わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

「エリアマネジメント」ではなく公平公正な阿佐ヶ谷のまちづくりを(2022年11月21日一般質問)

 2022年11月21日杉並区議会第四回定例会で一般質問しました。質問項目は

1.児童館について

 来年度予定されている区立施設再編整備計画の見直しにむけて、児童館廃止の問題点を指摘し、当面廃止がとまらない2館についての解決を求めました。

2.本天沼集会所等の再編について

 こちらも再編が止まっていない、本天沼集会所・天沼集会所・ゆうゆう天沼館の廃止・統合について。とても複雑ですが、3つの施設をいきなり1つに統廃合するスジの悪い計画なのに、前区政の計画がそのまま進められるのは理不尽。岸本区長の公約を区役所としてちゃんと実行してほしい。

3.阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発について

 予定が遅れていた河北病院の工事が7.5か月遅れて始まると通知がきました。病院跡地に予定されている杉一小新築工事はそれにつれてさらに遅れることに。

 また、「官民連携プラットフォーム」とか「エリアマネジメント」とか何だかわからない企画が進んでいますが彼らのめざす「地域の価値向上」とはデベロッパーの「資産価値向上」なのでは?と指摘しました。

(以下は原稿です。実際の発言とは異なる部分があります)

1.児童館について

 最初に児童館について質問します。

 2013年に最初の区立施設再編整備計画案が発表され、児童館をすべて廃止するとされたことは保護者、地域の関係者に強い衝撃を与えました。多くの反対意見が区に寄せられましたが、区はこれまで一顧だにせず、多くの児童館が廃止されました。

 まず、これまでの施設再編整備計画の結果を確認します。計画開始以前の2013年度と今年度の比較で、児童館数、及び、学童クラブの民間委託数はどのように変化したか。また、廃止された各児童館施設は何に転用されたか、お示しください。(Q1-1)

【「機能移転」でごまかした「児童館廃止」】

 施設再編整備計画では、当初案の「廃止」という文言が多くの利用者の反発を招いたため、「廃止」の文言を消して、かわりに「機能移転」と表現されてきました。しかし、「機能移転」とは、入れ物が変わるだけではありませんでした。かつては全国一の事業と称揚された杉並の児童館、杉並の児童福祉は大幅に後退してしまったということは、これまでも指摘してきたとおりです。

 施設再編整備計画では、児童館の機能は、学童クラブ、小学生の放課後の居場所、乳幼児親子の居場所、中・高校生の居場所の4つであり、施設を移転してもこれらを維持するから事業がなくなるわけではないと説明してきましたが、そんなことはいうまでもなく虚偽でした。

 年齢区分を前提にしたこのような4つの機能など、児童福祉法あるいは厚労省ガイドラインには全くありません。したがって区の条例にも規定されていません。法的な根拠のない創作です。

【子どもの遊び場を真剣に考えたかつての杉並区】

 子どもにとって遊びは人権の一部であり、子どもの権利条約も第31条には子どもの遊びや文化活動の権利を保障するよう締約国に求めています。

 70年代から80年代にかけて、杉並区は小学校1学区に1館をめざして児童館をつくってきました。以前にも紹介したかと思いますが、区のアーカイブには「子どもと遊び場~杉並区の現状~」という動画があります。そこでは都市化が進み、子どもの安全な遊び場が失われていく中で、子どもの遊び場を確保しなくてはという当時の杉並区の強い危機感と使命感が述べられています。

【遊びの自由がなく管理的に】

 しかし、児童館が廃止され学校内に「機能移転」された学童クラブ、放課後等居場所事業は、これまでさんざん指摘してきたように、遊びの自由がなくなり制約が多いこと、また、管理的で子どもを叱りつけるような保育がなされていること、さらには、児童館の行事が引き継がれないなど「機能移転」すら十分にできていないことがわかりました。

 特に小学生の居場所が減少してしまったことについては、児童館廃止を支持する立場であったとしても、誰も否定できない事実として共通認識になったと思います。

【学校は教育の場、特別教室などは使えない】

 学校への機能移転は、多くの課題があります。第一に、学校は教育の場であり、当然にも学校教育活動が優先されます。たとえば大きな行事や式があるときは1週間も前から事前練習のための準備やしつらえがなされたりして、校庭や体育館の使用が不可となります。

 また計画当初、区が「図書室、図工室、音楽室などが児童館のそれよりも広く、ずっと充実した活動ができる」と説明してきたことは、この間の私の調査によって、月1回、あるいは年数回しか使えていない実態がわかり、特別教室の活用は全くの空論だったことが明らかとなりました。

