わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

阿佐ヶ谷北東問題は住民と行政の対話で解決を(2023年9月14日一般質問)

 2023年9月14日、杉並区議会第三回定例会で一般質問しました。テーマは、

阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発と杉並第一小学校の移転計画について」

 杉並第一小学校の移転計画については、地域からずっと疑問の声が絶えません。

 その中でも区が説明を避けている「病院日影の懸念」「震災救援所として不適切」「近隣苦情の可能性大」の3つの問題は、どれか1つだけでも、学校にとって致命的です。

 また、前回(6月)一般質問で明確な回答がなかった「移転を見直したとき、誰かが損害を被ることがあるのか」について尋ねました。「相手が何を請求するかによって異なる」とかあいまいな答弁でした。

 杉並区は区長が交代したにもかかわらず、一貫して見直しを避け、「移転ありき」の姿勢です。

 岸本区長が進める「対話と共有」のまちづくりはそんなものではないはず。世田谷区のまちづくりの対話手法を紹介して、住民主権のまちづくりを提案しました。

(以下原稿です。実際の発言とは一部異なるところがあります)

 一般質問します。本日は、阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発と杉並第一小学校の移転計画について質問します。

 8月31日、「阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりを振り返る会」が開催され、特に杉一小の移転計画について、満席の会場からは、多くの疑問が区に対して投げかけられました。「対話と共有」「住民自治」をかかげる岸本区政において、阿佐ヶ谷の開発、杉一小の移転についても、行政と住民の十分な対話によって課題が解決されていくことを期待して以下質問します。

【『人をつなぐ街を創る』】

 さて、具体的な話に入る前に、一冊の本を紹介します。

 『人をつなぐ街を創る 東京・世田谷のまちづくり報告』という本です。日本で最も先進的という評価を受けている、お隣、世田谷区のまちづくりに長年携わってきた職員の方が書かれた、住民主権のまちづくりのレポートです。

 「行政をにらみつけてくる反対者との対立をどう乗り越えるのか。行政マンとして常に考えて続けてきた課題である」。本書の著者は、こういいます。

 そして「行政は往々にして反対勢力を排除する行動を選択するが、私の経験から、こうした人々をも巻き込んだ議論の場こそが、次の関係をはぐくんでくれると思える」とも述べています。

【反対する人を排除しない。情報公開をつくすこと】

 本書では繰り返し、計画に反対する人を排除せずにその声を聴くこと、行政が徹底して情報公開し説明をつくすことの有効性、必要性を具体的な経験を紹介しつつ説いています。区職員の皆さんにはぜひ一度手に取っていただきたい一冊です。

 世田谷のまちづくりは90年代から長い時間をかけて練り上げられてきました。本書に紹介されるどのエピソードも、最初は「やじと怒号の説明会」で始まりながらも、2年3年と対話の場を重ねて、反対する人の意見も聞きながら皆で知恵を出していく過程で、最後は住民も行政も、課題と解決方法を共有し、ともにまちづくりに踏み出していく、その姿は感動的です。

 杉並区役所においては、本書の著者とも連絡をとっておられると伺いましたが、区長は本書をご存じでしょうか。また、読まれたのであれば、感想を求めます。(Q1)

 すでに、世田谷区にならった「デザイン会議」の名称が西荻などの都市計画道路で使われているようですが、付け焼刃でできるような簡単なことではありません。

【反対住民を徹底して排除したきた杉並区】

 岸本区長のもとで、話し合いの場が広がり、7月の施設再編整備計画についての7地区での意見交換会では、参加者の多くが行政と話し合えたことを素直に感謝し、喜び、今後に期待しています。

 しかし、話し合いのプロセスは目的ではなく手段です。どのような結論を出していくかこそが問われています。

 阿佐ヶ谷北東も同じです。議論がちゃんと受け止められ、住民の意見を取り入れたプランになってこそ、プロセスに意味が出てくるのであって、そうでなければ、いくら話し合いがうまくなっても、ただのガス抜きです。

 ましてこれまで住民意見を徹底的に排除してきた杉並区政において、住民主権への転換は容易ではありません。

サイレント・マジョリティとは】

 かつて「あんさんぶる荻窪」の税務署との財産交換の説明会で、住民が「ここで反対意見が多ければ、計画を見直してもらえるのか」と尋ねたところ、当時の企画課長は「サイレント・マジョリティという言葉がある。この場で反対といっている人はごく少数。57万区民のほとんどは賛成なのだから、計画はそのまま進める」と言い放ちました。わざわざ説明会に足を運び、時間を使って意見を言ってくれる貴重な住民を「ノイジー・マイノリティ」として切り捨てる、行政にはとても都合のいい論法ですが、世田谷のまちづくりとは対極にあります。

 また前区長は、政策に対する反対の声を「特定の政治的意図をもつ一部の反対者」などと断じていましたが、前区長を批判して当選した岸本区長に対しても、変わらず、杉一小移転や児童館廃止に対する疑問の声が出ていること自体が、政治的な思惑などではないことを証明しています。

【反対意見は先鋭的な活動家?】

 再び本書から引用します。「行政は住民の中の語らない賛成者をサイレント・マジョリティと称し、正義の後ろ盾として活用する。しかし本当にマジョリティなのだろうか。(中略)多くの人々で議論する場を排除する。それが一番とるべきではない行動であることを理解してほしい」

 そこで区長に質問しますが、区長はこうした「サイレント・マジョリティ」論法、区政に反対するのは一部の政治的、先鋭的な住民で、少数であれば排除していいという考え方を支持しますか。いかがですか。

 また、先日の阿佐ヶ谷の「振り返る会」では、杉一小の保護者からの強い懸念の声や、近隣の方から水害の経験にもとづく反対の声が聴かれましたが、こうした住民は排除してもかまわない少数の先鋭的な住民でしょうか。当日の会場発言についてはどのように受け止めたか。感想を求めます。(Q2)

【移転は法的に決まっていない】

 さて、ここから「振り返る会」を振り返ります。会では、多くの見るべき意見、鋭い指摘があったと思います。特に冒頭「杉一小の移転は法的に決まっているのか」との質問から始まったことは重要でした。

 杉一小の移転計画の見直しについて、区側の具体的な回答としては「法的に禁じられてはいない」「100%不可能というわけではない」「法的には問題ない」などの表現で、学校の移転が法的に決定していないこと、決定しているのは、欅興産、河北財団と区との3者が合意した協定のみであることが明らかになりました。

 そこでうかがいますが、阿佐ヶ谷北東地区の再開発計画、特に杉一小移転の見直しについて、法的に禁止されていないこと、法的には不可能ではないことはあの場で確認されたと認識していますがいかがか。所見を求めます。(Q3)

【学校移転中止で損害賠償請求になることはない】

 関連して、第二回定例会の私の質問に対し、明確な答弁がなかったので再度質問します。杉一小の移転計画を見直した場合、誰かが損害を被ることがあるのかないのか。あるとすればそれは誰でどのような損害でしょうか。「振り返る会」での法的決定に関する発言を踏まえて見解を示してください。(Q4)

【杉一小移転の大きな3つのリスク】

 さて「振り返る会」で区は膨大な資料を用意して説明していましたが、重要なポイントがいくつか抜けていましたので指摘します。

 2017年1月の「阿佐ヶ谷駅北東地区大規模敷地活用に関する調査業務委託」の報告書については、これまで幾度となく何人もの議員が取り上げてきましたが、ここでは特に、杉一小を複合施設・屋上校庭で現地建替えとする案(A案)と、現在の計画、つまり病院跡地に単体の施設として新築する案(B案)のメリット・デメリットの比較の中で、「振り返る会」では故意にか省略された、重大なデメリットについて改めて指摘します。

【9階建ての病院に隣接。日影懸念】

 第一に「病院日影の影響懸念」、第二に「震災救援所として不適切」、第三に「近隣苦情の可能性大」です。

 第一に日照です。報告書では※印で強調されています。現在建築工事中の河北病院は完成すれば9階建て、高さ40mです。屋上建屋含め45m。病院が示した冬至日影図によれば、となりの敷地には朝10時から影がかかりはじめ、一日中日陰となります。病院に近い南側に校舎を建てれば冬場は校舎が一日中日陰、かつ北側におかれる校庭には校舎の影もかかります。北側に校舎を建てれば南側の校庭が日陰、かつ校舎にも病院の影がかかります。しかも、なんと、地区計画決定時に現在の病院敷地は日影規制が解除されているので、学校が計画されているにも関わらず、隣地にいくら影がかかってもいい前提で病院を設計、つまり、初めから日陰の学校を前提している計画だということです。

【延焼・類焼により震災救援所には不適】

 第二の震災救援所。これは報告書でゴシック体の一回り大きな字で書かれています。「住宅密集地移転で、震災火災時延焼・類焼の恐れ」があるから震災救援所として不適切。また、地盤が弱いことから、現在の杉一の場所に比べると、揺れが大きいことは防災科学技術研究所のハザードカルテで明らかになっています。

 また、水害避難所については「振り返る会」でも多くの方から「もともと川である場所、かつて浸水もしており、水害の懸念が強い」こと、当然水害の避難所にはならないことが指摘されました。

【「静かな場所」に移転すると、近隣迷惑】

 第三の近隣苦情についても、ゴシック体です。先日、深刻なケースをうかがいました。以前新宿区の小学校に勤務されていた教員の方の話です。小学校が住宅地に移転し、音楽室は二重の防音、窓は一切あけずに授業、それでも近隣からどなりこまれる。子どもたちの声にもものすごい苦情があった。杉一小が病院跡地に移転したらとても学校教育は成り立たないとのご指摘でした。特に器楽が有名な学校でもあります。その活動はどうなるのでしょうか。また、区は静かな環境に移転することをメリットと説明していますが、逆に、その静かな環境に現在住んでいる人たちはどうなるのでしょう。

【リスクを知っているのになぜ学校を移転?】

 区から当日説明のなかった部分のうち重大な3点だけ補足しましたが、改めて、地域にこれらを公開し、意見を求めるべきです。

 お伺いしますが、これらのリスクを認識しているのに、それでも病院跡地に移転すべきと考えるのでしょうか。その理由を説明するよう求めます。

 さらに、「振り返る会」では「法的に問題がないとしても、道義的に責任がある」という区側の発言もありました。すなわち、民間地権者との協定などを示すものと思われますが、前区長の当時ならともかく、区長が交代したいま、そして「地域のことは地域が決める」と打ち出しているいま、これらの明白なデメリットが指摘されてなお、子どもたちの安全と教育環境、地域の災害避難所を犠牲にしても、地域の有力者との関係性「道義的責任」を優先するのでしょうか。見解を求めます。(Q6)

【そもそもどこから出てきた計画か】

 次に当日の説明にはなかったこの計画の経緯について指摘します。そもそもこの土地区画整理事業の発端は、2014年にさかのぼります。河北病院のホームページには、沿革に「まちづくり団体「阿佐ヶ谷駅北東地区を考える会」設立」と明記されており、河北病院の経営サイドが設立を主導した会です。この会が区に提出した報告書を情報公開で入手したところ、メンバーは10人ほどの少人数です。

【懇談会委員は全く説明を受けていない】

 ここで「振り返る会」で住民が読み上げた「改築検討懇談会委員から託された手紙」の一部を紹介します。 

 「最終検討決定のおりに、今までは懇談会委員として参加されていなかった「阿佐ヶ谷北東の会」と称する方々が同席され、違和感を覚えたことを記憶しています。後日、あくまでも河北総合病院理事長の私的な会の方と知りました。

 「検討懇談会」の意見はすべてなきものとなり、至った経緯、及び、きちんとした説明も全く受けていない状況で今日に至っています。

 不思議に感じていた私的な「北東の会」の名称を使った行政会議が行われている無神経さに、憤りを感じずにはいられません」

とのことです。

 10人ほどの私的な会の提案が、学校関係者も知らない間に杉一小を巻き込み、子どもたち、学校教育に重大な影響を与える区政の一大プロジェクトになったことには、今更ながら私物化を感じます。ことの発端から問題ですが、そこにとどまりません。

【「A案は凍結」】

 2016年2月、杉一小改築検討懇談会は複合施設・現地建替え・屋上校庭の案に概ね賛意を示し、これで基本計画が地元の合意を得たことになりました。この日の最後には事務局から「次回の懇談会は6~7月くらいでの開催となるかと思います」とありましたが、次回が開かれることはついになく、現在に至るまで開かれていません。

 ある委員のところには6月に連絡があり、計画は変更になる。このことは内密にお願いするといわれたそうです。この時点ですでに現地建替え案は変更が前提されていたのです。しかし、公式には8月に河北病院から移転の連絡があったとされ、以降区は公然と建て替え案の変更にむけて動き出しました。

