わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

児童館事業の新たな転換点(2023年12月6日本会議賛成討論)

 杉並区議会本会議において、阿佐谷南児童館について発言しました。児童館廃止の議案ですが、廃止される児童館の代替事業が新たに始まること、また、児童館全廃の方針を区としていったんストップし、子どもの居場所を充実していく方針であることから、廃止される南児童館についても今後代替施設整備の可能性があることを評価し、賛成しました。

 杉並区は現在「子どもの居場所づくり基本方針」を策定する検討会を開始しています。約1年間検討が行われる予定です。新たなステージで、あらためて杉並区が児童館の再整備について積極的に取り組むよう、引き続き発言していきたいと思います。

 保護者・子ども・住民の皆さんからもぜひ声を上げてください。

(以下は発言原稿です。実際の発言とは違う部分もあります)

 議案第83号 児童青少年センター及び児童館条例の一部を改正する条例について意見を述べます。この議案は、新たに区立児童相談所を設置するため、同用地の既存建物にある阿佐谷南児童館を廃止するものです。

【岸本区政で「児童館全廃」はいったんストップ】

 これまで区立施設再編整備計画において、施設としての児童館はすべて廃止し学校内の事業等に機能継承することを区は基本方針としてきました。

 しかし、岸本区長のもとで、今回、パブリックコメントに付された新たな「施設マネジメント計画(案)」においては、児童館全廃の方針は記載されていません。今後の児童館の行方については未定であり、あくまでも「子どもの居場所づくり基本方針」により今後決定するものとされているものの、10年間続いてきた「すべての児童館を廃止する方針」はいったんストップしたものと評価しています。

【児童館の代替事業】

 さて、本議案に関する保健福祉委員会の質疑を傍聴し、注目したポイントがいくつかありました。

 第一に、代替事業についてです。利用者からの代替施設の要望、また、区職員組合との交渉においても、代替事業を求める意見が出されたと聞いています。この点、委員会では、まず、乳幼児の居場所について、近隣の児童館や子ども子育てプラザだけでなく、新たに区役所本庁舎内に居場所を設置する方針が示されました。

【「出前児童館」を試行】

 そして、小学生の居場所について、小学校内の放課後等居場所事業設置はこれまでと同様ですが、それに加え、新たに、アウトリーチ型の事業、出前児童館を試行的に行う方針が示されました。児童館の廃止に対応するものとしては初めての試みです。

 この事業が、期限付きから常設型に変わっていくか、また、回数や時間が増えていくのか、すなわち阿佐谷南児童館の小学生の居場所を代替するものとして十分機能するのかは未知数ですが、少なくともその可能性があることは重要です。これまでの児童館廃止にあたり、小学生の一般来館の継承は学校内の放課後等居場所事業で問題ない、としてきた区の姿勢の転換と受け止めています。

 第二に、委員会では、今後の子どもの居場所について、縮小するというより充実させていく考え方であるとの答弁があり、阿佐谷南地域においても、新たな居場所の拡充の可能性が見えたことです。

【児童館職員の専門性は杉並の宝】

 第三に、委員会では、児童館をになう区職員さんたちのスキルのすばらしさについても質疑応答がありました。区長からも、児童館には職員の専門性が蓄積されており、それが杉並区の財産であること。子どもの福祉政策を実現するため児童館職員をはじめとした福祉職の役割がこれまで以上に重要であり、今後、計画的な採用を進め、適切な人員配置を行っていく、という見解が示されたことは重要でした。

【児童館政策で新たなステップ】

 以上に示された一連の考え方は、一部の議員がおっしゃるような「田中区政の継続」などではなく、過去の計画とは一線を画して、新たなステップに区政が明確に踏み出したものと認識しています。

 もちろん阿佐谷南児童館については、代替施設が確保されることが一番望ましいことで、私なりにいろいろ調べてみましたし、区側も可能性を検討してくれたと聞いています。しかし、今すぐに同地域の中で代替施設を確保することは極めて困難でした。そのもとで、最大限の努力として、アウトリーチ試行を含む代替事業が打ち出されたことは、これまでの学校への機能継承一辺倒の方針から脱却し、新たな一歩が踏み出されたものと評価し、本議案には賛成といたします。

【今後の児童館の役割】

 さて、今後の子どもの居場所検討について一言申し上げます。先の決算特別委員会において、私は次のように述べました。

「今後、杉並区は子どもの権利条例と自前の児童相談所を持つ自治体になっていく予定です。そのときに、区内にあまねく設置された児童館と職員は、子ども施策を地域できめこまかく展開していくための基幹的なインフラになるものと思います。この点からの再評価が必要です。

 もちろん児童館自体も変わっていく必要があります。児童館にくる子の対応だけでなく、児童館に来ない子にもアウトリーチしていくため、たとえば、出前児童館にとりくみ、児童館のない地域でも、子どもたちに遊びと支援を提供できるしくみを要望します。」

 今回、こうした取り組みが初歩的ながら始まったことに期待をするものです。

【児童館「ならでは」の特性】

 児童館再編の検証においては、放課後等居場所事業などでは維持することが困難な「児童館の特性」があることが確認されました。たとえば、

・子ども自身が自由に好きな場所、好きな遊びを選んで、利用することができること。

・世代を超えた子ども同士が出会い交流できること。

・乳幼児期から、子どもや保護者が職員とつながれること。

などです。

 これらの特性をこれからも十分に保障するため、今後とも、区内における児童館の適正かつ十分な再配置と子どもの居場所の拡充を求めます。さらにその際には、民間まかせで居場所の数さえあればよいということではなく、区が児童福祉の観点からその質に責任をもつ直営の児童館職員による事業をあらためて要望し、以上意見とします。