わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

公共性を失った土地区画整理事業。認可撤回を(2019年9月13日一般質問)

 2019年9月13日、杉並区議会第三回定例会にて一般質問しました。

1.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

 杉並区は「土地区画整理事業」に認可をおろしましたが、田中区長が申請して田中区長が認可するという一人二役、猿芝居です。もともと「杉一馬橋公園通り」の拡幅が「喫緊の課題!」といっていたのに、フタをあけてみるとA地主さんの土地提供はナシ。

 病院跡地の汚染については「更地にするまで調査しない」。病院が汚染対策するから土地評価には影響ない(実際より高い価値で交換)。換地(土地の権利交換)の資料も出さない。

 区として行う事業なのに法の盲点を突いた「個人施行」ですべて隠蔽しています。

 こんな卑怯なやり方でわが街がボロボロにされるのは許せない。本当に許せない。

2.保育について

 区立保育園の民営化に関するガイドラインについて質問しました。区立にはお金を出さないという国の方針が間違っているのですが、杉並区のような富裕な自治体は自前でちゃんと区立を運営していくべきです。

 以下原稿です。(実際の発言とは異なる部分があります) 

1.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

 一般質問をいたします。まず、阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて質問します。

 8月30日、田中区長は、自らと、河北医療財団、欅興産の3者で行う土地区画整理事業に対し事業の施行を認可しました。この事業計画については、これまで何度となく議会の場で問題点を指摘してきましたが、計画ありきで決定されたことはきわめて遺憾なことです。

<区が行うのに「個人施行」とはこれいかに>

 とりわけ、手続きには問題が多すぎます。土地区画整理事業は、公共施行と個人施行に分かれており、杉並区が行う場合には、当然公共施行として行うべきです。しかも、今回は阿佐ヶ谷の駅前という高度に公共的な区域が対象ですからなおさらです。ところが、区は個人施行を選択しました。

 思い起こすのは沖縄県辺野古新基地です。県の埋め立て承認取り消しに対して、国が不服申立てを行いました。個人が権力に対抗するために用意された制度を国が恥ずかしげもなく利用するという反則です。

 これと同じで、個人のために用意された制度を、禁じられていないからといって、自治体という公権力が利用するのはやってはいけないことです。

<区長が申請、区長が認可とはこれいかに> 

 その上に、区長が事業者として申請した事業を、区長自身が認可する一人二役というのも、制度の欠陥とはいえ、やはり反則です。

 <内緒で公聴会の「ゴールポストを動かす」>

 7月17日には、杉並区まちづくり条例にもとづき、大規模土地利用計画に関する公聴会が開かれました。事前に区ホームページ上の公聴会運営要綱を見ると「くじにより10人の公述人を選定する」「公述の申出者からくじに立ち会う旨の申出があった場合は立ち会わせなければならない」とありましたので「くじ引きはいつ、どこで行うのか」を所管に問い合わせたところ、なんと、この要綱は公聴会が告知される前日の6月27日にひそかに変更されていたという驚くべき事実が判明しました。

 変更後は、くじ引きではなく、区長が公述人を任意に選ぶことができるようになり、さらに、くじ引きを行う場合であっても公述人を立ち会わせる義務は削除されました。しかも、この要綱の変更については、公述申出者には一切知らせないまま、公聴会に至りました。今に至るまでホームページにも掲載されていないため誰も知ることができません。

 世間ではこういうのを「ゴールポストを動かす」といいます。区民が知ることのできないルールによって行われた公聴会は無効と考えます。

 <賛成の人だけ全員発言>

 このように選ばれた公述人はどういう人たちであったか。公聴会を傍聴したところ、10人の公述人のうち賛成意見が4人、反対・慎重意見が6人でした。後に区民の方が所管に問い合わせたところ、全体で28名の公述申出があったうち、賛成は4名しかいなかったそうです。すなわち賛成意見の4名は全員発言を許され、残る24名からは、たった6名しか発言ができなかったのです。これこそ突然の要綱変更の効果です。

<しかも、区長・区役所のご指名?>

 しかも、賛成の4人は、東京商工会議所杉並支部、マイタウン阿佐ヶ谷協議会、杉並建築会、阿佐ヶ谷神明宮のそれぞれ代表や役員を務める方々です。地域の顔役で、区長、区役所とも日常的におつきあいのある皆さんです。なかの1人の人は発言の中で「もうこのへんでいいですか」と区側に尋ねるシーンもあり、出来レースが疑われます。

 そこで伺います。公聴会開催にあたり、区役所は直前になって内緒で要綱を変更しました。それはどういう理由によるものでしょうか。また、要綱変更の事実を、現在に至るまで公述を希望した人も含む区民に対して公に示していませんがそれはなぜか、説明を求めます。

<まちづくり景観審議会部会も省略> 

 さらに、まちづくり条例によれば、公聴会の次に、区長はまちづくり景観審議会土地利用専門部会の意見を聞くことができるとされていますが、このプロセスが省略されたことも不当です。 

 このように不当なやりかたで結ばれた協定は撤回し、大規模土地利用手続きのプロセスはもう一度公聴会からやり直すように求めるがいかがか、所見を求めます。(Q1-1-1)

 <土地区画整理事業の目的は道路、公園の整備>

 次に事業計画についてうかがいます。

 土地区画整理法によれば土地区画整理事業の本旨は「公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図る」こととされています。すなわち、公共施設をつくるため、個人の財産を一部提供していただく、土地の面積は減るが、利便性が高まり、資産価値が上がるという見返りがある、という仕組みです。

 公共施設のために供出する土地を公共減歩といいますが、一般的には20%、30%、もっと強力な減歩では50%などという例もあるとききます。

<公共施設への拠出はせず、メリットだけ享受>

 ところが、このほど入手した事業計画書を見ると、公共減歩率は全体でわずか4.05%と極限まで低くほぼゼロに近いのが特徴です。

 その一方、河北病院は現状の約1.5倍にあたる30,000平米の延べ床面積をもつ病院を建てられるようになり、地主さんは汚染地・浸水地の河北病院用地を手放し、駅前の一等地を手に入れるという、2者にとっては濡れ手に粟のような計画となっています。一般の土地取引ではない「土地区画整理事業」という特殊な制度をつかうメリットは享受するのに、公共への貢献はほとんど果たさない計画です。

 <「喫緊の課題」への貢献はナシ>

 特に、この間、区が「喫緊の課題」と住民に説明してきた区画北側道路(図1参照。区がいうところの杉一馬橋公園通り)の9mへの拡幅が問題です。

 現在の計画図(図2)でみると、拡幅予定区間の約1/4しか当該区画に入っていません(図2の「A街区上部のグレー部分)。つまり、残りの部分、河北病院本院・分院の北側部分は公共減歩ではなく、別に区が買収することになります(図2の「B・C街区上部のピンク部分)。

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図1 2017年の計画図。北側道路が含まれている

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図2 2019年の計画図

 この事業の民間の主体は、これだけメリットのある計画を使っておきながら、なんとケチくさいことに、これだけの土地すら提供することを拒み、拡幅したいなら区が買い取れと言っているわけです。

<公共性は失われた。認可の撤回を>

 この土地区画整理事業計画最大の公共施設整備だったはずの当該道路がほとんど外れた時点で、もはやこの計画の公共性は失われたといってもよく、土地区画整理事業として施行認可したことは不当であり撤回すべきです。なお、念のため、土地区画整理事業における公共施設とは道路、公園、河川等であり学校は該当しません。

 当該道路の3/4を土地区画整理の対象から外したのはなぜか。また、今後の拡幅スケジュールはどうなるのか、説明を求めます。(Q1-1-2)

 なお、計画図によると他にも2、3、4号道路があります。それぞれ拡幅や付け替えなどが予定されていますが、それらの公共性についても説明を求めます。(Q1-1-3)

土地区画整理事業公聴会開催を> 

 私はこれまで公聴会を開催すべきと要望してきました。土地利用構想の公聴会が開かれたことはいろいろ問題がありながらも一歩前進と評価します。

 しかし残念ながらその対象となったのは、計画のほんの概略にすぎません。このたびの阿佐ヶ谷の土地区画整理事業は最初に述べたように、きわめて公共性の高い地域を改変する開発行為であり、都市計画の扱いに準ずるべきです。

施行認可はいったん撤回し、土地区画整理事業についての公聴会を改めて開催すべきと考えますがいかがか、見解を求めます。(Q1-1-4)

 <「仮換地」前に議会に説明を>

 次に、換地すなわち地区内における土地の権利交換についてうかがいます。

 土地区画整理事業の要は土地利用に関する権利の変換にありますが、いま現在、換地に関する情報は一切公開されていません。

 そこでまずうかがいますが、仮換地指定の時期はいつか。また、仮換地の登記以前に換地計画は議会に説明して審査に付されると考えてよいでしょうか。所見を求めます。(Q1-2-1)

 ちなみに港区の田町駅前開発は、同じ個人施行の土地区画整理事業ですが、区は仮換地指定の直前ではあるが、区議会に詳細な資料を提供して説明を行っています。

<河北病院の土壌汚染、軟弱地盤はマイナス評価すべき> 

 次に換地計画の手法について具体的にうかがいます。

 不動産鑑定評価は行われるのでしょうか。また、河北病院用地は土壌汚染および軟弱地盤が指摘されており、これらの土地の欠陥については当然マイナスに査定されるべきですが、換地計画のなかではどのように評価されるのか、説明を求めます。(Q1-2-2)

<河北病院の汚染を把握していない問題>

 この計画の中で、河北病院用地の汚染調査は大変大きな要素です。仮換地に先立って、河北病院の汚染の状況を把握し必要な費用を評価から差し引くべきですが、先日の他の議員への答弁でも病院から調査報告すらまだ受けていないとのことでした。

 また、土壌汚染調査に関しては、必要に応じてボーリングも実施すべきです。これまで区は病院が更地にならないとボーリングができないかのような説明をしてきましたが、更地にしなくてもボーリングは可能です。

 <杉並区も知っている。原状でのボーリングは可能>

 その一例として、杉並区が国から馬橋公園拡張用地として取得した旧気象庁住宅のケースがあります。先の第2回定例会で、この用地の解体工事に関連して土壌汚染が報告されました。そこで、その詳細について情報公開請求を行ったところ、報告書には、住宅棟の中に入り、畳を上げ、床板を切り抜いて、ボーリングを行っている様子を撮影した写真が添付されていました。直径10cmの筒が入ればいいので、床板を切り抜くといっても、さほど大きな面積ではありません。

  このように、杉並区においても解体工事を行う以前に土地の汚染を把握した事例が確認できました。一時的な作業ですから、もちろん営業中の病院でも調査は可能です。

あらためて、河北病院用地の汚染について、ボーリングを含む調査を行い、汚染の実態を把握するよう求めますがいかがか、所見を求めます。(Q1-2-3)

 <区の権利が「3割」しかないのはなぜ?>

 次に、換地後の権利ですが、区はこれまで、換地後の杉一小敷地について、「区の権利が3割程度残る」と説明してきました。ためしに、路線価を基にして計算したところ、土地の高低や汚染、軟弱地盤などを考慮せず、単純に面積かける路線価で計算しても、杉一小と河北病院の敷地の価値はほぼ5対3、即ち、杉一小における区の権利は4割あって当然、その上、さらに売買の実勢価格や汚染地であり軟弱地盤による減額を考慮すれば、5割、6割の権利があってもいいはずです。

  いったいどのような計算をすれば7:3などという数字になるのか、その計算方法、および、地価をいくらとして計算したのか、具体的な説明を求めます。(Q1-2-4)

 <狙われる駅前公共用地>

 仮換地指定の後は、さらに油断ができません。これも田町の例ですが、この計画では仮換地指定が行われたあとに、容積率を400、500%からなんと940%と、ものすごい緩和を行いました。

  ちなみに、このケースも駅前の学校用地を民間の汚染地と交換する点で、阿佐ヶ谷の計画にそっくりです。いま、駅前の公共用地はどこもディベロッパーに狙われているのです。

<わざと容積率アップをあとまわし> 

 阿佐ヶ谷では、これから仮換地が行われますが、そのあとにやはり、用途地域容積率の変更が予定されています。

 けやき屋敷は容積300%に。また、杉一小の敷地については、現在は商業、近隣商業、住居専用地域が混在しており容積率は500、300、200%ですが、これをすべて商業地域に変更する旨説明されてきました。その際にはいっきに600%まで引き上げるという話です。

