わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

岸本区長による「対話と共有」の杉並区政に期待する(2022年10月18日決算意見開陳)

 2022年10月18日杉並区議会決算特別委員会において、意見をのべました。岸本新区長に交代したもとでの区議会ですが、決算は田中前区長時代の区政運営の決算であり、4件すべてに反対しました。

(以下は意見開陳の原稿です。実際の発言と一部異なる場合もあります。)

 杉並わくわく会議として、決算に対する意見を述べます。認定第1号令和3年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか3件の認定に対しては反対とします。

【昨年度も児童館廃止、駅前開発が進んだ】

 当該年度は、田中前区長のもとで、実行計画等の最終年度にあたり、区立施設再編整備計画では、西荻北児童館、善福寺児童館が多くの反対の声を押し切って廃止されました。また、阿佐ヶ谷駅北東地区再開発事業では、けやき屋敷の伐採がすすみ、工事のため唐突に提案された杉一小敷地内の工事用通路の設置と、さまざまな懸念を指摘されながらも、強引に事業がすすめられました。

【緊急事態宣言下、軽井沢へ出張した前区長】

 新たな基本構想が策定され、施設再編のさらなる加速や民営化のさらなる推進などをおりこんだ総合計画・実行計画以下の行政計画が策定されました。

 しかしそれら以上に、当該年度、区議会で大きな問題となったのは、なんといっても、軽井沢で行われた東商杉並支部会合への区長、部課長の出席にかかわる問題でした。新型コロナウイルスの緊急事態宣言下での他県での会合への参加にくわえ、阿佐ヶ谷地域区民センターの指定管理者選定の公正さが疑われるような事態にまで発展し、杉並区の職員倫理に関する規定の不備が課題としてのこりました。

 また、夏休みも終わろうとする8月、パラリンピック観戦が強行されたことは、田中前区長の思いひとつで、教育行政の意思決定のプロセスがないがしろにされたものでした。また、卒業式及び今年度の入学式において、区長メッセージのビデオ上映が突然行われたことも、教育行政への介入であり、区長選挙を前にした政治利用として看過できないことでした。

 当該年度を振り返るとき、このような、杉並区政のありかたが今後すみやかに正されていくことを心から望むものです。

【児童館やゆうゆう館、まず「対話と共有」を】

 さて、岸本聡子区長のもとで新たな区政が出発したいま、これまでの区政のどこが、どのように転換していくのかに、特に関心をもって質疑を行いました。

 第一に、児童館やゆうゆう館の廃止見直しなどを中心とした区立施設再編整備計画について、今後の方向性をただしました。

 区民との対話によって問題を解決していくためには、まず、情報の共有が必要ですが、これまでの再編計画の実施においては、住民の反対の声があっても全く顧みられることがなく、それどころか、科学館、あんさんぶる荻窪、けやきプールのように、そもそも廃止計画じたい住民・利用者に知らされることすらありませんでした。

 まずは、情報公開、情報の共有が十分になされることが、出発点です。

 質疑では、直近の再編計画について、周知の状況を確認しましたが、来年にも廃止されようとしている施設においても、地域には十分な周知が行われていないことがわかりました。

 児童館、ゆうゆう館、区民集会所など、それぞれの所管においては、住民の意見を十分に取り入れるためにも、事前の十分な情報の周知を急いでいただきたいと考えます。今後の変更の可能性があるとしても、少なくとも、まず現在の計画内容について、住民が充分に知る必要があります。これまで役所のみなさんは、地域町会連合会、すなわち各町会の町会長さんたちに話したことをもって、地域への情報提供はよしとする傾向がありました。町会長に話しても、個々の会員に伝わらないことはわかりきっていたのに、です。

 今後の対話を旨とする区政においては、行政と住民の間の情報の不均衡を少しでも減らさないと、対等な議論はできません。まずは情報提供において、区役所の本気度が試されます。

【児童館など子どもの居場所、新たなステップへ】

 児童館の再編については、詳しくは別の機会に譲りますが、少なくとも、現在の計画で行われている児童館の廃止と学校への「機能移転」の課題については、問題意識を共有できたものと受け止めています。

 部長のご答弁にもあったように、現在の児童館がかかえる課題の解決を目指しながら、子どもの多様な居場所の確保について、杉並の子どもたちのために最も適切な解決が導かれるよう、区民との対話を通じて次のステップへ進むことを期待します。

