わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

令和4年度決算認定に反対しました(2023年10月13日杉並区議会決算特別委員会)

 杉並区議会決算特別委員会の最終日、各決算の認定に反対する立場から意見を述べました。

 昨年度は、区長選挙の結果、7月から岸本聡子区長が就任したものの、予算じたいは前区長時代に編成されており、区長がかわっても下井高井戸児童館の廃止やゆうゆう天沼館の廃止準備は変わらず進められました。またこれらの計画である「施設再編整備計画」については、昨年度から検証が始まったものの、計画が転換できるか否かはいぜん不透明な状況です。こうした理由から決算の認定には反対しました。

(以下は発言原稿です。実際の発言とは違うところもあります)

 令和4年度決算について意見を述べます。

 私は、令和4年度予算案に対して、私は主に以下の点から反対しました。

 第一に、新自由主義的行革概念からの脱却といいながら、民営化の推進がひきつづき行われていること。第二に、施設再編整備計画の問題。特に、児童館の廃止が全区的に大きな問題となっていること。第三に、阿佐ヶ谷、西荻の駅前再開発、都市計画道路の推進、です。

 また、前区長による行事などの政治利用に反対する立場から、否決はされたものの、修正案も提出しました。

 これら前区政下で策定された令和4年度予算は、その後、区長選挙を経て、岸本区長就任後、一部修正されたものもありますが、多くは問題を残したまま執行されました。

 施設再編整備計画については、岸本区政下において、検証が進められたものの、児童館、ゆうゆう館の廃止方針は転換されるのか否か、いまだ不透明で問題は解決されていません。また、阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発計画についても、先日、振り返る会が開催されたものの、対話は緒に就いたばかりです。

 とりわけ看過できないのは、下高井戸児童館の廃止であり、また、結果として今年度の実施となりましたが、本天沼集会所・天沼集会所・ゆうゆう天沼館の廃止・再編が当該年度は計画にそって具体的に進められたことです。

 このように前区政のもとで策定された方針を大方そのまま引き継ぎ実施した形になった令和4年度一般会計歳入歳出決算ほか3件についてはすべて反対とします。

【新たな地域コミュニティの可能性】

 さて、以下は質疑を踏まえて、今後を展望します。

 第一に施設再編整備計画について述べます。

 今後、見直し案が発表されるとのことですが、質疑ではコミュニティふらっとと児童館についてうかがいました。

 コミュニティふらっとは、どうしても、ゆうゆう館の後継施設として扱われがちですが、高齢者福祉施設ではなく、コミュニティの核となる施設として位置づけられています。質疑の中では、重度障害児の保護者の方の要望から、ふらっとの取組として避難訓練が実現できた例を紹介しました。

 ふらっと東原の利用者である地域の私たちは、子どもや学校の情報をはじめ、地域の様々な情報を取り交わしています。そうした中で、運営事業者さんの理解のもと課題解決の第一歩になるこうした取り組みができたことで、私はコミュニティふらっとの可能性を改めて認識することができました。

 町会の高齢化が問題となるなか、新たな地域コミュニティのあり方として、ふらっとを介して出会った人たちが、課題に気づき、解決へと行動にのりだしていく、そうした場になっていくことを望みます。

 そのためには、民間事業者におまかせではなく、地域課をはじめ区職員が積極的に住民と関わるしくみをつくる必要があります。施設再編の検証報告書では、ふらっとでの多世代交流を一過性のものでなく定着させていくには「しかけ」が必要と書かれており、これには共感するものです。

 たとえば、すぎなみ大人塾の例もあります。社教センターや社会教育主事さんたちの知恵も借りて「しかけ」をつくっていくことは、地域の自治を育てていく萌芽となることでしょう。

【児童館でしかできない児童館の特性】

 次に児童館については、まず放課後等居場所の検証において、学校になじめない子への対応、学校施設の利用に制約があること、放課後居場所ではできない児童館ならではの特性があることなどの課題があることが示されました。重要なポイントだと思います。

 特に児童館の特性として、子ども自身が自由に居場所を選び、遊びを選べること。おやつやゲームなどの持ち込みができること。学童と一般来館の子どもがいっしょに遊べること。小学生だけでなく幼児さんや中高生とも交流できること、などたくさんの特性が挙げられています。

 今後、よりよい子どもの居場所について検討するといいますが、居場所は託児所とは違います。また、児童館は単なる居場所ではありません。

 今後、杉並区は子どもの権利条例と自前の児童相談所を持つ自治体になっていく予定です。そのときに、区内にあまねく設置された児童館と職員は、子ども施策を地域できめこまかく展開していくための基幹的なインフラになるものと思います。この点からの再評価が必要です。

