わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

教科書展示会つづき/ゆり

教科書を図書館でコピーできることがわかり、歴史教科書は近現代をおもに、公民教科書は憲法をおもにコピーしてきました。
歴史は、前にも書いたように、体裁を他社にそろえ、記述もややトーンダウンしているのですが、中身はやはり変です。読み物なので、さらっと読むと「ふーんこういう考えもあるんだ」みたいなことで流してしまいそうなんですが、違うんだ〜、これは教科書なんだよ。日清・日露戦争日韓併合にいたる経過は、「帝国主義列強の侵略を(とくにロシア)防ぐため、日韓併合は必要だった」「中国、朝鮮の権益を戦争して勝ち取った」という論理に貫かれています。そして「列強の一員になった」。
コラムとして旧版にはなかった「日本海海戦」が入っていますが、これはもう、「戦記物の世界」です、ほんとに。
「勝負は40分できまった。戦艦スワロフは火柱をあげてふっとんだ」ってねえ…。いろいろ批判のある司馬遼太郎の「坂の上の雲」でさえ、この海戦でどれだけすさまじい犠牲がでたか(甲板が爆死した死傷者でうまり、血ですべって歩けない、みたいな)を描いていたと記憶しています。
そこで思い出すのはTさんが前におっしゃっていたこと。彼は長い軍隊経験をお持ちですが、軍隊に行く前は、やはり今の子ども達のように戦闘をゲームのように考えていて、いさましい気持ちでいたそうです。戦争の実際がわかるのは軍隊に入って戦闘を体験してから。Tさんは「いまの自衛隊は戦争はしないんだから、若い人はみんな自衛隊に入ってみて、軍隊がどれだけきついか体験してみればいいんだよ。」とおっしゃっていました。もっとも今の自衛隊では、もうそういうわけにいかないですが。
公民はのっけからグラビア6ページに「海外で活躍する日本人」(トップは自衛隊)、「わが国周辺の問題」(領土問題と「北朝鮮の脅威」)、「わが国のこころと伝統」と3連発でかましてくれます。
歴史の教科書でも全く同じ扱いなのですが、「大日本帝国憲法」は「世界から賞賛された」と書かれているのに「日本国憲法」はGHQが1週間で書き上げた草稿をむりやり承認させられた、と書いています。
国民主権」では見開き片側は象徴天皇の説明に使われています。天皇家の写真3連発。「国民主権」の説明では「国民一人ひとりが主権者という意味ではなく、全体としての国民」とされています。これは間違いでしょう?真の主権者は誰なのか(誰であるべきと思っているのか)暗示する紙面です。
そのほかいろいろびっくりの記述が多い公民教科書ですが、歴史教科書が採択を意識してトーンを落としぎみなのに比べ、こちらは「採択されなくていいから言いたいことをいった」という感じで、ロコツです。
Sさんはグループでこの教科書を読み合わせたときのことをおっしゃっていました。彼女は国民学校世代ですが、扶桑社の教科書がスラスラ読めてしまう。それに対して戦後生まれの人たちはひとつひとつひっかかってしまって、スラスラ読むことができない。これは戦後教育のひとつの成果なのじゃないかと。裏をかえせば、私たちが見て「こんなのまともに受け取れないよね」と思うようなものでも、真剣に教え込まれてしまったら、Sさんのように「スラスラ」読めてしまう人ができてしまうっていうこと、ですよね。うちの両親だって、昭和ひとけたですから、歴代天皇の名前も教育勅語もスラスラいえます。
(ついでですが、教育勅語は「親に孝行し、兄弟なかよく…」と書いてあるとのっていますが、「朕オモフニ我ガ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ…」と始まることは都合良く省略しています)
みなさん、お時間をつくってぜひ図書館に見に行ってください。それから行ったら1つでも2つでも気がついたところをアンケートで批判してきてください。小さなことでも「ここがヘン」と具体的にみんなが違うところを指摘したほうがいいと思います。
ちなみに、一般区民むけのアンケートは無記名ですから安心して書いてください。