わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

学校関係者は反対なのに?岸本区長の「移転推進」について質問しました(2024年2月19日杉並区議会第一回定例会一般質問)

 2024年2月19日、杉並区議会第1回定例会で一般質問しました。これまで何度となく質問してきましたが、今回は特別な意味があります。「駅前再開発反対」を公約して当選した(はずの)岸本聡子区長が、1月22日「ビデオメッセージ」を通じて、田中前区長時代に策定した計画を見直さず続行することを決断したと宣言したあと初めての議会だからです。
 この決断は早計だったとしかいいようがありません。「重大な違法行為」だとか「賠償請求」だとかの説明は虚偽です。そのことは区が依頼した専門家の意見書でも明らかです。
 これから計画が具体化すると、さらに様々な問題が明らかになっていくと思いますが、これまでなら前職の責任ですんだものが、今後はすべて岸本区長の責任として問われていくことは覚悟していただきたいものです。

 

(以下は原稿です。実際の発言とは一部異なる部分があります)
 阿佐ヶ谷駅北東地区再開発と杉並第一小学校移転計画について質問します。代表質問においてすべての会派が立場を問わずこの問題に言及するなど、阿佐谷にとどまらず、区政の分水嶺となる大問題となっています。
 しかし、勘違いしてはいけないのは、今日この事業で何より問われているのは、杉一小の改築にあたって、いかに教育環境を確保、向上するか、だということです。この点で、考え得るかぎり最善をめざすのが杉並区の責務といえます。
【開発に翻弄されてきた杉一小】
 ところが、阿佐ヶ谷駅北東地区という名前がついた途端に、「あんなところに小学校があるのはもったいない」と言い出す人が出てきたのはどういうわけでしょうか。先人が地域の最もいい場所に学校を置いた意味を忘れていないでしょうか。
 JR駅至便、商業地域、建築規制がゆるく、容積率が600%もある、というのは不動産広告のような発想です。大きな建築物を建てないともったいないというのは教育の論理ではなく、経済の論理。金儲けの論理でしかありません。この10年ほど、杉一小は再開発意図をもったこのような声に翻弄されてきました。
(1)「違法行為」「賠償請求」の説明は虚偽
【岸本区長「推進を決断」の根拠は正しいか】 
 さて1月22日、区長はビデオメッセージで、「総合的に勘案。現計画を推進する判断をした」と述べました。しかし、その判断の根拠となった情報は果たして正確なのか。検証します。
 区長メッセージと同時に発表された「これまでの質問に対する区の見解」という文書(以下当初のタイトルによりFAQといいます)には法律の専門家の意見書が「参考」として掲載されています(以下意見書とよびます)。そこで、移転をやめ計画変更した場合の法的リスクについて、この意見書によって確認していきたいと思います。
【「重大な違法行為」は「想定しえない」】
 第一に、移転をとりやめることは「重大な違法行為となりうる」という点について検討します。
 8月の振り返る会では、質疑応答の中で杉一小の移転を中止しても法的に問題ないことが確認されました。しかしFAQでは「区において一方的に学校の移転を取りやめた場合、私法上の契約とも解される3つの協定や地区計画、土地区画整理事業の事業計画違反など重大な違法行為となります」と述べています。この「重大な違法行為」という文言は10月以降の会でもさかんに説明会等の場で強調されてきました。
 他方、「意見書」の記述はこのようになっています。
「関係者の同意なく、区において一方的に学校の移転を取りやめるケースも理論上想定しうるが、これは、上記の三協定違反、地区計画違反、すでに進行している土地区画整理事業の事業計画違反など、重大な違法行為に当たるため、かかるケースは現実には想定しえない」
 注意してほしいのですが「かかるケース」つまり区が一方的に移転をとりやめることは「現実には想定しえない」と意見書は述べているのです。ところがFAQを含むこれまでの区の説明ではこの一文の一部だけを切り取って、計画を変更することそのものがあたかも「重大な違法行為」になるかのようにたびたび説明してきました。
 全く正反対の意味に利用されて、趣旨を歪曲されたことを知ったら、この法律の専門家は、いったいどのような感想を持たれることでしょうか。
【スケジュール遅延即罰金ではない】
 次に、賠償責任や訴訟リスクについて確認します。
 区長メッセージでも、FAQでも、随所に「損害賠償請求」「金銭補償などの大きな負担」といった文言が正確な定義なしにちりばめられています。他方、意見書ではどう言っているか。
