わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

公共性を失った土地区画整理事業。認可撤回を(2019年9月13日一般質問)

 2019年9月13日、杉並区議会第三回定例会にて一般質問しました。

1.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

 杉並区は「土地区画整理事業」に認可をおろしましたが、田中区長が申請して田中区長が認可するという一人二役、猿芝居です。もともと「杉一馬橋公園通り」の拡幅が「喫緊の課題!」といっていたのに、フタをあけてみるとA地主さんの土地提供はナシ。

 病院跡地の汚染については「更地にするまで調査しない」。病院が汚染対策するから土地評価には影響ない(実際より高い価値で交換)。換地(土地の権利交換)の資料も出さない。

 区として行う事業なのに法の盲点を突いた「個人施行」ですべて隠蔽しています。

 こんな卑怯なやり方でわが街がボロボロにされるのは許せない。本当に許せない。

2.保育について

 区立保育園の民営化に関するガイドラインについて質問しました。区立にはお金を出さないという国の方針が間違っているのですが、杉並区のような富裕な自治体は自前でちゃんと区立を運営していくべきです。

 以下原稿です。(実際の発言とは異なる部分があります) 

1.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

 一般質問をいたします。まず、阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて質問します。

 8月30日、田中区長は、自らと、河北医療財団、欅興産の3者で行う土地区画整理事業に対し事業の施行を認可しました。この事業計画については、これまで何度となく議会の場で問題点を指摘してきましたが、計画ありきで決定されたことはきわめて遺憾なことです。

<区が行うのに「個人施行」とはこれいかに>

 とりわけ、手続きには問題が多すぎます。土地区画整理事業は、公共施行と個人施行に分かれており、杉並区が行う場合には、当然公共施行として行うべきです。しかも、今回は阿佐ヶ谷の駅前という高度に公共的な区域が対象ですからなおさらです。ところが、区は個人施行を選択しました。

 思い起こすのは沖縄県辺野古新基地です。県の埋め立て承認取り消しに対して、国が不服申立てを行いました。個人が権力に対抗するために用意された制度を国が恥ずかしげもなく利用するという反則です。

 これと同じで、個人のために用意された制度を、禁じられていないからといって、自治体という公権力が利用するのはやってはいけないことです。

<区長が申請、区長が認可とはこれいかに> 

 その上に、区長が事業者として申請した事業を、区長自身が認可する一人二役というのも、制度の欠陥とはいえ、やはり反則です。

 <内緒で公聴会の「ゴールポストを動かす」>

 7月17日には、杉並区まちづくり条例にもとづき、大規模土地利用計画に関する公聴会が開かれました。事前に区ホームページ上の公聴会運営要綱を見ると「くじにより10人の公述人を選定する」「公述の申出者からくじに立ち会う旨の申出があった場合は立ち会わせなければならない」とありましたので「くじ引きはいつ、どこで行うのか」を所管に問い合わせたところ、なんと、この要綱は公聴会が告知される前日の6月27日にひそかに変更されていたという驚くべき事実が判明しました。

 変更後は、くじ引きではなく、区長が公述人を任意に選ぶことができるようになり、さらに、くじ引きを行う場合であっても公述人を立ち会わせる義務は削除されました。しかも、この要綱の変更については、公述申出者には一切知らせないまま、公聴会に至りました。今に至るまでホームページにも掲載されていないため誰も知ることができません。

 世間ではこういうのを「ゴールポストを動かす」といいます。区民が知ることのできないルールによって行われた公聴会は無効と考えます。

 <賛成の人だけ全員発言>

 このように選ばれた公述人はどういう人たちであったか。公聴会を傍聴したところ、10人の公述人のうち賛成意見が4人、反対・慎重意見が6人でした。後に区民の方が所管に問い合わせたところ、全体で28名の公述申出があったうち、賛成は4名しかいなかったそうです。すなわち賛成意見の4名は全員発言を許され、残る24名からは、たった6名しか発言ができなかったのです。これこそ突然の要綱変更の効果です。

<しかも、区長・区役所のご指名?>

 しかも、賛成の4人は、東京商工会議所杉並支部、マイタウン阿佐ヶ谷協議会、杉並建築会、阿佐ヶ谷神明宮のそれぞれ代表や役員を務める方々です。地域の顔役で、区長、区役所とも日常的におつきあいのある皆さんです。なかの1人の人は発言の中で「もうこのへんでいいですか」と区側に尋ねるシーンもあり、出来レースが疑われます。