意見交換会は非公開。委員は呼ばれていない】

 10月には意見交換会があったと区は言いますが、私も含め議員にも情報提供はなく、全く非公開の会議でした。検討懇談会委員にも何人も確認していますが全く知らされていなかったそうです。情報公開により入手した当日の資料には、先ほど述べたようなA案、B案の比較検討情報は一切記されておらず、意見の言いようがありません。これは区民との話し合いとはとうていよべないものであり、まして、検討懇談会が開かれないままであったことは、先ほど紹介した手紙の

「「検討懇談会」の意見はすべて無きものとなり、至った経緯及び、きちんとした説明も全く受けていない状況で今日に至っています。」のとおりです。

 そこで伺いますが、杉一小改築検討懇談会の予定されていた第8回が今日まで開かれなかったのはなぜか。(Q6)

 また、懇談会の中断により、学校関係者、保護者は蚊帳の外におかれて、約1年が経過し、B案つまり河北病院跡地への移転が決められてしまいました。前区長の時代のことなので岸本区長はこれまでご存じなかったと思います。いまこれを知って、区長はどう感じますか。感想をうかがいます。(Q7)

【学校関係者は蚊帳の外。プロセスに決定的な瑕疵】

 形だけの非公開の意見交換会がアリバイ的に開催された直後の11月、庁内の「実務検討会」が始まります。他の議員の質問にもあったように、この時点ですでにB案ありき、杉一小移転ありきでした。

 区が委嘱した委員さんが何回も集まっては話し合い、視察にも行って、悩みながらも出した結論であるA案をくつがえすというのに、委員には、検討自体知らせないまま約1年が経過ました。それこそ道義的にもあってはならないことで、B案決定のプロセスには決定的な瑕疵があったといわざるをえません。

【ホームページから消された議事録】

 私はこの経緯を確認するために、検討懇談会の議事録を読もうと教育委員会ホームページを検索しましたが、杉一小の検討懇談会の議事録が見当たりません。教育委員会にきくと削除されているとのことでした。しかし、高円寺学園や桃二小のように、とっくに工事が完了している学校であっても、検討懇談会の議事録はホームページにすべて残されています。

 いまだ改築ならず、検討の途上にある杉一小の懇談会の議事録こそ、むしろ公開されていなければならないはずですが、なぜ杉一だけが消されたのでしょう。計画を変更したので都合の悪い履歴ということなのでしょうか。

 そこでうかがいますが、杉一小検討懇談会の議事録を削除したのはいつか、また削除の理由は何か。説明を求めます。(Q8)

 削除は前区長の時代のことかとは思いますが、情報公開ナンバーワンをかかげる岸本区政においては、隠すことなく、だれもがアクセスできるよう、すぐにもホームページ上に復活するよう、これは要望といたします。

【まちづくり部長の発言は少数排除?】

 次に今後の進め方についてうかがいます。

 「振り返る会」では、最後に区長が話し合いを継続する旨を明言して終わりましたので、遠からず次回の話し合いの場が開催されるものと期待しています。

 しかし他方、この会でのまちづくり担当部長の発言には会場から驚きの声が上がりました。部長の「法的な問題がないから見直すというが、法的問題がないから何をしてもいいわけではない」「これまで協力・応援してくださった方を裏切るわけにはいかない」などの発言です。これらは、既定路線の見直しを拒否し、反対意見を排除する考えを示したものなのでしょうか。発言の真意を問うものです。(Q9)

 最初に紹介した世田谷に比べ、杉並区政の対話の実践は絶望的なまでにレベルが違いすぎ、全く遅れていると感じました。これまで述べてきた検討懇談会の経緯に鑑みても、見切り発車は決して許されるものではありません。

【5つの会議体が並走する。ちゃんとやれるの?】

 さて、今後ですが、「振り返る会」の続きの会を行うのは当然として、もうひとつ「阿佐ヶ谷まちづくりセッション」というものが、今定例会にも補正予算で提案されます。来年1~3月に2回開催する、その内容は北東地区だそうです。さらに第三に、杉一小改築検討懇談会が12月から開催される予定であるときいています。第四に、エリアマネジメント。これまで少人数の非公開会合として行われてきたものが、今後公開されていくのか、あやしいところではありますが、いちおうこういうものがある。第五に、都市計画道路補助133号線に関する対話集会は、今後の事業区間だけでなく、阿佐ヶ谷駅北口、北東地区も、会議体の一部として指定されています。阿佐ヶ谷駅北東地区だけで、合計5つもの会議体が並走することになりますが、これ全部本当に区役所は運営できるのでしょうか。もう少し整理すべきでしょう。むしろ、以前から指摘しているように、阿佐ヶ谷のまちの様々な問題を広く話し合う協議会をまず設定して、だれもが自由に話し合える場を設置すべきと考えます。

 そこでうかがいますが、第一に、5つの事業それぞれの主旨・目的、及び5つは相互にどう関係するのか。第二に、各々の開催スケジュールについて説明を求めます。

 また、これらは所管がばらばらです。そもそも阿佐ヶ谷北東再開発全体の統括責任はだれが負うのか。事業調整担当、施設マネジメント担当、学校整備担当、まちづくり担当と、それぞれの担当に「どこが統括するんですか」と聞いても首をかしげて答が返ってこない。みんな嫌がっているのかもしれません。前区長時代は、田中区長マターだから区長が統括します、ですんだのかもしれませんが、区長が交代したいま、それでは通りません。どこが統括するのか明らかにしてください。(Q10

【A街区・C街区の両方を活用する方法を】

 さて、今後についてはまだ何も決まっていないようですので、提案を申し上げます。

 第二回定例会でも述べたように、また「振り返る会」でも確認されたように、阿佐ヶ谷北東の事業は、変更したとしても、なんら法的に問題ないことは確認されています。とはいえ、相手のあることなのですべてを見直すことは不可能に近いでしょう。

 ではどうするか。私は、第二回定例会で紹介した「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会」から提案されたように、仮換地によって区の換地先とされている現在の杉一小敷地(A街区)、及び、現在の河北病院敷地(C街区)、の両敷地をうまく活用して、よりよい学校を建築する計画を住民自治にもとづき検討すべきと考えますが、いかがか伺います。(Q11)

【保護者の思い「子どもに説明できない!」】

 質問を終わるにあたり、「振り返る会」での保護者の方の発言の一部を紹介します。

「子どもに、お父さん、どうして杉一小は移転しなきゃいけないの?って言われて、答えがないんですよ。(中略)移転する理由がない。にぎわいとかきれいごと、美しい言葉はけっこうです。

「それじゃ、移転するしかないよね」とみんなが納得するシンプルな理由がないと小学校っていうのは移転しちゃいけないと思うんです。

区のみなさんが小学校を単なる不動産として見ているのが悔しいです。(中略)

148年もあそこで先生や生徒や親ごさんや地域の方々がいっしょになって育んできた教育の場、教育の風土があそこで培われているんですよ。それを簡単に区の財産、区の不動産として移転される。これは子どもには説明できない。なんでこんなにみんなが不満に思っているのかよくよく考えていただきたいと思います。」

 この方の声をしっかえりと受け止めていただきたいと思います。

 杉並区内で最も古い小学校である杉一小は、再来年150周年を迎えます。150年の学校には、目先のことではなく、これからの150年を考える必要があります。

 先に紹介した世田谷のまちづくりにも学びつつ、この阿佐ヶ谷の問題こそ住民主権と呼ぶにふさわしいまちづくりを実現できるよう、区長、教育長、職員の皆さまにはよくよく考えていただきたいと要望して質問を終わります。

天沼地域の再編に反対する。保育園移転プロセスにも問題あり(2023年6月19日本会議での討論)

 先日の区民生活委員会で否決された天沼地域の施設再編(本天沼集会所・天沼集会所・ゆうゆう天沼館の廃止とコミュニティふらっと本天沼の設置)関連の条例は、先ほど(6/19)の本会議で残念ながら可決されました。

 私は同条例に反対するとともに、関連予算を計上した補正予算案にも反対の討論をしました(採決結果は可決)。以下にその原稿を掲載します。

 なお、同計画は新旧10所もの施設の廃止・移転・新設が絡む大変複雑な計画で、1つ躓けば全てが渋滞する欠陥計画です。(立案した人たちは「無駄のない精緻な計画」と思っていたかも)

 計画の詳細については、2022年11月21日の私の一般質問のうち、2.本天沼集会所等の再編について をご覧ください。  

(以下は原稿です。実際の発言とは異なる部分もあります)

 議案第44号 一般会計補正予算(第3号)について意見を述べます。本議案は多数の項目を含むものであり、その大半には異議のないところではありますが、コミュニティふらっと本天沼の整備に伴う予算と債務負担行為が計上されていることから反対します。

【区民生活委員会で反対した理由】

 ふらっと本天沼整備等に関連する反対理由は、区民生活委員会において述べた通り、第一に、3つの施設を1つに統合することに無理があること。特にゆうゆう館を廃止すべきでないこと。第二に、ふらっと本天沼の設計や改修とその後の利用計画に無理があること。第三にゆうゆう天沼館・保育園廃止後の民間保育園移転の根拠が不透明であること の大きく3点です。

【計画を止めないとの判断は早計だった】

 施設再編整備計画については、岸本区長就任後、当面する再編を、いったん休止する取り組みと、止めないで計画通り実施していく取り組みの2つにわけ、本件天沼地域の再編については、止めないほうに分類したわけですが、止めずに進めるとの決断は早計であったと指摘します。

児童相談所開設には影響しない】

 なぜなら第一に、児童相談所開設に対する影響ですが、区民生活委員会の質疑では、天沼集会所は利用者を消費者センターや隣接の特養の地域交流施設に分散することが可能であることが示されました。したがって廃止しなくても、利用者の調整等により発達相談係の移転と児相開設の時期には影響を与えないものと判断します。

【パピーナ保育園移転に関する訴訟リスクはない】

 第二に、天沼保育園等跡地に予定されているパピーナ保育園の移転については、中止、見直しが可能だからです。委員会では、移転を約束する契約書や覚書に類する文書は存在しないこと。また、事業者は移転のための準備行為を行っていないと区が確認しているとの答弁を得ました。

 したがって、損害賠償を請求する根拠となる文書がないこと、また損害金が発生しないことから、仮に計画を変更、あるいは中止しても、事業者が損害賠償を主張する可能性は極めてひくく、訴訟リスクはほぼないことは明らかです。

 パピーナ保育園の移転が決まっているから、計画はもう止められない、といわれてきました。しかし、中止や見直し、例えば複合施設としての建て替えが全く不可能かといえば、契約上、さらには訴訟リスクの上からは全く可能であると指摘します。

【通常の手続きではない、区として前例ない保育園の移転】

 質疑ではさらに、旧若杉小の事業者公募時に将来の移転先が明記されていないこと、にもかかわらず、天沼保育園等跡地の賃貸に関して公募が行われていないことを指摘して、こうした手法は通常の手続きではないこと、また、区として前例のない手続きであるとの答弁を得ました。

 行政計画として移転を計画しているので、違法な手続きとまではいえないものの、特に天沼保育園等跡地の賃貸については、旧若杉小学校内からあたかも自動的に移転できるかのように、公募をせずに決定したことは、著しく公正を欠く手続きであったといえます。その点からも、一度立ち止まって計画を見直す必要があります。

 以上が反対の理由です。議員各位のご賛同をお願いします。

【阿佐ヶ谷再開発でも損害賠償との虚偽答弁】

 なお、一般質問で、阿佐ヶ谷駅北東地区再開発についても、損害賠償請求が生じるから計画を見直せないとの理屈は法律的に誤りであり虚偽答弁であることを指摘しました。区民に誤った情報を流して転換をあきらめさせようとする手法はもはや通用しないことを認識していただきたいと思います。

 前区政の、阿佐ヶ谷、西荻等再開発や児童館・ゆうゆう館廃止に対してNOの声をつきつけたのが、昨年の区長選挙だったはずです。区長および関係所管の皆さんは、選挙に示された区民の意思を尊重し、地域の声に誠実に向き合っていただくよう、強く要望し、反対の意見とします。

「杉一小の跡地は杉一小」阿佐ヶ谷駅北東地区再開発について一般質問しました

 2023年6月5日杉並区議会第2回定例会において一般質問しました。テーマは「阿佐ヶ谷駅北東地区再開発について」です。

 今年度「杉並第一小学校跡地利用」についての検討が行われる予定ですが、私から「杉一小の跡地は杉一小」すなわち杉一小を病院跡地に移転するのではなく、現地で建て替えることを提案しました。

 その前提としてまず、「移転計画を変更できるのか」「移転をやめた場合の影響」などについて過去の区議会で「損害賠償を請求される」などと根拠のない答弁をしてきたことについて追及しました。

(以下は原稿です。実際の発言とは違う場合もあります)

 阿佐ヶ谷駅北東地区再開発について質問します。

 私はこれまでもこのテーマについては、地元阿佐ヶ谷のまちの一方的な改変に疑問をもつ立場から、様々な問題点についてとりあげてきました。今年度、いよいよ杉一小跡地利用についての検討を行う予定であることから、特に杉一小用地のゆくえについて質問します。