 まず、移転中止の場合の責任ですが、事業の関係者については、先に述べたように計画変更は全員同意が前提ですので、同意した上での賠償請求は成り立ちません。
 次にスケジュール遅延についての責任です。3者協定により、スケジュールの遵守義務が課せられているので、遅延は協定違反になります。しかし、区画整理事業の終期は、これも全員同意のもと変更は全く可能です。
 スケジュール遅延に関連して、指摘されているのは、土地の使用収益開始時期との関係で賃借料が発生するケースです。これはありえないことではありませんが、協定上に定めがないため相互の協議によって定めるものとなります。
住民訴訟のリスクもきわめて低い】
 なお、住民訴訟のリスクについて意見書は、手続き違法、実質違法の2つの可能性について述べ、第一に手続き違法については、当然ながら、区の事務において瑕疵のない手続きを行うことで防げるものとしています。また、第二に実質違法については、例えば費用について、計画変更により「増加を招くことは不可避だとしても、単に費用が高額になるから違法との主張は、学校建設に際して費用の多寡のみを考慮している点で失当といわざるを得ない。学校建設に際して考慮すべきは教育環境など様々であり、費用は考慮要素のひとつにすぎない」と指摘しています。
 また、計画変更に同意してもらうために支払う、いわゆる「同意金」について住民訴訟で取り上げられる可能性があるが「この支出は適法たり得る」と意見書は述べています。
【計画見直しに違法性はない】
 このように見てくると、計画見直しを「重大な違法行為」とし、あるいは多額の賠償請求の可能性があるとした区の説明は、区が依頼した専門家の意見書の見解に反しています。計画見直し自体に違法性は全くないことを確認するがいかがか。答弁を求めます。(Q1)
 ちなみに、この方は23区の法務実務に通じた民間の弁護士であるとのことです。区としてこの方にはどのような依頼をいつからお願いしてきたか。また、この意見書が提出されたのはいつかうかがいます。(Q2)
【賠償リスクはほとんどゼロ】
 総じて、意見書が述べていることは、杉並区が移転計画を仮に中止、変更したとしても、損害賠償や訴訟のリスクはきわめて低いということです。まして、区長個人が賠償責任を負う可能性はほとんどゼロです。そのことを区長ご自身もしっかりと認識していただきたいと思います。
【河北病院の着工遅れは協定違反か】
 第三に、関連してスケジュールについて述べます。現在、河北病院の着工遅れのため、区画整理事業のスケジュールはすでに7.5か月遅れています。これは先の「スケジュール遵守義務」違反となりうるかと思いますが、今のところ罰則や補償の話が出たとは聞いていません。ならば、仮に今後杉並区がなんらかの要因でスケジュールを遅らせたとしても同様にペナルティはないのではないでしょうか。
【河北病院のスケジュール変更と区スケジュールの矛盾】
 河北病院側は、着工の7.5か月遅れの結果、病院の移転は2025年6月、病院解体・汚染除去の完了は2026年11月とする計画変更を施行者会に提出、すでに了承されていますが、他方、事業全体の終期、すなわち、2029年3月に杉一小を解体して引き渡す時期が施行者会として変更されていないのは奇妙なことです。また、現計画における杉一小新校舎開校時期についても、この間、なし崩し的に「2029年度内」などと説明されるようになっていますが、これは事業終期に間に合わない、すなわち「スケジュール遵守義務違反」です。
【スケジュール遅延すべてが区の責任にされる心配】
 そこで、区としては、少なくとも現計画においては杉一小新校舎開校予定時期は、河北病院の工事遅延による影響を見込んで変更、確定すべきではないか問います。またその場合の開校時期はいつになるでしょうか。同時に施行者会としてのスケジュールも当然仕切り直すべきと指摘します。そうしないと、最後に土地を引き渡すことになっている杉並区が事業全体の遅延の責任、スケジュール遵守義務違反の責任を一手に引き受けることになりはしないかと心配です。病院の着工から1年たってもこれらの修正がなされない理由はどういうことなのでしょうか。説明を求めます。(Q3)
【「見直しに最短5年」は誤り】
 スケジュールに関連して、区長メッセージでは、現地建替えに変更した場合、新校舎開校が「最短でも5年は遅れる」と述べています。しかし、計画を見直してもそんなにはかからないということを次にお話ししたいと思います。
 昨年5月に提出された「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会」による現地建替えを求める要望書では、関係地権者や行政計画への影響を最小限にとどめる案を提案しています。