 そこで伺います。公聴会開催にあたり、区役所は直前になって内緒で要綱を変更しました。それはどういう理由によるものでしょうか。また、要綱変更の事実を、現在に至るまで公述を希望した人も含む区民に対して公に示していませんがそれはなぜか、説明を求めます。

<まちづくり景観審議会部会も省略> 

 さらに、まちづくり条例によれば、公聴会の次に、区長はまちづくり景観審議会土地利用専門部会の意見を聞くことができるとされていますが、このプロセスが省略されたことも不当です。 

 このように不当なやりかたで結ばれた協定は撤回し、大規模土地利用手続きのプロセスはもう一度公聴会からやり直すように求めるがいかがか、所見を求めます。(Q1-1-1)

 <土地区画整理事業の目的は道路、公園の整備>

 次に事業計画についてうかがいます。

 土地区画整理法によれば土地区画整理事業の本旨は「公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図る」こととされています。すなわち、公共施設をつくるため、個人の財産を一部提供していただく、土地の面積は減るが、利便性が高まり、資産価値が上がるという見返りがある、という仕組みです。

 公共施設のために供出する土地を公共減歩といいますが、一般的には20%、30%、もっと強力な減歩では50%などという例もあるとききます。

<公共施設への拠出はせず、メリットだけ享受>

 ところが、このほど入手した事業計画書を見ると、公共減歩率は全体でわずか4.05%と極限まで低くほぼゼロに近いのが特徴です。

 その一方、河北病院は現状の約1.5倍にあたる30,000平米の延べ床面積をもつ病院を建てられるようになり、地主さんは汚染地・浸水地の河北病院用地を手放し、駅前の一等地を手に入れるという、2者にとっては濡れ手に粟のような計画となっています。一般の土地取引ではない「土地区画整理事業」という特殊な制度をつかうメリットは享受するのに、公共への貢献はほとんど果たさない計画です。

 <「喫緊の課題」への貢献はナシ>

 特に、この間、区が「喫緊の課題」と住民に説明してきた区画北側道路(図1参照。区がいうところの杉一馬橋公園通り)の9mへの拡幅が問題です。

 現在の計画図(図2)でみると、拡幅予定区間の約1/4しか当該区画に入っていません(図2の「A街区上部のグレー部分)。つまり、残りの部分、河北病院本院・分院の北側部分は公共減歩ではなく、別に区が買収することになります(図2の「B・C街区上部のピンク部分)。

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図1 2017年の計画図。北側道路が含まれている

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図2 2019年の計画図

 この事業の民間の主体は、これだけメリットのある計画を使っておきながら、なんとケチくさいことに、これだけの土地すら提供することを拒み、拡幅したいなら区が買い取れと言っているわけです。

<公共性は失われた。認可の撤回を>

 この土地区画整理事業計画最大の公共施設整備だったはずの当該道路がほとんど外れた時点で、もはやこの計画の公共性は失われたといってもよく、土地区画整理事業として施行認可したことは不当であり撤回すべきです。なお、念のため、土地区画整理事業における公共施設とは道路、公園、河川等であり学校は該当しません。

 当該道路の3/4を土地区画整理の対象から外したのはなぜか。また、今後の拡幅スケジュールはどうなるのか、説明を求めます。(Q1-1-2)

 なお、計画図によると他にも2、3、4号道路があります。それぞれ拡幅や付け替えなどが予定されていますが、それらの公共性についても説明を求めます。(Q1-1-3)

土地区画整理事業公聴会開催を> 

 私はこれまで公聴会を開催すべきと要望してきました。土地利用構想の公聴会が開かれたことはいろいろ問題がありながらも一歩前進と評価します。

 しかし残念ながらその対象となったのは、計画のほんの概略にすぎません。このたびの阿佐ヶ谷の土地区画整理事業は最初に述べたように、きわめて公共性の高い地域を改変する開発行為であり、都市計画の扱いに準ずるべきです。

施行認可はいったん撤回し、土地区画整理事業についての公聴会を改めて開催すべきと考えますがいかがか、見解を求めます。(Q1-1-4)

 <「仮換地」前に議会に説明を>

 次に、換地すなわち地区内における土地の権利交換についてうかがいます。

 土地区画整理事業の要は土地利用に関する権利の変換にありますが、いま現在、換地に関する情報は一切公開されていません。

 そこでまずうかがいますが、仮換地指定の時期はいつか。また、仮換地の登記以前に換地計画は議会に説明して審査に付されると考えてよいでしょうか。所見を求めます。(Q1-2-1)