 私の意見は、「杉一小の跡地は杉一小」ということです。類似の提案が、先日区民グループからも岸本区長あてに提出されたところであり、これについても紹介します。

【考える上で誤謬をただす】

 前提として。跡地利用を考える上での条件を確認しなければなりません。

なぜなら、阿佐ヶ谷に駅前再開発はないとか、計画変更したら賠償責任が生じるとか、ばかな話が、こともあろうにこの区議会の中でまかりとおっているからです。誤った情報が流布されれば、今後の検討にあたってミスリードされることになります。

今更、このような初歩的な点について確認せねばならないのもいかがなものかと思いますが、しばらくの間、皆さまがたには退屈かもしれませんが、お付き合いください。

【「駅前再開発はない」?】

 今年3月13日の予算特別委員会における質疑応答に関して2点うかがいます。

 まず1点目に、再開発ということについてです。

 本日も私は質問のタイトルとしてあえて「再開発」という用語を使用しています。阿佐ヶ谷駅北東地区の計画は誰がどう見ても再開発であるからです。

 当該質疑における答弁では「区において駅前再開発はない」あるいは「いわゆる駅前再開発の計画というもの、西荻とか、阿佐ヶ谷とか、いろいろなこともございますけれども、そういった計画がないということ」云々と、質問者、答弁者ともに、しきりに「駅前再開発はない」と発言を繰り返しています。

 そこでお聞きしますが、ここで存在を否定した「再開発」とはいったい何を指していったものでしょうか。(Q1)

 「駅前再開発」と言っているので、狭義の駅前再開発すなわち、駅舎とバスロータリーや駅前広場に限定した再開発について述べたものなのか。あるいは、いわゆる再開発制度、たとえば「市街地再開発事業」の適用がされているかいないかについて述べたものなのでしょうか。確認します。

【阿佐ヶ谷では再開発が行われている】

 たしかに駅舎やロータリーなどに関する再開発計画、あるいは法定の市街地再開発事業等はありません。しかし、土地区画整理事業は進行していますし、これからはいよいよ、当該事業の目玉である杉一小用地の再開発、容積率500%、高さ60mに緩和した土地の利用が問題となっていきます。

 そこでお尋ねしますが、そもそも再開発とは何か。定義を説明してください。(Q2)

 ネットで検索してみると、たとえば平凡社百科事典マイペディアには「都市中心部において、旧来の建物や構造物を取り壊し計画的に街づくりをし直すこと」、また、日本国語大辞典には「すでにあるものの上に新しい計画を加えて、それをさらに開発すること」と定義されています。これらはまさに阿佐ヶ谷で起きていることではないでしょうか。

 阿佐ヶ谷駅北東地区には土地区画整理事業が進行中ですが、土地区画整理事業は法にもとづく開発行為ではないのでしょうか。そして阿佐ヶ谷のような都市部の住宅地における開発行為を再開発とよばずに何とよぶのでしょうか。

 土地区画整理事業は開発行為か否か。また、阿佐ヶ谷における開発行為は再開発か否か。確認します。(Q3)

 一般的な説明として、土地区画整理事業は土地の所有権を移転して用地をまとめたり、道路、公園等の公共施設を整備する平面の再開発であるのに対し、市街地再開発事業は立体の再開発といわれます。杉一小用地は幹線道路に面した駅前の一等地であることから、先の地区計画と容積率等の緩和は、この土地の容積をめいっぱい使って上に伸ばすための下地づくりと受け止めるのは、きわめて常識的な判断でしょう。しかし万々が一、現在の容積、高さと同じかそれ以下のものを建てるなら地域への影響は少なく、単なる建て替えであり再開発とよぶ必要がないかもしれませんので、一応うかがいます。

 杉一小跡地に現校舎と同じかそれ以下の容積、高さの建物を建てることを区は果たして想定しているのでしょうか。(Q4)

【阿佐ヶ谷「駅前再開発」は存在する】

 ここまでの質問を通じて阿佐ヶ谷に再開発計画がないというのは誤りであることはもちろん、むしろこの北東地区の計画は駅前再開発と呼ぶことこそふさわしいことを確認しておきます。

 だいたいこういう時、計画が表に出たときにはもう遅い、というのがお約束です。だからこそ、土地区画整理事業という再開発が進行している同地に注目があつまり、警戒心をよびおこすのは当然のことではないでしょうか。

 予算特別委員会での「不安の声」「不安の払拭」といった答弁、つまり住民の心の問題、勘違いや杞憂かのような答弁は、区民に対し、制度を理解する能力がなく、ただ感情的に、あるいは政治的な別の思惑で発言するかのように愚弄、侮辱するものです。

【学校移転をやめると「損害賠償」というウソ】

 2点目はこの質疑応答の中で最も重大な発言「学校の移転を中止する場合、法的手続き、経費精算、損害賠償などは当然にも発生する」について質問します。

 たとえば、すでに着工している病院の移転を止めたら、それは確かに損害賠償を問われることにもなりかねません。しかし、学校の移転中止で誰が損害をこうむるのでしょうか。

 杉一小の移転を中止し、現地建て替えに変更した場合、誰かに損害を与えることがあるか。あるとすればその場合の相手及び具体的な損害について説明を求めるがいかがか、うかがいます。(Q5)

 以前にも紹介しましたが、杉一の跡地には30階建てのタワマンを建てるらしいよ、という話をしていた人がいました。この話が本当なら、小学校がどいてくれなければその計画の主体はさぞかしあわてることでしょう。しかし、そんな計画は裏では知りませんが、公になったことは一切ないし、区としても知りうる立場にないのですから、損害賠償請求にあたいしないのは当然です。

 もしもそのような損害を被る企業があると知って「当然にも損害賠償が発生する」と答弁したのであれば、それはいったい誰の、どういう計画か、この場でぜひ教えていただきたいものです。

【「損害賠償」は虚偽答弁。撤回を求める】

 次に、土地区画整理事業に対する民間地権者のこれまでの出費が損害となるかというと、本件事業の経費はすべて区が立替え、保留地の売却により精算するとされているので、民間地権者はそもそも負担をおっておらず、損害を与えることはありえません。

 「小学校移転をやめると損害賠償が当然にも発生する」との答弁は、意図的な虚偽答弁といっていいレベルのものですが、そうでなければその職責に値しないほどの無知か、少なくとも明らかな誤りであり、法の趣旨をねじまげ、議会と区民に誤解を与える答弁でした。撤回・訂正を要求します。見解を求めます。(Q6)

 「損害賠償」などというが何の法的根拠もなく、学校の移転中止をはじめとした計画変更は、もうできないと印象づけるための誘導です。裁判なら「偽証」にとわれるレベルの話ですし、もちろん、議会答弁だから嘘をついていいということにはなりません。

【「区長は理解が足りていない」?】

 予算特別委員会では、まちづくり担当部長が「区長はこの問題について理解が足りていない」という趣旨の発言をしました。大変失礼な発言であるばかりでなく、理解が不十分と認識しているなら、区長に対し十分に説明をつくすことが補助機関としての責務であり、これを怠っていることを自己暴露した発言ととれます。

 職務怠慢という以上に、区長はよくわかっていないから、などと言って、他方で虚偽の答弁をするなら、区長そのひとをだまそうとしているのではないかとさえ心配になります。

【何を建てるか、は区が決められる】

 さて、今のところ、北東地区にかかっている開発計画は杉並区、欅興産、河北医療財団の3者による土地区画整理事業のみですが、そもそも土地区画整理事業は土地の権利、換地や減歩について定めるのであって、各権利者がその権利地の上に何を建てるかまで計画するものではないということを確認します。

 また、したがって、本件事業により区がその所有地となる河北病院用地及び約4分の1の権利を有することとなる杉一小用地をどのように活用するかについて、事業計画上の制約はないことについても確認するがいかがか。伺います。(Q7)

【「仮換地」の見直しは法的に可能】

 なお、土地区画整理事業の見直しについて付言します。

 区と民間地権者らは、これだけ公共用地を投入し、学校、病院を含む公共性の高い区画にかかわる事業であるにもかかわらず、都市計画決定して行う公共施行ではなく、あえて、個人共同施行の土地区画整理事業という手法を選択しました。

 個人施行の場合、23区においては知事の認可すら必要なく、区長の認可で足りることから、区長が申請して区長が認可するお手盛り、かつ区議会の議決も必要ない方法を選んだのです。

 しかし、個人施行とは、裏返せば、地権者の合意のみによって成り立っているのであるから、地権者個々の意思により、計画変更、場合によっては撤回も含めて可能であり、このことにもなんらペナルティを課されるものではありません。

【「損害賠償が発生」は根拠ない「お化け話」】

 昨年の区長選において、再開発に慎重な区長を住民が選んだわけですから、地権者杉並区の事情は一変したともいえ、仮換地を含む本件事業に変更を申し出ることも法的には可能です。もちろん、地権者相互の合意がとれるかはまた別の問題です。

 土地区画整理事業の根幹である土地の権利交換=仮換地から見直したとしても法的な問題はなく、まして、各々の権利地に何を建てるかは、杉並区、すなわち杉並区民の意思、意向とそれを体現する区長にかかっているものです。

 学校移転をやめたら損害賠償などと、おばけが出るみたいな話はこれで打ち止めにしていただくようお願いします。

【一番いいのは単純な現地建て替え】

 さて、やっと本題の「杉一小の跡地は杉一小」についてのべることができます。 私は、本来なら、杉一小を単純に現地に新築すべきと考えます。

 当初改築案の1つに8階建て地上校庭案がありましたが、これは阿佐谷地域区民センターを含んだ複合案でした。その後区民センターは別の土地にすでに移転・新築されましたので、この案から除外でき、結果、5階から6階建て程度の産業商工会館と杉一小の複合施設を建築することが全く可能となりました。しかもこの案であれば現在よりも1.2倍広い校庭がとれると当時説明されていた案です。換地後の地権者となる民間主体が土地の賃貸を了解してくださるのであれば、この案が一番いいのです。

【地域からも現地建て替えを望む声】

 他会派の発言にもありましたが、杉一はそのまま建て替えてほしいという地域のお声を、私も多くいただいています。選挙期間中も駅頭で、また電話で、河北病院近隣住民の方、また、杉一小OBの方から、杉一小移転の計画はおかしい。現地でそのまま建て替えてほしいというご意見をうかがいました。

 また、都市計画マスタープランの阿佐谷地域の説明会でも、杉一小はいまの場所に建て替えてほしいという意見が出ていました。ちなみに、都市マスへのご意見のまとめでは、現在の北東地区計画を評価する声、他方、杉一小はいまの場所に建て替えてほしいという声、それぞれ1件が掲載されていますが、写真で確認すると、計画を評価する声はふせん1枚、杉一小を現在地に(すなわち計画変更を求める声)は少なくともふせん7枚が見えます。「両方の意見があった」と等分に掲載した区のまとめとは裏腹に計画変更を求める声が多数だったと推察されます。

【「移転のほうがすぐれている」は本当か】

 さて、区が病院の移転に伴って、当時の杉一小現地複合施設建て替え案から、現在の病院跡地移転案に変更したときの説明では、(1)敷地が広くなる(2)静かな住宅地(3)仮校舎が必要なくなる、が移転の主な理由でした。その一方、改築が遅れ、旧校舎を築70年まで使うことによる約3億円の無駄な投資、また、移転先の汚染対策、軟弱地盤への余分な投資、移転先での近隣騒音の懸念等が当時から指摘されていました。それらをしのぐメリットが果たして現計画にはあるのでしょうか。

【敷地は少し広くなるが、いうほどではない】

まず、敷地が広くなるという点について。1000平米程度の拡大張と説明されましたが、ちょっと盛っていて、現在の杉一小敷地と移転後との違いは800平米弱です。しかも土地が不整形であるため、有効面積はさらに狭くなります。騒音や砂埃などでのトラブルを避けるため、場所により敷地の使用は制約を受け、さらに狭くなります。敷地の拡大は数字ほどの恩恵がなく、移転する決定的な理由とはなりえません。

【「静かな住宅地」には逆に迷惑施設に】

 次に、住宅地なので環境がよいという点について。たしかに現在は幹線道路ぞいですが、杉一小に通い続けたための健康被害などあったのでしょうか。一方、お寺、神社、商店街に囲まれた商業地の、しかも昔からの学校だから、学校騒音に対し文句を言う人はいませんが、住宅密集地に新たな学校ができれば、騒音や砂埃など新たな迷惑施設と受け取られることでしょう。

【「仮校舎」建てても活用できる】

 次に仮校舎が必要ないという点です。教育環境にとっても、財政負担の面からも、仮校舎を避けることができればありがたいことです。しかし、杉一の改築でも、もともとは仮校舎を建てる計画でしたし、仮校舎を何が何でも建ててはいけないなどといったら、そもそも改築できる学校はなくなってしまいます。学校改築のたびに、本計画のように、移転先を見つけられるとでもいうのでしょうか。さらに、後ほど紹介する住民提案では、仮校舎の活用方法も提案されています。

