この記事は、2020年5月発行の「わくわくレポートNo.196」の付録として発行したものです。1年前の記事ですが、阿佐ヶ谷再開発の問題点を簡略にご理解いただけると思いこちらに掲載します。
図は明治時代の阿佐ヶ谷です(町丁目と中央線と中杉通りは現在のものを参考のため記入)。中杉通りは昔はなく、もともとの道路は、杉一小とけやき屋敷の間を通る道でした。大宮八幡からいまのパールセンターを通り、ちょうど駅のあたりでいったん右に湾曲して世尊院の前を通り松山通りに抜けて行きます。敵が攻めてきたときのために、わざと道路が湾曲されていたのだそうです。
図にあるように、いま河北病院が建っている場所は、昔は「川」や「沼」でした。いまは暗渠となった桃園川が走り、土地が低く軟弱地盤です。
それに対して、杉一小、けやき屋敷、世尊院などの場所は湿地に突き出た「丘」でした。いい土地だったので、代官所がおかれていました。杉一小の場所には、昔、天神様が祀られていたそうです(校庭に石碑があります)。だからこの場所に学校を建てたのでしょう。
こうした阿佐ヶ谷駅前のまちの配置は、地形や水利など自然条件に従って形成されたものです。河北病院は昔は水が出たこともあり、地盤沈下はいまも続いています。それは抑えようのない自然の力です。自然への畏怖の念を忘れず、阿佐ヶ谷のまちの歴史にたいする敬意を払ってまちづくりを考えてほしいものです。
<杉一小建替え案 変更前(A案)後(B案)比較表>
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現地建て替え(A案) |
河北病院跡地へ移転(B案) |
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概要 |
4階建て 屋上(5階)校庭 |
4階建て 地上校庭 |
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敷地面積 |
5400m |
6400m |
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工期 |
2018年~2021年 |
2025~2028年 |
完成は7年(最短)延期 |
新校舎使用開始 |
2021年4月 |
2028年4月 |
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校舎・校庭工事費 |
30億円 |
35億円 |
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なし |
? |
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汚染土壌入れ替え費用 |
なし |
7億円 |
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軟弱地盤対策 |
なし |
20~25億円? |
杭打ち・地盤改良等 |
*汚染対策・軟弱地盤対策をしっかりやれば、本体工事と同額程度かかる。つまり工費は2倍に。
杉並区は杉一小を、この由緒ある場所から、土地が低く軟弱地盤の河北病院に移転しようとしています。校庭が広くなると説明していますが、現在の場所でも、プールや体育館を校舎内に入れて高層化することで校庭を広げることは十分可能です。また、移転先はいまと違って住宅地密集地です。近隣騒音を防ぐため、校庭の外側部分はあまり使えないでしょう。実質的な校庭面積はあまり変わらないと思われます。
ではなぜ移転するのでしょう。駅前の一等地にある学校の土地(区有地)を民間に安く払い下げてマンション開発など、営利に供するためではないのでしょうか。この点は区がぼやかしているのでまだはっきりとはわかりませんが、開発のために学校環境が犠牲になってはいけないと思います。(松尾ゆり)