  ところが、これらの容積率の大幅な緩和は、先行する仮換地の時点では、まだ実現していません。田町の例同様、いずれ土地の利用価値が大幅に拡大するとわかっているのに、杉一小用地は緩和前の、過小評価された状態で仮換地が行われることになります。区にとっては大損です。

<区が大損する取引。見逃す区議会> 

 通常の売買であればありえない不均衡な取引、区の財産を大幅に毀損する取引が、土地区画整理事業というブラックボックスを使って、いままさに行われようとしているのです。

  区議会がこれほどに不利な取引を見逃すなら、職務怠慢どころか存在意義を問われます。公共の財産を守るために、立場を超えて、この問題について明確な説明と是正を求めることは私たち議会に課せられた使命です。

 <平米150万円の高価な保留地を買うのは誰?>

 なお、土地区画整理事業では、地権者が保留地を拠出してそれを売却することによって事業費をまかなうのが一般的ですが、この事業計画では保留地400平米余を6億円余で売却するとされています。平米単価は約150万円ということになります。

 計画書では、対象地区の平均地価は平米あたり115万円としています。これと比べて3割以上も割高ということですから、ずいぶんといい土地を売りに出すようです。この単価はどういう根拠に基づいて算出されたものか、説明を求めます。(Q1-2-5)

  6億円を投じてこんな高値でこの土地を買うのは誰かということも今後問題になりそうです。

<けやき屋敷100本の大木を伐採>

 阿佐ヶ谷開発問題の最後に、やはり自然環境についてうかがわなくてはなりません。昨年から行われていた自然環境調査がこのほどまとまり、報告書を拝見しました。

  その中でまず、けやき屋敷における大径木の本数は何本か。うちケヤキは何本かをお示しください。特に、そのなかでも大きい木についてうかがいます。目通り径が最大のものは何センチか、また1mを超える木は何本か。お示しください。(Q1-3-1)

 提案されている地区計画素案では、保存緑地及び歴史的景観緑地として一部の樹木を残すことが計画されていますが、これらの対象として保存される樹木は何本でしょうか。お示しください。(Q1-3-2)

 ざっと数えても、残る木は40本足らず、100本もの大木が伐採される計画です。

 <タカのいるまち阿佐ヶ谷>

 また、生き物についてうかがいます。これまで指摘してきた絶滅危惧種のタカの一種ツミについて、この森を使って生息している実態が調査により詳細に確認されました。ちなみに、ツミについてはその後、飛翔している姿を見たとの情報や写真を阿佐ヶ谷の方々からいただきました。

 「タカのいるまち阿佐ヶ谷」素晴らしいですね。

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杉一小校庭でハトを捕まえたツミ

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松山通りのお店の軒先のツミ

 

  東京都の条例では、タカ類の生息環境保全のために特段の配慮が求められます。他の議員の質問にもありましたが、環境省の手引きによれば2営巣期をカバーする1.5年の観察期間が必要なはずです。区は具体的にはどのような対応を行うのか。また、東京都との協議は現在どうなっているか、説明を求めます。(Q1-3-3)

 <自然豊かな屋敷林を残せ>

 自然環境調査では、ツミ以外にも多数の生き物が確認されています。両生類ではアズマヒキガエル、爬虫類ではニホンヤモリがおり、絶滅危惧種ではないが、やはり東京都レッドリスト指定であることが示されています。 

 植物については、けやき屋敷の敷地内では174種、周辺に128種がみられ、日常的に人の手で整備されている屋敷林にもかかわらず、生態系における多様性が非常に豊かであることがわかりました。

<公共性なく区にとって不利な事業、引き返すべき> 

 今回の質問では、土地区画整理事業の施行認可を受けて、計画の公共性のなさ、それに対して民間2事業者のメリットばかりが大きく、区はきわめて不利な取引を強いられる計画であることを述べてきました。

 前に述べた豊洲市場における汚染地との権利交換、また田町駅前の開発とも瓜二つです。

 まちづくりの観点はもちろん、財務の面からも、とうてい認めることはできません。いまならまだ間に合います。区の財産が大きく毀損され、貴重な自然が損なわれる前に引き返す勇気が必要です。

2.保育について

 次に保育についてうかがいます。7月から区立保育園民営化ガイドライン改定のための懇談会が開催されています。私も傍聴しました。本日はこの民営化ガイドラインについてうかがいます。

 現行の民営化ガイドラインは、単なる事務手続きを並べただけのものであって、区立保育園の保育の質を継承していくためには不十分であると考え、これまでもたびたび意見を言ってきたところです。区長も最近は「区内全体の保育の質向上ということを進めていきたい」と述べておられますので、改定に期待したいところです。

 <杉並区の保育を守るために>

 区立園の民営化は行うべきでないというのが私の立場です。しかし、最低限、守るべきルールを策定することは、あるべき杉並区の保育をきちんと守っていくために意義があると考えます。したがって、これまでにも述べてきたように、民営化ガイドラインには、まず、民営化にあたっての区のめざす保育及び理念がまず書かれなくてはならないと思いますがいかがか。また、杉並区は民間事業者の保育園に対して何を期待しているのかうかがいます。(Q2-1)

 <「民営化の必要性」はガイドラインにそぐわない>

 現行のガイドラインには理念がまったくありません。残念ながら、改定案にも理念は明らかでなく、ガイドラインは「民営化を円滑に進めるため」のものと書かれているほか、新たに「民営化の必要性」の説明が追加されています。これは民営化のルールを示すガイドラインにはそぐわない1章で、削除すべきと考えます。

<「保護者満足度」ではなく客観的な比較を>

 次に、杉並区はこれまでの民営化についてどう評価・検証しているのか。この質問をすると毎回返ってくるのは「保護者アンケートで、9割が満足」というゆるい答えです。なんの証明にもなりません。

 検証については、保護者満足度のような主観的なあいまいな数字ではなく、職員の勤続年数、待遇や事故の有無、保育内容、行事など、区立との客観的、具体的な比較が必要と考えますが、いかがか。また、区はこれまでの民営化で何が得られたと考えているか、お示しください。(Q2-2)

<保護者の反対を押し切って進めてきた>

 これまで、区立保育園の民営化にあたって、多くの園では当然、保護者の強い反対が起きましたが、区は「予定どおりすすめる」の一点張りでつき進むのが常でした。

 当該園の保護者に通知もしていないのに、民営化を区民意見募集に付していたり、父母会で相談している最中に、見切り発車で事業者の選定を始めると脅したり、しまいには、選定委員の点数のつけかたまで批判するという始末でした。

 本来、子どもの代弁者としての保護者の意見をていねいにききとり、反映するべきですが、これまで民営化にあたって保護者の意見を取り入れた例があれば、どんなことがあるか、お示しください。

<選定委員会は保護者4名に> 

 また、保護者が意見を言える最大の場は選定委員会です。改定案によれば委員10人中2名しか保護者は入れず、これに対して、職員は5名も入っており不均衡です。保護者は仕事のあと、子育てもある中で会議に参加しなければならず、仕事や子どもの病気などでやむなく欠席することもあるかもしれません。4名の枠を確保することで、誰かが必ず出席できる保証ともなります。したがって、ガイドライン上、保護者枠は4名に拡大すべきと考えますが、いかがか。所見を伺います。(Q2-3)

<職員配置「事業者の判断」でいいのか> 

 民営化でもっとも心配なのは、職員の配置、人数と職員の処遇です。

 まず、配置について。区は「民営化しても区立とかわりません」と説明する一方、「公募要項に定めた条件は守るよう働きかけはするが、罰則などを設けることはできない」また「配置については事業者の判断による」とも述べています。

 参入時に区立のときと同様以上の配置がなされていることは当然のこととして、その配置が開園以後も維持されているのかは随時確認を行うべきですが、どのような体制でチェックしていくのでしょうか。また、現在は、職員に欠員が生じたことを、区としてどのようにして把握しているのか。その場合、事業者に対する支援はどのように行っているか、説明を求めます。

 <毎年の労働環境モニタリングが必要>

また、最近は、多くの「ブラック保育園」などといわれるケースが出てきています。

区では社労士による労働環境モニタリングを行っていますが、民営化した保育園に関しては、毎年の労働環境モニタリングを行うべきと考えるがいかがか、所見を求めます。(Q2-4)

  さらに応募条件として「労働法令違反を指摘されたことがない」こと、及び運営上は「労働法令の遵守」を追加すべきです。また、悪質な場合には、契約解除などを含む罰則も考える必要があるのではないでしょうか。

<保育の引き継ぎ期間が短すぎる> 

 最後に区立から民間への引継ぎについてうかがいます。区は「合同保育は4か月」といいますが、実際にクラスに保育士が入って合同で保育を行うのはわずか2か月にすぎません。これでは、保育士、児童、保護者が相互に知り合い、なじむ時間としてはあまりにも短すぎます。

 これも前から言っていることですが、民間への移行をはさんで前後半年ずつ1年程度は合同保育が必要と考えますがいかがか。民営化後も半年程度は区職員が一部残留して合同保育にあたっている自治体があることは、以前の一般質問でも紹介したところですが、杉並区でも実施できるはずです。そしてその後も週1回程度の巡回支援を行うなど、引継ぎは手厚く指導と連携を強めるべきと考えるがいかがかうかがいます。(Q2-5)

 以上、意見を含め様々述べました。保育の主体である子どもと保護者の意見が尊重されるよう、ガイドラインに取り入れていただければ幸いです。

高円寺小中一貫校設置に反対しました(2019年6月18日の発言)

 だいぶん、時間がたってしまったのですが、高円寺中、杉四小、杉八小の廃止と高円寺小中一貫校の設置対する反対意見を掲載します。すでに議事録も出ているのですが、原稿でごらんください。近隣住民の反対に対する区と建設事業者の対応は、直接の暴力(は犯罪になるので)以外なら何でもありというものでした。

 なお、建設事業者の自作自演により「暴行」で警察の聴取を受けた住民は、当然のことながら不起訴処分となりました。

(2019年6月18日本会議における発言。実際の発言とは異なる部分もあります)

以下原稿。

 議案第32号杉並区立学校設置条例の一部を改正する条例について意見を述べます。
 この議案は杉並第四小、杉並第八小、高円寺中の3校を廃止し、新たに高円寺小、高円寺中を一体とした小中一貫校を設置するものです。3校の廃止と小中一貫校の設置には反対とし、以下理由を述べます。

