わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

阿佐ヶ谷開発批判に対し区長が「デマ」よばわり(2020年度予算案等に対する意見開陳)

  2020年3月16日杉並区議会予算特別委員会のおわりにあたり次年度予算案と区政運営についての意見を述べました。

 阿佐ヶ谷北口開発において、仮換地計画が、杉並区にとって不利(損)なものになっていることを、独自の計算によって明らかにしたほか、児童館、施設使用料、学校図書館などについて言及しました。

 阿佐ヶ谷北口開発をめぐっては、賛否両方の委員から質疑が相次ぎました。他の委員からは「政治献金をもらっている事業者を優遇して容積率の緩和を行ったのではないか」との追及も。区長が批判に対して「デマだ」と感情的に答弁する一幕もありました。この問題は引き続き追及していきます。

(以下は発言原稿です。実際の発言と違う部分もあります)

 杉並わくわく会議として、来年度予算案についての意見を述べます。

(1)新型コロナウィルス対策について

 冒頭に、新型コロナウィルス対策について述べます。

 日々変わる状況に追われながら、対応して下さっている職員の皆様に心より敬意を表します。

【改正特措法に対する全国市長会等の危惧】

 改正新型インフルエンザ特措法が施行されました。緊急事態宣言時には私権が大幅に制限され、自治体はきわめて重い責任を負うことになります。全国市長会は、同改正法成立直前の3月11日、全国知事会全国町村会とともに声明を出し、緊急事態宣言発動の判断基準の明確化等を求めているところですが、法成立を受けて、さらに、宣言の発動・解除への国会の関与などを、区としても国に強く求める必要があります。

【予測される経済的打撃。休業補償を国に求めるべき】

 同じ声明ではまた、リーマンショックを超える地域経済への打撃を予期して、国に一時支給金創設等を求めています。

 政権与党の自民党内からも、若手議員の会が、30兆円規模の補正予算の編成、中小企業、個人事業主、労働者に対する休業補償、消費税を当面ゼロ税率に、等を政府に求めています。

 今回のコロナ問題は、日本経済に深刻な打撃を与える可能性が高まっています。杉並区、区議会としても他自治体と連携しつつ、これらを政府に対し要求していくことが緊急に求められています。

(2)阿佐ヶ谷駅北東地区開発について

 それでは、以下、来年度予算案と区政運営についての意見を述べます。最初に、阿佐ヶ谷北口再開発について述べます。

【杉並区の資産はマイナスに】

 今回、私は、区が調査委託した不動産鑑定書を情報公開により入手し、検討したところ、昨年行われた仮換地指定と、不動産鑑定とでは、仮換地の方が杉並区にとって大幅に不利であることを確認しました。鑑定された地価で計算し直した金額をもう一度のべます。

 区の保有面積かける単価つまり資産の総額は、93億円から88億円へ5%マイナス。民間は、208億円から212億円へ2%プラス(*詳細はこの項目の末尾)。

 仮換地では同等とされているのに、鑑定では、このような格差が出ます。

容積率の変更でさらに損】

 さらに、この鑑定は用途地域変更前なので、実効容積率を300%と見て計算しています。しかし、現在、すでに杉一小の容積率が全面的に500%に引き上げられ、しかも緩和型地区計画が導入されたことにより、実効容積率もほぼ500%を使い切ることができるので、単純に土地の価値が1.67倍に評価されると考えれば、5%どころではない、大損の計画です。換地という手法を使ったことにより区有財産が毀損されることは明らかです。このような権利交換は許されません。

【区長の「デマ」発言】

 区長は阿佐ヶ谷開発について「様々なデマが流されている」あるいは「政争の具にしている人たちがいる」と答弁しました。何がデマか、何が政争の具か。反対している人たちは、阿佐ヶ谷の将来を心配して言っているのであって、それをデマとは失礼千万、それこそがデマです。反対意見はすべてデマと切り捨てる、公人としてあるまじき姿勢です。

【「賛同する議員」だけ?】

 区長がこの調子ですから、理事者までがとんでもない発言をしました。「この計画にご賛同いただいている議員の皆さんと共に進めて行きたい」。つまり、区の方針に忠実な議員以外は要らないといっているわけです。

