わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

使用料改定、阿佐ヶ谷開発…区政にとって公共とはなにか(2019年10月11日決算意見開陳)

 2019年10月11日、杉並区議会決算特別委員会で決算に対する反対意見を述べました。今回の決算審議でのポイントは「公共性」だと思って追及してきました。阿佐ヶ谷の開発問題では区が行うのに「個人共同施行」と、あたかもプライベートな事業であるかのように、情報が公開されません。河北病院の土壌汚染調査はその最たるものです。ひどいなあと思っているところに公表された「施設使用料見直し案」では公共施設の意味を見失い、民間の貸し会議室と変わらないかのような認識です。

 税金で行われる事業は公正性、公平性、公共性が担保される方法で行わなくてはならないのは、いうまでもないことですが、杉並区はその認識すら危うくなり、区長がやるといえば何でもアリになっているように思います。

 最後にヘイトスピーチについて述べました。本会議でとんでもないヘイトスピーチを行った佐々木千夏議員は、いまだに謝罪を行っていません。問題はまだ終わっていないのです。区議会議員全員が責任を負っていると思います。(議会運営委員会における発言はこちら

(以下発言原稿です。実際の発言とは異なる箇所があります)

 (1)当該年度の区政について

 杉並わくわく会議として、決算に対する意見を述べます。当該2018年度を振り返ると、あんさんぶる荻窪荻窪税務署の財産交換が行われ、高円寺小中一貫校においては、引き続き工事が進められ、さらに、事業者選定など手続きをめぐって問題が指摘されてきた上井草保育園が民営化され、他にも杉並保育園などの民営化の手続きが進められた年でした。住民、利用者の強い批判や反対の声を無視し、強行されてきた事業が当該年度継続され、また完遂されたというわけです。阿佐ヶ谷開発、西荻窪の補助132号線拡幅計画が本格的な準備段階に入り、地域の反対の声が募ってきた年でもあります。

 8月に発表された区立施設再編整備計画第二次プランをめぐっては、区内各地で、児童館の廃止を中心として、区民から多くの異論が出されたにもかかわらず、当初の案どおり、9つの児童館、3つのゆうゆう館の廃止を含む計画が決定されました。年度末には下井草児童館が廃止され、来春にはいっぺんに5つもの児童館の廃止が計画されています。

 また、前年度中に決定された保育料の値上げ、介護保険料、国民健康保険料の値上げと、いっそうの区民負担がのしかかった年でもあります。

 このような区政のあり方は容認できるものではなく、認定第1号平成30年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか4件の認定に対しては反対とします。
(2)施設使用料

 さて、質疑に関連して述べます。ここでは「公共性」がキーワードとなります。最初に施設使用料の見直しについてです。

【施設建設費を使用料に転嫁】

 論点の1つ目は、今回の最も大きな変更、施設建設費を使用料算出のベースに算入することです。

 これまで杉並区は施設建設費を使用料に転嫁することはせず、前回の大幅な見直し時でさえも

「施設に係るすべての経費を受益者負担とすることは、かえって公平性を欠くことになりかねません。このため、区では間接的人件費や減価償却費などは、算定経費には加えていないものです」

と述べています。転嫁するのはランニングコストのみという考え方をとってきました。ところが、今回施設建設費を算入するという大きな変更を行いました。その理由を質問しましたが、明確な答弁はありませんでした。

【税金の二重取り】

 公共施設は区民の税金でつくられるものです。つまり、利用者はすでに建設費を払っているのであり、使用料にこれを算入するのは税金の二重取りといえます。質疑のなかで紹介しましたが、ある自治体はこのように述べています。基本的な考え方ですから、もう一度読み上げます。

「公の施設は住民の福祉を増進する目的をもって設置された市民全体の財産であり、設置目的に合致する限り誰でも利用できる施設であるため、減価償却費は『資産の取得に要する費用』として公費で負担する」

 これは、従前の杉並区の考え方とも一致しています。前回の使用料見直し時には、公の施設は「誰もが利用することができ、受益者となりうるものであり、公費負担とする」と述べています。

 今回の案では負担率50%とされた集会施設等は現行より安くなるところも多いですが、負担率はいくらでも変更でき、今後の大幅値上げも懸念されます。前回の見直し時の考え方に立ち戻り、建設費を算定から除外するよう求めます。

【「使わない人に不公平」?】 

 論点の2つ目は、区が一貫して値上げの根拠としてあげる「使う人と使わない人の不公平」の問題です。

 いま述べたように、公共施設とは「誰もが利用することができ受益者となりうる」ことが前提です。今日まで使ったことのない人でも明日は使うかもしれない。図書館だろうが体育館だろうが、集会所だろうが、いつでも門戸は開かれている。それが公共施設です。区もそう考えていたはずです。まさか、区民の中に使う人と使わない人という画然とした線引きがあるとでも考えているのでしょうか。