【民間委託なので調整が難しい】

 第二に、民間委託であることも施設利用の調整をより難しくしています。偽装委託を避けるために委託事業者の責任者しか学校と交渉できないため、日々の柔軟な施設使用を申し入れることは困難です。

 近隣の児童館・プラザの職員がアウトリーチで行うとされていますが、アウトリーチは限界があり、必ずしも十分に機能していないことも、すでに何度も指摘してきました。

【日替わりのアルバイト勤務では…】

 第三に、人材の問題です。これは民間委託の本質にもかかわることですが、特に、近年導入された営利企業への委託では、企業の使命たる利潤をあげるために人件費をいかに減らすかが主要な命題となります。そのために、短時間のアルバイトが日替わりで勤務し、子どもや保護者との信頼関係が築けないことについてはこれまで指摘してきたところです。運営の質にかかわる問題です。先にはなんと盗撮事件が起きてしまいました。

 と同時に、これは学校施設ならではの問題でもあって、児童館とはくらべものにならない広い校舎や学校敷地のなかで安全確保するためには、本当は多くの人員が必要ですが、少ない人数で対応するために、子どもたちの行動を規制して一か所にまとめ、いっせいに移動させるなど、必然的に管理的になってしまいます。

 児童館廃止、再編が始まって8年半、こうした問題点が見えてきたように思いますが、区としては、児童館、学童クラブ及び学校内の放課後等居場所事業に関連して、それぞれ現在、どのような課題があると考えているか、伺います。(Q1-2)

【学校施設利用は教育委員会に専門の部署を】

 特に、施設利用は、委託事業者では調整が困難であり、学校側にとっても負担となっています。教育委員会に教育施設の利用調整をする専管部署を置くべきと考えるがいかがか、見解を伺います。(Q1-3)

 次に、今後の検証、見直しの方針や手法等についてうかがいます。まず、児童館についての今後の検証及び再編計画見直しのスケジュールを確認します。(Q1-4)

 関連して、庁内でプラザの検証等を行うと聞いていた「学童クラブ等のあり方検討部会」のプロセスは現在どうなっているのか。また、今後の予定はどうか、伺います。(Q1-5)

【子どもたちと話し合う場を】

 今議会提案の補正予算にも、専門家の意見聴取や区民アンケートなどの費用が盛り込まれていますが、それだけでは事業の見直しには全く不十分と考えます。

 無作為抽出のアンケートは一見公平なようですが、児童館に縁のない人の意見を聞いても子どもたちのニーズを的確に把握できるのか疑問があります。現在のユーザーである子どもたちとの話し合いの場などが必要です。

【児童館を児童福祉にどう位置づけるか】

 区は2006年に児童館等のあり方検討会報告書をまとめて以来、廃止どころか児童館の方向性すら示さないまま、施設再編計画で児童館の廃止に突き進んできました。一種のクーデターであり、公共事業、ハコ物優先の前区政を最も端的に象徴するものです。

 施設をどうするかの前に、児童館を児童福祉にどう位置づけるか、今日の情勢に即した検討が求められています。

 70年代に区が危機感をもったように、今後の杉並の子どもたちの健全育成を中長期にわたって構想できる抜本的な検討が必要と考えます。

【専門家をまじえた公開の検討会で議論を】

 そのために、児童福祉、児童心理の研究者、また、児童健全育成推進財団の専門家の協力を得て、区民も傍聴できる公開の検討会を開催し、議論を深めていくことを求めますがいかがか、伺います。(Q1-6)

【下高井戸児童館の廃止は見直しを】

 児童館の項目の最後に、当面して廃止を進めるとされた2館について質問します。今後、児童館について新たな方針をつくろうとしているのに、すでに進行しているからという理由で、目の前で扉が閉じられて廃止されてしまうのは酷な話です。

 第一に下高井戸児童館です。下高井戸児童館の保護者の皆さんから、区議会に廃止を見直すよう陳情が提出されました。区議会、区役所を訪問もされました。

 下高井戸児童館の廃止については、今年5月9日に説明会が行われ、私も参加しましたが、保護者の参加は2~3名程度でした。連休に入る直前に案内が配られ、連休明けの開催であったこと、平日の夜間の開催であったことから悪条件が重なったものです。わざわざ人が集まらないような設定にしたとしか思えません。