 今議会の一般質問で私は区長の「反対する人に説明するほど人手はない」という発言を批判しました。なぜ批判されたのか、この理事者、そして区長は全くわかっていないようです。再度申しますが、これは区長から独立した決定を行う議会に対する介入であり、区長に反対する立場の議員だけでなく、議会全体を侮辱した言葉です。おふたりに猛省を促します。

【屋敷林の「保全」がわかっていない】

 また、屋敷林の保全についての他会派の質問に対する答弁もいただけません。地区計画の25%以上、が議論になりましたが、これはあくまでも「緑化計画」であり保全ではありません。しかも沿道緑化など緑を創出するからいいんだと開き直った答弁も出ました。所管の理事者なのに、法の本旨を全く理解していない答弁です。保全の手法は、特別緑地保全地区など、様々定められています。区は本気で保全に取り組むべきです。

【抑えようのない自然の力】

 水害についても質疑がありました。たしかに河北病院、旧桃園川において、実際の浸水被害は何十年も起きていません。しかし問題は地盤です。谷底低地である河北病院は以前指摘したように、今も地盤沈下が続いている場所です。それは抑えようのない自然の力です。侮ってはなりません。

【自然に対する畏怖と歴史への敬意】

 阿佐ヶ谷の北口は、平安時代からという説もある神社、お寺、そして何百年もつづく屋敷林おかれてきて、大宮八幡からパールセンターを経由して北上してくる鎌倉古道につらなる、最もいい土地に杉並区最初の杉一小学校が建設されました。それは地形や水利など自然条件に従って形成されたまちの成り立ちであり、改変にはきわめて慎重でなければならないものです。自然への畏怖の念を忘れず、阿佐ヶ谷のまちの歴史にたいする敬意をはらっていただきたいと思います。

*:杉並区の不動産鑑定結果(業務委託による)を用いた資産総額

仮換地は地権者全員の資産増加率が平等になるように計算されるが、算出された土地の面積を「鑑定評価による地価」にあてはめると、区の財産が減額、民間が増額する。

<杉並区有地>

換地前 約93億円…ア 

内訳:A街区 5435.51平米×164.4万円/平米=89億4000万円 

   B街区 336.15平米×100.9万円/平米=3億4000万円

換地後 約88億円…イ

内訳:A街区 1433.28平米×181.0万円/平米=25億9000万円

   C街区 6359.86平米×98.0万円/平米=62億3000万円

イ/ア=94.6% ←区有地総額が5.4%マイナスに!

<民有地合計>

換地前 約208億円…ウ 

内訳:A街区 524.18平米×164.4万円/平米=8億6000万円

   B+C街区 19754.16平米×100.9万円/平米=199億3000万円

換地後 約212億円…エ

内訳:A街区 3714.13平米×181.0万円/平米=67億2000万円

   B街区 12606.77平米×98.0万円/平米=140億円

   C街区 468.94平米×98.0万円/平米=4億6千万円

エ/ウ=101.9 ←民間の財産は2%増

(面積は阿佐ヶ谷駅北東地区土地区画整理事業の資料のうち、仮換地調査書等による)

 (3)児童館について

 次に児童館の再編について述べます。

【杉並に児童館があってよかった

 コロナ対策で小中学校が休校になり、放課後等居場所事業も休止された中、杉並ではまだ多くの児童館が残されていたことで、子どもたちも親も助かりました。児童館という専用施設の存在は、多くの人たちの救いになっています。

【「学校という広いフィールド」は自由に使えない】

 児童館を再編して、学校の中で学童クラブと放課後等居場所事業が行われることについて、杉並区はこの案が出された2013年からずっと「学校という広いフィールド」を利用して、児童館と同じどころか、児童館のような狭い施設ではできない事業展開ができますよと説明してきました。しかし、4つの児童館が廃止・再編されたもとで、いま、再編の実態は区民の目に明らかになってきました。

 放課後等居場所事業の現実は、校庭、体育館などが毎日自由に使えるわけではなく、引率者に従っていかなくてはならない。また、校庭・体育館を使う予定になっていても学校の都合次第で変更されて使えなくなったりする。お菓子、ゲームが持ち込めない、自転車で来れないなどの違いは、行政にとってはささいなことなのでしょうが、子どもにとっては重大です。子どもの行動の制約となっています。