【移転のほうがよいとする根拠はない】

 このように、移転計画を選択した理由とされるものは、どれも、150年の伝統ある杉一小を、より質の悪い土地に移転する根拠としては脆弱であり、積極的に選んだとはいいがたいものです。むしろ、小学校用地の高度利用のために小学校を後背地に移転させ、排除する計画とみるのが自然です。

【各地でマンションに転用される学校用地】

 他区の例で、たとえば2019年区議会第四回定例会一般質問において私は中野区の東中野小学校跡地のケースを紹介しました。このケースで、企業側は「区からの土地取得価格が割安だった」と述べています。この他にも「小学校跡地 マンション」で検索すれば数えきれないほどのケースが出てきます。

 都内に残された貴重な開発フロンティア、安く手に入れられるまとまった土地として学校敷地は目をつけられているのです。これはもはや常識です。

 このような開発行為を目的としてなのか、本件事業の仮換地では、区の土地があらかじめ不当に低く評価されていると考えますので、区有地の評価指数をもういちど見直すことも1つの選択肢ではあります。これも先ほど述べたように法的には全く可能です。

【「杉一小をできるだけ現地に」住民からの提案】

 とはいえ、民間地権者の了解を得るためには、現在の仮換地を前提として考えざるを得ないことも理解はします。

 けやきの森は伐採されてしまい、病院の建築工事が着手され進行している状態です。前区政の置き土産とはいえ、全面撤回することは困難です。

 先日、阿佐ヶ谷の住民団体「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会」から区長に提出された代替案は、こうした事情も勘案した次善の策です。

 大きく5項目です。

 第一に、現在の杉並第一小学校跡地に高さ40m以上の高層建築物を建てないこと。

 第二に、同跡地に建築される建築物の中に小学校機能を入れること。

 これは、区が両方の敷地を活用しつつ、できるだけ現在の杉一用地に学校機能を残し、病院用地を広く使えるように工夫した案です。

 第三に、河北病院跡地には、小学校の第二運動場ほか憩いの広場、防災広場としての機能を入れること。

 ここでは、病院跡地に仮校舎を建てること、その際、仮校舎として建てた建物を、その後も転用して文化施設、たとえば阿佐ヶ谷の文学館として活用することを提案しています。これならプレハブとかではなく、しっかりとした建物を建てることで、児童の学習環境にも良いし、資金も無駄になりません。

【病院跡地はみどりの公園兼第二校庭に】

 また併せて、けやき屋敷の樹林伐採を代償するための植樹を行い、新たな樹林を育成すること。そして、この地区を校庭の狭小な杉一小の第二校庭として活用すること。校庭として活用しつつも、教育活動以外の時間帯は、区民に開放すること。富士見丘小で計画されている多目的広場と同様の活用です。

 第四に、脱炭素にむけたコミュニティ・エネルギーマネジメントシステム(CEMS=セムス)を地区全体として計画すること。

 CEMSとは、地域全体のエネルギーを管理するシステムのことであり、再生可能エネルギーなどの電力供給量と電力需要の管理を行うものです

 第五に、以上を踏まえ、杉一小跡地及び病院跡地の建築計画については公開のプロポーザルコンペを実施すること。

 これらの各項目について、また提案全体について、区長はどう評価されますか。見解をうかがいます。(Q8)

【地権者だけで計画を決めるのか】

 最後に全体の進行について、あらためて住民自治の観点から意見をのべます。

 私は昨年10月の決算特別委員会意見開陳において、阿佐ヶ谷のまちづくりは、まちづくり協議会の手法を用いて定めるべきと意見を述べました。一部引用します。

 「区は現在のまちづくり条例のもとで14のまちづくり協議会の実績があります。各路線、各駅のまちづくり協議会がさまざまに並ぶなか、なぜか阿佐ヶ谷のまちづくりが協議会で検討されたことは一度もありません。(中略)区は、北東地区の地権者・事業者の意向を実現することのみに汲々としていたのが現実です。」このように指摘しました。

 ところで、6月2日の他会派への答弁でまちづくり担当部長は「地権者とこれから調整するが、お知らせするものができたら住民に知らせる」という趣旨の発言をしたように聞こえました。

 語るに落ちたというか、計画は一部の地権者で決め、小学校用地の地権者である杉並区民には、決まったことを知らせるという態度は、前区長の時代、河北病院の移転が発表されたときから全く変わりません。またも、権利者だけに限った閉じた会合を先行して開きそこで計画を定めてしまうのでしょうか。住民不在の計画推進を危惧します。

【阿佐ヶ谷まちづくりは広く公開の議論で】

 区長がかわったいまこそ、このプロセスを逆転させて住民主権のまちづくりに転換していくべきです。他の地区でできるのに、なぜか阿佐ヶ谷でだけは「できない」といわれる、まちづくり協議会の手法を用いて、広く公開の議論に付すべきと考えるがいかがか、区長の見解をうかがいます。(Q9)

 以上で、質問を終わります。最後にもう一度申し上げます。

「杉一小の跡地は杉一小」

 区議会も区民もいっしょになって、その可能性を真剣に検討していこうではありませんか。

「エリアマネジメント」ではなく公平公正な阿佐ヶ谷のまちづくりを(2022年11月21日一般質問)

 2022年11月21日杉並区議会第四回定例会で一般質問しました。質問項目は

1.児童館について

 来年度予定されている区立施設再編整備計画の見直しにむけて、児童館廃止の問題点を指摘し、当面廃止がとまらない2館についての解決を求めました。

2.本天沼集会所等の再編について

 こちらも再編が止まっていない、本天沼集会所・天沼集会所・ゆうゆう天沼館の廃止・統合について。とても複雑ですが、3つの施設をいきなり1つに統廃合するスジの悪い計画なのに、前区政の計画がそのまま進められるのは理不尽。岸本区長の公約を区役所としてちゃんと実行してほしい。

3.阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発について

 予定が遅れていた河北病院の工事が7.5か月遅れて始まると通知がきました。病院跡地に予定されている杉一小新築工事はそれにつれてさらに遅れることに。

 また、「官民連携プラットフォーム」とか「エリアマネジメント」とか何だかわからない企画が進んでいますが彼らのめざす「地域の価値向上」とはデベロッパーの「資産価値向上」なのでは?と指摘しました。

(以下は原稿です。実際の発言とは異なる部分があります)

1.児童館について

 最初に児童館について質問します。

 2013年に最初の区立施設再編整備計画案が発表され、児童館をすべて廃止するとされたことは保護者、地域の関係者に強い衝撃を与えました。多くの反対意見が区に寄せられましたが、区はこれまで一顧だにせず、多くの児童館が廃止されました。

 まず、これまでの施設再編整備計画の結果を確認します。計画開始以前の2013年度と今年度の比較で、児童館数、及び、学童クラブの民間委託数はどのように変化したか。また、廃止された各児童館施設は何に転用されたか、お示しください。(Q1-1)

【「機能移転」でごまかした「児童館廃止」】

 施設再編整備計画では、当初案の「廃止」という文言が多くの利用者の反発を招いたため、「廃止」の文言を消して、かわりに「機能移転」と表現されてきました。しかし、「機能移転」とは、入れ物が変わるだけではありませんでした。かつては全国一の事業と称揚された杉並の児童館、杉並の児童福祉は大幅に後退してしまったということは、これまでも指摘してきたとおりです。

 施設再編整備計画では、児童館の機能は、学童クラブ、小学生の放課後の居場所、乳幼児親子の居場所、中・高校生の居場所の4つであり、施設を移転してもこれらを維持するから事業がなくなるわけではないと説明してきましたが、そんなことはいうまでもなく虚偽でした。

 年齢区分を前提にしたこのような4つの機能など、児童福祉法あるいは厚労省ガイドラインには全くありません。したがって区の条例にも規定されていません。法的な根拠のない創作です。

【子どもの遊び場を真剣に考えたかつての杉並区】

 子どもにとって遊びは人権の一部であり、子どもの権利条約も第31条には子どもの遊びや文化活動の権利を保障するよう締約国に求めています。

 70年代から80年代にかけて、杉並区は小学校1学区に1館をめざして児童館をつくってきました。以前にも紹介したかと思いますが、区のアーカイブには「子どもと遊び場~杉並区の現状~」という動画があります。そこでは都市化が進み、子どもの安全な遊び場が失われていく中で、子どもの遊び場を確保しなくてはという当時の杉並区の強い危機感と使命感が述べられています。

【遊びの自由がなく管理的に】

 しかし、児童館が廃止され学校内に「機能移転」された学童クラブ、放課後等居場所事業は、これまでさんざん指摘してきたように、遊びの自由がなくなり制約が多いこと、また、管理的で子どもを叱りつけるような保育がなされていること、さらには、児童館の行事が引き継がれないなど「機能移転」すら十分にできていないことがわかりました。

 特に小学生の居場所が減少してしまったことについては、児童館廃止を支持する立場であったとしても、誰も否定できない事実として共通認識になったと思います。

【学校は教育の場、特別教室などは使えない】

 学校への機能移転は、多くの課題があります。第一に、学校は教育の場であり、当然にも学校教育活動が優先されます。たとえば大きな行事や式があるときは1週間も前から事前練習のための準備やしつらえがなされたりして、校庭や体育館の使用が不可となります。

 また計画当初、区が「図書室、図工室、音楽室などが児童館のそれよりも広く、ずっと充実した活動ができる」と説明してきたことは、この間の私の調査によって、月1回、あるいは年数回しか使えていない実態がわかり、特別教室の活用は全くの空論だったことが明らかとなりました。

【民間委託なので調整が難しい】

 第二に、民間委託であることも施設利用の調整をより難しくしています。偽装委託を避けるために委託事業者の責任者しか学校と交渉できないため、日々の柔軟な施設使用を申し入れることは困難です。

 近隣の児童館・プラザの職員がアウトリーチで行うとされていますが、アウトリーチは限界があり、必ずしも十分に機能していないことも、すでに何度も指摘してきました。

【日替わりのアルバイト勤務では…】

 第三に、人材の問題です。これは民間委託の本質にもかかわることですが、特に、近年導入された営利企業への委託では、企業の使命たる利潤をあげるために人件費をいかに減らすかが主要な命題となります。そのために、短時間のアルバイトが日替わりで勤務し、子どもや保護者との信頼関係が築けないことについてはこれまで指摘してきたところです。運営の質にかかわる問題です。先にはなんと盗撮事件が起きてしまいました。

 と同時に、これは学校施設ならではの問題でもあって、児童館とはくらべものにならない広い校舎や学校敷地のなかで安全確保するためには、本当は多くの人員が必要ですが、少ない人数で対応するために、子どもたちの行動を規制して一か所にまとめ、いっせいに移動させるなど、必然的に管理的になってしまいます。

 児童館廃止、再編が始まって8年半、こうした問題点が見えてきたように思いますが、区としては、児童館、学童クラブ及び学校内の放課後等居場所事業に関連して、それぞれ現在、どのような課題があると考えているか、伺います。(Q1-2)

【学校施設利用は教育委員会に専門の部署を】

 特に、施設利用は、委託事業者では調整が困難であり、学校側にとっても負担となっています。教育委員会に教育施設の利用調整をする専管部署を置くべきと考えるがいかがか、見解を伺います。(Q1-3)

 次に、今後の検証、見直しの方針や手法等についてうかがいます。まず、児童館についての今後の検証及び再編計画見直しのスケジュールを確認します。(Q1-4)

 関連して、庁内でプラザの検証等を行うと聞いていた「学童クラブ等のあり方検討部会」のプロセスは現在どうなっているのか。また、今後の予定はどうか、伺います。(Q1-5)

【子どもたちと話し合う場を】

 今議会提案の補正予算にも、専門家の意見聴取や区民アンケートなどの費用が盛り込まれていますが、それだけでは事業の見直しには全く不十分と考えます。

 無作為抽出のアンケートは一見公平なようですが、児童館に縁のない人の意見を聞いても子どもたちのニーズを的確に把握できるのか疑問があります。現在のユーザーである子どもたちとの話し合いの場などが必要です。

【児童館を児童福祉にどう位置づけるか】

 区は2006年に児童館等のあり方検討会報告書をまとめて以来、廃止どころか児童館の方向性すら示さないまま、施設再編計画で児童館の廃止に突き進んできました。一種のクーデターであり、公共事業、ハコ物優先の前区政を最も端的に象徴するものです。

 施設をどうするかの前に、児童館を児童福祉にどう位置づけるか、今日の情勢に即した検討が求められています。

 70年代に区が危機感をもったように、今後の杉並の子どもたちの健全育成を中長期にわたって構想できる抜本的な検討が必要と考えます。

【専門家をまじえた公開の検討会で議論を】

 そのために、児童福祉、児童心理の研究者、また、児童健全育成推進財団の専門家の協力を得て、区民も傍聴できる公開の検討会を開催し、議論を深めていくことを求めますがいかがか、伺います。(Q1-6)

