わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

指定管理者制度、図書館、師範館について質問

11月25日の本会議における一般質問の原稿です。
指定管理者制度について>
今回は、指定管理者制度について、師範館についての2点について質問します。最初に指定管理者制度について質問します。指定管理者制度が創設されて7年、全国的な趨勢としては、指定管理は増えてはいるものの、伸びは鈍化し、指定管理をとりやめるケースなども出てきています。その主な理由は、指定管理者自身の経営悪化や破綻、他方、施設自体の廃止、などです。また、今年6月、浜名湖で校外学習中の中学生が亡くなった痛ましい事故がありましたが、この研修を実施していたのは、指定管理者による施設でした。公の施設の管理責任を民間に丸投げしてしまう指定管理者制度の問題点が様々な形で噴出しています。
では、杉並区においてはどうか。この度、指定管理者制度に関する個別外部監査の報告書が発表されました。監査は、おもに経費についてチェックしており、その検証に限界もありますが、指定管理だけでなく、広義の民営化を考えていく上でさまざまな示唆に富むものです。以下、この報告書を参照しつつ、いくつか問題提起をしておきたいと思います。
まず、区の指定管理全体について質問します。最初に、この監査報告書を受けての対応を伺っておきます。今後の検討はどのような計画で行っていくのかをお示しください。その上で本論に入ります。
○「なぜその事業者が選ばれたのか」区民に公開を
第一に指定管理者の選考についてです。とりわけ、公開性と区民参画について強調しておきます。指定管理に限りませんが、プロポーザルなど価格のみによらない選定では「なぜその事業者が選ばれたのか」についての説明が、おしなべて、非常に不足しています。たとえば、応募した事業者名すら公表されないケースが多々あります。また、審査過程は原則非公開となっています。しかし、他区の事例では図書館の指定管理にあたって公開プレゼンテーションが行われた例があります。また当区においても、学童保育の委託で公開プレゼンが行われたこともあり、公開性を取り入れることは不可能ではないはずです。
報告書では、非公募の事業について、選考委員会の記録がなく、議事録を作成すべきとの指摘もされていますが、これは公募の場合にも言えることです。以上、公開プレゼンも含む、情報公開及び区民・利用者の選考への参加を促進するよう求めますが、見解をうかがいます。
○サービスの質は向上したか、何が実現したか?
次に、モニタリングについてうかがいます。モニタリングには、投入した公費が適切に使われているか、効率的かということだけでなく、サービスの質が向上しているかということをチェックする意味があります。指定管理者制度を導入することの根拠として、管理運営コストの節減と施設サービスの向上の両方が達成されることが求められるからです。
先日、杉並版事業仕分けを私は2日間傍聴しましたが、大変興味深かったのは、「成果をどのようにはかるか」という視点です。区側の「区民満足度が何%だからうまくいっている」というような説明に対し、仕分け人(というか監査委員)はそれでは納得せず、「その結果何が実現したか」を求めていました。いわゆる「アウトカム指標」です。
報告書では、たとえば保育において、毎年度総括的な実績評価が行えるよう、場合によっては外部委員を含めた評価委員会の設置を提案しています。一考に値するのではないでしょうか。外部の専門家、あるいは業務に精通した職員の目によるモニタリングが必要であると考えますがいかがでしょうか。
○保育園で多額の剰余金。人件費の圧縮が明らかに
さらにモニタリングの強化の中でも特に、労働環境モニタリング、および財務のモンタリングについてお尋ねします。
報告書では、保育園の指定管理者である株式会社が2007年度、2008年度に13.5%、15.3%という大幅な剰余金を発生させたという事実が指摘されています。この指定管理者の場合、職員ひとりあたり人件費が、もう1か所の社会福祉法人の指定管理者と比べ、おおむね70〜80%であり、報告書では、剰余金発生のおもな要因は人件費単価にあると分析しています。剰余金の金額それ自体で不適格な事業者と判断するものではないにしても、賃金の抑制で、いわゆる「官製ワーキングプア」が産み出されていることが明らかになりました。また報告書は、この会社が積み立てた剰余金で修繕工事を行ったものの、その金額を区に対して報告していないことについて改善を求めています。ずさんな管理と言わざるをえません。財務、労働環境の両面から、モニタリングがきわめて不十分だったのではないでしょうか。
しかも、こうした事実が監査によらなければ区民の前に明らかにならなかったこと自体が問題です。報告書はホームページなどによって区民に対しモニタリング結果の開示を行うよう求めています。
○財務状況と労働条件の検査強化を
さらに、報告書は指定管理施設の業務だけでなく、法人全体の決算報告書を把握する必要を指摘しています。昨年の東宝クリーンサービスの倒産時、同社は神奈川県厚木市のプールなどの指定管理者となっていました。杉並ではたまたま指定管理ではありませんでしたが、法人の財務状況を把握していなかったために、同社の経営悪化への対応が遅れたのは同じです。以上を踏まえ、モニタリングの強化の中でも、とりわけ、労働環境と財務についての専門的モニタリングの実施は今後必須と思われます。
前にも紹介したので繰り返しになりますが、千代田区では指定管理者に対して指定期間の中に必ず1回、社労士などにお願いして、賃金台帳までひっくりかえしての労働環境モニタリング、また会計士などにお願いしての財務のモニタリングを義務付けています。当区においても、これら外部の専門家による詳細なモニタリングを実施されるよう要望しますが、いかがでしょうか。見解をうかがいます。
指定管理者制度が最適か?