 関連して施設使用料の改定について確認しました。手ごろな金額に、ということと同時に、区民が納得できる、わかりやすい根拠にもとづく料金設定をもとめます。

【情報公開について原則的な姿勢が示された】

 第二に、情報公開について述べます。他の委員の「墨塗非公開は不当で公開すべき」とする質問に対して、個人情報を理由に非公開を正当化する答弁がありましたが、これは不正確な理解です。

 区の情報公開条例、および「情報公開・個人情報保護の事務手引」に則って考えれば、非公開の要件を満たさないのではないかとの私の質問に対して、原則的な答弁が得られたことは、杉並区の情報公開、ひいては住民自治にもとづく区政を大きく前進させる重要な契機になるものと考えます。

 答弁においてはまた、行政情報は原則公開であること、及び、非公開事由については厳格に判断することを徹底する旨の通知を全庁にむけて発出したとのことでした。あらためて、この通知を各部署のみなさんが肝に銘じていただきたいと考えます。

東京地裁判決は情報の公開を命じた】

 今後の情報公開について付言します。区長はこの間、情報公開の手引の抜本的見直しに言及してきましたが、問題は条例や手引きにあるのではなく、運用にあります。今年4月の東京地裁判決は、私の主張を認め、被告杉並区が非公開とした情報について、一部をのぞき公開を命じました。それは現在の条例と手引に即しての判断です。即ち、現在の区のルールが情報公開を阻んでいるのではなく、ルールを正しく適用すれば当然公開すべきものが、運用によって、恣意的に非公開とされてきたのが杉並区の現実でした。だとすれば、手引きの見直しも否定はしませんが、改善すべきは運用です。

【情報公開担当部署の権限強化を】

 そこで私は、情報公開部署の増強をなによりも求めたいと思います。できれば、独立した課とし、人員の増強、人材の育成をより強化すること、そして、情報を保有する部署に対し権限を行使して原則的中立的な判断を行えるようにすることが必要と考えます。

【学校給食の直営を残すべき】

 第三に、民間委託について述べます。質問では、学校給食、用務の委託状況を確認しました。特に給食では、区内63校のうち、直営が7校しか残っていないことに驚きました。

 直営を残すべきではないかという質問に対し、民間でできることは民間にという、これまでと同じ答弁がありました。しかし、一方で清掃事務所の体制は新規採用も視野に入れた検討に入ろうとしています。その理由のひとつは技術の伝承です。

【モデル校として表彰うけた杉九小の給食】

 では、給食や用務には、技術や経験は必要ないのでしょうか。たとえば、私の地元の杉九小は、給食のモデル校として調理さんの加配が行われ、意欲的な食育が行われてきました。残滓を出さないよう米飯をおにぎりに握って配るおにぎり隊の活動や、学校の農園で野菜を育てて食べる活動など、過去には文科省表彰も受けています。

 単純に、調理は素人でもできるから外注すればいいという考え方ではなく、独創的な食育をも展開できる給食調理職員の熱意とスキルを評価すべきです。杉九小のおいしい給食がいつまでも維持できるよう地域も望んでいます。

 学校の技能系職員についても今後、退職不補充の方針を変更し、直営を残していくことを要望します。

【民間委託先の雇用問題は区に責任あり】

 民間委託については、別の角度からも問題を提起しました。施設再編計画の影響による民間委託先職員の雇用問題です。区の都合で事業がなくなったときに、民間の雇用契約だからとひとごとのように語るのではなく、多くが区民でもある委託先職員に対し、区は雇用保障に責任をもつべきではないでしょうか。この点、区長が問題意識をもって答弁してくださったと受け止めています。今後の問題解決に期待します。

阿佐ヶ谷駅北東地区でなにが?】

 第四に阿佐ヶ谷駅北東地区再開発について述べます。

 岸本区長就任から3か月になりましたが、個人共同施行の土地区画整理事業における共同施行者である2法人の代表者とはまだ面会されていないとのことで驚きました。

 これだけ大きなプロジェクトを担う杉並区の代表者が交代したのに、民間2者は区長に会わなくて不安ではないのでしょうか。どんな障害があって会えないのでしょうか。病院の新築工事もいっこうに始まりません。北東地区でなにが起きているのでしょうか。