 この提案は、現在定められた土地区画整理事業と地区計画のルールを変えずにできる現地共同建替えの案であり、土地区画整理事業も地区計画も根本的なルールや事業の条件について見直しの必要はなく、学校に関わる文言の修正レベルですみます。
 このほかFAQで改定が必要となるとして掲げられている文書を列挙すると、施設整備等方針、これは杉一小の計画本体なので別として、ほかに、まちづくり基本方針、阿佐ヶ谷駅等周辺まちづくり方針、阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくり計画がありますが、どれも整備等方針を受けての記述を改めればよく、改定は一部文言の修正等にとどまるものです。
【見直しは短期間で可能】
 このように「5年」には全く根拠がなく、ずっと短期間で見直しは可能と考えられます。
 計画変更を考える場合に、最も丁寧に時間をかけるべきは、住民との合意形成であり、その中には当然関係地権者の同意も含まれています。現計画を策定する際、3か月という短期間で決断してしまったぐらいなので、きちんと順を追ったプロセスを構築しさえすれば1年程度で合意に達することは可能と思われます。
 以上、本計画の法的リスク及び、関連してスケジュール遅延に関する責任問題を論じてきましたが、いずれも、専門家の意見書によれば、リスクはきわめて低いことがわかります。
【これまでの施行者の負担とは】
なお、区長メッセージでは「これまでの施行者の負担等を踏まえた補償金などの支払いが必要となりそのリスク」が云々と述べていますが、いま述べたように、専門家の意見書に照らしてもそのようなリスクはほとんどゼロに近く、これは誤りです。
 この発言にかぎらず、区長、行政はたびたび地権者が負担することで区画整理事業が進んでいるという説明をしますが、事業の参加者はそれぞれ土地を提供するものの、それを上回る利用増進を期待できるのであって、本件の場合も、道路整備等により土地の面積は減っても資産価値が向上、約1%の増進率が得られるようにあらかじめ設計されているものです。
【道路拡張はほとんど区の持ち出し】
 他方、この事業に関連する主要生活道路はその拡幅のほとんどが、区が地権者から買い取って行われるものであり、区画整理事業による地権者の負担とまではいえないことも付言します。
 そこでお聞きしますが、区長ビデオメッセージにある「これまでの共同施行者の負担」とは何を指すのでしょうか。説明を求めます(Q4)
(2)仮換地の不公平性
 さて、10月22日の「振り返る会」の継続の会では、区内在住の公認会計士の方から、仮換地における、杉一小と病院の評価が不均衡であり、公共用地である杉一小の敷地が不当に低く評価され、区が損しているのではないかという疑問が示されました。
【換地で杉並区が17億円の損】
 国税庁のホームページ上にも公開されている相続税路線価は一般的な売買価格のめやすとされます。これをもとに計算すると、杉一小等現在の区有地が約85億円に対し、換地後の区有地となる病院敷地等は約68億円であり、換地によって17億円も減価、面積にして杉一小敷地の10%ほど損しているとのことです。
 この点、区長メッセージでは「区の財産が毀損されることはないことを確認した」と述べていますが、その根拠は何ら示されていません。
 そこで質問します。本件仮換地は区と民間地権者との間で大きく均衡を欠くことは明らかです。なぜこのような不均衡を許容したのか。その理由の説明を求めます。(Q5)
【換地情報はいまだに非公開】
 公平性を確認するために必要な、共同施行者2者の数値に関わる情報がいまだに公開されないことも不透明さを助長しています。
 情報公開について、10月の継続の会で、担当者は「個人情報なので公開できない」むね発言しましたが、この発言は誤りです。また、FAQでは、個々の土地の修正係数を公開することは「各権利者に著しい不利益を与える」ため公開できないとしていますが、これも誤りです。なぜ誤りかは、今日の杉並区の管理職なら全員が知っていなければならないことです。
【「個人情報」だけでは非公開事由にならない】
 岸本区長就任後の2022年9月22日付全庁通知「情報の原則公開の徹底等について」では、とりわけ「非公開事由の適正かつ厳格な判断」が求められています。
 FAQの「著しい不利益を与える」のうち「著しい」について、全庁通知では「著しいとは:一般的抽象的な不利益や困難が発生する可能性が推測されるだけでは足りず、不利益や困難が発生することについて客観的具体的に合理的理由が説明されることが必要である」としています。