第三に運営形態は果たして指定管理者が最適なのか、また、主体は誰がふさわしいのかという問題です。指定管理者にとって、一般に業務委託よりも、責任が重い一方、メリットもあるでしょうが、NPOや利用者団体が指定管理者となった場合には、むしろ責任の重さがのしかかっているという声も聞かれます。報告書では、たとえば保育園と障害者交流館について指定管理がよいのか要検討としています。直営に戻すか、あるいは一部業務委託なども当面考えられるかもしれません。仮に、指定管理以外の民間委託の方法を探る場合には、どのような形態が考えられるのでしょうか。お示しください。
そもそも、指定管理に限らず、民間のほうが効率がよいとか、サービス向上がはかれるとか、お題目のようにくりかえされるのですが、それは本当に本当なのでしょうか。私はこの点がもっとシビアに検討されてなくてはならないと考えます。経費削減の効果は認められているところですが、それが労働条件の削減に直結していることは、先ほどの例でも明らかです。一方サービス向上はどうでしょう。たとえば、今、区では学校給食のうち半数以上が民間委託となりましたが、「お皿が1枚増えました」という以上の話を耳にしたことがありません。これがサービス向上でしょうか。
○直営だからできる「おにぎり隊」
先日、私の地域の杉並第九小学校は、東京都の「健康作り優秀学校」(学校給食部門)に表彰されました。それも学校と栄養士さんのダブル受賞だそうです。杉九小の給食はもちろん直営です。調理さんたちは、毎日給食の時間に教室をまわって、子どもたちと対話をします。残ったご飯でおにぎりを握ってあげる「おにぎり隊」の活動もテレビに取り上げられ有名になりました。学校の小さな菜園で無農薬の野菜を栽培して食材として使い、子どもたちが育てたトマトでいっしょにケチャップをつくります。もちろん、給食はとてもおいしいと評判です。これだけのことができるのは、直営ならばこそ。また、直営の職員さんがやる気になれば、こんなすばらしい給食ができるのです。
それでもやはり民間委託の給食のほうが安くていい、杉九小の給食はぜいたくだ、と皆さんは思われるでしょうか。私は、直営でサービス向上するほうが、ずっと税金が有効に使われていると思いますし、働く人の雇用の安定という点からも、望ましいと考えます。
そういうわけで、今回は、指定管理についてうかがっているわけですが、全体としての区の民営化のありかたについてもうかがっておきます。区長は変わりましたが、区はひきつづきコスト優先で委託、民営化を進めて安上がりな、あえていえばチープな行政の方向性を変えないでいくのでしょうか。見解を求めます。
○ほんとうの待機児は656人
コスト優先で区民がしわよせを受けた一例として、保育園について述べます。これまでの区の、認可を増設せず、しかも既存の認可の民営化を進め、保育需要は認証保育や無認可でよしとしてきた、コスト優先の運営の結果、膨大な人数の待機児が発生してしまいました。今年4月の待機児童が「23名」と繰り返されますが、これはあくまで新定義によるものであって、本来の旧定義による待機者は656人、23区でも多い方から8番目です。「23名」の数字が独り歩きしているために、期待して杉並区に転入される方が多いという話を最近よく聞きますが、この「23名」は大変罪作りだと感じます。
先日区長は、こうした事態を受けて、国の待機児解消チームに陳情に行かれたということで、その努力には感謝したいと思いますが、内容には首を傾げるところがあります。頑張る自治体というけれども、杉並区がこれまでがんばってきた中身は、認証保育や無認可です。自治体には認可保育園を整備する責任があることは、児童福祉法にも明らかであり、無認可はあくまで応急的な措置です。補助金をつけろというのは、いささかムシがよいというか、乱暴な議論と言わざるを得ません。
先日、認証保育園の保護者の方からお話をうかがいました。先生たちは大変熱心に保育してくださるが、園庭もないため運動量が大変少なく、体の発達が心配とおっしゃっていました。認証保育園という比較的恵まれた施設でも、認可とは大きな格差があるのです。やはり、認可保育園こそ急いで整備しなくてはなりません。認可の大幅増設を求めます。また、国や都には認可建設のためにこそ支援を求めるべきと考えますが、いかがか。見解を求めます。
<図書館について>
指定管理者制度の2番目には、区で焦点となっている図書館について、特に論じておきたいと思います。第一に選定手続きについてです。ちょうど1年前、昨年の第4回定例会で私は選定委員会について質問をしました。第一に選定委員会の会合自体が実質審議は1回しか行われておらず、これで合議体としての意思形成ができるのかということです。今回の報告書では選定期間が短すぎるという指摘がありますが、こうした選考のあり方では、選定委員会が十分機能しているとは言えません。第二に、委員の人数が少なく、利用者代表が入っていないことも問題と指摘しました。このような選定委員会のあり方は改める必要があります。今回の監査をふまえ再度見解をうかがいます。