【保護者が参加できない平日夜の説明会】

 また、先に述べたように「機能移転」と表現されているため、地域ではいまだに、児童館が廃止されると認識していない人がほとんどで、小学生は1室しか利用ができなくなること、また、校庭開放がなくなること、などの情報は説明会に来た人にしか伝わっていなかったのです。

 こうした状況をふりかえると全く説明不足としかいいようがありません。下高井戸児童館については、利用している児童および保護者と十分話し合い、廃止計画は立ち止まるように求めます。また、仮に子ども・子育てプラザに転換したとしても、小学生が遊戯室などを使えるようタイムシェアを行うべきと考えますがいかがか。見解を求めます。(Q1-7)

【阿佐ヶ谷南児童館は代替施設を】

 第二に阿佐谷南児童館です。阿佐谷地域の南部では、すでに成田西児童館、成田児童館、大宮児童館、浜田山児童館が廃止され、残るは阿佐谷南児童館しかないと地域の方から嘆く声を聴いています。

 児童相談所設立のための用地転用はやむをえないとしても、阿佐谷南児童館を廃止するのではなく、近隣に移すことはできないのでしょうか。例えば、職員会館があります。職員会館は今後解体して駐輪場にするとの計画が唐突に通知されましたが、現在ある建物を存置すれば児童館に必要な面積は確保することができます。

 学校内の放課後居場所事業だけでなく、子どもたちが利用できる場所を、サードプレイスとして確保することが必要と考えますが、いかがか見解を伺います。(Q1-8)

2.本天沼集会所等の再編について

 次に本天沼集会所等の再編について質問します。一昨日の土曜日、天沼中学校で説明会がありました。私は残念ながら参加できなかったのですが、体育館がいっぱいになり、時間を延長して熱心な質疑が続いたと伺いました。参加された何人もの方から詳細なご報告をいただきましたので、それも踏まえて質問します。

【「玉突き方式」で10もの施設が絡む】

 その前に。現行の区立施設再編整備計画の大きな問題は、複数の施設の建て替えや統廃合が複雑に絡み合い、一つつまずけば多数の施設に影響がでるという玉突き方式の弱点です。それは、区民の意見をとりいれて変更することは許されないしくみでもあります。

 ふらっと本天沼に関連する施設を列挙しますと、本天沼民集会所、天沼区民集会所、ゆうゆう天沼館の3施設以外にも、天沼保育園、パピーナ荻窪天沼保育園、旧若杉小学校、児童発達相談係、消費者センター、そして新設される児童相談所。児相の設置に関連しては、阿佐谷南児童館、子ども家庭支援センター、のはら保育園も関係してきます。もしかしたらもっとあるのかもしれませんが、ざっと10の施設に絡む再編であって、利用者、住民の方々が全貌を把握するのは困難です。

 来年度以降予定されている区立施設再編整備計画の見直しにあたっては、このように複雑なパズルのような計画はやめて、老朽改築の計画、また統廃合が必要とされるケースがあるとしても、わかりやすい計画に組み直すべきでしょう。

【ゆうゆう天沼館の廃止計画】

 さて、具体的な問題点を述べます。第一にゆうゆう天沼館の廃止です。他の地域でも、ゆうゆう館を廃止してコミュニティふらっとに機能を統合していく再編が進んでいます。ゆうゆう館の廃止に反対する声をおさえるためか、ゆうゆう館の利用者に対して「場所はかわるけど、利用はこれまでと何もかわりませんよ」という説明がなされているようです。そのため利用団体の方々は、ゆうゆう館の場所と名称が新しくなっただけという誤解をされるようです。

 しかし、高齢者福祉施設であるゆうゆう館と地域コミュニティ施設であるふらっとはそもそもその事業目的が違うはずです。それぞれの事業目的と運営形態について説明を求めます。(Q2-1)

 また、再編整備計画による、ゆうゆう館とコミュニティふらっとの施設数の変化をお示しください。(Q2-2)

【計画を止められない理由は民間保育園との約束?】

 説明を聞いていると、計画修正できない理由は、どうも、天沼保育園・ゆうゆう館の跡地に予定されているパピーナ荻窪天沼保育園の新築移転計画でお尻が決まっているということのようです。しかし、このかんも話題になっているように、待機児童がほぼ解消に近づき、空きの出ている保育園も多くなっている中、あえて今、区有地を有利な条件で賃貸借しての新築、定員増が保育政策として必須とは思われません。パピーナ保育園は旧若杉小で運営できており、移転・新築については見直した方がよいのではないでしょうか。