【下高井戸児童館の廃止は見直しを】

 児童館の項目の最後に、当面して廃止を進めるとされた2館について質問します。今後、児童館について新たな方針をつくろうとしているのに、すでに進行しているからという理由で、目の前で扉が閉じられて廃止されてしまうのは酷な話です。

 第一に下高井戸児童館です。下高井戸児童館の保護者の皆さんから、区議会に廃止を見直すよう陳情が提出されました。区議会、区役所を訪問もされました。

 下高井戸児童館の廃止については、今年5月9日に説明会が行われ、私も参加しましたが、保護者の参加は2~3名程度でした。連休に入る直前に案内が配られ、連休明けの開催であったこと、平日の夜間の開催であったことから悪条件が重なったものです。わざわざ人が集まらないような設定にしたとしか思えません。

【保護者が参加できない平日夜の説明会】

 また、先に述べたように「機能移転」と表現されているため、地域ではいまだに、児童館が廃止されると認識していない人がほとんどで、小学生は1室しか利用ができなくなること、また、校庭開放がなくなること、などの情報は説明会に来た人にしか伝わっていなかったのです。

 こうした状況をふりかえると全く説明不足としかいいようがありません。下高井戸児童館については、利用している児童および保護者と十分話し合い、廃止計画は立ち止まるように求めます。また、仮に子ども・子育てプラザに転換したとしても、小学生が遊戯室などを使えるようタイムシェアを行うべきと考えますがいかがか。見解を求めます。(Q1-7)

【阿佐ヶ谷南児童館は代替施設を】

 第二に阿佐谷南児童館です。阿佐谷地域の南部では、すでに成田西児童館、成田児童館、大宮児童館、浜田山児童館が廃止され、残るは阿佐谷南児童館しかないと地域の方から嘆く声を聴いています。

 児童相談所設立のための用地転用はやむをえないとしても、阿佐谷南児童館を廃止するのではなく、近隣に移すことはできないのでしょうか。例えば、職員会館があります。職員会館は今後解体して駐輪場にするとの計画が唐突に通知されましたが、現在ある建物を存置すれば児童館に必要な面積は確保することができます。

 学校内の放課後居場所事業だけでなく、子どもたちが利用できる場所を、サードプレイスとして確保することが必要と考えますが、いかがか見解を伺います。(Q1-8)

2.本天沼集会所等の再編について

 次に本天沼集会所等の再編について質問します。一昨日の土曜日、天沼中学校で説明会がありました。私は残念ながら参加できなかったのですが、体育館がいっぱいになり、時間を延長して熱心な質疑が続いたと伺いました。参加された何人もの方から詳細なご報告をいただきましたので、それも踏まえて質問します。

【「玉突き方式」で10もの施設が絡む】

 その前に。現行の区立施設再編整備計画の大きな問題は、複数の施設の建て替えや統廃合が複雑に絡み合い、一つつまずけば多数の施設に影響がでるという玉突き方式の弱点です。それは、区民の意見をとりいれて変更することは許されないしくみでもあります。

 ふらっと本天沼に関連する施設を列挙しますと、本天沼民集会所、天沼区民集会所、ゆうゆう天沼館の3施設以外にも、天沼保育園、パピーナ荻窪天沼保育園、旧若杉小学校、児童発達相談係、消費者センター、そして新設される児童相談所。児相の設置に関連しては、阿佐谷南児童館、子ども家庭支援センター、のはら保育園も関係してきます。もしかしたらもっとあるのかもしれませんが、ざっと10の施設に絡む再編であって、利用者、住民の方々が全貌を把握するのは困難です。

 来年度以降予定されている区立施設再編整備計画の見直しにあたっては、このように複雑なパズルのような計画はやめて、老朽改築の計画、また統廃合が必要とされるケースがあるとしても、わかりやすい計画に組み直すべきでしょう。

【ゆうゆう天沼館の廃止計画】

 さて、具体的な問題点を述べます。第一にゆうゆう天沼館の廃止です。他の地域でも、ゆうゆう館を廃止してコミュニティふらっとに機能を統合していく再編が進んでいます。ゆうゆう館の廃止に反対する声をおさえるためか、ゆうゆう館の利用者に対して「場所はかわるけど、利用はこれまでと何もかわりませんよ」という説明がなされているようです。そのため利用団体の方々は、ゆうゆう館の場所と名称が新しくなっただけという誤解をされるようです。

 しかし、高齢者福祉施設であるゆうゆう館と地域コミュニティ施設であるふらっとはそもそもその事業目的が違うはずです。それぞれの事業目的と運営形態について説明を求めます。(Q2-1)

 また、再編整備計画による、ゆうゆう館とコミュニティふらっとの施設数の変化をお示しください。(Q2-2)

【計画を止められない理由は民間保育園との約束?】

 説明を聞いていると、計画修正できない理由は、どうも、天沼保育園・ゆうゆう館の跡地に予定されているパピーナ荻窪天沼保育園の新築移転計画でお尻が決まっているということのようです。しかし、このかんも話題になっているように、待機児童がほぼ解消に近づき、空きの出ている保育園も多くなっている中、あえて今、区有地を有利な条件で賃貸借しての新築、定員増が保育政策として必須とは思われません。パピーナ保育園は旧若杉小で運営できており、移転・新築については見直した方がよいのではないでしょうか。

【3つの施設を1つに集約するのは無理】

 第二に、3つの施設を1つに集約することには無理があります。コミュニティふらっとでは、ゆうゆう館登録団体の利用枠が優先的に予約されます。あの小さな本天沼集会所に、ゆうゆう館の団体が移ってくるだけでも、これまでの利用団体は押し出されてしまうのではないでしょうか。ましてそこに天沼集会所の利用者まで包含することができるのでしょうか。大変疑問です。

 そこで、3施設の利用状況についてうかがいます。本天沼民集会所、天沼区民集会所、ゆうゆう天沼館洋室1・2の時間帯別の利用率を示してください。また、ゆうゆう天沼館の登録団体は何団体でしょうか。(Q2-3)

 説明会でも利用率が示されたそうですが、コロナの影響を受けている昨今の実績で、今後を見通すのは甘いを言わざるをえません。

【ウェルファームの集会所、まだ新築4年】

 第三に、天沼区民集会所廃止への疑問です。あんさんぶる荻窪荻窪税務署との財産交換で廃止されたことにともない代替施設としてウェルファームが新築されたのは2018年のことであり、まだ5年たっていません。早くも廃止される朝令暮改には納得できません。

【区民施設は空き部屋、公園は空き地なのか?】

 区民施設、集会施設は、行政目的のためには自在に取り上げてよいと区は考えているのでしょうか。集会所という事業の意義はどこへ行ったのでしょう。

 杉並ではかつて公園を空き地のように扱って廃止し、保育園を建てた事件がありました。同じにおいがします。

【天沼集会所は残せる】

 天沼集会所には児童発達相談係が移転するとされますが、転用されるのは3室のみ、残る2室は区役所の会議室にするとのことです。しかし、毎日朝から晩まで会議をするわけではないでしょう。2室は天沼区民集会所として存置して行政使用でおさえればいいだけです。集会室を残すよう計画見直しを求めますががいかがか、見解を求めます。(Q2-4)

【設計案の問題点】

 第四に設計案です。説明会においてコミュニティふらっと本天沼の設計が示されました。そもそも館のキャパシティが小さすぎるという点のほかにも、受付から見えない位置に誰でも使えるラウンジがあること、和室の廃止、また、駐輪場の不足など問題が多々あります。ゆうゆう館の利用者からは、収納が少ないため、麻雀台など備品を預けることができなくなるとの問題も指摘されています。

 住民は、今回説明会ではじめて設計図を見たのであって、設計案については、今後さらに住民意見を聴取し、引き続き変更も含め、より適切な設計を検討するよう求めるが、いかがか見解を求めます。(Q2-5)

【区民との話し合いを今後も継続すべき】

 区長は説明会の最後に「もちかえってひとつひとつ検討する」とまとめました。それでも、参加者からは「質問への回答はちゃんともらえるのか?」「結局これまでと同じく、意見は聞き置いておわり、となるのではないか。と懸念の声が届きました。

 それほど区政への不信は根強いのです。

 今回1回の説明会だけで終わらせず、2回、3回と話し合いを続けていくよう要望します。

 天沼地域の再編は、旧若杉小の利用も含めた大きな視点と時間軸において住民の知恵を借り、じっくりと考えていくべきと考えます。

3.阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発について

 次に阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発について質問します。本当なら今年の夏に着工するはずだった河北病院の新築工事が遅延するとの連絡がありました。まずその内容にもとづく、今後のスケジュールを確認します。(Q3-1)

【病院工事が7.5が月遅延で学校新築は1年遅延】

 病院建て替えの遅れにより、そもそもの計画からすでに10年遅延された杉一小の改築がさらに遅れるのは全く遺憾なことです。

 7.5か月遅延といっても、新校舎の開校は4月から11月に変更しますというわけにはいかない。結局翌年まで1年間遅延になるのではないか。現在の校舎はただでさえ築70年まで使う計画なのに、71年までのびることになります。

【玉突き計画の悪い面がここでも】

 前の天沼の項目で指摘した玉突き計画の最も悪い面が出ました。1つ転ぶとこのように遅延が生じて後ろにいくほど影響が大きくなるのです。

 そこでうかがいますが、病院建て替えの遅れにより、杉一小の移転・改築工事にはどのような影響があるか。校舎改築検討懇談会の設置時期はどうなるか。また、病院に対して、教育委員会としてはどのような姿勢でのぞむのか。見解を伺います。(Q3-2)

【学校敷地をとおる工事用通路の賃料は】

 次に細かいことながら見過ごせない影響があります。杉一小北側に設置された工事用通路のうち民有地の賃借料については、だれが支払っているのでしょうか。7.5か月の遅延により払わなくてもいい賃料を区が払っているなら問題です。遅延により生じた余分な期間の賃借料は当然にも病院が負担すべきものです。

 そこで、杉一小北側の工事用通路に関し、病院と区の費用負担について土地使用料のルール及び両者の支払う使用料月額を確認します。(Q3-3)

 また、病院の工事遅延の間の通路利用料は支払われているか確認します。(Q3-4)

【「エリアマネジメント」とは】

 次に、エリアマネジメントについてうかがいます。まず、当該地区のエリアマネジメントに関連して、区は国の補助金を申請しているが、今年度の補助金事業の名称、歳入金額及び来年度申請予定の事業はあるか。またその内容を確認します。(Q3-5)

 また、今年度中に創設するというエリアプラットフォームとは何か。設立の要件はなにか。当該地区ではどのように想定しているか、伺います。(Q3-6)

 ところで、エリアマネジメントといわれて、その意味をわかるように説明できる人が、この議場にもどれだけいるでしょうか。少なくとも私はよくわかりません。まして阿佐ヶ谷の街の人たちがどれだけ知っているでしょうか。

 「エリアマネジメントなるものをやってみたい」という奇特な人たちが団体をつくったと説明されました。その人たちもわかっているかどうか怪しいものです。

【「地域の価値向上」は誰のため】

 いまものすごい再開発が進む中野駅周辺の資料をみると、エリアマネジメントとは「地域価値向上のための住民・事業主等の主体的な取組み」と定義されています。先日の他の議員の質問に対する答弁でも何度も「地域の価値向上」の言葉が用いられていました。

 どうも「地域の価値向上」がキーワードらしいです。でも、それは住民全体の利益になるのでしょうか。

野村不動産は露骨に「収益床の資産価値向上」】

 中野でも、野村不動産が中心で進めている、サンプラザ跡地開発を含む、中野駅新北口地域エリアマネジメントの説明ではもっと露骨に「収益床の資産価値向上」と述べています。

 中野だけでなくエリアマネジメントをネット検索すると、大手ディベロッパーの大規模マンション建設に伴う整備計画が次々に出てきます。

【大手ディベロッパーらのための「資産価値向上」】 

 つまり、「地域の価値向上」とはマンションやビルに付加価値をつけて高く売りたい大手ディベロッパー、大規模商業施設、金融機関、また地域の有力者のために「資産価値向上」をめざして自治体の協力を引き出して、補助金規制緩和を狙うものです。それは公共性とは相反するものとなるのではないでしょうか。

【地区計画による建築規制やぶり】

 都市計画法は「都市の健全な発展と秩序ある整備、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進」を目的として掲げています。乱開発を防ぎ、住民が住みやすいまちを計画的に整えていくことが本旨です。

 しかし昨今は、阿佐ヶ谷の計画のように、地区計画をかけることで緩和をとって、都市計画の建築規制を無力化する手法がふえています。地区計画という政治的な方法による実質的な規制やぶりであり「都市の健全な発展、秩序ある整備」を否定するものです。