 もちろん児童館自体も変わっていく必要があります。児童館にくる子の対応だけでなく、児童館に来ない子にもアウトリーチしていくため、たとえば、出前児童館にとりくみ、児童館のない地域でも、子どもたちに遊びと支援を提供できるしくみを要望します。

【「対話」について】

 第二に、対話について述べます。

 このかん、聴っくオフ・ミーティング、さとことブレスト、施設再編整備計画の意見交換会、さらに阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりを振り返る会など多くの対話の機会がもたれました。どの取組も、対話を前向きに進めようとする区の姿勢がみられることは評価します。

 他方で、運営方法などについては、まだまだ改善の余地があることは行政も自覚していると思います。なによりも、個々のテーマについて、話し合いさえすればいいというものではなく、最終的には新たな結論を得てこその話し合いです。現状はまだそこまでは至っていません。

 先の一般質問で私は世田谷区幹部が書かれた『人をつなぐ街を創る』という本を紹介しました。そこに描かれた対話は、住民と行政が時にぶつかりながらも、次第にコミュニケーションを会得し信頼関係を築いていく過程です。その道のりはもちろん平坦なものではありません。

 複数の委員から「いつまで話し合えばいいのか」と早くも音を上げる意見もありましたが、民主主義は時間がかかります。対話とは、予定調和の結論をみんなが飲み込むこととは全く正反対です。むしろ対立する意見を戦わせることで、新たな可能性を見出していくことこそ、対話のだいご味です。激論を超えて1つの結論にたどりつく未来を見てみたいと思います。

【住民とともに自治を担う職員に】

 第三に、こうした事業を担っていく職員の問題です。コミュニティふらっとにしても、児童館にしても、住民とともに地域の課題にとりくむ職員の配置と人材確保、そしてスキルアップは重要な課題です。

 これまで、職員定数の削減にまい進する中で、杉並区では、特に若手の職員が、出張所はじめ、行政サービスの第一線で地域住民と接触する機会が極端に減ってしまいました。コミュニティふらっとにかぎらず、住民とともに自治を担う力を、職員さんたちにはもう一度取り戻していただきたいと思います。

 質疑では会計年度任用職員についてただしましたが、委託・指定管理で働く人も含め、低賃金や待遇面の課題は山積しています。重ねて改善を求めます。

【「公共の再生」】

 これらすべてを包括するのが、岸本区長のかかげる「公共の再生」という大きな目標であると受け止めています。働く人が十分に報われ、かつ、良質な行政サービスを提供していくために、新たな時代の公共の役割とはなにかを、様々な場面で一つひとつ考えながらも、住民自治にもとづきしっかりと自立する公共を杉並に取り戻していきたいと考えます。

 このほか、質疑では、福祉避難所、施設使用料、図書館、校庭開放など、それぞれ要望したところです。

 また、質疑では触れられませんでしたが、不況のなか、地域経済の振興についてはまったなしの課題と認識しています。特に商業振興において、プレミアム商品券は有効であることがわかっています。引き続きの事業実施を要望します。

【グローバルサウスと日本。中国と日本】  

 さて、ウクライナ戦争開始以来、国際関係の変化は、いっきに加速しました。欧米が戦争に足をとられる一方、グローバルサウスの発言力が強まり、日本も対応を迫られています。

 「次は台湾有事」などと危機をあおるような政治家の発言が相次いできましたが、日本は米中対立にまきこまれることなく、中国との友好平和、そして平和で繁栄する東アジアを築いていく責任があります。

 排外主義に陥ることなく、近隣諸国との善隣友好、また、日本国内に居住する外国籍の方々との共生を進めなくてはなりません。

【区民生活を守る区政の責務】

 一方、アベノミクスの10年により、国民生活は困窮に追い込まれています。円安は一時的なことではなく、国力の低下がそのまま通貨に表れたとみるべきで、政治を変え、根本的な政策転換をはからない限り、私たち国民の生き延びる道はありません。

 こうした中、杉並区政は、区民の生活と営業、福祉をしっかりと守り、支えていかなくてはなりません。区長、職員の皆さんはもとより、議会の立場からもそのためにいっそう働く決意です。

 以上をもって決算に関する意見とします。

 終わりにあたり、多くの資料を調整してくださり、また有意義な意見交換の場を与えてくださった、区長はじめ職員の皆様に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。