【3つの施設を1つに集約するのは無理】

 第二に、3つの施設を1つに集約することには無理があります。コミュニティふらっとでは、ゆうゆう館登録団体の利用枠が優先的に予約されます。あの小さな本天沼集会所に、ゆうゆう館の団体が移ってくるだけでも、これまでの利用団体は押し出されてしまうのではないでしょうか。ましてそこに天沼集会所の利用者まで包含することができるのでしょうか。大変疑問です。

 そこで、3施設の利用状況についてうかがいます。本天沼民集会所、天沼区民集会所、ゆうゆう天沼館洋室1・2の時間帯別の利用率を示してください。また、ゆうゆう天沼館の登録団体は何団体でしょうか。(Q2-3)

 説明会でも利用率が示されたそうですが、コロナの影響を受けている昨今の実績で、今後を見通すのは甘いを言わざるをえません。

【ウェルファームの集会所、まだ新築4年】

 第三に、天沼区民集会所廃止への疑問です。あんさんぶる荻窪荻窪税務署との財産交換で廃止されたことにともない代替施設としてウェルファームが新築されたのは2018年のことであり、まだ5年たっていません。早くも廃止される朝令暮改には納得できません。

【区民施設は空き部屋、公園は空き地なのか?】

 区民施設、集会施設は、行政目的のためには自在に取り上げてよいと区は考えているのでしょうか。集会所という事業の意義はどこへ行ったのでしょう。

 杉並ではかつて公園を空き地のように扱って廃止し、保育園を建てた事件がありました。同じにおいがします。

【天沼集会所は残せる】

 天沼集会所には児童発達相談係が移転するとされますが、転用されるのは3室のみ、残る2室は区役所の会議室にするとのことです。しかし、毎日朝から晩まで会議をするわけではないでしょう。2室は天沼区民集会所として存置して行政使用でおさえればいいだけです。集会室を残すよう計画見直しを求めますががいかがか、見解を求めます。(Q2-4)

【設計案の問題点】

 第四に設計案です。説明会においてコミュニティふらっと本天沼の設計が示されました。そもそも館のキャパシティが小さすぎるという点のほかにも、受付から見えない位置に誰でも使えるラウンジがあること、和室の廃止、また、駐輪場の不足など問題が多々あります。ゆうゆう館の利用者からは、収納が少ないため、麻雀台など備品を預けることができなくなるとの問題も指摘されています。

 住民は、今回説明会ではじめて設計図を見たのであって、設計案については、今後さらに住民意見を聴取し、引き続き変更も含め、より適切な設計を検討するよう求めるが、いかがか見解を求めます。(Q2-5)

【区民との話し合いを今後も継続すべき】

 区長は説明会の最後に「もちかえってひとつひとつ検討する」とまとめました。それでも、参加者からは「質問への回答はちゃんともらえるのか?」「結局これまでと同じく、意見は聞き置いておわり、となるのではないか。と懸念の声が届きました。

 それほど区政への不信は根強いのです。

 今回1回の説明会だけで終わらせず、2回、3回と話し合いを続けていくよう要望します。

 天沼地域の再編は、旧若杉小の利用も含めた大きな視点と時間軸において住民の知恵を借り、じっくりと考えていくべきと考えます。

3.阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発について

 次に阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発について質問します。本当なら今年の夏に着工するはずだった河北病院の新築工事が遅延するとの連絡がありました。まずその内容にもとづく、今後のスケジュールを確認します。(Q3-1)

【病院工事が7.5が月遅延で学校新築は1年遅延】

 病院建て替えの遅れにより、そもそもの計画からすでに10年遅延された杉一小の改築がさらに遅れるのは全く遺憾なことです。

 7.5か月遅延といっても、新校舎の開校は4月から11月に変更しますというわけにはいかない。結局翌年まで1年間遅延になるのではないか。現在の校舎はただでさえ築70年まで使う計画なのに、71年までのびることになります。

【玉突き計画の悪い面がここでも】

 前の天沼の項目で指摘した玉突き計画の最も悪い面が出ました。1つ転ぶとこのように遅延が生じて後ろにいくほど影響が大きくなるのです。

 そこでうかがいますが、病院建て替えの遅れにより、杉一小の移転・改築工事にはどのような影響があるか。校舎改築検討懇談会の設置時期はどうなるか。また、病院に対して、教育委員会としてはどのような姿勢でのぞむのか。見解を伺います。(Q3-2)