【児童館と居場所事業は違う】

 学校施設の活用により、子どもの居場所が増えるとすればいいことですが、児童館とは違う事業です。区議会のこの間の議論を聞いていても、児童館と放課後等居場所事業は実質が違うということは、行政と議会、そして区民の共通理解になってきたと思います。

 区はこれまでの説明を改め、児童館と学校の居場所は違うものだということを区民に対し明確に説明するべきです。その上で、児童館全館廃止の方針を転換し、児童館を存続していくよう、施設再編計画の見直しを強く求めます。 

(4)施設使用料の改定について

 次に、施設使用料について述べます。

【アンケートでは7割が「区民負担を軽く」だったのに】

 区が行ったアンケートについて質疑しました。無作為抽出の約400人のうち「公共施設は区負担を増やし料金を安くする」に賛成の人は44%。しかしアンケート全体の1900人でみると7割近くが賛成しています(*詳細はこの項目の末尾)。ですが、公開されたのは無作為抽出の400人の結果だけ、他は議会にも報告がありませんでした。区の考え方に反し、都合が悪いから公開しなかった、意図的に操作したと言われても仕方がありません。

 昨年の決算特別委員会では、私は、公共性・市場性、必需性・選択性の4分類について整理しなおしていただきたいと要望しました。また、パブコメでも様々な意見がありましたが、考え方はいっさい修正されていません。同様の区分方法をとっている他自治体では、法令で無料とする図書館、学校、公園など、また、法令で算定方法が定められている住宅、保育園、福祉施設などを除外した上で、区分を行っています。杉並区の示した区分方法は論理が通っていません。この区分による料金の改定には反対です。

 前回改定で割引きが廃止された団体利用については廃止のままです。団体割引には、団体結成を誘導し、地域活動、社会活動が活性化され、また、高齢者にとっては外出機会や生きがい、健康増進につながります。団体割引は必要であり、今後の再検討を求めます。 

*:公共施設の使用料等に関するアンケート(杉並区)

問10(要旨)公共施設にかかる経費の利用者負担について。あなたの考えに近いものを選んでください。A税金の負担を高くし使用料を安くする。B税金の負担を安くし使用料を高くする。

無作為抽出 A180人 B233人 ※A=44%

ホームページ A112人 B36人

集会施設 A402人 B83人

スポーツ施設 A399人 B161人

児童館 A44人 B8人

ゆうゆう館 A71人 B11人

区民事務所 A18人 B7人

合計 A1226 B539 ※A=69.5%

(5)学校教育に関連する質問の補足

 次に学校教育に関連する質問について補足します。

【牛乳パックリサイクル】

 第一に牛乳パックリサイクルについてです。リサイクルをする余裕があるなら実施に反対はしません。しかし、現場の先生たちからは、子どもと先生の時間がさらに削られる、と反対の声が上がっています。ひとりがパックを開く時間は1分以内との答弁もありましたが、子どもがただ、機械のようにパックを開いてくれるでしょうか。余計な指導の手間、ときにはトラブルも予想されます。アレルギーの子も心配です。

【リサイクルが常に最善ではない】

 そもそもリサイクルは常に最善策とはかぎりません。再製品化には膨大なエネルギ-を使います。公害も伴います。本当に環境に優しいのかは、様々な要素を比較衡量する必要があります。もちろん、ものを大切にするのはいいことですし、私も個人としては牛乳パックのリサイクルも行っています。しかし、それを教育課程で全員一斉に行うことはまた別な話です。

【リサイクルすれば森を伐ってもいいのか】

 そうでなくても、学校というところは、いいことだから、といってどんどん業務が増えていきます。だからこそ、いま、教員の働き方改革、学校の棚卸しが叫ばれているのではないでしょうか。教育課程から見て本当に必要なことなのかという観点で再検討すべきです。区長は、私への答弁で、緑を切るなと言っているくせにリサイクルに反対するのかと言いました。しかし私のほうから見れば完全に逆で、区長はリサイクルを熱心にやれば、どんなに木を切っても免罪されると言っているようにしか聞こえません。