○図書館評価の「第三者機関」とは
次に第三者機関についてうかがいます。報告書は「杉並区としては、第三者機関に何を求めるのか。コストの削減効果やサービスの向上効果にとどまるのか、その先の政策判断まで含むか、について慎重に検討する必要がある」と述べています。そこで、第三者機関の役割は何か、見解を伺います。また、第三者機関の設置時期についてうかがいます。9月の区長答弁では最低1年程度の期間を確保して検証するということになっていますが、もう少し推移をみて確実に検証を行う必要があるように思います。見解を伺います。さらに、第三者機関のメンバー構成はどのようにされるつもりか。さきほどモニタリングに関しても申し上げましたが、業務に精通した、さまざまな現場を知っている中立な専門家とあわせて、区民、利用者の参加は欠かせないと思いますが、いかがか。見解をうかがいます。
図書館に関しては経営評価がモニタリングにあたるものとされていますが、この間手直しをしながら3回目を迎えており、かなり工夫をされてはいるものの、まだ改良の余地が残されているとも感じられます。そこで伺いますが、これまで、図書館の経営評価として改善されてきた点はどういった点でしょうか。
○図書館のめざすものを明確に
図書館サービスの向上は、貸出数が増えたとか来館者数が増えたとかでもある程度測れますが、それはきわめて一面的で機械的です。それでは何で成果を測るのか。成果を評価するには、杉並の図書館が何をめざすのかが明確にされる必要があります。何を達成すべきかが明確でなければ、達成度は測れないのです。
区のかかげる図書館の目標は「民との協働で個性ある図書館づくり」「生涯現役の地域社会を支える図書館づくり」のわずか2行でしかありません。この点、報告書も「図書館はより具体的な運営目標を区民に示す必要がある」と指摘しています。
以前にも要望しましたが、杉並区は具体的かつ体系的な図書館のグランドデザインをもち、杉並の図書館のミッションを明確にする必要があります。これは急務です。いま、図書館にかかわる区民グループは、区民がめざす図書館のビジョンを描くために勉強会を続けておられます。おりしも、区の基本構想策定作業が開始されようとしています。図書館にとって、こうした利用者団体の皆さん、あるいは図書館協議会といっしょになって知恵を絞り、グランドデザインを描く好機と考えますが、見解をうかがいます。
○充実した図書館行政のために専門職の司書採用を
また、本当に充実した図書館行政をしようとすれば、専門職の司書の存在が欠かせません。23区では残念ながら司書の専門職採用がなされていないため、杉並区でも、一時期を除いて、図書館職員の司書率が決して高いとはいえませんでした。よく直営の司書率が低いといわれますが、それは図書館の怠慢ではなくて、人事制度の問題です。今後、杉並区は他区に先駆けて、専門職司書の常勤採用を行うべきと考えますがいかがでしょうか。すでに教員の独自採用すら行ってきた杉並区です。不可能とは思えません。見解をうかがいます。
○図書館で自治体、区長の見識が問われる
図書館についての最後に、区長の見識について問いたいと思います。現在総務大臣である片山善博さんはご存じのように鳥取県知事時代に図書館を充実させてきたことで知られています。片山さんは大臣になる直前、「地方分権と図書館−問われる自治体の力量」という講演の中で、自分は鳥取県で相当指定管理者制度を活用したが、博物館と図書館だけは例外だったとして、「これは冷静に考えて見識の問題だろうと思います。多少金がかかっても重要なところにはきちっと手当をするというのが見識です」と述べておられます。
全国では片山さんのように、図書館だけは指定管理にしないと表明している自治体がたくさんあります。また数は少ないですが、図書館を指定管理から直営に戻したところもあります。最近では、佐賀市です。佐賀市長は「図書館に指定管理はなじまない」と明言しており、これは立派な「見識」であると思います。お隣の練馬区でも、民間委託の図書館を一部直営に戻す動きがあると伺います。
私は、この間、区の図書館をめぐってこれだけ紛糾したことは、はっきり言って失礼ですが、区民の側に見識があり、前区長と区役所の側に見識がなかったと思います。田中区長の見識はいかがか、ご所見をうかがいます。
<師範館について>
