり、区民活動の大きな阻害要因となっていることは間違いありません。区民に活用されなければ何のための区民施設なのでしょうか。本末転倒です。
【待機児童一服?とんでもない】
 第二に、保育についてです。委員会では「待機児童問題は一服した」かのような表現がたびたび垣間見られました。冗談ではありません。
 この4月に待機児童ゼロとなるかどうかは、国の待機児童の基準が変わることもあり、予断を許しません。また仮に国基準でゼロとなったとしても、法が求めているのは、必要とする人すべてが認可園に入所できることであり、数百人の隠れ待機児童が発生することはこれまでの実績からもほぼ確実とみられます。待機児童問題解決までは長いみちのりです。
【上井草保育園民営化、区立と全く変わらない、のウソ】
 また、質疑では上井草保育園の民営化について質しました。計画施設中の法人部分の面積を十分に精査するとともに、園との共有部分にまで補助金をフルに活用できるものなのか、区財政に損失を与えないよう厳密な算定が必要です。
 上井草保育園民営化のひきつぎでは、「区立と全くかわらない」としてきた区側及び事業者の説明に反し、すでにアレルギー対応が区立のようにはできないことが判明しました。これまでの説明はなんだったのか。運営法人がきちんと対応するよう区の指導を求めます。
【建設工事は一者入札】
 上井草新園の建設工事の入札が一者入札だったことを指摘しました。民間園の入札の中には他にもいくつもの一者入札があることがわかりました。区の入札でないため目にふれないのですが、競争性が働いていないのではとの不信がぬぐえません。法人選定時の「標準偏差」導入、そして建設工事の一者入札と、この園の民営化には不透明さがつきまといます。
 さらに、最近の民間保育園の施設は、最低基準を本当にぎりぎりでクリアしているもの、プレハブ建築のもの、外観が倉庫のようなものなど、子どもたちが家よりも長い時間すごす施設としては疑問のある劣悪な施設が増えています。保育の質に直結することであり、この点についてはあらためて調査したいと考えています。
 民間保育園の運営については、全国的に、人件費の流用も問題とされています。今後も増えていく民間保育園、また民営化について、貴重な財源が浪費されないよう監視が必要です。
【河北病院敷地が陥没】
 第三に、今後問題となりそうな、阿佐ヶ谷北東地区のまちづくりです。
 たまたま区民の方から、河北病院敷地内で土地の陥没が起きていることを知らされたので質疑の中で示しました。区はこの状態を把握していないとのことでした。今後、杉一小を移転する予定の土地であり、駅前一等地の杉一小用地との交換は安全性、また財産価値の面から本当に大丈夫なのでしょうか。
 また、土地の権利交換に関して区議会の議決時期等についてはいまだ検討中とのことであり、区の財産処分なのに果たして区議会が有効に関与できるのかはなはだ心もとないことです。区に不利益な交換となり第二のあんさんぶる問題とならないよう注意喚起します。
【「平和憲法」削除事件】
 このほかにも多数の問題がありますが、最後に、憲法と女性政策について述べます。
 一般質問でも追及し、かつ、予算特別委員会でも質疑してきたところですが、まず第一に区長の憲法観です。
 男女共同参画のイベントをめぐって起きた「平和憲法」削除を求める検閲事件については、区長からも所管からもついに責任ある答弁が得られなかったことは大変遺憾です。
 区の文書に「平和憲法」の言葉がのることを区職員が怖がるほど、いまの日本には言論の自由がなくなってしまったのでしょうか。憲法違反の検閲であるとの自覚を強くもち、厳しく反省してください。
【9条擁護と相いれない区長の憲法観】
 憲法に関連して、区長が以前、安保法制に対して「国民の生命、財産を守る安全保障の根幹をなす政策との与党の判断でつくられた」と評価する発言をしていることを指摘しました。いわゆる9条擁護の立場とは相いれない発言と指摘しましたが、区長は沈黙したままでした。
【男女平等センター事業の後退】
 男女平等センターの区民認知度は目標とする50%に到達するどころか、むしろ下がっています。
 山田前区長時代に男女平等センターの常勤職員がはずされ、受付のみの委託となって事業は大きく後退したわけですが、田中区長のもとで、前区長よりもさらに女性政策を後退させてきたことを指摘します。なにかと前区長を引き合いに出すことがお好きな田中区長ですが、区民負担増と人員削減、民営化などの行革では前区長すらやらなかったことが行われている上に、憲法や男女平等についても前区長と変わらない考え方で区政運営をされていることは大変残念です。
 以上、区政に対する評価を様々述べてまいりました。杉並わくわく会議として、平成30年度杉並区一般会計予算ほか4予算には反対とし、関連議案のうち、第13号、第14号、第15号議案については賛成、他の議案については反対とします。
 終わりにあたり、職員の皆様には、この間多くの資料を調整いただき、また様々な疑問に丁寧にご教示いただきましたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。