 ちなみに港区の田町駅前開発は、同じ個人施行の土地区画整理事業ですが、区は仮換地指定の直前ではあるが、区議会に詳細な資料を提供して説明を行っています。

<河北病院の土壌汚染、軟弱地盤はマイナス評価すべき> 

 次に換地計画の手法について具体的にうかがいます。

 不動産鑑定評価は行われるのでしょうか。また、河北病院用地は土壌汚染および軟弱地盤が指摘されており、これらの土地の欠陥については当然マイナスに査定されるべきですが、換地計画のなかではどのように評価されるのか、説明を求めます。(Q1-2-2)

<河北病院の汚染を把握していない問題>

 この計画の中で、河北病院用地の汚染調査は大変大きな要素です。仮換地に先立って、河北病院の汚染の状況を把握し必要な費用を評価から差し引くべきですが、先日の他の議員への答弁でも病院から調査報告すらまだ受けていないとのことでした。

 また、土壌汚染調査に関しては、必要に応じてボーリングも実施すべきです。これまで区は病院が更地にならないとボーリングができないかのような説明をしてきましたが、更地にしなくてもボーリングは可能です。

 <杉並区も知っている。原状でのボーリングは可能>

 その一例として、杉並区が国から馬橋公園拡張用地として取得した旧気象庁住宅のケースがあります。先の第2回定例会で、この用地の解体工事に関連して土壌汚染が報告されました。そこで、その詳細について情報公開請求を行ったところ、報告書には、住宅棟の中に入り、畳を上げ、床板を切り抜いて、ボーリングを行っている様子を撮影した写真が添付されていました。直径10cmの筒が入ればいいので、床板を切り抜くといっても、さほど大きな面積ではありません。

  このように、杉並区においても解体工事を行う以前に土地の汚染を把握した事例が確認できました。一時的な作業ですから、もちろん営業中の病院でも調査は可能です。

あらためて、河北病院用地の汚染について、ボーリングを含む調査を行い、汚染の実態を把握するよう求めますがいかがか、所見を求めます。(Q1-2-3)

 <区の権利が「3割」しかないのはなぜ?>

 次に、換地後の権利ですが、区はこれまで、換地後の杉一小敷地について、「区の権利が3割程度残る」と説明してきました。ためしに、路線価を基にして計算したところ、土地の高低や汚染、軟弱地盤などを考慮せず、単純に面積かける路線価で計算しても、杉一小と河北病院の敷地の価値はほぼ5対3、即ち、杉一小における区の権利は4割あって当然、その上、さらに売買の実勢価格や汚染地であり軟弱地盤による減額を考慮すれば、5割、6割の権利があってもいいはずです。

  いったいどのような計算をすれば7:3などという数字になるのか、その計算方法、および、地価をいくらとして計算したのか、具体的な説明を求めます。(Q1-2-4)

 <狙われる駅前公共用地>

 仮換地指定の後は、さらに油断ができません。これも田町の例ですが、この計画では仮換地指定が行われたあとに、容積率を400、500%からなんと940%と、ものすごい緩和を行いました。

  ちなみに、このケースも駅前の学校用地を民間の汚染地と交換する点で、阿佐ヶ谷の計画にそっくりです。いま、駅前の公共用地はどこもディベロッパーに狙われているのです。

<わざと容積率アップをあとまわし> 

 阿佐ヶ谷では、これから仮換地が行われますが、そのあとにやはり、用途地域容積率の変更が予定されています。

 けやき屋敷は容積300%に。また、杉一小の敷地については、現在は商業、近隣商業、住居専用地域が混在しており容積率は500、300、200%ですが、これをすべて商業地域に変更する旨説明されてきました。その際にはいっきに600%まで引き上げるという話です。

  ところが、これらの容積率の大幅な緩和は、先行する仮換地の時点では、まだ実現していません。田町の例同様、いずれ土地の利用価値が大幅に拡大するとわかっているのに、杉一小用地は緩和前の、過小評価された状態で仮換地が行われることになります。区にとっては大損です。

<区が大損する取引。見逃す区議会> 

 通常の売買であればありえない不均衡な取引、区の財産を大幅に毀損する取引が、土地区画整理事業というブラックボックスを使って、いままさに行われようとしているのです。

  区議会がこれほどに不利な取引を見逃すなら、職務怠慢どころか存在意義を問われます。公共の財産を守るために、立場を超えて、この問題について明確な説明と是正を求めることは私たち議会に課せられた使命です。