 したがって、この場合の仮換地に関する情報についても、非公開にする場合は「客観的具体的な理由を合理的に」説明する必要がありますが、いかがか。説明を求めます。(Q6)
【岸本区政下の全庁通知に反する】
 さらに、第三者への意見照会についても付言します。通知は「当該法人等から非公開とすべき旨の意見があった場合でも前例を踏襲せず、法人等には条例の趣旨を十分に説明したうえで、原則公開することを基本に判断すること」と指示しています。情報公開の主体はあくまでも保有者である区であって、関係法人が非公開を望んでいるからという理由で非公開とすることは通りません。
 なお、いま述べた「著しい」の定義等は、「杉並区情報公開・個人情報保護制度事務手引」に基づくものであり、東京地裁判決も採用した見解です。重要な書類ですが、区のホームページには掲載されていないので、区役所の情報公開窓口まで来ないと見ることができません。また、先の全庁通知もホームページに公開はされていません。これらがホームページ上に公開されていない理由を説明してください。また、事務手引については改定するとの話でしたが、その進捗状況、また課題があれば説明してください。(Q7)
(3)「対話」の扉が閉じられた
【参加者のほとんどが反対意見なのに】
 さて次に一番大切な対話についてのべます。岸本区長が対話の扉を開いてくれたことには、掛値なしに感謝しています。しかし、開いた扉がいきなり閉じられてしまったと思っている住民は少なくありません。
 私は8月31日の「振り返る会」、10月19、22日の継続の会、及び12月に開かれた3回のオープンハウスにおける車座の話し合いのすべてに参加しましたが、ほとんどの意見は、杉一小移転に対し疑問と懸念を示し、計画の変更を求める意見でした。また、団体との懇談会においても、1団体を除いては、同様だったと承知してています。この点、区も同様の認識かどうかうかがいます。(Q8)
【学校運営協議会は皆反対意見】
 区は区民にひろく「振り返る会」への参加を呼び掛けており、その中で反対の声が圧倒的に多かったということ、つまり移転に反対する意見が世論の多数ということを素直にとらえるべきでしょう。それなのに、なぜここで一方的に「計画は変更しません」と結論されるのか。とうてい納得できるものではありません。
 とりわけ注目すべきは学校関係者の意見です。振り返る会等で、保護者が何人も現地建替えを希望して発言しました。現在杉一小に在籍する児童からも発言がありました。また、区長と杉一小学校運営協議会(CS)との懇談会では、ほぼ全員が移転反対の立場で発言されたと聞いています。
【杉並区のめざす「地域がつくる学校」とは】
 杉並区は地域がつくる学校をめざして、全区立学校に学校運営協議会を設置しています。CSの委員は教育長が任命する非常勤公務員です。CSは学校の運営について意見を述べる権利と責任を負っています。特に杉一小のCS委員さんたちは、朝先生などの活動を通じ、日頃から学校と児童の現実をよく把握している人たちです。
 その方々のほとんどが移転に反対なのに、それを無視して移転を強行することに道理はあるのでしょうか。教育委員会は学校経営におけるCSの役割をどのように認識しているのか、行政と意見が合わなければ意見を無視してよい、そのくらい軽い存在と考えているのでしょうか。認識を問います。
【CS委員を一人ずつ呼び出し!】
 また、昨年12月のCSの懇談会で、反対意見が続出したあと、教育委員会はCS委員を一人一人個別に呼び出し面談をしたと聞き、あきれました。我々議員のような場慣れした者ならともかく、区民の方が、ひとりずつ役所に呼び出され、複数の職員に囲まれたら本音を発言できなくなるのが普通です。そこで説得するのが狙いだったのでしょうか。個別面談の目的は何だったのか。説明を求めます。(Q9)
 その後、再度のCSが開催され、区長は今回の決断を伝えたが、CS委員のほとんどは、変わらず移転反対の意見を述べたと聞いています。いまも委員さんたちの意見は変わっていないことでしょう。
【「反対の皆さんだけではない。大勢の人がいるんです」】
 ここで、第三回定例会でも紹介した書籍『人をつなぐ街を創る 世田谷のまちづくり報告』の文章をもう一度紹介します。
 「行政は住民の中の語らない賛成者をサイレント・マジョリティと称し、正義の後ろ盾として活用する。しかし本当にマジョリティなのだろうか。(中略)多くの人々で議論する場を排除する。それが一番とるべきではない行動であることを理解してほしい」
 区長は10月22日の会で「反対しているみなさんだけではない。この部屋の外に、多くの重要な話があることを理解していただきたい」と述べました。この発言は「サイレント・マジョリティを後ろ盾にするもの」とはいえないでしょうか。これに対し、杉一小保護者の方から次のような発言がありました。