 第一に、学校統廃合が不適切であることです。杉四小、杉八小の両校学区では、地域の方からの強い反対の声がある中、統廃合が決定されました。児童数の減少がその主な理由でしたが、今日、高円寺も含む区内ではむしろ子どもが増えている原状があり、また、学校が地域の防災拠点であることから廃止にはきわめて慎重であるべきでした。時代の要請にも逆行しているといえます。
 第二に、小中一貫校の教育効果に問題があることです。杉並区に先立つ各地の小中一貫校をめぐる研究でも教育的効果を高めるとのエビデンスはありません。むしろ、小学校高学年の自己肯定感が低くなるなどデメリットが指摘されているところです。区が小中一貫校のメリットとして挙げている中一ギャップの解消についてはすでに中一ギャップの存在そのものが否定されています。
 第三に、新たな学校の配置と設計、つまりは教育環境及び安全性に問題があることです。新たな高円寺学園は杉並区の端に立地しており、しかも環七通りの東側にあります。大半が環七の西側から通ってくる小学生にとっては通学距離がこれまでより格段に長くなる上に、危険な環七を渡らなければなりません。また、小中一貫校の区内第1号である和泉学園は和泉中・和泉小の2校の敷地を合わせて建設されましたが、高円寺学園はさして広いとはいえない高円寺中1校の敷地に建設されたため、特に校庭がきわめて狭小となっています。住民の中からは、仮に小中一貫校にするとしても高円寺中と杉四小の2校の敷地を活用して中学部・小学部として設置すべきという案が出されましたが区は聞き入れませんでした。
 児童数の減少を理由に統廃合されにもかかわらず、最大1080名の受け入れ可能な校舎という過大な建築規模も多くの問題につながっています。まず校舎が巨大すぎて校庭がきわめて狭いこと。また、巨大な校舎を建てるために、建築規制のかからない敷地の南側に校舎をもってきたため、校庭が校舎のカゲに入ること。日照時間は短く、雨、雪の際には校庭がいつまでも乾かないと何度も指摘してきましたが、教育委員会は「北側校庭の例は多数あり、水はけのよい素材を使うの出大丈夫」と説明してきました。北側校庭の例はほとんど見当たらないことも確認しておりますが、その上、結局、今議会では校庭を人工芝にすることが明らかになりました。その理由は土だと雨の時に乾きにくいからだと教育委員会自ら説明しています。これまでの説明は虚偽だったということでしょうか。ちなみにプラスチック環境汚染が指摘される今日にあって、人工芝はその代表的な汚染源であることも留意すべきです。
 特別支援教室の配置については、議会に陳情が出され、大きな議論のテーマとなったことは記憶に新しいところです。
 総体として新校の教育環境が従前よりも劣化することは大変残念です。
 第四に、近隣住民の反対を押し切り、住民を敵視する様々な問題を区役所が引き起こしてきたことです。何度も言いましたが、工事を計画しているのに隣接する住宅に挨拶にすら行かず、一片のお知らせで計画決定を伝えたところから住民無視は始まっています。高円寺中を建て替えるのだから旧校舎同様のものをつくるのだろうと思っていた住民は敷地の南側に30mもの高さの巨大な建物ができることを知って驚き、抗議しました。しかし、区は主権者たる地域の住民の意見を聞き入れて計画を修正するどころか、話し合いに応じなくなり、住民を敵視する始末でした。住民を出し抜いて行われたボーリング調査、建設会社による住民の盗撮、スラップ訴訟、自作自演による暴力事件のでっち上げ、そしてしまいには設計不備による工事の遅れの原因を住民に押しつけるという、嫌がらせのオンパレードでした。何人もの住民が体調をくずしました。「学校づくりはまちづくり」という兵庫はどこへいったのかと思わされます。
 以上、問題点を述べてきましたが、高円寺小中一貫校の経緯は田中区政の問題点を凝縮したようなものです。その根底にあるのは、とにかく大規模な公共工事を行うことが至上命題ということです。その邪魔になると見ればあらゆる手段を使って住民を排除し、意見を聞き入れることはありませんでした。こうした区政が今後も続いていくとすれば、同じ問題がさらに次々に生じる可能性を憂慮するものです。
 以上をもって反対の意見とします。

阿佐ヶ谷北口開発、情報公開と公聴会を求める(2019年6月4日一般質問)

 2019年6月4日、杉並区議会第二回定例会において一般質問をしましたので、質問原稿を掲載します。ところで、今回の一般質問を前に、これだけはどうしても許せないというポイントが2つありました。

・杉一小と権利交換する対象である河北病院用地の価格など情報について「個人情報だから公開できません」と説明していた区の幹部。

・学童クラブの民間委託先を選定する「選定委員会」の委員に選ばれた保護者に「このことは誰にも口外しないように」と口止めしていた区職員。

 両方とも「こんなルールがあるはずない!」と質問するつもりでした。ところが、事前の打ち合わせの段階で、各担当課から「それは間違いです」「そんなルールはありません」というお返事があったのです。ほっとする一方、じゃあ、なぜ区民に対してウソをついて隠したり脅したりするのかとの憤りは消えません。

 以下原稿を掲載しますが、内容の概要は、

1.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

 いよいよ事業認可に向けて区が加速しています。しかし、区民の多くはいまだにこの計画を知りません。知らされていないのです(説明会に参加するなど、計画を知った人は強く反対しています)。土地交換にむけての土地評価額、事業費の区負担額、河北病院の汚染、けやき屋敷の緑と生態系の実態、etc. 区民になにひとつ公開せず重大な財産処分を行おうとしていることに対し、情報公開と公聴会の開催を求めました。

2.児童館・学童クラブについて

 来年3月には児童館がいっきに5館も廃止されてしまうのです。廃止の説明会にいくと、地域の皆さんが「児童館は子どもたちを守るために必要。どうしてなくすのか」と口々におっしゃっていました。

 児童館廃止の目的の一つは学童クラブの民営化です。学童クラブの委託に際して、選定委員会の「守秘義務」、事業者の参入資格が「同様の事業1年以上の実績」が区の要綱に反している件、また、委託された学童クラブの職員に欠員が生じていること、桃五学童クラブの「つめこみ」状態の解消を求めることなど、などを質問しました。 

(以下は質問原稿です。実際の発言とは異なる部分があります) 

1.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

 一般質問をいたします。第一に阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくり、阿佐ヶ谷の再開発についてうかがいます。

 私たち区議会議員の選挙が終わったとたん、区役所はこの計画の実現へむかっていっきに駆け出したようです。開票から3日目には都市計画審議会が開かれ、10連休をはさんで連休明けの7日に土地利用構想の届け出、公告・縦覧開始、そして先々週は7日間の間になんと4回もの説明会およびオープンハウスが開かれるというハードスケジュールでした。 

<重要な情報が全く公開されない>

 阿佐ヶ谷再開発に関する区政の重大な問題は、計画の是非に直結する重要な情報が全く秘匿されているということです。国の情報隠しもひどいですが、それ以上です。

  杉並第一小学校という駅前の一等地にある区有地を処分する計画であるのに、肝心な換地関連の情報は全く示されていません。土地区画整理事業の費用負担も闇です。河北病院の土壌汚染や地質についての情報もありません。また、けやき屋敷の自然環境調査が行われているはずですが、いまだに現況の緑や生態系の実態すらわかりません。

 近隣の皆さんが最も知りたい、河北病院の建築計画も全く不明です。先日の説明会では近隣の方が「日照や電波障害についての情報が全くないのでは、計画に賛成のしようがない」と発言されていました。あたりまえだと思います。

 杉一小跡地に何ができるのかも一切説明されない。10年以上先の計画とはいえ、全く決まってないということはありえず、すでにプランはあるはずです。

<説明会で進め方への批判が多数>

 これほどまでの秘匿ぶりは、あまりにも区民を愚弄しています。当然の帰結として5月24日に行われた地区計画素案の説明会では、区の進め方に対する批判的な意見が相次ぎました。

「説明会というが、決まったことを発表しているだけではないか」

「すぐ近所に住んでいるが、最近までこの計画を知らなかった」

「住民が知らないのに進めるのではなく、もう一度最初からやりなおすべき」

 そして、最後には「今日発言した人は全員反対だったということを確認しましょう」という発言があったくらい、区の進め方に納得いかない方が多数でした。

  まずは、どれくらいの人にそもそも計画情報が伝わっているかを確認するため、阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくり意見交換会及びオープンハウス、土地利用構想オープンハウス、地区計画素案説明会及びオープンハウスのそれぞれの開催回数と延べ人数をお示しください。また、地区計画素案説明会における発言者の人数、およびどのような意見が出されたかをお示しください。(Q1-1、2、5-1)

<意見募集で8割は反対、懸念>

  時期が前後しますが、1月末から2月にかけて、まちづくり計画に関する意見募集が行われました。その結果を区のホームページ上で確認しますと、81名、150項目という多数の意見が寄せられています。しかも、数えてみると、そのうち約120項目、つまり約8割の意見は、反対もしくは一部変更を求める、疑問があるという意見です。意見募集自体がろくに告知もされない中でも多くの方が意見を寄せて、阿佐ヶ谷の将来を心配しているのです。

  内容をみると、屋敷林の保全を求める人が6割強、また、杉一小の移転に反対の人が4割を占めています。これらの意見を尊重する気が少しでもあるなら、いったん立ち止まり、時間をかけて計画を全面的に見直すべきです。地区計画素案説明会及びまちづくり計画の意見募集に対する意見のうち、今後、どのような意見が、計画のどの部分に反映されていくのか、説明を求めます。(Q1-2-2)

都市計画法公聴会の開催を定めている>

  私は、第一回定例会において、地区計画に関する公聴会の開催を求めました。しかし、区の答弁は「公聴会は例示のひとつ」というものでした。この答弁については、予算特別委員会で誤りを指摘しました。すなわち国交省の「都市計画運用指針」では、「法第16条第1項において公聴会の開催を例示しているのは、住民の意見を反映させるための措置として、住民の公開の場での意見陳述の機会を確保するべきという趣旨であることに留意する必要がある。」と述べ、さらに、説明会は、都市計画の原案について住民に説明する場であるのに対し、公聴会は、住民が公開の下で意見陳述を行う場であるとしており、単なる例示ではないこと。したがって、特に必要がないと認められる場合以外は公聴会を開催すべきとしていることです。説明会だけではだめなのです。そこで、あらためて国の運用指針に沿った公聴会を開くことを求めますがいかがか。

 また先の答弁では「十分な陳述の機会を設ける」とのことでしたが、それは何を指すのか、答弁を求めます。(Q1-3)

  同様に、土地区画整理事業についても、杉並区まちづくり条例に定める土地利用構想に関する公聴会を開くことを求めます。条例28条では、大規模開発事業の手続き等について、「区長が必要と認めるときは公聴会を開催できる」と規定しています。区民からも土地区画整理事業に関する公聴会開催を求める陳情が提出されているところです。地区計画および区画整理事業の双方について、区長は、公聴会を開催すべきですが、いかがか。答弁を求めます。(Q1-4)

 なお、同条例26条には「区民等」が土地利用構想について意見を提出できるとありますが、オープンハウスで配布された資料には「周辺に居住する者等」となっており、周辺の人しか意見を出せないのかとの誤解を招きます。区民には正確に告知すべきであり、説明を求めます。(Q1-5-2)

<歴史的にも貴重な屋敷林の消滅という愚行>

 さて、阿佐ヶ谷再開発に関して、個別の課題について述べます。第一に屋敷林の消滅という問題です。何度も指摘してきたように、この屋敷林は杉並区自身が選定した「杉並らしいみどりの保全地区」であり、また、東京都により「旧跡」指定も受けている文化財でもあります。四百年続いてきたともいわれるこの歴史的な屋敷林を、こともあろうに、区が主導して一部の大企業や有力者のいっときの金もうけのために消滅させるというのはなんという愚行か、蛮行か。実施されるなら杉並区の歴史に大きな汚点を残すことになるでしょう。

<緑化率25%では森は守れない>

 地区計画素案で区は、けやき屋敷の緑化率の最低限度を25%と定めました。ところで、地区施設として計画されている保存緑地等の面積を計算すると病院予定地の約15%にあたります。さらに沿道に新たな植栽を行うとしているので、両者をあわせるとそれだけで25%になりそうです。それでは森は残りません。そこでお聞きしますが、25%には地区施設の保存緑地等を含むのでしょうか。地区施設は公共的なものであり、病院敷地の緑化率からは除外して計算するべきと考えますがいかがか。

 また、緑化率を定めただけでは拘束力がなく、地区計画緑化率条例を定めるべきであるが、いかがか。条例を定めないのであれば緑化率はさらに10%程度引き上げるべきと考えるがいかがか。答弁を求めます。(Q1-6)

絶滅危惧種のタカ「ツミ」がいると判明>

 次に、屋敷林の貴重な生態系の問題です。先の一般質問や予算特別委員会で指摘してきましたが、区の委託した自然環境調査においてもツミが確認されたと聞きました。先に指摘したように、ツミは東京都の定めるレッドリストで23区部及び隣接する北多摩地区において「絶滅危惧1A類」即ち「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」とされており、都の「開発の手引き」では、環境省の「猛禽類保護の進め方」のオオタカの扱いに準拠して調査・保護することとされています。「保護の進め方」では、採食地(餌場)の喪失がタカの繁殖への大きな痛手となることから潜在的な採食環境を含め保全されることが重要、としていますが、ツミが飛んでいるからには、けやき屋敷が他の場所に営巣しているツミの採食地として保全の対象となる可能性が高いと思われます。仮にけやき屋敷にツミの営巣が確認された場合は今後の計画にどう影響するのでしょうか。また、巣はなくとも行動圏であると確認された場合はどうでしょうか。答弁を求めます。(Q1-7)