 先日のまちづくり担当部長の答弁では、北東地区だけにとどまらないという表現が見られましたが、これはいったい何を意味するのでしょうか。北東地区からにじみ出して、さらにまち全体が大企業の資産価値向上のためにつくり替えられていくのなら脅威です。西荻窪荻窪、高円寺それぞれ住民と行政の対話の場がつくられているのに、なぜ阿佐ヶ谷の駅前だけ、一部の「エリアマネジメントをやりたい」人たちに優遇してあげなくてはいけないのでしょうか。

【公共の介入による乱開発の抑制こそ区の使命】

 めざすべきは、地域の価値向上、まして収益力の向上ではなく、公共の介入による乱開発の抑制であり、計画的にまちなみを整えていくための民間営利事業に対する牽制でなくてはなりません。

 そのためには、北東地区だけが突出してエリアマネジメント即ち一部の収益施設の収益価値向上をめざすのではなく、「秩序ある」都市をつくるため、まちのありかたを住民全体として考える場としてのまちづくり協議会を、区として用意すべきではないでしょうか。見解を伺います。(Q3-7)

 公共の再生をかかげる岸本区長には、公平公正な都市計画、まちづくりを期待して、質問を終わります。

岸本区長による「対話と共有」の杉並区政に期待する(2022年10月18日決算意見開陳)

 2022年10月18日杉並区議会決算特別委員会において、意見をのべました。岸本新区長に交代したもとでの区議会ですが、決算は田中前区長時代の区政運営の決算であり、4件すべてに反対しました。

(以下は意見開陳の原稿です。実際の発言と一部異なる場合もあります。)

 杉並わくわく会議として、決算に対する意見を述べます。認定第1号令和3年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか3件の認定に対しては反対とします。

【昨年度も児童館廃止、駅前開発が進んだ】

 当該年度は、田中前区長のもとで、実行計画等の最終年度にあたり、区立施設再編整備計画では、西荻北児童館、善福寺児童館が多くの反対の声を押し切って廃止されました。また、阿佐ヶ谷駅北東地区再開発事業では、けやき屋敷の伐採がすすみ、工事のため唐突に提案された杉一小敷地内の工事用通路の設置と、さまざまな懸念を指摘されながらも、強引に事業がすすめられました。

【緊急事態宣言下、軽井沢へ出張した前区長】

 新たな基本構想が策定され、施設再編のさらなる加速や民営化のさらなる推進などをおりこんだ総合計画・実行計画以下の行政計画が策定されました。

 しかしそれら以上に、当該年度、区議会で大きな問題となったのは、なんといっても、軽井沢で行われた東商杉並支部会合への区長、部課長の出席にかかわる問題でした。新型コロナウイルスの緊急事態宣言下での他県での会合への参加にくわえ、阿佐ヶ谷地域区民センターの指定管理者選定の公正さが疑われるような事態にまで発展し、杉並区の職員倫理に関する規定の不備が課題としてのこりました。

 また、夏休みも終わろうとする8月、パラリンピック観戦が強行されたことは、田中前区長の思いひとつで、教育行政の意思決定のプロセスがないがしろにされたものでした。また、卒業式及び今年度の入学式において、区長メッセージのビデオ上映が突然行われたことも、教育行政への介入であり、区長選挙を前にした政治利用として看過できないことでした。

 当該年度を振り返るとき、このような、杉並区政のありかたが今後すみやかに正されていくことを心から望むものです。

【児童館やゆうゆう館、まず「対話と共有」を】

 さて、岸本聡子区長のもとで新たな区政が出発したいま、これまでの区政のどこが、どのように転換していくのかに、特に関心をもって質疑を行いました。

 第一に、児童館やゆうゆう館の廃止見直しなどを中心とした区立施設再編整備計画について、今後の方向性をただしました。

 区民との対話によって問題を解決していくためには、まず、情報の共有が必要ですが、これまでの再編計画の実施においては、住民の反対の声があっても全く顧みられることがなく、それどころか、科学館、あんさんぶる荻窪、けやきプールのように、そもそも廃止計画じたい住民・利用者に知らされることすらありませんでした。

 まずは、情報公開、情報の共有が十分になされることが、出発点です。

 質疑では、直近の再編計画について、周知の状況を確認しましたが、来年にも廃止されようとしている施設においても、地域には十分な周知が行われていないことがわかりました。

 児童館、ゆうゆう館、区民集会所など、それぞれの所管においては、住民の意見を十分に取り入れるためにも、事前の十分な情報の周知を急いでいただきたいと考えます。今後の変更の可能性があるとしても、少なくとも、まず現在の計画内容について、住民が充分に知る必要があります。これまで役所のみなさんは、地域町会連合会、すなわち各町会の町会長さんたちに話したことをもって、地域への情報提供はよしとする傾向がありました。町会長に話しても、個々の会員に伝わらないことはわかりきっていたのに、です。

 今後の対話を旨とする区政においては、行政と住民の間の情報の不均衡を少しでも減らさないと、対等な議論はできません。まずは情報提供において、区役所の本気度が試されます。

【児童館など子どもの居場所、新たなステップへ】

 児童館の再編については、詳しくは別の機会に譲りますが、少なくとも、現在の計画で行われている児童館の廃止と学校への「機能移転」の課題については、問題意識を共有できたものと受け止めています。

 部長のご答弁にもあったように、現在の児童館がかかえる課題の解決を目指しながら、子どもの多様な居場所の確保について、杉並の子どもたちのために最も適切な解決が導かれるよう、区民との対話を通じて次のステップへ進むことを期待します。

 関連して施設使用料の改定について確認しました。手ごろな金額に、ということと同時に、区民が納得できる、わかりやすい根拠にもとづく料金設定をもとめます。

【情報公開について原則的な姿勢が示された】

 第二に、情報公開について述べます。他の委員の「墨塗非公開は不当で公開すべき」とする質問に対して、個人情報を理由に非公開を正当化する答弁がありましたが、これは不正確な理解です。

 区の情報公開条例、および「情報公開・個人情報保護の事務手引」に則って考えれば、非公開の要件を満たさないのではないかとの私の質問に対して、原則的な答弁が得られたことは、杉並区の情報公開、ひいては住民自治にもとづく区政を大きく前進させる重要な契機になるものと考えます。

 答弁においてはまた、行政情報は原則公開であること、及び、非公開事由については厳格に判断することを徹底する旨の通知を全庁にむけて発出したとのことでした。あらためて、この通知を各部署のみなさんが肝に銘じていただきたいと考えます。

東京地裁判決は情報の公開を命じた】

 今後の情報公開について付言します。区長はこの間、情報公開の手引の抜本的見直しに言及してきましたが、問題は条例や手引きにあるのではなく、運用にあります。今年4月の東京地裁判決は、私の主張を認め、被告杉並区が非公開とした情報について、一部をのぞき公開を命じました。それは現在の条例と手引に即しての判断です。即ち、現在の区のルールが情報公開を阻んでいるのではなく、ルールを正しく適用すれば当然公開すべきものが、運用によって、恣意的に非公開とされてきたのが杉並区の現実でした。だとすれば、手引きの見直しも否定はしませんが、改善すべきは運用です。

【情報公開担当部署の権限強化を】

 そこで私は、情報公開部署の増強をなによりも求めたいと思います。できれば、独立した課とし、人員の増強、人材の育成をより強化すること、そして、情報を保有する部署に対し権限を行使して原則的中立的な判断を行えるようにすることが必要と考えます。

【学校給食の直営を残すべき】

 第三に、民間委託について述べます。質問では、学校給食、用務の委託状況を確認しました。特に給食では、区内63校のうち、直営が7校しか残っていないことに驚きました。

 直営を残すべきではないかという質問に対し、民間でできることは民間にという、これまでと同じ答弁がありました。しかし、一方で清掃事務所の体制は新規採用も視野に入れた検討に入ろうとしています。その理由のひとつは技術の伝承です。

【モデル校として表彰うけた杉九小の給食】

 では、給食や用務には、技術や経験は必要ないのでしょうか。たとえば、私の地元の杉九小は、給食のモデル校として調理さんの加配が行われ、意欲的な食育が行われてきました。残滓を出さないよう米飯をおにぎりに握って配るおにぎり隊の活動や、学校の農園で野菜を育てて食べる活動など、過去には文科省表彰も受けています。

 単純に、調理は素人でもできるから外注すればいいという考え方ではなく、独創的な食育をも展開できる給食調理職員の熱意とスキルを評価すべきです。杉九小のおいしい給食がいつまでも維持できるよう地域も望んでいます。

 学校の技能系職員についても今後、退職不補充の方針を変更し、直営を残していくことを要望します。

【民間委託先の雇用問題は区に責任あり】

 民間委託については、別の角度からも問題を提起しました。施設再編計画の影響による民間委託先職員の雇用問題です。区の都合で事業がなくなったときに、民間の雇用契約だからとひとごとのように語るのではなく、多くが区民でもある委託先職員に対し、区は雇用保障に責任をもつべきではないでしょうか。この点、区長が問題意識をもって答弁してくださったと受け止めています。今後の問題解決に期待します。

阿佐ヶ谷駅北東地区でなにが?】

 第四に阿佐ヶ谷駅北東地区再開発について述べます。

 岸本区長就任から3か月になりましたが、個人共同施行の土地区画整理事業における共同施行者である2法人の代表者とはまだ面会されていないとのことで驚きました。

 これだけ大きなプロジェクトを担う杉並区の代表者が交代したのに、民間2者は区長に会わなくて不安ではないのでしょうか。どんな障害があって会えないのでしょうか。病院の新築工事もいっこうに始まりません。北東地区でなにが起きているのでしょうか。

【まちづくり協議会からはずされる阿佐ヶ谷】

 関連してまちづくり協議会について確認しました。区は現在のまちづくり条例のもとで14のまちづくり協議会の実績があります。各路線、各駅のまちづくり協議会がさまざまに並ぶなか、なぜか阿佐ヶ谷のまちづくりが協議会で検討されたことは一度もありません。

 荻窪ではアイデアコンペ、まちづくり懇談会から始まり、区が公募した区民による協議会がつくられて駅周辺まちづくりの提言も行いました。約10年にわたってまちづくりの活動が続いています。

 それに対し、阿佐ヶ谷は民間の有志によるまちづくり団体「北東地区を考える会」の提言が突出して行政の支援を得、区はこの会をさして、まちづくりの機運があるから協議会をよびかけることはしない、というのですが、まちづくりの機運が盛り上がっているのだとすればその契機をとらえて阿佐ヶ谷が抱える課題について、まちの人たちが話し合う公の場を積極的につくっていくことこそ区の責務です。

【一部の有力者の意向だけ尊重する杉並区】

 ところが、この間、区は、北東地区の地権者・事業者の意向を実現することのみに汲々としていたのが現実です。

 北東地区にりっぱな病院や高層ビルが立ち並んだとして、西側や南口はどうするつもりなのでしょうか。民間の主体が思い思いに勝手なものを建て、殺風景な駅前になる未来は勘弁してほしいです。

【阿佐ヶ谷のまちづくりは住民全体で】

 部長のご答弁にもありましたが、立場の異なる主体が相互に意見交換する場こそが出発点です。阿佐ヶ谷のまちづくりについて、ひろく住民を公募し、議論する場をこれからでももうけるべきと指摘します。

 阿佐谷姉妹さんの活躍もあり、テレビで阿佐谷の文字を見ない日はありません。全国的に愛される阿佐ヶ谷は、タワマンのまちではないはずです。阿佐ヶ谷のまちのよさをどう残し、発展させるか、地域の人々とともに考えるときです。

【一部の有力者による「エリアマネジメント」】

 ところで他方では、同地区におけるエリアマネジメントの計画が進んでいるようです。区がパートナーと考えているのが、あくまでも地元の一部有力者を中心とした任意団体であること、またこれを発展させ「エリアプラットフォーム」というものをつくるらしいことがわかりました。

【旧けやき屋敷の緑は誰が管理?】

 ここで緑の話をしたいと思います。

 北東地区は地区計画が決定され、旧けやき屋敷の街区では緑化率25%が義務付けられました。この敷地に新築移転する河北病院は昨春設計案を公表しました。しかし、この設計敷地の中に設定された地区計画緑地の管理者はいまだに不明です。これまで何度質問しても、病院なのか、地権者なのか、区なのか、決まっていないとの答弁でした。

 いまエリアマネジメントが云々という話が出てきたのは、結局、この地区計画緑地を公民連携の管理下におくということなのでしょうか。もしそうだとすれば、病院敷地の中に、病院管理下にない地区計画緑地を算入して緑化率をクリアしたことは数字のトリックといえるのではないでしょうか。

 けやき屋敷の森が失われたいま、区は病院、地権者と協力し、同量のみどりを回復できるよう、展望を示すべきです。

【外国にルーツをもつ子どもの権利】

 最後に、多様性についてのべます。基本的人権の観点から、外国にルーツをもつ子どもが自らのルーツについて歴史、文化、言語を学ぶ権利があることを確認し、区長の見解を求めたところ、区長はさらに進んで、ご自身の経験にもとづいて、ヨーロッパの学校での宗教や哲学の授業のこと、そして、杉並の子どもたちもまわりの外国ルーツの子どもたちから自然に多様性を学んでいることを紹介されました。区長のこのご答弁にはとても教えられました。

