わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

一般質問〜適正配置、学校支援本部について〜

3.教育行政について
 最後に教育行政についてうかがいます。まず、学校適正配置について申し上げます。6月の第二回定例会では、学校適正配置の再編構想と、神明中・宮前中の統合に関する第一次計画の素案の取り扱いが議論になりました。その結果、文教委員会では全会一致で「再編構想について、区民意見の提出手続きをとり議論をつくす」という請願が採択されております。ところが、その後、再編構想の意見募集期間中にもかかわらず、次の段階であるはずの第一次計画素案を、教育委員会の担当者が、来春新入学予定児童の保護者に対して配布、あるいは説明会を行い、計画がすでに決定されたかのような印象を与えております。これは、採択された請願の趣旨に反し、問題であると思いますがいかがでしょうか。 神明中の地元関係者の皆さんから、区長と教育委員会あてに抗議文が提出されておりますのでご紹介します。
「第一次素案について周知する必要はない段階で、次々と小学生の家庭に周知しているのは、学校希望申請時期に統合が決まったものとして意識され、希望者の心を動揺させる意図的な行為」であると抗議されています。採択された請願を提出された当事者の方々の思い、議会の意思を踏みにじるような教育委員会の行為について、お答えをお願いします。
 次に、区全体の再編構想について、おたずねいたします。先日、私の地元の分区でPTA会長さんたちが教育委員会を訪れ、再編構想について勉強会をされたので、私も聞かせていただきました。その場で、会長さんがたから、「再編構想に書かれている、廃校になる10校は、実はもう、決まっているのではないか」との質問がありました。それに対して、区側からは、現在進んでいる小学校の統廃合と、中学校の神明・宮前統合案以外は全くの白紙です、という回答がありましたが、相違ないでしょうか? あらためて確認いたします。白紙で間違いないということでしたら、広報に、そのことをはっきりとわかるように書くべきではないでしょうか。そこのところがあいまいなため、地域では「あの学校がなくなると広報にのっていた」などの噂が流れています。もしも白紙でなく、何か腹案があるのなら、当該校の関係者に対して早く説明をするべきではないでしょうか。この点もお答えください。
だいたい、言わせていただければ、適正配置基本計画の考え方自体が、根本的に古くなっていると言わざるをえません。一昔前なら、学校をどんどんつぶして新しい公共施設を建てるのが改革だったかもしれない。でも、今の時代は、もうそういう時代ではないんです。ところが、杉並区の考えている学校の再編はあいも変わらず、旧態依然としています。
 先日、荻窪小学校の移転に伴う跡地利用の説明会がありました。荻窪小が宮前中のとなりに移転する。その空き地に大宮前体育館を移転する。その空き地は宮前中の敷地に編入するという案ですが、宮前中は、神明中との統合が検討されている最中です。もしそれが実現すると、神明中の跡地があく。ここは「青少年のための文化、スポーツ施設」を建てるという案が出されています。
 要するに、狭い地域の中で、玉突き状態で、次々にハコ物が建てられる。全くハコ物行政もいいところです。前時代的です。結局のところ、学校をなくして、跡地で公共事業を行うことが統廃合の目的なのかと感じますが、どうなのですか。
 こういう古くさいハコ物行政をいつまでやっているのでしょうか。子どもの数が減っている今こそ、ゆとりある教育環境整備の好機ではありませんか? 2003年の「学校適正規模検討委員会」の報告によれば先生方の理想のクラス人数はおおむね20人です。一方、大規模校の弊害が指摘されています。これからの時代の新しい学校、と連呼している教育委員会としては、現状の学校数を維持し、余裕をもった学級編成、教育活動を行う方向への方針転換をしてはいかがでしょうか。見解をうかがいます。
 最後に学校支援本部についてうかがいます。3月に、私は、学校評議員会で学校支援本部の説明図をいただきました。そこには、学校支援本部の仕事の例として、芝生の手入れ、図書館の管理運営などが書かれていました。本来学校業務の一部である、そんな仕事までをボランティアに投げるのかと大変驚きましたが、今後、各校で設立されるという支援本部が「こうなっては困る」という一例として、この夏に起きた学校図書館をめぐるエピソードを紹介いたします。
