わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

11月議会一般質問〜高齢者福祉について〜

3回目の一般質問がおわりました。やっと慣れてきたかな。今回は、1.高齢者福祉 2.レジ袋有料化条例 3.教育行政(1)学校統廃合(2)サンケイリビング社「エコリ」の配布中止を求める の3項目で質問しました。
今回のテーマ「高齢者福祉」は、そもそも選挙のときからずっと「介護保険をなんとかして!」という人たちの声に応えなければ、という思いで来たものですので、やっと形にできたと思っています。
国の介護保険制度がほとんど破綻しているなか、本来、制度の抜本的見直しが求められます。が、当座、自治体の努力でできるところはカバーしてよというのが第一。それと同時に、カバーするだけじゃなく、自治体発の先進的な取り組みをしようよということもあります。といっても、奇抜なことではなくて、たとえば渋谷区の介護保険上乗せ事業とか、品川区の介護専門学校のように、すでにある事例をみならったらどうでしょう、ということです。
質問したからすぐ実るわけではありません。答弁はゼロ回答、です。与党と違って、役所がやりたいことを「仕込み」で質問するわけじゃないので。実現するためには、区民運動が必要です。が、介護の当事者は動けないんですよね。声なき声をどう形にしていくかを、今後みなさんといっしょに考えていきたいと思っています。
「エコリ」の問題は、心ある議員たちはみんな追及したいと思っていたテーマ(だと思う)なので、よかったよ!と何人も声をかけてくれました。
(以下、質問草稿です。実際の発言とは一部異なる部分があります)
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 杉並わくわく会議・松尾ゆりです。今回一般質問では、高齢者福祉について、レジ袋有料化条例について、教育行政についての大きく3項目について質問いたします。
介護保険は破綻。困るのはお金に余裕のない世帯)
最初に高齢者福祉について質問いたします。昨年の介護保険制度の大幅改正は、ご存じのように、2000年4月に導入されて以来の介護保険のあり方を大きく変えるものになりました。人によっては、これはもう別の法律だという人もいます。そのぐらい変わりました。その結果、多くの利用者、特に在宅で軽度の方の多くが、実質的に介護保険を利用できなくなったり、利用が不便になってしまったり、という困りごとを抱えておられます。
介護保険は、財政的に行き詰まり、多くの利用者を切り捨てる結果になりました。この制度は福祉制度としては実質的に破綻しているといってもいいのではないでしょうか。
国の設計した福祉制度が破綻したときに困るのはお金持ちではありません。お金の余裕のある世帯は、介護保険のサービスが受けられなくても、自費でサービスを購入することができます。しかし、その余裕のない大多数の世帯は、結局介護サービスから閉め出されることになっています。保険料を支払っているのに、必要な家事援助の手がなぜうけられないのかと、私もこの2年ほどのあいだ、どれだけの批判の声をきいたかわかりません。
介護保険の改正後、多くの区民の方が現実に困っていらっしゃる。なぜもっと介護サービスを受けることができないのかと不審に思っていらっしゃる。こうした現実について区長は把握しておられるでしょうか。区民にとっての介護サービスの現状をどのように認識しておられるのでしょうか。まず、現状認識についてうかがいます。
(区が独自でやれることを積極的に)
介護保険を中心とする高齢者福祉のありかたは、いまや抜本的な見直しが求められていると私は思います。また、杉並区としても、国に見直しを求めていくべきであると考えます。しかし、残念ながら、いますぐ急速に改善されるとは考えにくい状況にあります。ですので、私は、この際、抜本的な改正を待たなくても杉並区ができる政策を提案したいと思います。以下3点にわたって提案し、区としてのお考えを伺いたいと思います。
介護保険サービスの上乗せ事業)
1点目は、区としての介護保険サービスの上乗せ事業です。先の決算特別委員会でも紹介しましたが、渋谷区では区の独自の事業として「高齢者在宅福祉事業」を決定して、補正予算を計上し、来年1月から、介護保険改正によって失われたサービスを、区がカバーする準備を進めておられます。
具体的にみますと、要支援2になってしまい、ホームヘルプの時間が足りない方、および、同居家族がいることを理由に介護保険のホームヘルプが支給されない方に対するホームヘルプサービス。また、介護保険ではできない、通院・外出のためのヘルプ、同居の高齢者のための食事準備や清掃などをヘルプする仕組みなどです。
まさに、昨年の法改正で困っている人の1つ1つのケースにきめこまかく対応しているという印象を受けます。この事業が提案された経緯などはわかりませんが、結論として出てきた1つ1つの項目を見れば、区役所の担当課や福祉事務所が、おそらく、区民の声を一生懸命きいて、なんとかしようと作られた制度であろうと推測できます。