【多様なルーツに敬意をもつ子どもたち】

 いま日本社会では、ともすると排外的な見解が語られがちですが、現実には、杉並区でもすでに、多様なルーツをもつ子どもたちがお互いに学び、敬意を抱いています。私たち大人がむしろ子どもたちに学ばなければと思いました。

 以上をもって、決算と今後の区政に対する意見とします。

 審議にあたり、多数の資料を作成して下さり、また、さまざまな問題について、丁寧な説明、そして率直な意見を聞かせてくださった区長はじめ区職員の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

阿佐ヶ谷再開発に関する陳情の採択を求める(2022年6月9日本会議)

 2022年6月9日杉並区議会本会議において、阿佐ヶ谷再開発に関する陳情を採択すべき、との意見を述べました。

 都市環境委員会では「不採択」とする委員が多数でした。本会議でも、私のこの発言のあと採決され「不採択」と決しました。

 3年間も審議せず「塩漬け」にした挙げ句、不採択とは、ふざけるんじゃない、という気持ちです。

 *なお「反対の立場」としているのは、「不採択とすることに反対」との意味です。

(以下、発言原稿です。実際の発言とは異なるところがあります)

 1陳情第16号「阿佐ヶ谷駅北東地区土地区画整理事業に関する陳情」について、反対の立場から意見を述べます。

 本件陳情の主旨は「阿佐ヶ谷駅北東地区土地区画整理事業の事業計画に関する公聴会を開催してほしい」というものであり、その理由として、本件事業は個人共同施行となっているが、その内容はきわめて公共性が高く、公共施行同様のものと位置づけて都市計画法第16条1項に規定する公聴会を開催すべきというものです。

 都市環境委員会では、2019年7月の区まちづくり条例による公聴会、また、そのほかの説明会やオープンハウスが行われたことをもって願意は満たされているとする意見がありました。しかし、これは誤りであり、陳情の願意は満たされていません。

 第一に、都市計画法第16条1項の解釈です。区担当者は委員会質疑において、これまでの区議会答弁同様、16条1項の公聴会は「例示にすぎない」ため開催の必要はない旨述べました。

 しかし、これが誤りであることはすでに2019年6月の第二回定例会一般質問において、次のように指摘してきたところです。

国交省の『都市計画運用指針』では、『法第16条第1項において公聴会の開催を例示しているのは、住民の意見を反映させるための措置として、住民の公開の場での意見陳述の機会を確保するべきという趣旨であることに留意する必要がある。』と述べ、さらに、説明会は、都市計画の原案について住民に説明する場であるのに対し、公聴会は、住民が公開の下で意見陳述を行う場であるとしており、単なる例示ではないこと。したがって、特に必要がないと認められる場合以外は公聴会を開催すべきとしている。」

 以上です。

 本陳情は、本件開発を公共施行同様に扱うことを求める趣旨から都市計画法にもとづく公聴会を求めたものであり、その願意は満たされていません。

 第二に、区まちづくり条例にもとづく公聴会の開催が不公正であったことです。これも2019年9月の本会議一般質問で指摘したところですが、公聴会の告知直前に、公述人選定のルールがくじ引きから区長による選任に変更され、その結果、公述申し出者28人のうち、賛成4名は全員が公述し、反対・慎重意見は24名中6名しか公述できないという明らかに偏った人選がなされました。

 以上の点から、陳情の願意は満たされていません。陳情者も、区が開催した公聴会は求める公聴会ではないと補足説明のなかで指摘されていました。

 従って、区議会は陳情を採択すべきです。また、不採択の理由として「願意が満たされている」とされたことは論外であり、反対です。

 なお、本件陳情の審査時期について述べます。

 本件陳情は、その番号が示すように令和元年の5月20日に提出されたものです。すでに3年以上が経過したところで、ようやく審査が行われましたが、当該事業はすでに実行されており、けやき屋敷は更地となりました。

 本件陳情者は計画が実行される前にと、緊急性を感じて提出したものと考えられ、それを3年も塩漬けにした区議会、特に都市環境委員会の歴代委員長の不作為は厳しく糾弾されてしかるべきです。

 陳情者の補足説明では、陳情代表者が出席できなかった事情について語られました。

 代表者の方が体調を崩され、出席どころか、電話連絡をとることもかなわないとのことです。3年前ならお元気だったので、補足説明でお話しされたいことが山ほどあったに違いない、悔しいとおっしゃっていました。

 意見開陳では、あろうことか、陳情者に対して、陳情を提出しなおすべきだったなどと発言した委員がいたことに呆れました。区議会としての不作為を棚にあげてなんという言い草なのでしょうか。

 このような区議会のありかた、特に陳情審査のあり方については、陳情者の補足説明でも繰り返し疑問が投げかけられていました。私からも、議会基本条例を定めた杉並区議会として抜本的な改善を求めます。

 さて、私ども会派、無所属・少数会派連携は、各議員の政治信条を尊重し違いを認めあい、議会における多様性の確保を追求し、同時に一致できる課題ではしっかりと協力しあって活動しています。

 本件土地区画整理事業についてもその一つであり、情報が不透明であり、公平公正の観点から疑問があり是正されるべきという点で一致しているものです。

 都市環境委員会では会派の木梨議員が、容積率変更による地権者の利益誘導、都市計画審議会委員である本件コンサルの利益相反、緑の確保の問題を指摘しました。田中区長が地域の一部の有力者の利益のために、公共の利益をないがしろにし、杉並区政を大きくゆがめています。

 本件事業の是正について、今後とも追及していく決意を述べて、意見といたします。

情報公開裁判でおおむね勝訴しました(2022年5月26日一般質問)

 2022年5月26日杉並区議会第二回定例会で一般質問しました。

 質問のテーマは「情報公開について」。私が杉並区を訴えた阿佐ヶ谷再開発の情報公開についての裁判の結果、おおむね勝利したことを主に報告、さらに木彫母子像「つたえあい」の購入について質疑しました。

(以下は質問原稿です。実際の発言と異なる場合があります)

(1)阿佐ヶ谷駅北東地区に関する訴訟について

 一般質問をいたします。まず、阿佐ヶ谷駅北東地区に関する情報公開についての訴訟の結果について報告しつつ、その評価についてうかがいます。

【被告杉並区おおむね敗訴の判決】

 4月8日東京地裁において、杉並区に対する情報公開の命令を求めた裁判(令和2年(行ウ)第299号 行政文書非公開処分取消請求事件 市原義孝裁判長)の判決がありました。原告・被告ともに控訴せず、判決は確定しました。

 判決は、私の請求の一部を除きその他すべてを認めたものであり、原告おおむね勝訴、すなわち被告杉並区おおむね敗訴の結果と受け止めています。

【裁判にいたる経緯】 

 まず裁判にいたる経緯について述べます。昨年9月3日、裁判の場で意見陳述しましたので、以下、この陳述から抜粋・引用して訴訟に至った経緯を確認します。

 「杉並区は2019年8月に阿佐ヶ谷駅北東地区土地区画整理事業を施行認可し、10月には事業の個人共同施行者である欅興産、河北医療財団とともに3者で仮換地処分を行いました。その際、区議会、区民に対しては一切説明がありませんでした。

 そこで私は、同年11月の区議会において、区議会に対し事前の説明がないまま仮換地に同意したことは不当で、いったん撤回すべきこと、また、共同施行者2法人の仮換地情報は公開すべきこと、等を求めましたが、杉並区長はこれらを拒否したばかりか「ご納得いただけないというのであれば、あとは裁判にでも何にでもお訴えされる以外ない」と述べる始末でした。

 議会において情報が得られないので、次に私は情報公開請求を行いました。その請求に対する決定が、本件訴訟の対象となっている行政処分です。仮換地に関する書類が何枚も全面真っ黒に墨塗りされていたことには衝撃を受けました。当時は国会でもいわゆる「のり弁」が話題になっていましたが、まさか杉並区で同じものを見せられるとは思いませんでした。そこで、2020年3月に不服審査請求を提出しました。

 ところが、その提出時に、窓口で「現在2年半ほど前の請求を審査しているところなので、しばらくお待ちいただくことになる」と聞き、再度驚きました。不服審査の期限を設けている自治体も多いなか、杉並区は期限がないため、いつまでたっても審査が進まないのです。仮に請求が認められ情報を入手できたとしても、それが数年後では、事業は進んでしまい、あるいは完了してしまい、情報の意義がなくなってしまいます。形の上では不服審査という救済制度がありながら、杉並区では全く機能していないのが現実です。

 ここに至って、議会質問の際、あれほどかたくなに私の要望を突っぱねることができたのは、どんな情報も区が隠そうとすれば、それを牽制する機能は事実上どこにもないことを知っていたからだとわかりました。

 杉並区が情報公開に対して真摯に向き合わないのであれば、訴訟もやむなしと思う一方、費用と労力のことを思えば正直、訴訟をしたくはありませんでしたが、司法の判断を仰ぐしかないという思いで、本件訴訟に至ったものです。」

 以上意見陳述より引用しました。

【非公開の取り消しを求めた】

 私が訴えた内容は、区画整理事業の主体である共同施行者の河北医療財団および欅興産の2法人の仮換地情報について、また、土地評価基準を定めた評価員3名の氏名および所属について、非公開とした決定を取り消し、公開することです。

 訴えに対し、東京地裁判決は、

第一に、原告の訴えのうち、一部を除く請求を認容する(認める)。

第二に、杉並区長による一部公開決定のうち裁判所の認容部分について、決定を取り消す。

第三に、杉並区長は、原告に対し、認容部分の各情報を公開する旨の決定をせよ。

第四に、訴訟費用は原告が20分の3、被告が20分の17とする。

としました。費用負担割合から計算して20分の17すなわち85%は私の主張が認められたものと理解しています。

 他方、認められなかった請求は、2法人の財産評価に関わる指数等、及び、評価員3人の所属です。指数等については、今後公開される情報をふまえることで仮換地指定の検証が可能との判決であること、また、評価員の所属については被告杉並区が保有しない情報であるとの理由でしたのでやむなしと受けとめ、それ以外の大半の請求が認容されたこと、及び、弁論における原告側の主張がほぼ全面的に認められた重要な判決であったと考え、控訴はしませんでした。

【3つの争点】

 東京地裁が判断したのは3点です。

 第一に、仮換地指定にかかわる2法人の情報が杉並区情報公開条例(以下条例といいます)第6条第1項第3号すなわち、法人の事業活動情報であるから公開できないとする被告杉並区の主張は適切かどうか。

 第二に、同じく仮換地情報は条例第6条第1項第4号すなわち行政執行情報であるから公開できないとする区の主張は適切かどうか。

 第三に、仮換地の評価員の氏名、所属は条例第6条第1項第2号すなわち個人情報にあたるから公開できないとする区の主張は適切かどうか。

 これら3点に対する東京地裁の判断に対し、まず、区の所見を求めます。(Q1-1)

【仮換地情報は非公開とすべきか】

 各争点についての地裁判決を紹介します。まず、第一の争点すなわち条例第6条1項3号「法人事業情報」についての判断です。

 被告杉並区は、公開すれば2法人に対して「不動産開発業者等から問い合わせが多数寄せられ、また、営業活動が活発に行われ、業務に著しい支障をきたす」などと主張しましたが、判決は、本件土地区画整理事業はすでに公告、公衆縦覧に供されて周知されているのだから、問い合わせや営業を行うことは現在でも十分可能であるにもかかわらず、こうした事態が発生した証拠は一切提出されておらず、従って被告の主張は失当と退けました。

【「著しい不利益」は推測ではダメ】

 また、被告杉並区は「公開すれば著しい不利益が生ずる」と主張しましたが、判決は、「著しい不利益」とは「一般的抽象的な不利益発生の可能性の推測では足りず、客観的具体的に合理的理由を説明する必要がある」とする「杉並区情報公開・個人情報保護制度事務手引」(以下手引といいます)の記載を根拠として、一部情報については非公開を認めたものの、登記簿と同等の内容すなわち権利者、仮換地の位置、形状、街区番号及びこれらを記載した図面等の情報については公開すべきものと判断しました。

【「仮換地」は登記と同様の公開性をもつ】

 この判断にあたっては仮換地情報の位置づけと公開性が論点となりました。

 被告杉並区は仮換地は不確定な情報である旨主張しましたが、これに対して判決は、仮換地は実質的な換地予定地だが、形式上「工事のため必要がある」として指定をすることが実務上通例となっている、という私の主張を認め、さらに、東京都などが発行する「仮換地指定証明書」を誰でも請求し公開を求めることができる事実、また、仮換地による土地の使用収益権の移転の実態から、仮換地指定に係る情報は、登記記録と同様、公開の必要性が高いと判断し、被告杉並区の主張を退けました。

