わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

決算委員会意見開陳

waku22007-10-21

9月議会が閉会しました。決算委員会最終日の意見開陳を掲載します。(この文章は原稿ですので、実際の発言とは一部違っています)
●「改革政治」からの脱却を
平成18年度各会計決算認定審査にあたり、意見を申し述べます。昨日、私は23区日朝友好促進議員連盟の総会に参加して参りました。当区からも多くの議員が参加された会合でしたが、米朝交渉や6者協議のお話など、いま、国際政治も大きく転換の時を迎えていることを実感して参りました。国内においても、「官から民へ」の小泉、安倍政権が去り、改革政治の見直し機運が生まれています。杉並区においても、区政運営の転換点にたっている。少なくとも区民の間には、区民生活を大切にする区政を望み、「改革政治」からの脱却を求める声が高まってきているのではないでしょうか。冒頭にもう一度、このことを指摘しておきたいと思います。
●区民負担でうるおった区財政
さて、私は今回、1年生議員として初めての決算委員会にあたりましたが、昨年度の決算は、非常に独特の特徴をもつものであったと言えると思います。なんといっても、歳入・歳出とも非常に金額が大きい。しかも、実質収支がまた史上最大である。そして、この収入の中から貯金に回した結果、570億の基金残高も史上空前だという結果になっています。
委員会の中で、再三議論になりましたが、83億の税収増があったということ。そして他方、83億の実質収支が出たこと、このことは、この年度を非常によくあらわしている思います。
定率減税の縮小、および、老年者控除の廃止、年金控除の縮小など特に高齢者に対する増税によって、多くの区民世帯が経済的打撃を受けています。それに伴って保険料なども引き上げられるということで、委員会の中でも明らかになったように、区民とりわけ高齢者の方々にとっては、生活がたちゆかないほどの打撃となっています。収入の拡大自体が、国の税制の変更とはいえ、区民の負担増によるものであります。委員会の中では7000人もの電話問い合わせがあったとの報告もありました。区民の生活を犠牲にして収入をふやした財政であったと言えます。
●区民サービスを節約して「貯金」
他方、150億もの基金の積み増しがされている。つまり、お金の浮いた分の多くが「貯金」に回された。しかも83億円もの純繰り越しが出たわけです。予算の執行率はこの5年で最低であるとも指摘されています。委員会の中でも指摘しました。他の委員からも指摘がありましたが、区民の負担によって潤った財政であれば、福祉なり何らかの形で、区民負担の軽減に予算を振り向けるべきであったのではないでしょうか。しかし、残念ながら、この決算を見るかぎり、その形跡はありません。区民生活の圧迫という点で区の責任は重大です。
●さらなる負担増計画に反対
それどころか、今後、いっそうの区民負担増が予定されていることに、警戒を発しておきたいと思います。昨年は介護保険料の値上げという大きな負担増が行われました。そして、さらに今後、家庭ごみの有料化、もっと先には、幼稚園、保育園の保育料の値上げなどが計画されている一方、来年度から始まる高齢者医療制度が、これまた高齢者に大幅な負担をもたらすことになることが予測されます。今後大きな問題になっていくと思いますが、これらの区民負担の増大を黙って見ているわけにはいきません。
また、区長は選挙公約である「減税自治体構想」の検討をすすめるといいますが、すでにこの決算において、貯金優先、財政改革優先の財政の姿、数字ばかりおいかけている財政計画のひずみが、非常によく現れてきているといえます。
本来、区民生活のための区の財政であって、その逆ではないはずです。財政改革のために区民生活を犠牲にする区政の考え方はまちがっているし、転換しなくてはなりません。
●産業無策の杉並区
さて、個々の分野について委員会の質疑をふまえ、2、3指摘します。私は、今回決算の審査に参加して、杉並区の事業計画においては、きわめて重要な政策が、きわめてないがしろにされているということが非常によくわかりました。たとえば、産業政策です。
産業経済費は、もともと金額が少ない。参考までに申し上げますと、商工費は23区中でも、当初予算ベースで中野区についで下から2番目です。(ちなみに杉並区は0.6%、最高は台東区の6.3%、23区平均は1.6%です。)しかも、それに輪をかけて、執行率が低いという惨状です。
委員会で質疑いたしましたが、産業振興計画の目標達成度、たとえば商店街の顧客満足度60%とか、創業1000件とか、製造業800社の維持など、目標数値はどれも未達成で目標にほど遠い。印象として、ほとんど「打つ手なし」、無策で推移したのではないでしょうか。製造業など、減っていくのを手をこまぬいて、見ているしかなかったという印象すらあります。
職員削減1000人という目標は、前倒しで達成するほどに執着している杉並区政が、元来もっと重要であるはずの産業振興計画の目標には淡々として、目標が達成されないことが、ほとんど問題にされないというのはどういうことでしょうか。きわめて無責任です。
そもそも、たてた目標そのものが適切だったのかという問題もあります。たとえば「SOHO支援」という政策についてうかがいました。鳴り物入りで登場したのに、いまやほとんど消えようとしている。それもそのはずで、SOHOという形態自体が、実は、きわめて不安定な個人自営業を中心とした事業所ですので、これを増やしていこうという政策自体が、そもそも妥当なものだったのかという問題が、ここに残ったと思います。担当の方からも、当初想定していたのと、事業者のニーズがずれていたという主旨の答弁があったかと思います。