【「特定の個人のため」?】

 そもそも区は何のために集会施設や体育館を建てているのでしょうか。それは区が今回述べているような「特定の個人の生活を快適にするため」ではありません。もちろん、公共施設の目的に区民個々の生活を豊かなものにすることが含まれてはいます。しかし誰にでも開かれている以上、「特定の個人」のためと表記するのは大きな間違いです。変更を求めます。また大事なのは、そのことが単に個人の生活を豊かにするのみでなく、地域社会を豊かにすることに直結しているということです。

【公共施設は社会を豊かにする】

 趣味やスポーツ、勉強などの活動は、それ自体、個人のみならず社会を豊かにすることでもありますし、グループで集れば、地域のつながりを形成することになります。活動の中で気づいたこと、学んだことを行政に提言したり、ボランティア活動などにつながっていけば、具体的に地域社会を改善していくことにもつながります。元来、社会教育活動とはこのような住民自治の仕掛けとして設計されているものであり、そのために教育文化施設、地域施設が各地にもうけられてきたのではないでしょうか。

 ところが、今回の見直しにおける区の主張は、個人が民間サービスのかわりに公共サービスを利用しているのだから、民間サービスと同じように、整備費用まで負担すべきと論じていることと同じです。そこには社会的な意義づけと、それだからこそ求められる公共の役割が抜け落ちています。

 今回の見直し案を読むと、杉並区の公共性に関する認識が怪しくなっているのではと心配になります。税金でまかなわれる公の事業は対価を得て販売する商品ではないし、区長は中小企業のオーナー社長ではありません。公務員はいうまでもなく単なる区長の部下ではなく全体の奉仕者です。当たり前のことですが、その当たり前にいま一度立ち戻って考えていただくよう求めます。

 (3)阿佐ヶ谷開発

 質疑では、阿佐ヶ谷の開発問題について時間を割きました。これもまた公共とはなにかを深く考えさせられる問題です。

【公共性を無視した「個人共同施行」】

 阿佐ヶ谷の問題については、これまで定例会のたび毎回のように問題点を追及してきました。屋敷林が伐採されてしまうことも、阿佐ヶ谷の人間にとってはつらいことですし、杉一小がなぜ水はけの悪い、土壌汚染の可能性がある場所に移転しなければならないのか、理不尽に思っている卒業生やその保護者、関係者も多いのです。

 なぜこのような理不尽な計画がなされるのかといえば、公共性を無視した手法がまかり通っているからです。区役所が関与するのに、あえて個人共同施行として行い、換地情報をはじめとして、重要情報を区民に公開しようとしません。また、制度の盲点を突くように、区長が申請して自身で認可するという一人芝居は、違法でないとはいえ、区民に説明できるものではありません。

【不動産鑑定評価も区議会の審査もしない】

 仮に杉一小の土地と河北病院用地が売買されるのであれば、不動産鑑定評価が行われ、区の財産価格審議会で審議され、最終的に区議会で審議して議決しなければなりません。ところが、土地区画整理事業というブラックボックスの中ですべてが行われるため、不動産鑑定すらもおこなわれず、いわんや区議会は蚊帳の外。すべてが終わってから事後承認をするしかないのです。公共の土地の権利移転でありながら、公正さを担保する仕組みが見事に全部外されています。

 この事業そのものの公共性自体がきわめて低く、そのことは公共減歩4%という数字に表れていると一般質問で指摘しました。河北病院と地主さんに対する利益供与と指摘してきましたが、いずれ杉一小学校の移転後行われる、同用地をタネ地とする開発事業に至れば、地元の有力者どころではなく、大手不動産ディベロッパー、大手金融機関が顔をあらわすことでしょう。駅前の一等地で140年以上地域の人たちに愛されてきた、地域のシンボルであった小学校を彼らの利益のために差し出すことの引き換えに区民は何を得られるのでしょうか。

【河北病院の土壌汚染は不明のまま】

  河北病院用地の土壌汚染調査についても質問しました。区は河北病院が移転するまで土壌汚染調査を行わないといっています。だとすれば、この土地は汚染のあるものとして扱うことが不動産鑑定の常識であることは何度も指摘してきました。

 副区長の言葉を借りれば「掘ってみなくちゃわからない」のにもかかわらず、換地計画において汚染によるマイナス評価はせずに、交換価値を計算する、すなわち普通地として扱うというのが区のこれまでの一貫した答弁です。これが地主さん及び地上権をもっている河北病院に対する優遇でなくて何なのでしょう。

 河北病院の土壌汚染問題について、区長は「風評被害」だなどと的はずれなことを言っていましたが、河北病院くらいの規模の大きな病院であれば、土壌汚染対策法及び東京都環境確保条例に定められた特定施設等に該当することから、汚染がある前提で関係者が行動するのは当然だと言っているだけです。仮にも小学校を建てようなどという者がその程度の心得もないとすればとんでもなく危険なことです。