【非公開とすべき行政執行情報にあたるか】

 第二の争点は第4号行政執行情報です。

 4号の条文では、「取締り、立入調査、選考、入札、交渉、争訟等の事務に関する情報」であって公開した場合に「これらの事務の執行を著しく困難にするおそれのあるもの」を非公開の要件としています。

 被告杉並区は、仮換地は交渉に類する事務であると主張しましたが、判決は手引の記述を根拠として「条例に列記されたものと類似する性格を有する事務に関する情報に限定される」ところ、仮換地は「交渉」に類似する事務とは解し難いと指摘しました。

 また、被告杉並区は「仮換地の指定は不確定なものであり、このような不確定な情報を共同施行者の一人にすぎない被告が公開することにより、

・本件事業の自治的な運営を阻害する

・関係権利者に無用の混乱を招く

・施行者及び施行者以外の地権者との信頼関係に影響を及ぼす」

などと主張しましたが、判決は、第1の争点に述べたように仮換地情報は公開の必要性が高く、著しい支障を生じるとはいえないとして、公開が相当としました。

【地裁判決後もつづく違法な非公開】

 ところで最近、この第4号行政執行情報について、都市計画道路補助221号線に関する違法な非公開決定と思われる情報がよせられました。

 地元の方が221号線の事業認可申請書類を公開請求したところ「公開できない」とされ、その理由は「事業認可に関わる文書なので行政執行情報にあたる」というものであったとのこと。

 しかし、事業認可は4号の行政事務の列記に含まれていないし、類似の事務でもありません。したがって、地裁判決に照らせば、事業認可事務であることを理由とした非公開決定は条例違反といわねばなりません。

 しかも、この非公開決定は地裁判決確定後の今月であることに驚きます。区長は控訴せず地裁判決を受け入れたのですから、このような処分をしてはならないはずです。裁判の教訓が全く生きていません。杉並区はこの方の請求に対して、早急に決定変更し情報公開すべきです。

【「評価員」の氏名は個人情報か】

 第三の争点では、被告杉並区は評価員の氏名が第2号個人情報にあたり、非公開と主張しましたが、それに対し私は、裁判でもまた区議会でも一貫して、不動産鑑定士等の専門家である3名の氏名は「事業を営む個人の当該事業に関する情報は除く」とされている条例の条文に該当するので公開情報である旨主張し、判決は、この主張を全面的に認めました。

 被告杉並区は「不動産鑑定士は土地評価基準について意見を求められたもので、鑑定士としての業務を行ったわけではない」と主張しましたが、判決は、土地評価基準は土地の評価額算定の基準となるものであり、これについて意見を述べることは法に定められた不動産鑑定士の業務に含まれるものであるから被告杉並区の主張は失当というほかない、と厳しく退けました。

【自らつくったルールを守らない杉並区】

 3つの争点に共通するものとして、特に強調しておきたいのは、杉並区が、自らが作成した事務手引を、軽視し、場合によって恣意的に解釈し、さらに先ほどの新たな情報にあったように今も逸脱しているという事実です。

 この手引は情報公開の窓口に常備され、利用者誰もが自由に手にとって閲覧できるものです。また、この手引をつかって職員さんが説明をしてくれることもあります。

 つまり、手引は区役所と利用者の約束でありルールを明文化したものです。だからこそ地裁判決は、随所において、この手引を杉並区の情報公開のルールとして尊重し、これにもとづいた判断を下したものです。

 私は、訴訟以前の2020年第一回定例会において、同手引に反する手続きがとられていることを指摘しましたが、手引だけによらず総合的に判断するという、きわめて曖昧かつ主観に左右される、はっきりいうと政治的判断や操作の入る余地のある答弁がなされてきました。

 この答弁は訂正し、今後は区自身が定めたルールである手引を厳密に適用とすべきと考えるがいかがか。見解を求めます。(Q1-2)

 以上地裁判決の概要を述べてきましたが、全体を総括して被告杉並区はこの判決をどう受け止めたか、所見を求めます。(Q1-3)

【「裁判でもしろ」という田中区長の暴言】

 東京地裁が公開すべきと認めた情報について、田中区長は、先にも述べたように、当時区議会に対して全く説明しなかったばかりか、私の質問に対して「納得いただけないなら裁判にでもなんでも訴える以外にない」「議案に賛成する見込みのない人に対して説明するほど人手は余っていない」と暴言で応じました。

 これは私個人にとどまらず、議会に対する説明責任を放棄し、議会の存在意義を否定し、議会を冒涜する発言であることは以前にも指摘したところですが、司法の判断が下されたいま、あらためてこの発言に対する区長の反省を求めますがいかがか。答弁を求めます。(Q1-4)

【訴訟の終結以後の対応】

 次に、裁判終結以降の区の対応についてうかがいます。まず、裁判所の命令に対し、杉並区はどのように対応したか、説明を求めます。(Q1-5)

 先日、変更された公開情報が私の手元に届きました。確認したところ、裁判で請求した項目のうち、地裁判決が認容したものについてはたしかに公開されました。また、却下された請求については墨塗のままですが、判決にしたがいやむを得ないものと受け止めています。

 一方、これ以外の部分で、引き続き墨塗が残っています。

 私は、墨塗部分のすべてを裁判に訴えたわけではありませんでしたが、請求を限定した目的は、争点をシンプルにし、速やかに裁判所の判決を得ることにあったのであって、訴えなかったからといって非公開が適当と考えたわけではありません。このことは裁判でも述べました。

区画整理施行者会会長氏名は個人情報か】

 墨塗部分のうち、例として施行者会会長の氏名について述べます。

 先ほど紹介したように、地裁判決では、評価員3名の氏名の公開を命じました。判決を受けて、条例に忠実に解釈すれば、施行者会会長の氏名は評価員同様「事業を営む個人の当該事業にかかわる情報」であり「氏名は事業と一体の情報」です。

 すでに代理人を通じて杉並区に要請したところですが、司法の判断を尊重し、その趣旨を理解するならば、これらは当然にも公開すべきと考えますが、区は命令された部分だけ公開すればよいと考えているのでしょうか。見解をうかがいます。(Q1-6)

【不服審査請求が救済にならない】

 次に、行政不服審査請求について質問します。

 私は本件情報公開について不服審査請求を提出したものの、時間がかかると言われ、訴訟に踏み切ったことは先ほど述べました。

 結局、2年以上経過し、裁判も終結した現在に至ってもいまだに諮問に付されていません。その理由を説明してください。また、今後の審査の対応はどうなるのか説明を求めます。(Q1-7)

【職員不足は解消されたのか】

 一昨年第二回定例会で私は、情報公開の窓口は見るからに人数が足りず、職員の体制を大幅に増強する必要があると指摘しましたが、今年度になって情報公開の窓口へいくと、職員さんが増えたように見受けられました。

 情報公開を担当する職員は増員されたのでしょうか。また、情報公開における不服審査請求の担当者はいかがか、説明を求めます。(Q1-8)

【全国で杉並区だけが無法地帯】

 情報公開、不服審査請求は民主主義と自治の基礎を支える土台であって、これが機能していないことが、区民の監視の目を遠ざけ、強引な政策を進めて恥じない杉並区の体質を作り出しています。

 情報公開決定に対して不服があり審査請求をしてもたなざらしにされ、裁判しなければ公開されないのですから、全国の中で杉並区だけこの制度が存在しないのと同然の、ほぼ違法状態といえます。いわば杉並区だけが無法地帯になっています。

【噴飯ものだった被告杉並区の主張】

 裁判における被告杉並区の主張は、電話が集中して業務に支障があるとか、区と民間事業者の信頼関係がこわれるとか、はっきり言って噴飯ものでした。

 司法の場においてこのような主張しかできない被告杉並区の情報公開のずさんな実態が明らかになり、問題を剔出したこと自体、本件訴訟には、大きな意義があったものと考えています。

 田中区長はじめ杉並区は、確定した東京地裁判決を重く受け止め、今後は心を入れ替えて、区民、区議会に対する説明責任を果たしていくようあらためて求めるものです。

(2)木彫母子像「つたえあい」について

 次に、情報公開に関連して母子像「つたえあい」についてうかがいます。

【偏見に満ち満ちた答弁】

 先の予算特別委員会において、ジェンダー平等の観点から区役所本庁舎2階ギャラリーの母子像「つたえあい」について質問したところ、偏見に満ち満ちた答弁がかえってきました。

 いわく「あまりにも一方的な、極端な見方」「一流の彫刻家の作品なので、リスペクトすべき」「あなたの好き嫌いの問題」等々です。

 区自らが作成した「男女共同参画の視点で伝える表現ガイド」も示し、すぐれた芸術といえども、今日ではジェンダーの視点を免れないと指摘しましたが、「母子像の存在、展示が、育児は女性のみが行うものというメッセージ性を含んでいるのかといえば、どう考えても否だ」と、「この作品は別」的な答弁でした。

【990万円の支払先が非公開】

 あまりにも偏った答弁のオンパレードに、詳細を知ろうと情報公開請求したところ、情報公開についても相変わらず問題があることがわかり、質問する次第です。

 まず、購入先の名称が墨塗であることです。区に物品を売却して公金から約1000万円もの支払いを受けた相手の名称がなぜ墨塗りなのか。理由を説明するよう求めます。(Q2-1)

 公開された「業者指定について」という文書には、購入先を随意契約とした理由が説明されています。その中で根拠法令として記載されている地方自治法施行令167条の2第1項第2号とはなにか。また、区の「随意契約の手引き」Ⅱの2(1)④とはなにか。それぞれ説明を求めます。(Q2-2)

【990万円の根拠が不明】

 この購入先ですが、区の非公開理由が条例第6号第1項第2号の個人情報であったことから、相手先は個人でありかつ美術品の売買を業としていないことが確認されました。すなわち美術品についての価格査定能力や資格がないということです。

 それでは990万円という値段は誰がどうやって決めたのでしょうか。

 公開された情報には、価格算定の根拠を示す文書はありませんでした。一方、昨年8月25日付、田中区長から小平市長に対し同市立美術館学芸員への作品評価の依頼状、及びその回答がありましたが、回答は、作者および当該作品に関する一般的な情報と評価を述べるにとどまっています。価格はおろか、価格を査定するための当該作品の保存状態や同じ作者の他作品の売買例など一切記載がありません。

【アバウトな説明】

 起案文書には、文化・芸術の振興が目的などと書かれていますが、郷土博物館や図書館の計画に、美術品の収集方針等は明確化されていません。何の事業に資するのか根拠が不明です。ただ知り合いから頼まれたから、ほいほい買ったのでしょうか。

 当該作品購入が審議された昨年9月の総務財政委員会で、金額の根拠を問われた総務課長は、査定については一切説明せず、作者遺族の方とこのくらいの値段ということでやりとりをした、同じ作者の作品で1530万円で売買されたものがあり、それよりは安い、という大変アバウトな説明に終始しています。

 昨年9月総務財政委員会というと、阿佐谷地域区民センターの指定管理者をめぐって、応募事業者と区民生活部長の軽井沢ゴルフという大問題があったので、それどころではなく、どさくさに紛れた感があります。

【郷土博物館年間予算に匹敵】

 ちなみに、郷土博物館の年間費用全額が、令和2年度決算で1000万円弱とあり、母子像1点とほぼ同じ金額です。1点1000万円の美術品を買うくらいなら、博物館の文化財保護事業を充実するために別の使い道があったのではないでしょうか。

 公開情報では誰が査定したのかわかりません。もしや言い値で買ったのか。説明を求めます。(Q2-3)

【公金の支払先は個人でも公表すべき】

 この情報公開決定も地裁判決後のものですが、ひきつづき、個人情報をたてに情報が秘匿されているのは判決をないがしろにするものです。

 地裁判決は個人の氏名であっても「事業を営む個人の当該事業に関する情報」であれば公開対象と認めました。母子像購入先は、「業者指定について」で指定され、随意契約として契約書も交わしています。単なる個人として扱ってよいのでしょうか。

【公開している区もある】

 こうした場合、他区はどのように扱っているのかと思い検索してみると、杉並区はじめ各自治体、行政庁が随意契約の一覧をホームページ上に公開していることがわかりました。

そのなかで個人名がのっている例は少数だったのは事実です。しかし、23区のなかでも個人名を掲載している区もありました。また、情報公開は別対応で、公開請求すれば公開する区もあるのではないかと思われます。

 

ある区のホームページ上に、文化財保有している個人からの購入の案件について、個人名が掲載されていたので、この区の担当者に電話をして、美術商などではない個人の方であることを確認しました。個人名を公開する理由について、担当者は「公金の支出先だから」と説明されました。ちなみに支払額は100万円です。

 ひるがえって杉並区では、990万円の公金の支払い先が誰だかわからないというのは、適切ではないと考えます。相手方が個人であっても公金の支払先としてホームページ上にまで公開している区があるのだから、杉並区も同様に氏名を情報公開すべきと考えるがいかがか。所見を伺って質問を終わります。(Q2-4)