 「区長のいう、ここに来ていない賛成の方はどこへいったのでしょうか?私は普通の一市民で、勇気をもってやっているのに、なんで一部の反対派みたいに言われなければならないのか」
 区長は、いわゆる「サイレント・マジョリティ」論を支持するのか否か。見解を求めます。第三回定例会でも同じ質問をしましたが、明確な答弁が得られませんでしたので重ねて問うものです。(Q10
【「反対派」などときめつける行政】
 なお、先日の他の議員の一般質問において、参加者を「区外の活動家」などと決めつける発言があったことは大変遺憾です。現場を見ずに聞いた話で発言されたのだと思いますが、振り返る会で発言した方々は当然皆区民で多くが阿佐ヶ谷の住民、杉一小の保護者、学校関係者、OBでした。区長に対して批判することは議員として自由ですが、公の場で区民の存在を否定することは厳に慎んでいただきたい。
 これは行政側もよくなくて、反対意見を述べる区民のことを「反対派」などといって話すから、経験の浅い議員さんがそのまま口に出してしまうのです。行政のこういう姿勢から改めていただかなくてはなりません。
(4)今後について
【杉一小跡地に区役所が移転?】
 最後に今後について述べます。まず、A街区の今後についてです。A街区(杉一小敷地)にはタワマンや大規模商業施設の計画が今のところないということですが、今後も計画しないと保証されるのでしょうか。答弁を求めます。(Q11)
 タワマンや大型店がないとすれば、あとはオフィスでしょうか。しかし、中野駅周辺が大規模に再開発される中、阿佐ヶ谷にオフィス需要があるとは全く思えません。それだからか、最近、区役所本庁舎の一部を移転するという説が出回っていますが、そのような計画があるのか否か確認します。(Q12)
【白紙のはずが「土地利用を検討されている方も」】
 振り返る会の区長発言では、地権者の計画は全く白紙、とのことでしたが、他方、所管課長は「A街区の土地利用を検討されている方もいるので」と述べており食い違っています。実は区は事情を把握しているのではないでしょうか。
 ちなみに、仮に区役所を建てるなら当然地代も払うことになるので、それなら杉一小現地建替えしても金銭的負担は同じことになります。それなら、学校でいいじゃないですか。
【病院跡地の汚染対策】
 さらに、どうしても心配なことは、病院跡地の土壌汚染の問題です。土壌汚染は原因発生者である病院側が対策するのは法的に当然です。FAQには深さ3mまですべての土壌を入れ替えると7億円かかるという記載があったので、てっきり病院の負担で入れ替えをするのかと思っていたら、違うのだそうです。実際は、10mメッシュでボーリングし、有害物質が検出されたブロックのみの土壌入れ替えと聞きました。かなり粗い調査になります。当たらなかったところに汚染物質がある可能性もあります。
 杉並区では校庭から大量の釘が発見されたことも記憶に新しいところであり、病院に任せきりでいいのでしょうか。区は主体的に汚染調査の計画と対策およびモニタリングに取り組むべきではないでしょうか。所見を伺います。(Q13)
【移転前提ではなく、柔軟な対話継続を】
 さて、これまで述べてきたように、計画見直しの法的リスク、賠償リスクはきわめて低いことが、確認されました。重大な違法行為だとか、賠償責任だとかいう区の説明はミスリードであり、いずれも計画変更できない理由にはなりません。
 したがって区長は、今後とも話し合いを継続すべきですが、その場合、移転前提の見直しなき対話ではなく、柔軟な対話であるべきです。
 区長の今議会答弁では「これまでの対話になにひとつ無駄なことはない」が決め台詞になっているようですが、それは違います。政治の場では結果がすべてです。下高井戸児童館、ゆうゆう天沼館の例も引き合いに出されていますが、どちらも住民が望んでいたのは、あくまでも施設の存続でした。それが拒絶されたのに、一部を取り出して対話の成果のように語ることは、住民も本意ではないし、住民自治の否定につながります。杉一小に関して、今後とも意味のある対話の再開を求めます。
【私たちぬきで私たちのことを決めないで】
 最後に、振り返る会で発言してくれた勇気ある小学生の言葉を紹介します。
「私たちの大好きな杉一小の場所を、その場所にいない大人が勝手に変えないでほしい」
 まさに、Nothing About Us Without Us。「当事者ぬきで決めるな」という人権の大原則をあの場で子どもさんが教えてくれたのです。私たち大人は子どもたちに恥ずかしくない対話をしなければなりません。