杉並区においても、区民の現状をつぶさに把握した上で、同様の介護サービスを早急に実施すべきだと考えますが、いかがでしょうか。ご見解をうかがいます。
なお、杉並区には「生活支援サービス」という訪問介護に準じた、介護保険外の独自の事業があります。もともとこのサービスは「家事・つきそいサービス」といって、介護保険が発足した2000年につくられた制度です。当時は、介護保険の認定で非該当とされた「家事や外出に手助けの必要な方」を対象に、週2時間から3時間程度のヘルプサービスを派遣するものでした。昨年の介護保険制度の見直し時に、この制度も見直されて「生活支援サービス」となり、利用の要件も大変厳しくなりました。その結果、なんと、前年の利用実績約14000時間あまりに対して、昨年度は570時間と激減してしまいました。ここでもう一度、「生活支援サービス」の適用要件を緩和し、たとえば渋谷区の事業の例としてあげた「同居家族あり」で日中独居の方のヘルパー派遣などに利用できるようにすれば、困っている方は本当に助かると思うのですが、ご見解をうかがいます。
地域包括支援センターの支援強化)
第2に、地域包括支援センターの充実です。杉並区では地域包括支援センター(ケア24)が20カ所設置されています。全国にもあまり例をみない積極的な事業展開であり、杉並らしい重要な施策であると思います。
先日あるセンターにうかがってお話をききました。センター長さんは非常に熱意のある方で、地域におけるケア24の役割、将来像まできちんと描いておられました。予防プランや介護予防事業の展開、地域からご相談のあった方の実態把握の業務はもちろん、さらに一歩すすんで、こちらから積極的に地域に出て行きたい。先々は、商店街や町会など住民団体との連携で、たとえば高齢者の方が買い回りしやすく、世間話もできる商店街の存続、発展など地域活性化とを結びつけ、地域全体で高齢者の福祉を考えていきたいとのことでした。これこそ、ケア24のかかげるひとつの理想であると私は拝聴しました。
しかし、残念なことには、こうした理想を追うにも先立つものが足りないということです。
現在のケア24の委託料・報酬は、普通に運営していても赤字になる金額だということです。毎年数百万が足りない。そういう状態では、ケア24が長期にわたって安定した経営を行うことができず、ましてや、長期構想を描き、地域福祉の核になっていくことは難しいのではないでしょうか。
今後の地域福祉を考えるとき、ケア24の役割は非常に重要です。ケア24が、より安定した経営を行い、今後の積極的な地域活動に踏み出すことができるよう、委託料のシステムを見直して、増額をはかる必要があると思いますが、いかがでしょうか。たとえば、「地域ネットワークづくり事業」の一環として、地域との連携企画の開催や地域の実態調査事業などを加算することなども一つの考え方ではないでしょうか。お考えを伺います。
(人材確保に介護の学校を)
第3に、介護の人材確保、さらに人材育成の問題です。いま、どの介護事業者も直面している最も深刻な問題は、人手不足です。人材確保は焦眉の課題です。
ここでまた他区の例ではありますが、品川区では「品川介護福祉専門学校」を創設し、人材の確保の前提となる人材育成につとめています。1995年に創設された同校は、区長認可の専修学校であり、これまでに400人以上の人材を輩出しています。ここで2年間の課程を終了すれば、介護福祉士とヘルパー2級の資格をとれます。そして、ここがミソですが、卒業時に区内の介護事業所に就職し3年間勤務すると学費が免除されますので、区内の福祉人材の確保として非常に有効だということです。
実は、この学校の存在を知ったある杉並の事業者さんが、優秀な学生さんを獲得しようと努力なさったそうですが、学費免除制度が壁になって、杉並区に来ていただくことはできなかったとおっしゃっていました。ウラをかえせば、杉並区でも同様の努力をすれば、人材確保の点で非常に有利になり、メリットがあるということです。
杉並区でも人材確保のための優遇措置を講じていた時期があるということも先日うかがいました。また、現在「すぎなみ地域大学」でも、福祉関係の講座が一部開講されています。しかし、地域大学は定年後の方を主なターゲットに、あくまでもボランティアの育成が主眼です。ボランティアも大事ですが、いま問題なのはサービス事業所の基幹的な職員が足りないということです。専門職の職員を養成する介護専門学校の創設について、真剣に検討していただきたいのですが、いかがでしょうか。ご見解をうかがいます。
以上3点をご提案しました。どれも、高齢者福祉に対する区民の切実な要求に応えるための、有効な政策ではないかと思います。区が積極的に検討していただくことを希望いたします。
総体として、杉並区は、区民の福祉について、他区と比べてもきわめて冷淡です。もっと、区民の生活によりそい、心を砕くべきではないでしょうか。国の制度が悪くなっていく中で、「国の制度どおりにやっております」では区民は救われません。区として、区民を守るために何ができるのかを真剣に検討すべきであると、要望しておきます。