<掘削除去で汚染がなかったことにはできない>

  次に、杉一小の移転予定地とされる河北病院の汚染の問題です。他の議員からの質問に対し、区の答弁は依然として、三者協定で河北病院が汚染拡散防止措置(掘削除去)の費用を負担するので大丈夫というものでした。それではダメなんだということは、予算特別委員会において、第一に土地の権利交換の評価額への影響、第二に土壌汚染対策の責任の所在、第三に学校が開校してからの環境汚染の3つの観点から指摘したところです。

<汚染が除去されても土地の価格はマイナス評価>

 第一の土地評価額の問題では、換地の際に、区が大幅に損失を被る恐れがあります。日本不動産鑑定士協会連合会の「不動産鑑定評価基準に係る実務指針」では「土壌汚染の存在の可能性が認められたときに、それが価格形成に重大な影響を与えないと判断できる場合以外は、土壌汚染の影響を考慮しなければならない」とし、さらには、例え汚染が除去されたとしても、土地の最有効使用の制約、汚染物質の残存の可能性、また汚染地であったということによる心理的嫌悪感(トラウマ)などにより、不動産の減価を招くことに注意を促しています。

 つまり、区がいうような、河北病院が全面的に責任を負うという理由で土壌汚染がない土地と同等とする扱いは誤りであり、仮にそのように扱うなら、それはそのまま、土地価格の過大評価すなわち地権者に対する不当な利益供与ということになります。

<病院の土壌汚染対策は期限つきでは>

 第二に土壌汚染対策の責任です。区は、掘削除去に加え、瑕疵担保責任条項を入れれば、病院側がすべての汚染に責任を負うかのように描いています。しかし、瑕疵担保責任は永遠ではありません。たとえば馬橋公園の拡張用地に関して国との間に結ばれた契約では瑕疵担保責任は2年間であるとのことです。杉一小移転後までは保障されないと考えられます。 

<土壌の全面入れ替えを誰が負担するか>

 従って、第三の小学校用地の問題になります。見つかったところだけ除去するという対策では、後々新たな汚染が見つかる可能性が高く、汚染の危険を完全に回避するためには、土壌の全面入れ替えしかないこと、そして、その費用は区の委託調査により7億3千万円と算定されていることも指摘してきました。この調査では学校建築の費用、即ち区の負担として計上されていましたが、本来は原因者である河北病院が全面的に負うべきです。区は、病院側に負担を求める考えはあるでしょうか。所見を求めます。(Q1-8-1)

<汚染の履歴調査に何年かかるのか>

 また、汚染対策はまず履歴の調査からです。他の議員の質問に対し「病院側は履歴調査を行っているところ」との答弁がありましたが、書類上の調査にいったい何年かかるのでしょうか。3年前の計画策定以前から取り組まれているはずの履歴調査は、とうに終わっているはずですが、区は履歴情報を取得していないのでしょうか。確認します。(Q1-8-2)

<ボーリングはいまでもできる>

  なお、ボーリング調査は病院移転、建物解体後に行うとされていますが、これも馬鹿にした話で、操業中でもボーリングはできるのですから、早急に土壌調査を行うべきです。

<一等地の杉一小を二束三文の土地と交換>

 最後に換地計画です。この開発計画の核心は、何よりも、杉一小用地という阿佐ヶ谷駅前の一等地を開発のタネ地として民間の開発事業者に引き渡すことであり、ひきかえに病院跡地の汚染地で、しかも昔は川や田んぼであったゆるゆるの軟弱地盤、浸水地という誰も買わない二束三文の土地を区が引き受けるというところです。照応原則に反する不適正な権利交換であり、汚染地のロンダリング豊洲市場の小型版ともいえます。

<「個人情報だから非公開」のウソ>

 先日の土地利用構想に関するオープンハウスで、参加した区民の方が、河北病院の土地の価格について尋ねたところ、区のある幹部が「個人情報なんで公開できません」と繰り返し答えている場面に遭遇しました。ところが後日、所管課に確認したところ、あっさりと「個人情報だから公表できないなどということはない」とのことでした。区の幹部が、区民に対して、どうしてこういうすぐばれるウソをつくのか。区民を欺しても、区長および大企業や地域の有力者に便宜を図るというならあきれるしかありません。

<情報公開は「のり弁」>

 私は情報公開により、2017年2月3日の「杉並第一小学校施設整備に関する地権者等調整」の資料を入手しましたが、そこには協議内容として「不動産鑑定評価等について意見交換」と書かれ、暫定版ではありますが、不動産鑑定評価の資料がついていました。区はとっくに鑑定評価を行って、結果を持っているのです。ところが、開示された資料は杉一小以外の部分が真っ黒にマスキングされた「のり弁」状態でした。土地の情報は、本来公開情報であるはずです。まして、区有地の処分に関わることですから秘匿は許されません。

 学校用地は区民共有の財産です。区民はその処分が正当な価格に基づくものかを知り、評価する権利があります。事業認可がおりて、仮換地が実施される前に、換地計画および関連情報を公開するよう求めます。できないとすれば、どのような根拠法令によるものか。説明を求めます。(Q-1-9)

 区の財産を毀損するなんてことはないと区長は以前答弁していましたが、それを証明する情報をなにひとつ出せないでいます。それこそが後ろめたい証拠ではないでしょうか。正しい政策だと自信があるなら、区民に情報を開示して正々堂々と議論するべきです。区民への情報公開と公聴会の開催を改めて強く求めます。

 2.児童館・学童クラブについて

 次に、児童館・学童クラブについて質問します。区立施設再編整備計画第一期第二次プランにおいては、児童館9館の廃止が予定され、すでに今春、下井草児童館が廃止となりました。

<地域に支えられ子どもを守ってきた児童館>

 来年廃止になる5つの児童館のうち、私は3月に行われた3館の説明会に出席しました。どの児童館においても、地域の町会やボランティアの方々が積極的に発言され、一つひとつの児童館が、地域の力に支えられてきたことを改めて知ることができました。

 児童館は子どもが自由に来館し遊ぶことのできる文字通り児童の館であり、その目的には健全な遊びを通じて子どもの健康と情操の発達をはかることがうたわれています。単なる遊びの提供ではなく、児童館という安心できる場所で、子どもが信頼できる大人と関わりながら成長していくところに大きな意味があります。

<児童館職員の専門性をムダにするのか>

 中でも最も大きな力は児童館の職員さんの専門性にあります。ある館の説明会では参加者から「児童館の職員さんが地域のネットワークをつないでくれている。区は『いいまちはいい学校をつくる』と言っているが、その基本をつくってきたのは児童館です」と評価する声、また「いま児童虐待がこれだけ大きな問題になっているときに、杉並区はなぜ児童館の職員を減らし、民間委託するのか。長年つちかってきたノウハウを無駄にする行為ではないか」という疑問などが出されました。

 単なる子どもの遊び場という意味では放課後等居場所事業も一定の役割を果たすことを否定はしません。しかし、児童館が行ってきたのはそれだけでなく、地域の「子育てネットワーク」で学校など公共機関、児童福祉施設、地域の人々がつながりあって、子どもを守る中心となってきました。これは、0歳から18歳までの子どもを長い目で見守る児童館だからできることなのです。

 そこでうかがいますが、区は児童館がこれまで果たしてきた、また現在果たしている役割の重要性についてどう認識しているでしょうか。所見を求めます。(Q-2-1)

<学童クラブ民間委託ガイドライン

 次に、児童館の廃止に伴う学童クラブの民営化についてうかがいます。杉並区は先日「学童クラブの民間委託ガイドライン」を定めましたが、このガイドラインに関連して質問します。もとより保護者はこれまでの区直営の学童クラブを望んでおり、決して民営化に積極的でないことはまず指摘しておきます。

<「選定委員になったことを誰にも言わないように」?>

 第一に選定委員会のありかたです。選定委員10名のうち4名を保護者委員としたことは評価できます。

 ところが、選定委員に選ばれた保護者に対して、区職員が「選ばれたことは誰にも言わないように」と口止めをしたという話を聞きました。所管課に確認したところ「そういう運用はしていない」とのことで安心しましたが、こんな何の根拠もない架空のルールで保護者を脅すようなことが行われているとすればきわめて問題です。そうでなくても、小学生の保護者が夜間の会議に出かけなくてはならないことだけでも大きな負担です。それでも子どもたちのためにがんばろうと引き受けた方が、まわりの保護者に相談もできないような状況に追い込むのは言語道断です。個々の職員が独断で言ったとはとても思えません。子ども家庭部として反省し、今後はこのようなことのないようにしていただきたいと思います。

<保護者委員は保護者の意見を伝える役割>

 保護者委員は、あくまで保護者の代表であり、保護者間で必要な意見交換、情報共有が図れるようにしていただきたいと考えますが、所見を伺います。

 また、保護者の意見をまとめるうえでも、委員会の内容はできるだけ保護者どうし共有する必要があります。その際、選定委員となった方は、委員会の内容をどこまで話していいか悩むことになるでしょう。そこでうかがいますが、選定委員の守秘義務の範囲は何と何か。また、その根拠となる法令はなにかをお示しください。(Q2-2)

<事業者の応募要件「経験1年」は要綱違反では>

 次に、事業者の応募要件について質問します。このたびの民間委託ガイドラインでは、応募要件として、学童保育等の1年以上の実績があることとされ、私は、たった1年かと驚きました。ところが、杉並区委託事業プロポーザル実施取扱要綱第9条においては、参加資格要件として「提案業務又は類似する業務を引き続き2年以上営業していること」とされています。明らかに要綱に反しているのでガイドラインの訂正を求めますがいかがかうかがいます。(Q2-3)

 なお、同条2項、3項の例外規定によりこの要件を除外することができるとの説明も受けましたが、よりによって学童クラブの業務委託に関してのみ特例でハードルを下げるなどありえません。早急な訂正を求めます。

<「学童クラブ運営指針」遵守は選定時に評価されるのか>

  次に、「杉並区学童クラブ運営指針」についてうかがいます。ガイドラインの「事業者への引継ぎ」の項では「運営指針に沿った運営が可能となるようにすること」とされています。指針を読むと「子どもが安心して自分らしさを出し、のびのびと過ごせる場になるように配慮する」とか「子どもの心を理解するように努める」など大切なことが書かれています。まさに杉並区の学童クラブで実践されてきたことが述べられており、大変いい内容だと思います。民間の事業者においても、文字通りこの指針を忠実に実施していただきたいと思います。

  ただ、残念ながら、この指針が選定に反映されるのかは、審査基準、審査項目をみても具体的にはわかりません。審査基準にはどのように反映されるのか。説明を求めます。(Q2-4)

<民間委託学童クラブの職員に欠員>

 最後に、すでに民営化された学童クラブについてうかがいます。まず、民間委託された学童クラブにおいて、区が求める人員配置ができず欠員が生じているところがあるとききました。その中には今年4月に民営化されたばかりのところもあるとのことですが、事実でしょうか。お答えください。(Q2-5)

 人手不足の中、杉並区がいっきに民間委託を進めていることのひずみが出ているのではないでしょうか。

<桃五学童クラブ、つめこみに悲鳴>

 また、4月から下井草学童クラブを移転・統合した桃五学童クラブに関してうかがいます。児童館の学童クラブと比べて問題が多く、子どもたちと保護者から次のような苦情が寄せられています。

子どもの声としては

・とにかく狭い。

・静かに遊べる部屋がない。

・遊ぶとき、宿題するときに机が足りない。

・本が少ない。

・遊ぶものが少ない。

保護者からは

・けんかやトラブル等があった際、気持ちを落ち着かせるためのスペースがなく、気分を切り替えるのに時間がかかる。

・隣に公園(遊び場114番)があって友達が遊んでいるのに、どうして自分はそこで遊べないのか、室内から外に出られないのか、とかわいそうな状況。

・学校の校庭開放は利用できる日や時間が限られており、運動の機会が少ない。

・学童つまらないから行きたくないといわれることもあり、親としては苦しい。

など、かなり厳しい状況を訴えられています。

<下井草児童館のプラザ化延期で遊び場確保を>

 誰ひとり望んでいない下井草児童館の廃止、また、学校内の放課後居場所スペース確保の段取りの悪さ、そのしわ寄せで子どもたちは狭い場所につめこまれ、十分に体を動かすこともできない日々となっています。そこで提案ですが、学校内の放課後居場所事業のスペースが確保できる来年春まで、子どもプラザ下井草の開所を延期して旧児童館施設を活用、学童クラブ及び子どもの放課後の遊びの場を保障すればよいと考えますが、いかがですか。所見をうかがいます。(Q2-6)