【富士見丘中校舎に学校図書館を】

 第二に、富士見丘中の学校図書館についてです。地域の意見を踏まえて、小中一貫校ではない、と宣言した学校改築なのに、図書館ばかりか、給食室も、家庭科室も小学校側に1つしかありません。議事録を確認したところ、そのことについては、検討懇談会の中でも多くの疑問の声が出ていました。計画されている学校図書館は小学校優先の設計プランになっているため、少なくとも図書館については、中学校単独の図書館が必ず必要ということは指摘しておきます。図書館のない学校として発足したとしても、今後50年から80年使う校舎です。必ず中学校の図書館が必要という声が上がり、作らざるを得なくなることでしょう。それくらいなら、今、設計変更をしておくことです。

(6)福祉施策についての補足

 その他、時間がなく質疑できなかった問題について述べます。

【移動支援事業の見直し】

 第一に移動支援事業についてです。見直しが進んでいるようですが、保健福祉委員にすらその方向性は一切示されません。当事者、事業者の団体にも問い合わせましたが、意見を聞かれたが、やはり見直しの方向性は示されないとのことでした。これでは、当事者が参加しての見直しにならず、一方的な通告になるのではないかと危惧しています。現在の区の移動支援については、通所・通学、ショートステイの送迎に使えない、精神障害者はほとんど支給認定されない、など、他の自治体で行われているのにできないことが多いと、もう10年以上も前から毎年、当事者団体に指摘され続けてきました。当事者の意見を尊重した見直しを期待します。

【学校内のふれあいの家退去について】

 次に、ふれあいの家についてです。区長は10年前からの懸案といいましたが、私も事業者からずっと話を聞いてきました。2000年の介護保険制度スタートを前に、デイサービスが不足する心配と、学校施設の有効利用で区との協働事業として始まったのは紛れもない事実です。事業などやったことのない区民が、区に頼まれて、難しいNPO組織の設立手続きを行い、精一杯事業を進めてきました。区の期待に応えて、小学生と高齢者の交流事業も行い、学校から高く評価されています。営利企業ではできないサービスの質も確保されてきました。

 学童クラブの待機児童解消で学校内に学童を設置するためという答弁もありましたが、たとえば西荻北学童クラブは待機児童どころか110名定員に対し60名しか在籍していません。急ぐ必要は全くないと指摘します。

(7)社会教育と自治

 最後に、基本構想に関連して社会教育の重要性について述べます。

【杉並区に欠けている「住民自治」】

 質疑で取り上げましたように、「杉並区教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価(平成30年度分)報告書」には社会教育と自治についての重要な言及がありました。

 最初にのべたように、再開発を最優先し議会を軽視する区長の姿勢や、住民軽視の空気が杉並区政を覆っています。住民自治は見失われ、団体自治のみが抜け殻のように残っています。自治体として決定的に欠けているものがあるということです。

 教育行政に関する指摘ではありますが、学識経験者の先生のコメントは、区政全般のありかたに通じるものであり、以下、引用します。

【学びを通して住民自身がまちをつくる】

「この点検・評価においては、自治体としての区の団体自治は意識されているが、団体自治の基盤であり、また団体自治によって保障される住民自治についての把握が不十分なのではないだろうか。」

(中略)「学びは住民自治の基盤なのであり、学びを通して住民自身が地域をつくり、支え、経営することで、自治体そのものが本来の住民自治に定礎された確かな団体自治を実現するものへとつくりなおされていく」

(中略)「地域社会は、従来のような地縁団体や組織ではなく、むしろ住民自身の互いの承認や思いの実現によって生まれる楽しさに駆動される、信頼と自治のプロセスとして再構成され、学びはその基盤をつくりだすものだといえる。ここに、子どもを含めた住民が主役としての位置付けを得られる地域社会がつくられるのである」

【住民自治に根差した杉並区政に】

 この指摘には、真の住民自治に根ざした生き生きとした自治体という希望を見ることができます。新たな基本構想策定にあたり、社会教育に裏付けられた住民自治の視点から、区政を見直し、真に自治のまちといえる杉並区を築いていきたいものです。区長、区役所の皆さん、そして区議会が区民と共にその作業を始める来年度であってほしいと願ってやみません。

 以上の意見を付して、杉並わくわく会議として、令和2年度杉並区一般会計予算ほか4予算には反対とします。関連議案のうち、議案第6号および議案第42号については反対、他の議案については賛成とします。

 終わりにあたり、職員の皆様には、コロナ対応で通常よりもいっそう大変な業務の中、多数の資料を調整いただき、また様々な問題について丁寧にご教示いただきましたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。