 病院の都合で移転をするのですから、病院側からすすんで情報公開を徹底し、汚染の有無をふくめて逐次状況を明らかにして、区民の信頼を得るように努めるのは当然のことですが、現在やっていることは正反対です。わかっているはずの地歴を公開せず、また、サンプリングもいっさい行わない。区の事業パートナーとしての姿勢が問われます。まして小学校の移転予定地です。区は最低限、地歴調査、有害物質の使用履歴情報を求めて、区民に提供すべきです。

【汚染地のロンダリング 

 土壌汚染を解明しないまま、普通地として換地計画を進めるならば、それはまさに豊洲市場田町駅前で行われたのと同じ手法、公共用地をからめた「汚染地のロンダリング」にほかならないと指摘します。

 阿佐ヶ谷の計画については、まちの人たちが次第に問題のありかに気づきはじめ、全区的な問題になりつつあります。あらためて、計画の全面的な見直しを求めるものです。

 (4)保育園

 保育園についても質疑しました。

【「民営化しなければ財政破綻」はウソ】

 区長は議会での民営化に反対する意見にたいして、たびたび、民営化を否定すれば財政破綻する、と発言していますが、本当にそうなのかを数字で確認しました。

 質疑では、区立保育園の民営化1園あたりの行革効果は1億円弱という外部監査の報告を確認しました。当該年度実績で約260億円の保育経費に対し、1億円では、焼け石に水とまでは言いませんが、全体に大きな影響を与える金額とはいえません。民営化しなければ財政破綻などという脅し文句を軽々しく使うべきではないと指摘します。民営化にはもっと別の意図があるだろうと思いますが、時間の関係で、また別の機会に譲ります。

 【私立保育園への加算金】

 もうひとつは、私立保育園に対する区独自の加算金についてです。やはり外部監査報告によれば、区独自加算は私立認可保育園の運営費の35~40%を占めており、これをやめればほとんどの私立園は経営が立ち行かなくなる、と指摘されています。私はこの加算金については減らすべきではない、むしろ、拡大すべきであると考えています。

 しかし、同じ外部監査の意見の中で独自加算について見直しを求められたことから、区は見直しを行っているとのことです。多くの園では加算金が減額になる可能性が高く、経営への影響を心配する声も聞きます。

 区は民間にできることは民間に、とこれまで民営化を積極的に進めてきましたし、また膨大な数の私立保育園を新設してきました。がしかし、それらの園は国・都・区の負担する公定価格分の公費はもちろんですが、さらに区の独自加算もなければ経営が立ちゆかないのです。保育こそは本質的に公共的な分野であることを改めて痛感します。見直しにおいては慎重に行うよう求めます。

 (5)産業、西荻窪補助132号線

【消費税インボイス制度】

 産業に関してひとこと述べます。質疑では、消費税のインボイス制度についてうかがいました。産業部門がこの問題にほとんど関心なく、危機感を持っていないことは残念ですし、そうでなくても、消費税の引き上げにより商売が厳しくなるなか、区内の零細事業者、フリーランスの皆さんの営業を今後守れるのだろうかと心配になります。今後の対策強化を求めます。

補助金不正事件】

 商店街の関連では、西荻窪商店会連合会の補助金不正事件の解明も急務です。領収証の偽造は論外ですが、5年前にも都から指摘を受けていた協賛金の取扱いについて、翌年以降も問題のある取り扱いがされていたことは、区の指導責任であり、知らなかったですませられることではありません。ことの露見からおよそ半年がたちました。今後すみやかに事実を解明し、責任の所在を明らかにするよう求めます。

 【補助132号線】

 このほか区政の課題はあまたありますが、特に、事業認可が迫る西荻窪の補助132号線問題は問題です。再開発との関連も指摘されているところです。まちづくり全体のなかで必要性の有無から検討しなおす必要があることを指摘します。

 (6)ヘイトスピーチについて

 最後にやはりひとこと述べておかなくてはならないのは、ヘイトスピーチについてです。

 委員会でも他の委員からヘイトスピーチについての質疑がありましたが、杉並区議会の本会議において、日本に居住する外国籍の方々に対するヘイトスピーチが行われたことは許されることではありません。

 本件については、すでに議会運営委員会の席上、委員外議員として意見を述べましたので、繰り返しませんが、朝鮮通信使に対する侮辱、日本の植民地支配などの歴史的事実の否定、なんの根拠もなく在日の方々を犯罪者扱いするような発言は典型的なヘイトスピーチです。

 私は超党派の議員有志の一員として、当該議員に対して発言の取り下げと謝罪を申し入れましたが、今日現在、ご本人からは回答をいただいていません。真摯な対応を求めるものです。 

 民族差別をはじめとするあらゆる人権侵害を許さないという点では、議員の皆さん、また区役所の皆さんとは思いを同じくしているものと思います。とりわけ、今回の井口議長の迅速な対応には心よりの感謝を表明するものです。

今後、杉並区議会において、また杉並区政において、ヘイトスピーチ、人権侵害を二度と起こさないと強く決意するものです。

  以上意見といたします。

 終わりにあたり、今回の決算審議にあたり、多くの資料を調整し、ご教示くださり、また数々の質問に根気よく答えてくださった職員の皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。