杉並は住宅都市ですので、産業政策は軽くてもいいという考え方があるかもしれません。しかし、住民の3分の1ほどは、それでも地域で働いているわけですから、産業振興はきわめて重要な区の仕事です。産業振興計画が見直しに入っているとのことですが、奇をてらって花火を打ち上げ、結果尻すぼみになるのではなくて、杉並の産業の、それこそ歴史と伝統に立脚し、区民生活に根ざした産業政策を区が区民とよく協議し、本腰入れて作り上げるよう要望します。
同様に労働相談などの政策も、全くないわけではないというか、申し訳程度としかいえない状態です。区民の営業と労働にこれほど無関心な区もないだろうと思います。区政全体の中での大幅なバランスの見直しが必要です。
介護保険きびしい「適正化」
高齢者福祉について質疑いたしました。昨年の介護保険制度改正と前後して、国のいわゆる「適正化」、平たくいうと「サービス支給の削減」が非常につよまりました。中でも杉並区は、「適正化」が非常に厳しい区として知られています。昨年来、多くの高齢者の方々から「介護保険料がこんなに上がったのにサービスは逆に受けられなくなった」「家族が同居しているからとサービスを打ち切られた」という声をたくさんうかがっています。杉並区は怨嗟の声に充ち満ちています。
杉並区で生活支援の高齢者のために続いてきた「生活支援サービス」について質問しましたが、改正介護保険制度の実施と平行して、区独自のサービスである「生活支援サービス」も改革されて、利用者が10分の1ぐらいにまで落ち込んでいるときき、大変がっかりしました。
他区ではむしろ、介護保険の問題点を補う努力をしています。渋谷区では、要支援の人や日中独居の人のために介護保険を上乗せする独自のサービスを検討していると報じられました。その予算は約2500万円とのことです。杉並区でも、独自の施策として、介護保険サービスを削られた人たち、受けられない人たちのためのサービスを増やしていかないと、介護されるご本人も、介護する家族も、負担が増していくばかりだと思います。
同時に、在宅介護の要になる包括支援センターや、福祉関連の事業所に対し、十分な人的配置、そのための財政支援を要望します。
●減らされた教育予算
最後に教育政策です。今後の課題として教育基本条例が問題になっています。「提言」を読みまして、あきれましたが、あのような偏狭なナショナリズムを標榜したものを条例とするなら末代までの恥だと思いますが、その議論は別の機会に譲ります。教育基本条例の中で、大きな比重を占める「地域との協働」について考えてみます。提言の中には「地域にできることは地域に」という文章もあります。「民にできることは民に」の地域版ですが、果たしてそんなことでいいのか。一般質問の中で申し上げましたように、学校支援本部はその業務の例として図書館の運営、芝生の管理といったことを想定されています。本来、行政がお金を使い、人を雇って行うべき、こうした学校業務を、地域ボランティアに丸投げするというやり方は、とんでもないことです。
実は、一般会計にしめる教育費の割合を計算してみますと、山田区長になってからの平成12年以降の7年間は平均14%、それ以前の8年間は20%と、歴然と違います。金額にしてもこれは見るからにがくっと減っているのですが、山田区長以前と以後とでは平均70億円ほどの差があります。だいたい4分の3に減ってしまった勘定です。つまり、山田区政のもとでの教育は、それ以前と比べ、明らかに冷遇されているということを指摘しておきます。学校は予算を減らされる一方で成果を上げることを要求されています。これは無理難題です。
山田区政の教育政策は、「つくる会」教科書採択、あるいは師範館という形で、特異な思想的な偏りがしばしば指摘されますが、財政から分析してみたときに、施策そのもの、子どもたちの処遇そのものが全般として明確に貧弱になっているといえます。
学校の協力者をふやして、学校を充実させていこうというと、誰も反対できない立派なことだと思いますが、しかし、この財政の推移と重ね合わせるとき、実は行政がお金を減らし、人を減らして撤退していったあとを、地域のボランティアに埋めてもらうという、行政の尻ぬぐいのような感を否めません。学校と地域のかかわりについて、区の一方的なおしつけでなく、現状に即した、真に杉並らしいかかわりへと、時間をかけて見直していく必要があります。
●学校適正配置(統廃合)は根本的に見直しを
学校と地域の結びつきを、非常に豊かな形で私たちに見せてくれているのは、神明中地域の方々です。
学校適正配置についても、さまざまな議論がありました。神明中、宮前中の統合問題が焦点になっていますが、むしろ適正配置の考え方、つまり学校をつぶして公共事業を行うというやり方全般がすでに時代遅れになっているのではないかということは、一般質問でも指摘しました。子どもの人数が横ばいになっている現在、学校をへらす必然性はなくなっています。それなのに、地域の要望を無視して遮二無二統廃合をすすめる区の態度はきわめて問題です。
対象校について、議会の議論、区民参加の協議会などを経ずに、行政側から一方的に提起された点についての疑問も、他会派から出されました。
適正配置に関しては、区民参加で行われた「適正規模検討委員会」の初心に立ち戻り、根本的に見直すよう、要望します。

以上、意見を述べてまいりました。杉並わくわく会議として、平成18年度杉並区一般会計歳入歳出決算および国保老健介護保険各会計決算に反対することを表明いたします。
なお、最後になりましたが、今回の決算審査におきましては、多くの職員の皆さんが資料作成にご協力いただきましたことを、心より感謝申し上げます。準備不足のため、資料請求が間に合わなかった項目につきましては、ご迷惑をおかけしました。お礼申し上げて、しめくくりといたします。
(写真は、わが家のキンモクセイ。今日はもう散ってしまいましたが)