第2回定例議会最終日、松尾ゆりの発言です。(この文書は草稿ですので、実際の発言とは一部異なっています)
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杉並わくわく会議・松尾ゆりです。議案第48号 平成19年度杉並区一般会計補正予算(第1号)について、反対の立場から意見を述べます。
区長は、この補正予算について、「杉並改革総仕上げの第一歩」と位置づけています。区長のいう「杉並改革」とは何でしょうか。山田区長就任以来の8年間を通じて、杉並区民は、「改革」の名のもとに、大きな負担と犠牲を強いられてきました。
とりわけ、福祉、教育を中心とするさまざまな分野における職員削減と民営化は、区民サービスの質をあきらかに落としました。福祉を例にとれば、このかん、介護保険の保険料の大幅引き上げとサービス利用規制、障害者自立支援法でのサービス提供の大幅削減、負担増などに、多くの区民があえいでいます。その結果、借金を減らした、貯金をふやしたと言われても、区民としては納得がいきません。
この「改革」は、国政でも小泉内閣〜安倍内閣と続いてきている「改革政治」と同様の、自助努力、自己責任を強調する弱肉強食の政策にほかなりません。山田区長のもとで、区は、こうした、いわゆる「改革政治」を、どこよりも熱心に進めてきましたし、その結果、私にとっては郷土でもある、杉並の区役所が、このようにぎすぎすとした、数字ばかりおいかける、住民に冷淡な行政に変貌してしまっていることは、きわめて残念なことです。いっそうその傾向を強めていくのが「杉並改革」だとすれば、その総仕上げの第一歩と位置づけられるこの補正予算を容認はできません。
補正予算案の内容について言いたいことは多々ありますが、一点だけ述べます。「減税自治体構想」です。区長のかかげる「減税自治体構想」には、大変問題があります。実現可能性が非常に疑わしいということもさることながら、一般会計の1割という金額を積み立てる、などということをしていいのかということです。
だいたい、そんなお金があったのか、というのが、正直私には驚きです。
これまで、区は「財政が大変だから、区民の皆さんがまんしてください」といって、学校給食も、保育園も、学童クラブも、民営化の説得にあたってきました。私たち区民は素直ですから「お金がないんじゃあ大変ねえ」と区の説明を受け入れてきました。私が先日の一般質問でおたずねした、学校統廃合の問題だってそうです。これから学校の改築費用が巨額になって、大変だから、統廃合するという話でした。
ところが、このたび区長は、「借金返済にはめどがついたから貯金をしよう」というではありませんか。じゃあ、今までの、区民の苦労は何だったのか。めどがついて余裕が出てきたのなら、今後は職員配置を充実に転じるとか、補助金を増やすなどして、これまで削ってきたところを、もう一度、回復する。あるいは、これまでできなかった区の独自の施策として、いま困っていらっしゃる高齢者や障害者の方々のための施策を充実させていくのが筋ではないでしょうか。あるいは、いま現在の区民の税や負担金の金額を安くする、つまり、今の人が払った税金は、できるだけ今住んでいる人たちに還元する。それが区の予算本来のあり方です。
払った税金の中から1割は使われずに役所がため込んでいく、ということになると、これは自治体の運営上、倫理的にはたしてゆるされるのかという問題になります。
折しも住民税が大幅に上がった矢先です。先日ある議員が「100年後に無税にするぐらいなら、いま減税してくれ、と支持者から言われる」と発言されていました。区民は誰でもそう思うでしょう。
他の出費についてもいろいろと意見がありますが、それは措くとしても、この「減税自治体構想」だけは、あきらかに今後の杉並区政と区民に「害をなす」政策、しかも将来にわたって、長期に害をなす政策であると思います。もしも、一般財源の1割を毎年積み立てる、などということを決めてしまったら、それこそ、将来の区民に大きな負担となり、禍根を残すことになります。「減税自治体」などという言葉とは裏腹に、区民が重税にあえぐことになります。断じて認めるわけにはいきません。
議員のみなさん、とりわけ与党の議員の皆さんに訴えます。今定例会において、先日来、この件について、みなさんが、それぞれ、懸念を表明しておられます。いわく「本当に実現するのか」「所得の再分配という点から問題がある」「自治体として健全な姿といえるのか」「そのお金があれば福祉に使うべき」等々です。どれも、なるほどと思ってお聞きしていました。「すばらしい、ぜひやってほしい」という意見はあまり聞こえないように思います。それほど非常識なものなのだと思います。
ところが、与党のみなさん方は、多くの疑問にもかかわらず、この補正予算を容認し、原案を無修正で可決しようとしています。「まだ、研究会段階だから」「検討したうえで」「わずか200万円だから」認めてもいいだろうなどと思っておられるのなら大間違いです。「師範館」の前例があります。当初、準備のための1000万円程度だからと認めたものが、あっというまにふくれ上がり、今年は、人件費も含めて億の予算になっています。これから毎年の採用を考えれば、今後の区民負担ははかりしれません。まして、この「減税自治体構想」はケタが違います。「小さく産んで大きく育てる」は役所の常套手段です。それをご存じない皆さんではないでしょう。こんな荒唐無稽な「減税自治体構想」だって、予定では再来年度から実施に移すことになっています。ほうっておけば実施されることになりますよ。実施段階になったときに、みなさんは区民になんと申し開きをするのでしょうか。
こんな予算に賛成してはならない。区民の利益を最優先に考えるならば、賛成という結論にはならないと、申し上げておきます。補正予算案に反対の立場から、意見を申し上げました。以上です。