大きな2番目に師範館についてうかがいます。11月10日の教育委員会で「杉並師範館の今後のあり方について」が報告されましたが、私は報道で内容を知り、たいへん驚きました。この報告書には大きな疑問があります。
杉並区が教員を独自採用してきたこと自体については、私も異論はありません。しかし、それが師範館という組織と一体だったことは間違いだったと思います。
そもそも創設にあたり、「戦前のわが国の教育を現在の教育に生かす」「戦後日本の教育を再点検する」などと、軍国主義時代の教育を評価して戦後教育に否定的な態度、「教官心得」として「宇宙万物の根源であり規範である道義を説く」「天の命ずるところ、天に変わって指導をする」などの公教育にあるまじき表現が問題になりました。カリキュラムには毎月儒教の講義が取り入れられています。設立趣意書には「光輝ある伝統精神文化」「固有の伝統に基づき」など、前区長の独自の偏った価値観が明確に掲げられています。教育勅語時代の「師範」という用語を冠しているところからして、思想的な偏りを示しています。このような団体に、毎年3千万、4千万という公費を投じてきたことが不当であり、今回の教員採用停止を待たずとも、師範館そのものへの補助金はとっくに打ち切られていてしかるべきでした。
○師範館はいまだに「山田前区長」の写真
ところが、師範館の解散というこの期に及んで、理事・講師らがひきつづき、杉並の教育に関与していく方向が示されています。とんでもないことです。師範館のホームページには、区側の関係者として、現田中区長ではなく、いまだに前山田区長が写真入りで掲載されています。田中区長就任以来4カ月もたっており、わざわざ「前区長」と肩書もなおされていますので、これはミスではなく確信犯的に掲載されているものと思います。師範館にとってはいまだに杉並区の代表は山田さんということなのでしょうか。これを見ても、師範館があくまで前区長を中心とした団体であることがわかります。以下、報告書の内容に沿って、疑問の点を質問します。
まず第一に、区費教員のサポート体制の確立についてです。ここでは、師範館を卒塾した区費教員に対して、「区費教員としてのさらなる育成・ブラッシュアップ」「地域に根差した杉並区独自の教員として特色化」などが述べられています。なぜ、卒塾生をあえて都費教員と区別し特別扱いするのでしょうか。特別扱いの必要があれば、その根拠をお示しください。
○師範館は解散しても杉並の教育に関与?
第二に、師範館が解散するのに、理事・講師らがひきつづき杉並の教育に関与するかのような提言です。「師範館の理事・教授陣は貴重な人材」とあり、「師範館卒塾生人材育成等懇談会」の設置、また「同志・同友の立場としての組織」が創設されるとのことです。師範館は別の形で存続するということなのか。また、区は「懇談会」委員の報酬や「同志・同友の組織」への事務所の提供など、師範館の関係者にこれからも公費や設備の支援を続けるつもりなのか、うかがいます。
項目の第三には「中学校教員の独自養成・採用について」とあり、「師範館のノウハウやその豊富な人材の活用も視野に入れて」検討していくと書かれています。その理由として「魅力ある中学校づくり」に取り組む一環とされています。いったい、教育委員会は杉並区の中学校に魅力がないから生徒が減ると考えているのでしょうか。私はむしろ、杉並区の中学校は他の自治体と比べても、学習面、生活面ともにいい学校が多いと思っています。全国的に、とくに都市部で「公立ばなれ」が起きていることは、個々の自治体や学校の問題ではなく、国の教育制度全般への不信からくるものと解釈すべきではないでしょうか。見解を求めます。誤った認識を根拠に、今後、中学校教員の養成機関として、第二の師範館を同じ人たちが担うことになるのでは困ります。
○偏った政治理念を杉並区は継承するのか
次に、理念についてうかがいます。検討会報告書には「最大の財産は師範館建塾の精神と教師5則に代表される理念体系を心に染み込ませた熱意あふれる区費教員の存在それ自体」「師範館の貴重な財産の継承」などとあります。心に染み込ませているかどうかは別として、偏った政治志向と偏った人脈により運営されてきた師範館の理念を杉並区は今後も是として継承していくということなのでしょうか。見解をお示しください。
最後に、区長の見解をうかがいます。区長は「教育行政には介入しない」と表明しています。しかし、区として師範館の理念を継承するならば、前区長の教育への政治的介入はそのまま継承していくことになるのではありませんか。区長はまた、さきの決算委員会で、前区長の主導した政策の中で、特定のイデオロギーにかたよったものについては見直しをしていくとも述べていますが、師範館についてはどう考えておられるのか。所見をうかがって私の質問を終わります。