【学校敷地をとおる工事用通路の賃料は】

 次に細かいことながら見過ごせない影響があります。杉一小北側に設置された工事用通路のうち民有地の賃借料については、だれが支払っているのでしょうか。7.5か月の遅延により払わなくてもいい賃料を区が払っているなら問題です。遅延により生じた余分な期間の賃借料は当然にも病院が負担すべきものです。

 そこで、杉一小北側の工事用通路に関し、病院と区の費用負担について土地使用料のルール及び両者の支払う使用料月額を確認します。(Q3-3)

 また、病院の工事遅延の間の通路利用料は支払われているか確認します。(Q3-4)

【「エリアマネジメント」とは】

 次に、エリアマネジメントについてうかがいます。まず、当該地区のエリアマネジメントに関連して、区は国の補助金を申請しているが、今年度の補助金事業の名称、歳入金額及び来年度申請予定の事業はあるか。またその内容を確認します。(Q3-5)

 また、今年度中に創設するというエリアプラットフォームとは何か。設立の要件はなにか。当該地区ではどのように想定しているか、伺います。(Q3-6)

 ところで、エリアマネジメントといわれて、その意味をわかるように説明できる人が、この議場にもどれだけいるでしょうか。少なくとも私はよくわかりません。まして阿佐ヶ谷の街の人たちがどれだけ知っているでしょうか。

 「エリアマネジメントなるものをやってみたい」という奇特な人たちが団体をつくったと説明されました。その人たちもわかっているかどうか怪しいものです。

【「地域の価値向上」は誰のため】

 いまものすごい再開発が進む中野駅周辺の資料をみると、エリアマネジメントとは「地域価値向上のための住民・事業主等の主体的な取組み」と定義されています。先日の他の議員の質問に対する答弁でも何度も「地域の価値向上」の言葉が用いられていました。

 どうも「地域の価値向上」がキーワードらしいです。でも、それは住民全体の利益になるのでしょうか。

野村不動産は露骨に「収益床の資産価値向上」】

 中野でも、野村不動産が中心で進めている、サンプラザ跡地開発を含む、中野駅新北口地域エリアマネジメントの説明ではもっと露骨に「収益床の資産価値向上」と述べています。

 中野だけでなくエリアマネジメントをネット検索すると、大手ディベロッパーの大規模マンション建設に伴う整備計画が次々に出てきます。

【大手ディベロッパーらのための「資産価値向上」】 

 つまり、「地域の価値向上」とはマンションやビルに付加価値をつけて高く売りたい大手ディベロッパー、大規模商業施設、金融機関、また地域の有力者のために「資産価値向上」をめざして自治体の協力を引き出して、補助金規制緩和を狙うものです。それは公共性とは相反するものとなるのではないでしょうか。

【地区計画による建築規制やぶり】

 都市計画法は「都市の健全な発展と秩序ある整備、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進」を目的として掲げています。乱開発を防ぎ、住民が住みやすいまちを計画的に整えていくことが本旨です。

 しかし昨今は、阿佐ヶ谷の計画のように、地区計画をかけることで緩和をとって、都市計画の建築規制を無力化する手法がふえています。地区計画という政治的な方法による実質的な規制やぶりであり「都市の健全な発展、秩序ある整備」を否定するものです。

 先日のまちづくり担当部長の答弁では、北東地区だけにとどまらないという表現が見られましたが、これはいったい何を意味するのでしょうか。北東地区からにじみ出して、さらにまち全体が大企業の資産価値向上のためにつくり替えられていくのなら脅威です。西荻窪荻窪、高円寺それぞれ住民と行政の対話の場がつくられているのに、なぜ阿佐ヶ谷の駅前だけ、一部の「エリアマネジメントをやりたい」人たちに優遇してあげなくてはいけないのでしょうか。

【公共の介入による乱開発の抑制こそ区の使命】

 めざすべきは、地域の価値向上、まして収益力の向上ではなく、公共の介入による乱開発の抑制であり、計画的にまちなみを整えていくための民間営利事業に対する牽制でなくてはなりません。

 そのためには、北東地区だけが突出してエリアマネジメント即ち一部の収益施設の収益価値向上をめざすのではなく、「秩序ある」都市をつくるため、まちのありかたを住民全体として考える場としてのまちづくり協議会を、区として用意すべきではないでしょうか。見解を伺います。(Q3-7)

 公共の再生をかかげる岸本区長には、公平公正な都市計画、まちづくりを期待して、質問を終わります。