 <平米150万円の高価な保留地を買うのは誰?>

 なお、土地区画整理事業では、地権者が保留地を拠出してそれを売却することによって事業費をまかなうのが一般的ですが、この事業計画では保留地400平米余を6億円余で売却するとされています。平米単価は約150万円ということになります。

 計画書では、対象地区の平均地価は平米あたり115万円としています。これと比べて3割以上も割高ということですから、ずいぶんといい土地を売りに出すようです。この単価はどういう根拠に基づいて算出されたものか、説明を求めます。(Q1-2-5)

  6億円を投じてこんな高値でこの土地を買うのは誰かということも今後問題になりそうです。

<けやき屋敷100本の大木を伐採>

 阿佐ヶ谷開発問題の最後に、やはり自然環境についてうかがわなくてはなりません。昨年から行われていた自然環境調査がこのほどまとまり、報告書を拝見しました。

  その中でまず、けやき屋敷における大径木の本数は何本か。うちケヤキは何本かをお示しください。特に、そのなかでも大きい木についてうかがいます。目通り径が最大のものは何センチか、また1mを超える木は何本か。お示しください。(Q1-3-1)

 提案されている地区計画素案では、保存緑地及び歴史的景観緑地として一部の樹木を残すことが計画されていますが、これらの対象として保存される樹木は何本でしょうか。お示しください。(Q1-3-2)

 ざっと数えても、残る木は40本足らず、100本もの大木が伐採される計画です。

 <タカのいるまち阿佐ヶ谷>

 また、生き物についてうかがいます。これまで指摘してきた絶滅危惧種のタカの一種ツミについて、この森を使って生息している実態が調査により詳細に確認されました。ちなみに、ツミについてはその後、飛翔している姿を見たとの情報や写真を阿佐ヶ谷の方々からいただきました。

 「タカのいるまち阿佐ヶ谷」素晴らしいですね。

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杉一小校庭でハトを捕まえたツミ

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松山通りのお店の軒先のツミ

 

  東京都の条例では、タカ類の生息環境保全のために特段の配慮が求められます。他の議員の質問にもありましたが、環境省の手引きによれば2営巣期をカバーする1.5年の観察期間が必要なはずです。区は具体的にはどのような対応を行うのか。また、東京都との協議は現在どうなっているか、説明を求めます。(Q1-3-3)

 <自然豊かな屋敷林を残せ>

 自然環境調査では、ツミ以外にも多数の生き物が確認されています。両生類ではアズマヒキガエル、爬虫類ではニホンヤモリがおり、絶滅危惧種ではないが、やはり東京都レッドリスト指定であることが示されています。 

 植物については、けやき屋敷の敷地内では174種、周辺に128種がみられ、日常的に人の手で整備されている屋敷林にもかかわらず、生態系における多様性が非常に豊かであることがわかりました。

<公共性なく区にとって不利な事業、引き返すべき> 

 今回の質問では、土地区画整理事業の施行認可を受けて、計画の公共性のなさ、それに対して民間2事業者のメリットばかりが大きく、区はきわめて不利な取引を強いられる計画であることを述べてきました。

 前に述べた豊洲市場における汚染地との権利交換、また田町駅前の開発とも瓜二つです。

 まちづくりの観点はもちろん、財務の面からも、とうてい認めることはできません。いまならまだ間に合います。区の財産が大きく毀損され、貴重な自然が損なわれる前に引き返す勇気が必要です。

2.保育について

 次に保育についてうかがいます。7月から区立保育園民営化ガイドライン改定のための懇談会が開催されています。私も傍聴しました。本日はこの民営化ガイドラインについてうかがいます。

 現行の民営化ガイドラインは、単なる事務手続きを並べただけのものであって、区立保育園の保育の質を継承していくためには不十分であると考え、これまでもたびたび意見を言ってきたところです。区長も最近は「区内全体の保育の質向上ということを進めていきたい」と述べておられますので、改定に期待したいところです。

 <杉並区の保育を守るために>

 区立園の民営化は行うべきでないというのが私の立場です。しかし、最低限、守るべきルールを策定することは、あるべき杉並区の保育をきちんと守っていくために意義があると考えます。したがって、これまでにも述べてきたように、民営化ガイドラインには、まず、民営化にあたっての区のめざす保育及び理念がまず書かれなくてはならないと思いますがいかがか。また、杉並区は民間事業者の保育園に対して何を期待しているのかうかがいます。(Q2-1)