 この夏、学校現場やPTAにとっては突然のことでしたが、学校図書館のIT化の作業がふってわきました。具体的には、学校によって5000冊から10000冊にものぼる蔵書を整理したうえで、1冊1冊にバーコードのシールをはり、情報を入力したり検索したりしてシステムが使えるようにデータをつくっていくという、大変な作業です。パソコンとシールはお金が出るけれども、肝心の人件費は学校ボランティアの日当23人分、50600円まで出しますというだけです。
 ちなみに、私はこの仕事を企業がやったらどうなるのかと思い、ある会社に見積をお願いしてみました。図書館業務専門の会社で、実際23区の多くで、同じ業務を受託しています。この会社では1冊120円から170円でやるとおっしゃいました。仮に5000冊としましょう。一番安くても60万円かかる計算です。それを5万円でどうやってやるんでしょうか。あきれた話です。
 結果、いくつもの学校で、保護者ボランティアが集められました。この仕事を全面的に保護者ボランティアでまかなった学校は大変でした。保護者10人前後が、夏休み中、毎日、学校に「出勤」してようやく入力をおわらせたそうです。それでも終わった学校はいいほうで、多くの学校はいまだに手つかずだったり混乱状態です。保護者の方やPTA役員、先生方、そこらじゅうで悲鳴が上がっています。学校図書館IT化はけっこうですが、肝心のそのための人的保障、金銭的保障が著しく不十分ではありませんか。見解を伺います。
 だいたい、民間委託が大好きな杉並区が、どうしてこういうときに民間企業に仕事を発注しないのでしょうか。この手の作業こそ民間委託すればいいじゃないですか。毎年150億円を貯金していこうなどという豪気な杉並区が、なぜ一校せいぜい100万程度の出費を渋るのでしょうか。
 この話はさらに奥深くて、実は多くの学校では、作業以前の蔵書の整理をできる人がいない、という根本的な問題があったことがわかってきました。私は、今回、現場の先生方、また図書館司書の資格をおもちのボランティアの皆さんと意見交換いたしましたが、皆さん共通しておっしゃったのは「学校図書館に司書がいないのが一番問題」ということです。現にボランティアのみなさんが区に対して要望書をお出しになったと聞いています。学校図書館は学校教育の心臓部にもたとえられる重要な施設です。専任の職員をおくべきだと思いますが、この件については、また別の機会に譲ります。
 多少横道にそれましたが、図書館の例で、学校支援本部の「来るべき」問題点を理解いただけたでしょうか。ボランティア、地域の協力はけっこうですが、ちょっと考えていただきたい。ボランティアというのは、自分ができるときに、できることをやるものであって、毎日義務的に働くことではありません。ボランティアは「ただ働き」ではないのです。今回の図書館問題は、学校支援本部のないもとでのできごとですが、しかし、今後たちあがる学校支援本部が、結局、地域の人たちの「ただ働き」を強要することになるのではないかという危惧を、私は持ちます。
 今回の学校図書館IT化のように、学校にとって必須の活動においては、ボランティアをあてにするのではなくて、きちんと賃金・報酬を払って、人を雇うべきであると考えますが、いかがでしょうか。仕事をしてもらうには、賃金を払うんだよ、などという、いろはの話を役所に対して確認しなくてはならないということ自体、まことに嘆かわしいことですが。
 学校支援、学校ボランティアは、基幹的な学校運営費が十分に保障され、学校本体がしっかりと運営されていてこそ、力を発揮するものです。そうでなくても、山田区長になってから、杉並区の教育予算は大幅に減らされています。そのもとで、区が描くように、学校支援本部、教育基金、地区教育委員会など、学校運営の主たる責任を地域に担わせるならば、これは、縷々述べてきたように、根本的に公教育としての責任放棄であると私は考えますが、いかがでしょうか。この点について見解を伺って質問を終えます。誠意ある、かつ、中身のある答弁を期待します。