【まちづくり協議会からはずされる阿佐ヶ谷】

 関連してまちづくり協議会について確認しました。区は現在のまちづくり条例のもとで14のまちづくり協議会の実績があります。各路線、各駅のまちづくり協議会がさまざまに並ぶなか、なぜか阿佐ヶ谷のまちづくりが協議会で検討されたことは一度もありません。

 荻窪ではアイデアコンペ、まちづくり懇談会から始まり、区が公募した区民による協議会がつくられて駅周辺まちづくりの提言も行いました。約10年にわたってまちづくりの活動が続いています。

 それに対し、阿佐ヶ谷は民間の有志によるまちづくり団体「北東地区を考える会」の提言が突出して行政の支援を得、区はこの会をさして、まちづくりの機運があるから協議会をよびかけることはしない、というのですが、まちづくりの機運が盛り上がっているのだとすればその契機をとらえて阿佐ヶ谷が抱える課題について、まちの人たちが話し合う公の場を積極的につくっていくことこそ区の責務です。

【一部の有力者の意向だけ尊重する杉並区】

 ところが、この間、区は、北東地区の地権者・事業者の意向を実現することのみに汲々としていたのが現実です。

 北東地区にりっぱな病院や高層ビルが立ち並んだとして、西側や南口はどうするつもりなのでしょうか。民間の主体が思い思いに勝手なものを建て、殺風景な駅前になる未来は勘弁してほしいです。

【阿佐ヶ谷のまちづくりは住民全体で】

 部長のご答弁にもありましたが、立場の異なる主体が相互に意見交換する場こそが出発点です。阿佐ヶ谷のまちづくりについて、ひろく住民を公募し、議論する場をこれからでももうけるべきと指摘します。

 阿佐谷姉妹さんの活躍もあり、テレビで阿佐谷の文字を見ない日はありません。全国的に愛される阿佐ヶ谷は、タワマンのまちではないはずです。阿佐ヶ谷のまちのよさをどう残し、発展させるか、地域の人々とともに考えるときです。

【一部の有力者による「エリアマネジメント」】

 ところで他方では、同地区におけるエリアマネジメントの計画が進んでいるようです。区がパートナーと考えているのが、あくまでも地元の一部有力者を中心とした任意団体であること、またこれを発展させ「エリアプラットフォーム」というものをつくるらしいことがわかりました。

【旧けやき屋敷の緑は誰が管理?】

 ここで緑の話をしたいと思います。

 北東地区は地区計画が決定され、旧けやき屋敷の街区では緑化率25%が義務付けられました。この敷地に新築移転する河北病院は昨春設計案を公表しました。しかし、この設計敷地の中に設定された地区計画緑地の管理者はいまだに不明です。これまで何度質問しても、病院なのか、地権者なのか、区なのか、決まっていないとの答弁でした。

 いまエリアマネジメントが云々という話が出てきたのは、結局、この地区計画緑地を公民連携の管理下におくということなのでしょうか。もしそうだとすれば、病院敷地の中に、病院管理下にない地区計画緑地を算入して緑化率をクリアしたことは数字のトリックといえるのではないでしょうか。

 けやき屋敷の森が失われたいま、区は病院、地権者と協力し、同量のみどりを回復できるよう、展望を示すべきです。

【外国にルーツをもつ子どもの権利】

 最後に、多様性についてのべます。基本的人権の観点から、外国にルーツをもつ子どもが自らのルーツについて歴史、文化、言語を学ぶ権利があることを確認し、区長の見解を求めたところ、区長はさらに進んで、ご自身の経験にもとづいて、ヨーロッパの学校での宗教や哲学の授業のこと、そして、杉並の子どもたちもまわりの外国ルーツの子どもたちから自然に多様性を学んでいることを紹介されました。区長のこのご答弁にはとても教えられました。

【多様なルーツに敬意をもつ子どもたち】

 いま日本社会では、ともすると排外的な見解が語られがちですが、現実には、杉並区でもすでに、多様なルーツをもつ子どもたちがお互いに学び、敬意を抱いています。私たち大人がむしろ子どもたちに学ばなければと思いました。

 以上をもって、決算と今後の区政に対する意見とします。

 審議にあたり、多数の資料を作成して下さり、また、さまざまな問題について、丁寧な説明、そして率直な意見を聞かせてくださった区長はじめ区職員の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。