 児童館の再編が進み、その問題点が保護者、区民にも次第に明らかになってきました。この項の冒頭に指摘したように、杉並区の児童館は子どもたちにとってなくてはならないものです。その役割を再認識し、再編計画に歯止めをかけていくことを求めて質問を終わります。

あんさんぶる荻窪に関する住民監査請求

 2019年4月25日、あんさんぶる荻窪に関する住民監査請求を提出しました。平たくいうと「あんさんぶる荻窪の財産交換の際、杉並区長は財務省に対して請求すべき消費税分を請求せず約1億2千万円の損害を区に与えたのでこの損害を回復せよ」というものです。以下請求書の本文です。

<杉並区職員措置請求書>

杉並区長に関する措置請求の要旨

1 請求の要旨

(1)

杉並区長は,2018年5月1日、区所有の「あんさんぶる荻窪」の土地・建物と財務省所有の荻窪税務署の土地・建物の財産交換を実施した。

その際、両者の財産評価額の差金として、4000万円を財務省から受領した(資料1)。ところが、区長はこの際に財務省に対して当然請求すべき消費税及び地方消費税相当額1億1840万円の請求を怠り、区に損害を与えたものである。本請求は、区長の責任においてこの損害を回復することを求めるものである。以下詳述する。

(2)

本件財産交換にあたっては、交換差金の決定が以下の通り行われた。

2018年1月16日、財務省において「見積もり合わせ」が行われ、財務省側の評価額と杉並区側の評価額を比較したうえで、交換差金が決定された(資料2)。その際の両者の評価額は下記の通りであった。

財務省側の評価額)(資料3)

・交換渡財産(荻窪税務署の土地建物)

44億0000万円(土地44億0000万円 建物0円)

消費税及び地方消費税相当額0円

合計 44億0000万円(a)

・交換受財産(あんさんぶる荻窪の土地建物)

45億1000万円(土地27億1000万円 建物18億0000万円)(資料4)

消費税及び地方消費税相当額1億4400万円(建物価額18億0000万円×8%)…①

合計 46億5400万円(b)

交換差金(b-a) 2億5400万円(国が杉並区に差金支払い)      

(杉並区側の評価額)(資料5)

・交換受財産(荻窪税務署の土地建物)

47億0000万円(土地47億0000万円 建物0円)(c)

うち消費税及び地方消費税相当額0円

・交換渡財産(あんさんぶる荻窪の土地建物)

47億4000万円(土地32億6000万円 建物14億8000万円)(資料6)(d)

うち消費税及び地方消費税相当額1億0962万9629円)…②

交換差金(d-c)4000万円(国が杉並区に差金支払い)

両者を比較した結果、比較低額である杉並区の評価額が採用され上記(1)のとおり、財務省から杉並区に対して4000万円の支払いが行われたものである。

(3)

ところで、本件において消費税及び地方消費税(以下、消費税と称する)を課すべきは、あんさんぶる荻窪の建物のみである(土地には消費税を課さないこと及び荻窪税務署の建物評価額は0円であることによる)が、(2)に見たように、財務省側はあんさんぶる荻窪の建物評価額を決定後、消費税を算定して加算している(①)。これに対して、杉並区は評価額から割り返して消費税額を算出、表示している(②)。しかし、不動産鑑定士による評価額には取引上の消費税額は含まれていないのであるから、含まれているかのようなこの表記は誤りである。それは財務省側の取り扱い、すなわち消費税を鑑定価額とは別途算出して加算しているところからも明確である。

(4)

本件においては上記(2)にみたように、見積もり合わせの結果として、杉並区の提出した金額がそのまま採用された。ところがこれに消費税が実質的に加算されていなかったことから、杉並区長は本来財務省に対して行うべき消費税額分1億1840万円(杉並区によるあんさんぶる荻窪の建物評価額14億8000万円×消費税率8%)の請求を怠り区に損害を与えたものである。

(5)

本請求の直接の論点は、(4)に述べたように区が被った1億円余の巨額の損失にあるが、それ以外にも指摘すべき論点があると考えるので付言する。

1点目は、本件財産交換において、仮に杉並区が消費税を正しく加算した場合、杉並区の評価による交換差金は1億5840万円(4000万円+1億1840億円)となり、財務省の負担が格段に大きくなることから、その場合、そもそも財産交換自体が破談となる可能性すらあったということである。

本件財産交換は老朽化した荻窪税務署の建替えを焦点とするものであるが、元々財務省側は荻窪税務署の現在地建替えを想定しその際の建築費を約11億円と見積もっていた。他方、杉並区長の提案による財産交換は既存の建物である、あんさんぶる荻窪荻窪税務署が移転することで建替え経費を節減するメリットがあるとされた。この際、あんさんぶる荻窪を改修する経費は7億円余と見積もられた。ところが差金が1億5840万円となれば、改修・移転経費は9億円に迫り、現在地建替えの場合と比べて財産交換のメリットはほとんどなくなるといってよいのであり、財務省が財産交換をとりやめる判断に至っても不思議ではなかった。本件財産交換は杉並区が消費税額を請求しないことによってかろうじて成立したといっても過言ではないということである。

(6)

2点目として、消費税に対する区の認識の誤りを指摘する。国は財産処分の際には消費税を加算する旨を通達により明確に定めており(資料7)、本件においてもそれは実施された。対して杉並区は財産処分を行うことがきわめてまれなこともあり明確なルールがなく、本件およびこれまでの財産処分において消費税を加算せずに行ってきたことが明らかになっている(資料8)。その理由として、区は消費税を納税していないので、財産処分の際、買い手に対して消費税を請求するべきでないとの考え方によるものであったことが、明らかにされている。この点に杉並区の大きな過誤があることを指摘しなくてはならない。

消費税において非課税業者が消費税相当額を顧客から徴収すると、その金額がまるまる事業者の懐に入るかのように描く「益税」とする論があるが、これは誤りである。仕入れにかかる消費税は転嫁することができ、また転嫁しなければ業者自身の負担となってしまうことから、非課税業者であっても当然価格に転嫁することが適当である。これは行政においても同様である。すなわち、杉並区が財産を売却するとして、同財産の形成に必要なたとえば建築工事費等には当然消費税がかかっている。これを売却の際に転嫁しないならば、そのまま区民負担となってしまう。したがって、杉並区においても国と同様、財産処分においては消費税を請求しなければならない。にもかかわらず、本件において杉並区は消費税を実質的に請求しなかった。そのことは財政的な損失であることはもちろんだが、消費税に対する誤った認識にもとづいて行政たとえば産業政策等も執行されていることになり看過できない。

(7)

以上により、杉並区長に対し、損害額1億1840万円を回復する手段をとるよう勧告することを貴職に対し求めるものである。

回復の手段としては(1)国に対して、消費税額を追加請求のうえ徴収することが望ましいが、これが不可能であった場合(2)区長の責任において賠償することを求める。

2 請求者

住 所 杉並区下井草1-25-36

氏 名 (松尾ゆり 自署 印) 

  地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。

 2019年4月25日

杉並区監査委員殿

(別紙)

<資料目録>

資料1:杉並区議会2018年議案第21号(区議会において交換差金4000万円を受領する旨提案されたことを示す。議案は2018年3月15日杉並区議会本会議にて可決された)

資料2:見積もり合わせの結果について(財務省による見積もり合わせの結果、交換差金4000万円を国が区に支払う旨決定されたことを示す)

資料3:予定価格調書(交換差金)(見積もり合わせにおける財務省側評価額を示す。うち明細は交換差金計算調書による)

資料4:評価回答書(財務省側評価額のうち土地・建物の区分を示す。なお、財務省は2者の不動産鑑定士の平均をとって決定額としている)

資料5:見積書(交換差金)(見積もり合わせにおける杉並区側評価額を示す。うち明細は内訳書による)

資料6:不動産鑑定評価(調査報告書)の概要(杉並区側評価額のうち土地・建物の区分を示す。なお、杉並区は2者の不動産鑑定士の評価のうち区にとって有利(受け取り差金が比較高額)な評価額を決定額として採用している)

資料7:普通財産の管理処分における消費税の取扱いについて(大蔵省(当時)が国有財産の処分において「課税標準に消費税率を乗じて求めるものとする」と定めたことを示す)

資料8:2019年3月5日杉並区議会予算特別委員会における松尾ゆりの質疑(区は消費税を納税しないので売却価格に消費税を算定していない旨の区見解を示す)

阿佐ヶ谷のまちづくり~土壌汚染問題を中心として~(2019年度予算に反対する意見)

 2019年3月15日予算特別委員会において、予算に反対する意見を述べました。

 第一に、阿佐ヶ谷の再開発問題です。土壌汚染問題を中心として論じました。(1)土地の権利交換の評価額への影響。(2)土壌汚染対策の責任の所在。(3)学校が開校してからの環境汚染の心配。これらが考えられます。区は「河北病院が全面的に責任を負う」から「汚染がないものとして土地評価」などとふざけたことを言っていますので、反論しております。

 また、この地域で最近オオタカの姿が見られた、と発言しましたが、「ツミ」ではないかとの情報がよせられました。猛禽類の保護、ひいては生態系の保全についても述べました。さらに、地区計画導入に際しての「公聴会」について。本会議での答弁は間違いだと思うので指摘しました。 

 第二に消費税について。昨年5月に「あんさんぶる荻窪」と荻窪税務署の土地・建物交換が行われましたが、その際なんと、区は消費税の請求をしていなかったことが判明。1億2000万円の損になっています。財務省へのサービスだったのかと思ったのですが、実は、消費税のしくみを区が誤解していたということがわかってきました。この件、今後も追及いたします。

 田中区長の「土地転がし」で区が損をするのはもうやめてほしいと思います。

 第三に児童館や保育園などの子ども政策について述べました。杉並区のすぐれた子ども政策をなぜ目の敵にして潰していくのか。区長はなにかウラミでもあるのか。

(以下は発言原稿です。実際の発言とは異なる部分もあります)

 

【阿佐ヶ谷のまちづくりについて】

 杉並わくわく会議として、来年度予算案についての意見を述べます。

 第一に、阿佐ヶ谷北東地区のまちづくりについて述べます。阿佐ヶ谷北地域に育ち暮らして来た者として、この計画で地域が全く変わってしまうことは許容できません。

 質疑の中では、主に土壌汚染問題、換地価格、自然環境の保全についてただしました。

 まず、河北病院は土壌汚染対策法上の特定施設であり、東京都環境確保条例の指定作業場です。すなわち、有害物質を取り扱っている、土壌汚染があることが前提となる施設です。

 指定作業場であることが本件でどう問題になってくるかというと、第一に土地の権利交換にあたっての評価額です。第二に、病院の廃止とその後の工事に際しての土壌汚染対策の責任の所在です。第三に、学校が現実に開校して以降の環境汚染の心配です。

 【河北病院は「指定作業場」であり汚染が前提】

 まず、交換価値について、区は一貫して「土壌汚染については河北病院が全面的に責任を負うので、換地の評価には汚染を勘案しない」との態度です。しかし、土壌汚染調査は、あくまでも河北病院がけやき屋敷用地に移転した後に行うとのことであり、その実態は今のところ全くわかりません。病院が指定作業場であることを前提すれば、汚染があることを前提として評価する必要があります。

 何度もいいますが、この時点ですでに「照応原則」に反するのでそもそも換地が成り立たない土地だということです。区役所、区議会の皆さん、法の求める公正さを守らなくていいという立場に少なくとも私は立てませんが、みなさんはどうなのですか。

 【土壌汚染は「可能性」でも価格に影響】

 不動産鑑定においては、土壌汚染に対して、浄化費用分及び心理的減価(スティグマ)分をさしひく必要があるというのが常識です。

 また、本件に関しては土壌汚染の有無がいまのところ不明ではありますが、その場合には土壌汚染がないものとしてはならないというルールがあります。日本不動産鑑定士協会連合会の「不動産鑑定評価基準に係る実務指針」では「土壌汚染の存在の可能性が認められたときに、それが価格形成に重大な影響を与えないと判断できる場合以外は、土壌汚染の影響を考慮しなければならない」、また、「汚染の除去等の措置が行われたとしても、措置方法次第ではそれによる最有効使用の制約に加えて、汚染物質は存在し続ける場合もあり、また汚染物質を除去した場合でも汚染地であったということが心理的嫌悪感を招来し、対象不動産の減価の要因となる場合がある」とされています。

