わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

国民保護計画への意見募集

杉並区が国民保護計画についての意見募集をしています。
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/news/news.asp?news=5073
市民グループで、先日(23日)文書を区に提出してきました。
皆くちぐちに意見を言ったのですが、つまるところ「戦争やテロを前提としたこの計画の策定を急ぐのはやめて」ということです。前にも書きましたが、荻窪へのミサイル着弾、荻窪のガソリンスタンドへの爆破テロ、桃2小にテロリストたてこもり、など、あまりにも現実離れした想定です。「区民の保護のため」といいますが、避難について説得力のあるものがあるわけではなく、とにかく国や自衛隊、警察などとの指揮命令系統の確立が眼目なのかなと思います。
担当課長は昨年まで防災課長で、各小中学校の避難所連絡会の立ち上げをやった人です。それもいろいろあったけど、今年異動して、震災と同じノリで「国民保護計画」を作っているのは非常に違和感があります。
ひとことでもご意見を区におよせください。私もこれから書きます。
以下、区への申し入れ書です。
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杉並区「国民保護計画(素案)」への意見(国民保護条例を考えよう!杉並連絡会)
先日明らかにされた杉並区「国民保護計画(素案)」について、反対の立場から下記の通り意見を述べます。
1 そもそも戦争を放棄した憲法に違反する計画です
① 東京都の志方参与は区市町村の職員を集めた学習会で、“「朝鮮半島台湾海峡の有事」に際して米軍が軍事介入し、日本が周辺事態法に基づき米軍を支援することと連動して国民保護法を発動する”と提起しています。つまり、国民保護計画は日本が戦争に参加することを前提としているものです。
② 米軍の戦争に積極的に参加するからこそ、着上陸侵攻・航空機爆撃・ミサイル攻撃特殊部隊攻撃の「武力攻撃事態」や「大規模テロ」などの反撃を想定しなければならないのです。つまり、憲法を遵守し戦争に参加しないことを堅持すればこのような計画は必要ありません。
③ 国民保護法は、外部からの攻撃を排除するための軍事行動について定めた「武力攻撃事態法」、自衛隊の軍事行動を円滑に進めるための「自衛隊法改正」など、これに先だって制定された法律を受けて定められました。これらの法律では軍事行動に自治体や民間が協力することが定められています。
その上で、米軍の軍事行動を円滑化する「米軍行動関連措置法」、米軍に物品・役務を提供する「自衛隊法改正」、「捕虜取扱法」などと同時に制定されました。国民保護計画は憲法に違反するこれら戦争法の体系の中に位置付けられていることに注目しなければなりません。自衛隊が他国の兵士を「捕虜」として収容するような恐ろしい世の中にしてはなりません。
④ 自衛隊イラクに派遣しているように、他国に軍隊を送ればその国の人々からこころよく思われないことを自覚しているからこそ、国はこれらの戦争法を発動し反撃に備えなければならなくなるのです。反撃に備える国内の体制が整備されれば、国はいっそう他国に対して居丈高になり、緊張をさらに高めるという悪循環におちいります。
⑤ 区の国民保護協議会に自衛隊員が迷彩服姿で参加しています。区の見解は「自衛隊の制服であり、問題はない」とのことですが、問題はおおありです。いうまでもなく迷彩服は戦闘服です。普段から住民に戦争体制を意識させ、世の中全体を「戦争モード化」させようとする意図があるとしか考えられません。
2 平和的外交努力に徹すれば「国民保護計画」は必要ありませし、急いで作成する必要もありません
① 政府はアメリカの先制攻撃戦略を支持し、イラク自衛隊を派遣しました。また、拉致問題を利用して朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)への敵意を煽っています。このような米軍の戦争への加担や他国を敵視する政策を改め、平和的外交努力に徹すれば「国民保護計画」は必要ありません。議論が尽くされることなく強行制定された有事法制の一環であり、ましてや区民の大多数がその存在さえ充分知らされていない状況で、急いで計画策定する必要はありません。
② 現に立川市国立市は、いまだ国民保護条例さえ制定していません。立川市は基地を抱える町として、国立市は「平和都市宣言」をした自治体の立場から、いずれも慎重な姿勢をとっているのです。上原国立市長は「戦争という事態に至っては、すでに自治体が市民の生命・財産を守りますといえる段階ではありません」と的確に述べています。原水爆禁止運動発祥の地として、杉並区もこれらの自治体に続くべきです。