 <「民営化の必要性」はガイドラインにそぐわない>

 現行のガイドラインには理念がまったくありません。残念ながら、改定案にも理念は明らかでなく、ガイドラインは「民営化を円滑に進めるため」のものと書かれているほか、新たに「民営化の必要性」の説明が追加されています。これは民営化のルールを示すガイドラインにはそぐわない1章で、削除すべきと考えます。

<「保護者満足度」ではなく客観的な比較を>

 次に、杉並区はこれまでの民営化についてどう評価・検証しているのか。この質問をすると毎回返ってくるのは「保護者アンケートで、9割が満足」というゆるい答えです。なんの証明にもなりません。

 検証については、保護者満足度のような主観的なあいまいな数字ではなく、職員の勤続年数、待遇や事故の有無、保育内容、行事など、区立との客観的、具体的な比較が必要と考えますが、いかがか。また、区はこれまでの民営化で何が得られたと考えているか、お示しください。(Q2-2)

<保護者の反対を押し切って進めてきた>

 これまで、区立保育園の民営化にあたって、多くの園では当然、保護者の強い反対が起きましたが、区は「予定どおりすすめる」の一点張りでつき進むのが常でした。

 当該園の保護者に通知もしていないのに、民営化を区民意見募集に付していたり、父母会で相談している最中に、見切り発車で事業者の選定を始めると脅したり、しまいには、選定委員の点数のつけかたまで批判するという始末でした。

 本来、子どもの代弁者としての保護者の意見をていねいにききとり、反映するべきですが、これまで民営化にあたって保護者の意見を取り入れた例があれば、どんなことがあるか、お示しください。

<選定委員会は保護者4名に> 

 また、保護者が意見を言える最大の場は選定委員会です。改定案によれば委員10人中2名しか保護者は入れず、これに対して、職員は5名も入っており不均衡です。保護者は仕事のあと、子育てもある中で会議に参加しなければならず、仕事や子どもの病気などでやむなく欠席することもあるかもしれません。4名の枠を確保することで、誰かが必ず出席できる保証ともなります。したがって、ガイドライン上、保護者枠は4名に拡大すべきと考えますが、いかがか。所見を伺います。(Q2-3)

<職員配置「事業者の判断」でいいのか> 

 民営化でもっとも心配なのは、職員の配置、人数と職員の処遇です。

 まず、配置について。区は「民営化しても区立とかわりません」と説明する一方、「公募要項に定めた条件は守るよう働きかけはするが、罰則などを設けることはできない」また「配置については事業者の判断による」とも述べています。

 参入時に区立のときと同様以上の配置がなされていることは当然のこととして、その配置が開園以後も維持されているのかは随時確認を行うべきですが、どのような体制でチェックしていくのでしょうか。また、現在は、職員に欠員が生じたことを、区としてどのようにして把握しているのか。その場合、事業者に対する支援はどのように行っているか、説明を求めます。

 <毎年の労働環境モニタリングが必要>

また、最近は、多くの「ブラック保育園」などといわれるケースが出てきています。

区では社労士による労働環境モニタリングを行っていますが、民営化した保育園に関しては、毎年の労働環境モニタリングを行うべきと考えるがいかがか、所見を求めます。(Q2-4)

  さらに応募条件として「労働法令違反を指摘されたことがない」こと、及び運営上は「労働法令の遵守」を追加すべきです。また、悪質な場合には、契約解除などを含む罰則も考える必要があるのではないでしょうか。

<保育の引き継ぎ期間が短すぎる> 

 最後に区立から民間への引継ぎについてうかがいます。区は「合同保育は4か月」といいますが、実際にクラスに保育士が入って合同で保育を行うのはわずか2か月にすぎません。これでは、保育士、児童、保護者が相互に知り合い、なじむ時間としてはあまりにも短すぎます。

 これも前から言っていることですが、民間への移行をはさんで前後半年ずつ1年程度は合同保育が必要と考えますがいかがか。民営化後も半年程度は区職員が一部残留して合同保育にあたっている自治体があることは、以前の一般質問でも紹介したところですが、杉並区でも実施できるはずです。そしてその後も週1回程度の巡回支援を行うなど、引継ぎは手厚く指導と連携を強めるべきと考えるがいかがかうかがいます。(Q2-5)

 以上、意見を含め様々述べました。保育の主体である子どもと保護者の意見が尊重されるよう、ガイドラインに取り入れていただければ幸いです。