【本件病院跡地は汚染地かつ浸水地で売却困難】

 すなわち、汚染地は汚染の可能性があるというだけでも、またみつかった汚染が除去されたとしても、その価格を低く見積もられるのが常識なのです。本件病院跡地は加えて浸水地でもあり、地権者からすれば売却にはきわめて不利な土地ということになります。これを区が駅前の一等地と交換してくれるとは、天の助けのような話です。

 逆に、区は、不当に高い代価を払うことになり、地権者及び病院に対する不当な利益供与ということになります。公共財産の処分としては、許されません。

豊洲市場と同じ手法】 

 汚染地を汚染のないものとして扱うこの手法は、豊洲市場用地の土地交換で使われたものであり、田中区長はその経験から、ここでも同じ手法を使おうとしていると思いますが、区民の財産を毀損する不当な手法であり、正当な価格算定を要求します。

 ちなみに、換地にかかわる鑑定の情報などは請求しても黒塗りで出てくる状況です。これでは区議会、区民は、正しい判断ができません。仮換地指定以前に、換地計画とその根拠となる情報を区民に公開することが求められます。

 【土壌汚染対策に瑕疵担保責任を】

 第二に、土壌汚染処理の責任についてです。協定では「土壌汚染拡散防止措置、掘削除去」を病院の負担で行うとなっています。ところで、掘削除去といったところで、発見することのできた汚染土壌の除去、入れ替えであって、敷地全体の土壌の入れ替えではないことに注意が必要です。土壌汚染調査はサンプリングで行われるので、発見できた以外にも汚染が残っている可能性は否定できません。

 病院側が対策を行った後にも隠れた瑕疵がみつかった場合のために、病院の瑕疵担保責任を明記した契約を結ぶ必要があることは指摘しました。

 他の委員の質問に対して、吉田副区長が「馬橋公園拡張用地では国の責任でちゃんとやっている」と発言しましたが、その用地の国との契約において、瑕疵担保責任がうたわれているのですから、まして民間との取引においては当然のことと考えます。

【土壌の全面入れ替えが必要だが】 

 第三に、学校用地としての利用と汚染の可能性の問題です。いまのべたように病院側が汚染対策をしたとしても、のちのち汚染が見つかる可能性がないとはいえません。それは、学校が建設され、運営が始まったのちに発見される可能性もあります。

 それを避けるためには、やはり土壌の全面入れ替えが必要と考えます。小学校用地として使われる前提で話が進んでいるのですから、病院の責任において、土壌の全面入れ替えを行うことを求めるべきです。先ほどの土地評価の話にもどると、そこまでの保証があってはじめて「汚染のない土地」としての評価ができるものです。

【土壌入れ替えは区の負担になる?】

 ところが、区が民間に委託した「阿佐ヶ谷駅北東地区大規模敷地活用に関する調査業務委託報告書」では杉一小改築の費用算定に土壌入れ替えの費用7億3000万円が計上されています。河北の土壌汚染対策とは別に、区の負担で土壌全面入れ替えを実施するのかと問うたところ、それは今後の調整ということでした。

 今後の調整とはすなわち、土地区画整理事業全体の事業費の中に紛れ込ませてしまおうということなのか、そうして病院は負担を逃れて実質区負担になるのではないかと危惧します。

 【土地区画整理事業が隠れ蓑に】

 個人施行の土地区画整理事業という形をとっていることが、あらゆる情報の隠れ蓑となっています。区の財産処分をチェックするはずの財産価格審議会も口出しできません。

 なお、吉田副区長は日産跡地の話もされましたが、ここでつけたすと、この土地はURが購入後も地下水の汚染がみつかり、日産が薬剤処理したが、その後、1年間のモニタリングが行われています。河北病院跡地も、汚染の状況によってはモニタリング期間を必要とし、結果として、杉一小の移転はさらに1~2年延びる可能性も出てきます。これも調査業務委託報告書で指摘されていたことです。

 【絶滅危惧種の猛禽がいる】

 次に、環境保護の問題です。現在の計画では阿佐ヶ谷のシンボルであるけやき屋敷の森がほとんど消滅してしまいます。「意見交換会」でのコンサルの説明では緑化率を25%とするとの案も示されていますが、その大部分は新たな沿道緑化であり、森は南西の一部が形だけ残るだけです。

  東京都のレッドリスト絶滅危惧種IAに指定されているツミの話をしました。IA類とは「近い将来の絶滅の可能性が非常に高い」という分類です。

 ツミは2013年の杉並区自然環境調査において、のべ12羽が目撃され、区内で新たに繁殖が確認されました。先日本会議でお示しした写真は阿佐ヶ谷駅近くの商店街で撮影されたものですが、けやき屋敷、神明宮でも目撃されています。

 環境省の「猛禽類保護の進め方」では、猛禽類は行動圏が広く、調査によって得られる情報は断片的なものでしかない。したがって専門家の知見を得て不足している部分を補うことが重要、とされています。

 営巣地だけを守ればよい、個体が視認されなかったから終わり、ではありません。当該地はよそに住んでいるツミなど猛禽のえさ場になっている可能性も高いのです。

【森がなくなれば生態系が失われる】

 猛禽は生態系の頂点です。猛禽がいるということは、下位の生態系も健全なのであり、森がなくなることは、猛禽を頂点とするそこにある生態系が根こそぎ失われることになります。低木でも芝生でもなんでもいいから緑を植えれば緑化だという考え方では守れません。他の委員から玉川上水周辺の生物多様性保全という発言がありましたが、他方これほど都市化が進んだ阿佐ヶ谷における残された生物多様性はいっそう貴重で壊れやすいものです。区長が主張するように、区が関与したからみどりが守れるというのなら、この森を守るために、病院配置、学校配置をいまいちど見直す必要があると指摘します。

 【公聴会は「ひとつの例」ではない】

 次に、地区計画等における公聴会の開催についてです。

本会議では「公聴会は例示のひとつ」との答弁でしたが、これは国交省の見解とは異なるものです。

 「都市計画運用指針」では「特に、法16条第1項において公聴会の開催を例示しているのは、住民の意見を反映させるための措置として、住民の公開の場での意見陳述の機会を確保するべきという趣旨であることに留意する必要がある」と述べています。ここには「公聴会は一つの例示」とする言葉はなく、あえて公聴会、と書かれている意義について注意を促しています。

【説明会と公聴会は違う】

 つづいて「説明会は、都道府県または市町村が作成した都市計画の原案について住民に説明する場と考えられ、公聴会は、都道府県または市町村が作成した都市計画の原案について住民が公開の下で意見陳述を行う場と考えられる。(中略)今後は、都市計画の名称変更その他特に必要がないと認められる場合を除き、公聴会を開催するべきである」としています。

 説明会と公聴会を明確に区別し、そのうえで公聴会の開催を求めているものです。説明会ではだめなのです。本会議で答弁された「意見陳述の機会」を国交省の指針の趣旨を忠実に反映して行うように求めます。

 【消費税について】

 次に、消費税について述べます。今年10月の消費税率引き上げは区民の生活と営業に大きな打撃となるだろうことは想像に難くありません。質疑への答弁では、そのへんの関心があまり高くないらしいので残念に思いました。もう少し事業者に寄り添った対応が必要だと思います。

 【消費税1億2000万円の請求もれ】

ところで、あんさんぶる荻窪の財産交換を調べているうちに、大変な問題にぶつかりました。あんさんぶるの価額見積もりに消費税が転嫁されていなかった問題です。この金額は約1億2千万円にのぼり、この取引で区長はこれだけの損害を区に与えたことになります。 転嫁しなかった理由は、区が消費税を納税していないから、請求しなかったということでした。もし本当だとすると、これは大変な誤りです。

 【「益税」の誤り】

質疑でも指摘したことですが、よく「益税」といって「消費税は預り金であり、免税業者が消費税を徴収するのはおかしい」という論が見られますがこれは誤りです。事業者は消費税を徴税しているのではなく、自らが払った消費税を商品価格に転嫁することができる、という仕組みです。私たちがまちで買い物をして払う消費税は、正確には税ではなく、消費税が転嫁された価格の一部にすぎません。 

 杉並区はこの誤った「益税」の考え方にとらわれ「消費税を払わない者が消費税をとってはいけない」と間違えてしまったのではないでしょうか。もちろん、価格に転嫁するしないは事業者の自由ともいえます。しかし、区の場合は転嫁しなければそれはそのまま区民負担になってしまいます。あんさんぶるの財産交換では1億2千万円もの区民負担となってしまいました。しかも、他の資産売却でも同様に処理されてきたというのだから深刻です。

 同時に、消費税に対する誤った認識は、区民、事業者に対する区の政策にも影響を与える恐れがあります。特に、事業者の皆さんの経営と消費税の関係を誤って解釈する恐れがありますので、認識を正していただくようお願いします。

 すでに売却された、あんさんぶる等の資産について、この消費税分についての取り扱いは今後適切な形で是正を求めていきたいと考えています。

【田中区長の「土地ころがし」】 

 そうでなくても、あんさんぶるの財産交換には、財産鑑定が行われず、価格調査という形で交換が行われたこと、またその内容にも問題があることは昨年の予算特別委員会で指摘したところです。

  田中区長が、区有地および区施設を、土地ころがしのように国や民間の土地と交換し、そのたびに区の財産が毀損されていくのは見ていられません。

 このたびの阿佐ヶ谷の再開発においても、駅前一等地の貴重な区有地である杉一小敷地を手放し、駅前の一体開発に供するのは、区民のためではなく、不動産ディベロッパーや金融機関、ゼネコンなどの利益のためでしかないと厳しく指摘するものです。

 【公共用地が食いものにされる】

 他区でも、中野区の東中野小跡地のマンション開発、港区の田町駅前の土地区画整理事業による公共用地を利用した高層ビル街建設など、公共用地を食い物にする開発がいま都内で相次いでいます。このような手法を杉並区に、阿佐ヶ谷に持ち込むのはやめていただきたいと思います。

【区内各地に道路問題】

 都市整備ではこのほか、西荻窪の132号線をはじめとして、高円寺の227号線、この阿佐ヶ谷の133号線、相互通行問題がくすぶりつづける荻窪131号線。外環道、外環の2など多くの道路問題。動き始めた西武新宿線連続立体事業もあります。大型公共工事が住民の生活に及ぼす影響ははかりしれません。地域住民が主人子となるまちづくりに転換する必要があると指摘します。

 【児童館、保育園等子ども政策】

 次に、児童館・学童クラブ、保育園等子ども政策について述べます。委員会質疑では、最近の事件を受けて、児童虐待への対策を求める多くの発言がありました。どのご意見ももっともと思われるものでしたし、区が対応を急いでいることもわかりました。

 しかし、虐待の発見とその後の対処は、いわば対症療法です。もちろん、緊急に対処が必要なケースもありますが、行政が行うべき本質的な責務はもっと深いところにあるのではないでしょうか。

虐待行為やいじめなどが起こらないような親子関係、子ども相互の関係づくり、そして、子どもが安心して自分らしく成長していける社会と家庭のゆたかな環境づくり。いわば、対症療法以前の基礎体力作りのところで親子を支えていくことは、基本的な行政の役割です。

 【児童館がセイフティネット】

 杉並区の児童館は、職員はもちろん、地域の子育てネットワーク事業で、地域の人々や学校、行政機関と連携しながら子どもたちを守っています。一例として、昨夜説明会に参加するため訪れた堀ノ内南児童館では、町会の方が、特別支援学級の子どもたちの送迎などサポートを行っているとのこと、地域の力で子どもたちが守られていることがよくわかりました。

 これこそが杉並の子どもを守るセイフティネットです。児童福祉事業ではない放課後等居場所事業では、ここはカバーできないところなのです。

 しかし、新年度も児童館の廃止がスピードアップして進められます。

 【認可とは名ばかりの保育園】

 保育園も同様に、単なる子どもの預り所ではなく、親も子もともに成長していく場として保障されてきました。しかし昨今は、その能力のない保育園が増えてきました。区立保育園の民営化、及び、新しい民間園の質の問題です。区は認可保育園を今後も増やしていくといい、それ自体は必要なことですが、残念ながら、最近の新しい園の多くは、認可とは名ばかり、ビルの一室だったり、園庭がないのは当たり前、驚くほど狭い敷地に、子どもをぎっしり詰め込むような園が多くなりました。数ばかり追いかけて、保育の質がおきざりになっています。

 児童館廃止及び保育園、学童クラブの民営化に歯止めをかけて、今いちど、杉並区のすぐれた子ども政策、児童館、保育園のあり方に立ち戻ることが必要と指摘します。

  以上、区政の主な問題点について述べてまいりました。

 杉並わくわく会議として、平成31年度杉並区一般会計予算ほか4予算には反対とし、関連議案のうち、第23号議案については反対、他の議案については賛成とします。

  終わりにあたり、職員の皆様には、この間、資料の調整に多くの労力を割いていただき、また様々な問題につきまして丁寧にご教示いただきましたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

阿佐ヶ谷の土地区画整理事業・地区計画に関する追加知識

 杉並区は2月28日まで「阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくり計画(案)」に対する意見募集を行っています。

www.city.suginami.tokyo.jp

 このページの「案」だけを読んでも具体的な中身はわかりません。

 住民グループ「阿佐ヶ谷の原風景 けやき屋敷の緑を心配する会」のブログを参照してください。こちらに掲載されている補足情報を簡単に紹介します。

1.けやき屋敷の緑はほとんど残らない(→けやき屋敷の緑地は20~25%のみ?)