③ 「計画素案」は「基本的な考え方」のところで「無論、外交等による平和への取組みは重要だが、こうした努力のみでは国民の安全を確保できる保証はない」と述べています。現在の日本や杉並区が平和に向けた外交努力を尽くしているでしょうか? 小泉首相の度重なる靖国参拝、山田区長が多くの住民の反対の声を押し切って「つくる会」の教科書を採択したこと、ソチョ区長の面会要求を切り捨てたことは争いの種をみずから撒いたことに他ならず、住民の平和的外交努力を押しつぶすことではなかったでしょうか。
④ そもそも「ミサイル攻撃」や「大規模テロ」が起らないようにすることが大切なのです。日本が戦争に参加すること、他国からの批判に答えようともしない姿勢が「国民の安全」危うくしていることにあまりにも無自覚です。
3 いざ戦争となれば、住民の安全は後回しです
① 戦時には軍事行動が優先され、住民の安全など二の次にされることは、沖縄や「満州」など歴史の教訓です。志方参与も東京都の国民保護の特性として「国家中枢を守ること」をあげています。区市町村の「国民保護計画」を指導する立場のものが“東京で優先されるのは「国家中枢を守ること」”と発言しているのです。
② 「国民保護計画」といわれると、あたかも住民の安全が最優先される計画のように誤解されかねません。しかし、有事法制全体を見渡せば、まず自治体・民間・住民の戦争協力であり、つぎに軍事行動がスムースに行われるための住民避難、そして軍事行動を阻害しない範囲での住民救援であることが明らかです。
③ 「計画素案」でも、住民避難と軍事行動が錯綜した場合について「(自衛隊と)連携強化を図り、確認すべき事項について、平素から、情報・意見交換を行う」としています。例えば甲州街道や環八を、区が避難路、自衛隊が進軍路と使おうとした場合、区が自衛隊の主張を押さえ込めるとは考えられません。結局は自衛隊が許容する範囲での避難行動とならざるを得ません。
④ 国の資料でも、「住民が災害を逃れて安全な場所に避難するには、住民一人一人の『自助』の精神が重要であり、行政は平素から啓発等を実施し、住民の『自助』の精神を涵養することが必要」と述べています。なんのことはない、“住民の安全は住民自身で”ということです。あたかも、自衛隊や警察がまず住民の安全を守るかのような、誤った宣伝は改めさせるべきです。
4 国の指示に従うことが大前提とされ、自治体の独自判断はありません
① 災害への対処や避難・救援にかかわる指示の全てが、国→都→区→住民と一方的に下りてくる仕組みとなっています。住民はこれらの指示にただ協力するものとして位置付けられているに過ぎません。
② 「計画素案」はこのことを明瞭に示す図表を無批判に掲載しています。住民自治はおろか区の自治・独自の判断すら保障させようとはしていません。
③ 「警戒区域の設定」や「退避の指示」は建前的には区の判断とされています。しかし、攻撃や災害が起きている現場にまず派遣されるのは自衛官や警察官、消防です。法律もこのことを想定して自衛官や警察官にも権限を付与しています。区の計画に掲げる図表にあるように、実際はこれら国の職員によって行われることになるでしょう。
5 無理な想定をしてまで「危機」をあおり、訓練・教育を通して「敵」と「非国民」をつくりだすことはやめてください
① 「計画素案」で想定している事態は、「荻窪駅にミサイル」、「テロリストが学校占拠」など、杉並区に強引に当てはめたものとなっています。特に危険物施設が区内に存在しない中で、南荻窪の普通のガソリンスタンドへの攻撃を想定することなど、無理やり「危機」を作り出すことなど許されません。
② 訓練や教育の際には敵国を想定することとなります。現に杉並区の図上訓練は“「X共和国派遣の自衛隊員を励ます杉並の会」主催の集会にX共和国の「月の光聖戦隊」が天然痘をまいた”との想定で行われました。また、第2回国民保護協議会での挨拶で、山田区長は「北朝鮮の核ミサイル」の危機を強調しています。
③ 杉並には在日韓国・朝鮮人はもちろんイスラム圏の人たちもおおぜい暮らしています。これらの人々を「敵国人」と想定することなど許されることではありません。特に杉並区には朝鮮学校が存在します。地域の努力によって交流も積み重ねられてきました。これら地域でともに暮らす在日外国人への偏見をあおることなど絶対にしてはなりません。
④ また、杉並区の「地域安全パトロール隊」が「不審者」を見かければ警察へ通報するよう促している現状は、外国人を「不審者」、訓練に協力しない人を「非国民」と排除する時代に容易に転換します。
⑤ 教育・訓練となれば真っ先に対象となるのが学校です。子どもの頃から「敵国」を刷り込まれ、「戦時の心構え」を教え込むことなど、国際平和をつくりだすことに逆行し、想像することさえ恐ろしいことです。昨年の千葉県富浦町での「国籍不明のテロリスト数名が上陸」という想定の国民保護訓練には、小学生が動員されました。先日の杉並区全校一斉防災訓練では、中学生が人形を乗せた担架を自衛隊のヘリコプターに乗せる訓練が行われました。小中学生に自衛隊との連携を訓練させることなど、決して見過ごすことはできません。
6 今後の進め方について
① 私たちの意見を広報とホームページに掲載してください
② 次回の国民保護協議会開催前に、区民意見と区の考え方とを要約せずに公表してください。
以上