わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

杉並区女性議員で南相馬市へ(3)飯舘村「いいたてホーム」

南相馬市へうかがった翌日の8日は飯舘村「いいたてホーム」にうかがいました(社民党福島県連副幹事長・佐藤龍彦さん、杉並区議・市来とも子さんのご紹介)。
飯舘村はいま全村避難ですが、少数の住民と8つの事業所、そしてこの「いいたてホーム」だけが例外的に存続しています。施設はとても立派で、山の中の別荘という趣。しかも、現在は人数が減ったこともあり、すべての利用者が個室を利用できています。
避難勧告が出されたときに、ホームでは(1)ホームの全員まるごと避難する(2)いろいろな施設に別れて避難する(3)避難しない、の3つの選択肢を迫られました。しかし(1)の条件を満たすのは遠く神奈川県の施設しかなく、結局(3)避難しない、を選択したそうです。当時は「高齢者を被曝させるのか」などの避難も多かったそうですが、他の施設で、原発の近くなどで避難せざるをえなかったところでは、いろいろな施設にお世話になって、5カ所もの施設を移動しなくてはならなかったケースもあり、利用者の方にとっては相当過酷なものだったようです。
とはいえ、避難前の入居者112名(定員120名)から、現在の41名に減ってしまい、経営は厳しくなっています。今は東電の賠償金があるが、来年度にも予定されている帰村宣言が出されるとその後1年くらいで打ち切られるという話もあり、経営は成り立たなくなります。
また、職員不足が深刻。利用者はホームに住んでいますが、職員は村外から通ってくるわけです。原発事故後、多くの職員が去ったそうですが、残った職員さんたちは意欲的です。しかし、賃金を引き上げることが難しい。一方、周りでは、たとえば開店したばかりのコンビニの時給が750円プラス補助金500円(!)、あるいは村の「見守り隊」が時給1000円プラス交通費など、賃金を引き上げて人を集めているところ、介護施設は太刀打ちできないとのこと。
ホームは特養なので介護保険の施設ですが、飯舘村は人口、特に若い人が減っており、要介護の方が増えていく、しかも重度化していくため、介護保険料は現在8000円!(全国2位です。ちなみに杉並は5700円、これでもすごく高いですが)
介護保険制度自体の欠陥ですが、報酬だけで施設を運営していくことはもともときわめて困難です。まして原発事故によって、厳しい条件下におかれた飯舘村では、特段の支援が必要ではないでしょうか。
なお、「いいたてホーム」はじめ福島の福祉施設の避難については『避難弱者』(相川祐里奈、東洋経済新報社)に詳しく書かれています。(写真は2011年6月の飯舘村。すでに作付けは不可能だったが、村の美しい面影はまだ残っていました。今は残念ながら多くの田畑に雑草が生い茂っています)