 この記事に掲載されている写真は、区のオープンハウスに掲示されていたものです。けやき屋敷一帯の「河北病院予定地」の緑化率は20~25%とされていますが、写真の薄い緑の部分しか残らないとのことです。現状を航空写真でみると、屋敷の屋根が見える以外はほとんど緑に埋め尽くされているのですが。

2.河北病院は高さ40m=10階建て(→中杉通り沿いは高さ60mか?

 区の資料には「森に囲まれた病院」と素敵なことが書かれていますが、高さ40mですから現実には林立するビルのまわりに少しの緑という光景です。

3.小学校を汚染地へ移転(→中杉通り沿いは高さ60mか?

 杉並第一小学校は河北病院の跡地に移転する計画ですが、汚染地への公共施設の設置は豊洲市場を連想させます。また、河北病院の土地はきわめて地盤がゆるいこともわかっています。(辺野古と同じ軟弱地盤)

4.小学校跡地は高層ビル(→中杉通り沿いは高さ60mか?

 杉一小用地は病院用地と交換されます。そして、西友三菱UFJ銀行と並ぶ、中杉通り東側には60mの高さまでのビルが建てられるようになります(容積率や斜線制限も緩和)。

 

阿佐ヶ谷「北東地区のまちづくり」について(2019年2月18日一般質問)

 2019年2月18日、杉並区議会定例会において一般質問を行いました。質問項目は、 

1.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

2.児童館・学童クラブについて

です。とりいそぎ、発言原稿を掲載します。(実際の発言は原稿と異なる部分があります。)

1.阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて

 一般質問をいたします。第一に、阿佐ヶ谷駅北東地区のまちづくりについて質問します。

<区民に知らされない「意見募集」>

 現在、杉並区は「阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくり計画」についての意見募集を行っています。しかし区民のほとんどはそのことを知りません。なぜなら「広報すぎなみ」には告知がなく、区のホームページトップの「区からのお知らせ」には「阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくり計画案について」と書かれているだけです。そこから意見募集を読み取るのは不可能です。

 また1月28日には「まちづくり報告会」、31日には「オープンハウス」が開催されました。25日にはこの2つの会合の案内が、珍しく「区からのお知らせ」に掲載されましたが、28日当日になって、何があったのか知りませんが、この告知が忽然と消えていました。

 あらためて、阿佐ヶ谷の説明会等の開催、および意見募集については「広報すぎなみ」及び区のホームページで区民全体に告知し、ホームページの記載も「意見募集」が行われていることが明確にわかるように書き換えるべきと考えますがいかがでしょうか。うかがいます。(Q1-1)

 <「意見交換会」は名ばかり。「公聴会」を求める>

 また、これまでの「まちづくり意見交換会」は案内を地権者、居住者等ほんの一部にしか配布しておらず、いつも10人程度の参加しかありません。しかも、「意見交換」とは名ばかり、ほとんどの時間は説明を聞く会です。これでは区民の意見を十分に聞いたとはいえません。

 都市計画法16条には都市計画に係る公聴会開催の規定があります。「都市計画運用指針」ではこの条文が「縦覧及び意見書の提出とは別に、都市計画の案の作成の段階でも住民の意見をできるだけ反映させようという趣旨」であり「住民の公開の場での意見陳述の機会を確保するという趣旨であることに留意する必要がある」と説明しています。今回は杉並区の中でも学校、病院、森を含む駅前の最も公共的なエリアの地区計画です。地権者だけが納得すればいいというような話ではありえません。広く区民に諮って意見を聞く「公聴会」を開催すべきと考えますがいかがか。所見をうかがいます。(Q1-2)

 <具体的な内容は隠されて>

 さてこのたび公表された計画案を読みますと、これまで「意見交換会」で区の担当者とコンサルが詳しく説明してきた具体的な規制数値等が何も書かれていません。

  緑化率、高さ制限、容積率などの数値は、この地区計画に対する、賛否を含めた判断をする際の最も重要なファクターです。例えば、けやき屋敷のみどりがどれくらい保存されるのか。50%なのか、30%なのか、はたまた10%なのかで判断は変わってきます。

  建物の規模感もわかりません。「意見交換会」では何度も地域の方から「河北病院はどのくらいの高さ、大きさになるのか。ヘリポートはできるのか。入口はどちらになるのか」などの質問がありましたが答えはなく、「高さ40mのビル」という話が出てきて初めて、だいたい10階建て、森の高さをはるかに超すビルが建つ、ということがわかったのです。

<河北病院は10階建て、杉一跡地は60mの高層ビル街に>

  さらに、杉一小跡地です。今回の計画案には「一体的な街区として土地利用の見直しを行う」と書かれています。これだけでは何のことやらわかりませんが、コンサルの説明では「中杉通り側は斜線制限を緩和、高さは60mまで可」です。

 しかもよく見ると「小学校の跡地『等』を活用」と書かれていて、地図上では杉一だけの話ではなく西友三菱銀行も含むブロック全体の計画になっています。つまり、中杉通り東側のこの3棟の建物を「一体的な街区として」再開発し、60mのビルが並ぶ計画ということです。しかし、公表された計画案だけではここまで読み取れません。そこには「60m」という数字が欠けているからです。

 すでに意見募集は始まっていますが、今挙げたような数値はこれからでも公表すべきと考えますがいかがか。報告会で配布された「まちづくりルールのイメージ、意見交換会での主な提案内容等」という資料もあり、まずはこれをサイト上に公開することです。

 <批判的な意見は削除されている>

 また、意見募集の資料には「意見交換会で出た主な意見」が書かれていますが、そこには「60mの高さには反対」とか「みどりを『できるだけ守る』というだけでは弱いのでは」といった発言は載っていません。批判的な意見は消されています。疑問を呈する声、反対の声も率直に公開すべきです。

 以上、意見募集に際しての情報提供のありかたは極めて不十分です。公正な情報提供を求めますがいかがか、見解を伺います。(Q1-3)

 <「道路基盤」「法規制」が不都合なのは誰か>

次に計画案の「まちづくりの課題4 更新時期を迎えた複数の大規模建築物等」についてうかがいます。本文には「道路基盤や法規制により建物の機能更新が難しく」とありますが、「道路基盤」「法規制」とは何か伺います。「道路基盤」は中杉通りに面した建物に関しては問題があるとは思えないので、これは河北病院のことだと思われます。

 河北病院、地主さん等で構成する民間団体「阿佐ヶ谷駅北東地区を考える会」が2017年に区に提出した報告書には、病院の建て替えのためには、東京都建築安全条例の道路幅員がネック、また、区道つけかえをすれば、杉一馬橋公園通りの9mへの拡幅が必須で、まだ新しい河北の分院を壊さなければならないことが課題と書かれていました。また、「法規制」についていうと、以前にも指摘したように、河北病院がめざす現在の3倍程度の床面積が、現在の容積率および建築規制では実現できない。要は病院の都合という話です。まちづくりの課題ではありません。

  また、「適正な土地利用が行われていない」とも書かれていますが、これは例えばどういった状況を指したものでしょうか。杉一やけやき屋敷で容積率が十分消化されていないというようなことを言っているのだとすれば、これも環境を守るという点から疑問です。以上説明を求めます。(Q1-4)

 <区議会選挙の最中に計画を認可?>

 11月に新たに交わされた三者の協定書にはスケジュールの線表がついています。これによると、今年5月には土地区画整理事業の施行認可がおりる予定になっています。ところで今年4月は区議会の改選があり、私たち区議会議員の任期は4月末で切れます。新生議会が機能するのは5月も末になってからのことです。まさか4年に一度しかない、区議会が実質止まってしまうタイミングをとらえて、まちのあり方を根底から変えてしまうような大問題について、区長認可を出そうとしているのでしょうか。

<地区計画よりも先行する区画整理事業>

 また、この線表を見ると、区画整理事業が施行認可されたのちに地区計画等の都市計画手続きが行われるように読めます。しかし、今回の計画は、単なる土地区画整理事業ではなく、公共の場所に緩和型の「街並み誘導型地区計画」を導入し、独自の建築規制を設けるものです。こうしたルールは土地区画整理事業に先立って公益の観点から審査されて設定されるのがスジですが、区は逆でとにかく区画整理事業ありきの日程のようです。

 そこで、伺いますが、土地区画整理事業の施行認可の時期、他方、地区計画の都市計画審議会での審議などのスケジュールはどのように想定されているのか。また、地区計画の規制については、高さや容積率の制限、敷地の最小面積、壁面後退、などを条例で定める必要があるものと考えますが、いかがか、お尋ねします。(Q1-5)

 <阿佐谷北にオオタカが飛来!>

 次に、貴重な屋敷林の保全についてうかがいます。

 先日、阿佐ヶ谷北2丁目でオオタカが目撃されました。近所の方が写真をとったのがこれです。電線にとまりスズメを押さえつけて夢中で食べているところでした。(※写真は本会議録画配信またはこちらのサイトをご覧下さい。)

 場所はJR中央線の間近です。阿佐ヶ谷にタカが飛んでくるなんてすごいことです。けやき屋敷の森があってこそのことです。この森は守らなくてはなりません。

 <個人まかせにせず、区の責任で森の保全を>

 以前にも指摘したように、区はけやき屋敷を、区内10か所しかない「杉並らしいみどりの保全地区」に選定しているのですから、個人まかせにせず、区の責任で現況を保全するのが原則と考えますが、いかがか。所見を求めます。

 昨年の決算特別委員会で紹介した「東京の自然の保護と回復に関する条例」の理念も、基本的に現況を保全するか、または移植となっています。しかし、今回の計画案では「可能な限り」「できるかぎり」などと書かれるにとどまっており、守られる保障がありません。

<緑化率25%にするのか。それで十分か>

意見交換会」ではコンサルが「けやき屋敷を中心とする河北病院の用地については、緑化率を25%程度としたい」と説明してきました。25%が妥当かどうかはわかりませんが、具体的な数値を規定する必要があると考えますが、いかがか。

 ただし、条例で定めない限り、いくら高い緑化率の目標をかかげても、拘束力がありません。したがって、都市緑地法に規定された地区計画緑化率条例を制定すべきと考えますが、いかがか。所見を伺います。(Q1-6)

 <緑地を地区施設として守るのか否か>

 さらに、意見交換会ではコンサルから「緑地を地区施設として設置する。地区施設というのは安易に改変できないものなので、緑地が必ず残せる」との提案がありました。ところが、この計画案にはこのことが明記されていません。

 同じ地区施設である道路については、たとえば「幅員9m」などとその数字まで具体的に書かれていることと比べ、消極的です。緑地を地区施設とすることについては計画化されるのでしょうか、されないのでしょうか。答弁を求めます。

<けやき屋敷南側の並木は伐採?>

 特に、けやき屋敷門前の砂利道沿いのけやきの木は、景観としても歴史的にも重要なものだと、意見交換会で何度も住民の方から意見が出されています。ところが、計画案の図をみると、この道をはさんで南側のけやきは保全される緑地から外れています。じっさい、現地では、大幅な剪定がなされ、けやきは丸太のようになってしまっています。これらの木は保全することなく切ってしまうのでしょうか、伺います。(Q1-7)

 <土壌汚染は豊洲市場と同じ>

 この項の最後に、杉一小の移転が計画されている河北病院敷地の土壌汚染についてうかがいます。ただでさえ、病院用地は土壌汚染対策の対象とされます。まして河北病院は、昭和初年に創業された病院です。当時の環境基準、医療廃棄物管理は、全く野放しといっていい状況だっただろうと想像されます。

 以前にも指摘しましたが、仮に病院跡地の土壌を全面的に地下3mまで入れ替えることになれば7億円以上の費用がかかるということは、区自身が算定しています。仮に7億円かかることになったとき、果たして、河北病院がそれを全部背負って責任を果たしてくれるのでしょうか。

 ここで想起されるのが東京都の豊洲市場です。東京都は市場用地の汚染処理を東京ガスに請求することを放棄し、都の費用で処理してしまいました。この例を見るとき、河北病院跡地の汚染対策を、杉並区の費用でまかなうことがないとは言い切れません。

<肺がん見落とし事件で手のひら返し>

 さらに、河北病院については、昨年から区を大きく揺るがしている肺がん検診の見落とし問題があります。この問題の当初から病院の対応は非常に鈍く、かつ、区長も先日の記者会見で述べていたように、昨年末になって突然、病院側の見落としは問題なかったかのように主張し始めました。いわば杉並区としては手のひらを返されたわけです。その法人を、本当に阿佐ヶ谷再開発のパートナーとしてよいものでしょうか。

  区担当者の説明によれば、いまのところの計画では、河北病院の移転後、現在の建物を解体した後にはじめて土壌汚染の調査を行うとのことですが、そこまで進んでしまってから、法人側がまた手のひらを返したら小学校はいったいどうなってしまうのでしょう。

南伊豆町の病院跡地、有害物質で計画がストップ>

 実際、杉並区政にとってはある意味身近なところで、病院跡地の汚染問題が起きています。

 他の議員からも指摘があった南伊豆町の旧湊病院跡地の汚染問題です。杉並区も協力して行うCCRC事業の予定地から、微量ながら有害物質が検出されたことで、CCRC構想は現在暗礁に乗り上げているとのことです。病院跡地の利用はこうしたリスクがあるということです。ましてこちらは小学校の用地です。

 <計画認可以前に土壌汚染の確認を>

 では、リスクを回避するにはどうしたらよいか。まずは、土壌汚染の状況を、いまのうちに確認しておくことです。土地区画整理事業の施工認可の前に、病院に対して土壌汚染の調査を求め、その結果を公開して区民の判断をあおぐことが適切と考えますが、いかがか、所見を求めます。(Q1-8)

 2.児童館・学童クラブについて

(1)児童館の再編について

 次に、児童館・学童クラブについて質問します。まず児童館の再編に関連してうかがいます。

<下井草児童館廃止後も小学生の使用を>

 先日、下井草児童館の廃止とプラザ転用の説明会が行われました。下井草地域では「ジャリ公園」とよばれて親しまれた向井公園が2016年に廃止され保育園に転用されましたが今回さらに、隣接する児童館が廃止され、また、来年春には、隣の学区の東原児童館も廃止される計画であり、この地域の子どもの居場所が次々に廃止されていくのは、何の罰なのでしょう。

 説明会では、何人もの保護者の方が「思い切り体を動かせる場所が減ってしまった。児童館の遊戯室は、これからも小学生に使わせてほしい」と発言されました。区の計画では小さな部屋を放課後の小中学生の場所とするようですが、今まで遊んでいた子どもが、遊戯室を使えなくなるのはかわいそうです。説明会でお話を聞いているとき、廊下のほうから、子どもの声で「3月まではここで遊べるんだよね」という話し声が聞こえました。じゃり公園も失った子どもたちに、再度こんなことを言わせるのは本当にむごいです。保護者の方々の声のとおり、遊戯室のタイムシェア利用はできないか、うかがいます。(Q2-1)

 <子どもプラザ天沼で小学生は>

 下井草児童館は子ども子育てプラザに転用されますが、先日、プラザ天沼利用者のこんなエピソードを聞きました。休日、お父さんが1年生と就学前の2人の兄弟をつれてプラザ天沼に遊びにいったところ、お兄ちゃんだけが小学生の部屋に誘導された。弟はお父さんと楽しく遊んでいたが、お兄ちゃんはひとりでいなくてはならず、つまらないと訴えて、3人とも早々に帰って来ることになってしまったというのです。

 プラザ天沼ができたとき、見学させていただきましたが、入口にはたくさんの下駄箱があり、多数の小学生の来館を予定しているとのことでした。しかし、このような扱いが事実でえあれば、小学生は行かなくなるでしょう。

 そこで伺いますが、プラザ天沼の小学生の利用人数はどの程度か、また、この例のような運用は改めて、小学生ももっと自由に遊べるようにしていただきたいが、いかがか。見解を求めます。(Q2-2)

 <東原児童館の廃止・再編>

 次に、東原児童館の再編に関して伺います。地域の方々から要望書が区に提出されました。その内容は、新しい地域コミュニティ施設について、区は住民とよく話し合ってほしいこと。東原児童館のよさを評価し、施設が転換されても、内容を継続してほしいこと。またそのための職員を配置してほしいこと。地域も行政と協力して活動したいのでサポートをお願いしたいこと。などです。

 幸い、区の主催により地コミにかんする意見交換会が開催されることになりました。すでに第1回が開かれ、私も傍聴させていただきました。杉九小の学区にかかわる5つの町会の会長さんやPTA会長さんなどがしっかりと意見を言って下さっている様子に安心しました。

<児童館の現状を知ってほしい>

 ただ、東原児童館の地元以外の4人の町会長さんは、全員口をそろえて「児童館のことを全く知らないので意見が言えない」と困っておられました。まず現状をお知らせしてから話し合いをするのが順序ではないでしょうか。この意見交換会の構成員の皆さんに対しては、現在の、東原児童館、阿佐ヶ谷北ゆうゆう館、杉九ゆうゆうハウスの利用実態、活動の様子、地域との関係をきちんとお知らせした上で、地域にとって有益な施設になるよう実のある議論をしていただきたいと期待しますが、いかがか、所見を求めます。(Q2-3)

 <児童館の庭を「空き地」という職員>

 なお、この会議で、司会の地域課長が、東原児童館の庭のことを知らず「空き地があるんですか。それも活用して」と表現していたことには仰天しました。空き地なんぞありません。東原児童館には樹木に囲まれたお庭があり、これが特徴でもあります。つまり、課長自身が東原児童館を訪れたことがなく、庭の存在すら知らずに再編を議論しようとしているわけで、地域が必死になってお庭を含めた子どもの居場所を守ろうと知恵を絞っているのに無神経な発言で、大変失礼だと思いました。

 また、傍聴していたある方は、帰りがけに立ち寄ったコンビニで、この会議に出ていた職員どうしが、ゆうゆうハウスのことを「使われている施設だったんですね」と話しているのを目撃してびっくりしたそうです。ちなみに、ゆうゆうハウスは区の事務事業評価によれば29年度利用率が97.5%とほとんど常時満席で使われている施設です。認識不足にもほどがあるというものです。大切な地域施設の廃止が与える影響を軽々しく考えているのならきわめて問題と指摘します。

 <乳幼児の居場所はだれが運営するのか>

 次に、地コミには乳幼児の居場所が確保されるとのことですが、児童館のゆうキッズでは職員さんが保護者の仲間づくりをサポートしてくれます。子育て相談にものってくれます。そういう職員がいなくてスペースだけあっても、いごこちのいい場所にはなりません。運営は誰が行うのか、伺います。(Q2-4)

 (2)学童クラブの民間委託ガイドラインについて

 次に、学童クラブの民間委託ガイドラインについてうかがいます。

<区議会に事後報告は言語道断>

 昨年11月の保健福祉委員会に唐突に「民間委託ガイドラインの懇談会」についての報告が出されました。唐突だったばかりか、その報告の段階ですでに第一回懇談会が終わっていたのには驚きました。このような重要な事項について事後報告とは言語道断です。議会軽視としかいいようがありません。反省の弁を求めますが、いかがか。

<保護者へは全く告知なしに重大変更>

 議会への報告ですら事後なのですから、いわんや保護者へは全く周知されていません。ホームページの開催告知も当日付だったり、全く不十分であると考えますがいかがか、見解を求めます。(Q2-5)

 <営利企業に突然、学童委託を開放>

 今回のガイドライン作成にあたり、区はこれまで社会福祉法人NPOなど非営利法人に限っていた応募資格を、営利企業にまで拡大しました。

 しかし、学童クラブの委託を非営利企業に限定してきたのには理由があるはずです。2004年に最初の学童クラブの民営化が提案された時、保護者からは反対の声が強く上がりました。紆余曲折を経て委託が決まり、利用者への配慮も含め、営利企業への委託は行わないことが杉並区のルールとして確立してきたものです。当然、慎重に扱うべき問題です。

 ところが、保護者には知らせず、意見募集も行わない、しかも11月19日に始まった懇談会が1月12日には終結してしまう、年末年始もはさんでいるのに2ヶ月足らずで4回というとんでもないタイトなスケジュールだったことは、きわめて不当な扱いであると考えますがいかがか、所見を伺います。

 <否定的な意見はここでも隠されて>

 さらにもっと不当なことは、営利企業に対する否定的な意見が懇談会の資料から消されていることです。

 私は第2回の懇談会を傍聴しました。そこでは第1回目に行われた視察の感想が述べられました。視察は社会福祉法人が運営する区内の学童クラブと株式会社が運営する他区の学童保育との2カ所を対象に行われたとのこと。その感想を委員の皆さんが述べたのですが、どの委員も「株式はプレゼンはカンペキだけど、実際の運営は違う」「社福は、人材不足の悩みなど打ち明けてくれ信頼できた」といった感想だったのが印象的でした。

<保育の理念がない株式会社>

 学識の委員からは「株式会社では、子どもをどう育てたいとかの理念がなく、とにかく仕事をとって資金をまわしていくというやり方のところも多い」という指摘もありました。株式会社と「区内で現在委託している社会福祉法人の運営」とでは明らかに差があるという意見が大半でした。

  ところが、こうした意見が次の第三回に配られた「まとめ」には一切掲載されていませんでした。少しでも否定的な意見はすべて消されていました。しかし、私は聞いていました。区はこれらの意見を掲載しないことで、議論をミスリードしていたと思いますが、いかがですか。所見を求めます。(Q2-6)

<委託先への支援が必要> 

 懇談会で区担当者は、委託事業者に応募する法人が少ないので、要件を緩和する必要があるとしきりに主張しました。これについて、ある委員から「なぜ応募する法人が少ないのか、理由はわかりますか」という発言がありました。これは重要なポイントだったと思います。しかし、区側はこの質問に答えず、質問は黙殺されました。

 そこで改めて伺いますが、いったいなぜ応募する法人が少ないと考えていますか。区の見解を求めます。(Q2-7)

  私は学童クラブの委託自体に反対ですが、百歩譲って委託するとしても、できるだけ優良な法人を選定しないと、犠牲になるのは子どもたちです。

 実際、私もある法人に委託に応募しないかと尋ねたことがありますが、まじめな法人ほど、事業として採算がとれるのか、人材確保ができるのかなど不安が大きいようです。保育など児童福祉の事業に実績のある優良な事業者に応募してもらうためには、資金面を見直すこと、また、職員配置を厚くし、待遇をよくして、人材確保をやりやすくするなどのサポートが必要ではないかと思いますがいかがか、伺います。 保育の質は二の次とばかりに唐突に応募要件を緩和した区の方向性は全く逆です。(Q2-8)

<学童クラブが足りないならなぜ児童館をつぶすのか>

 今後、ますます学童クラブの需要は高まることが予想されます。あらためて、区は40館の児童館という資産の価値を再評価すべきです。児童館を学童保育に活用することは国も推奨しているところです。廃止せず、逆に活用することで、子どもたちの放課後を豊かに見守る方向に転換するよう求めて質問を終わります。