わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

「すぎなみの保育、危機を回避」の行政目線、上井草保育園の民営化について(保健福祉委員会の質疑より)

 2017年6月6日杉並区議会保健福祉委員会における質疑の要旨です。待機児童緊急対策について「危機を回避」は誰の危機? 上井草保育園民営化手続きの問題点、など質問しました。上井草保育園の事業者選定で「該当者なし」となったことは区にとってかなり衝撃だったようで、部長、課長の答弁も怒気を含んでいました。「該当者なし」なのに選定委員会が強制終了されたのは、低い点数をつけた委員を除外するために新たな委員会を立ちあげるということかと推測します。できないのがわかっているのに保護者委員を「10日間で選べ。さもないと」と脅しの文書を配ったのも、見せしめのような感じです。
(以下質疑応答の要旨)
認可保育所運営事業者の選定結果について>
(松尾)公有地利用の和田中と西荻は比較的敷地面積が狭い。ここに定員80名を予定しているが、園庭はできないのでは。また建物は3階建て?
(毛利保育施設支援担当課長)西荻は2階建て。園庭はない。和田中も同様。近隣の公園を使っていく。
(松尾)持ち込みのほうは広さはどうか。
(森保育施設担当課長)土地の広さは、300平米、518平米、484平米。
(松尾)かなり小規模な敷地の中に建てていくということで、保育環境に影響する。
<待機児童解消緊急対策の総括>
【保育の質】
(松尾)保育の質の確保が課題とのことで、先ほどから巡回指導の話が出ている。たまたま公園を通りかかったとき新設園の1歳児が10人ばかり来ていた。先生が2人いたが、子どもへの言葉かけが全くない。しかも片方の保育士は子どもの写真をひとりひとりとっており一人しか視野にない。もう一人も全体を見れてなくて、視野からはずれている子どももいる状況。こんな保育大丈夫なのかと心配になった。その時だけかもしれないが。
 最近、低年齢児に対する話しかけない保育というのが広まってきている。人数が足りない中で子どもたち大勢をみなければいけないので、かまっているひまがないとか、先生がいうとおりにやってもらわないと困るということで、管理的な保育になりつつあるのかなと。そういうことが普通にあるとすれば心配。
(毛利保育施設支援担当課長)公園等での利用については、園に訪問したときに十分配慮するよう伝えている。杉並区がつちかってきた保育の質を各私立園に伝えていくことも大きな目的として巡回指導、相談をやっている。
(松尾)他の委員の質問の中で、問題がある園が1園あるとのことだった。どういう点が問題と感じているのか。
(毛利保育施設支援担当課長)たとえば、昼寝の時間をどのようにとっているか、など、園の考え方と区立の保育のありかたが違うような場合、こちらの考え方を伝えている。
【保育料の引き上げ】
(松尾)個別外部監査、利用者負担のありかたについて書かれている。平成30年4月にむけて額の検討ということだが、この間の話では個別外部監査の結果を受けてと聞いていたが。スケジュール、進め方は。
(中村保育課長)監査の最終報告は8月ごろ。ただ、最終報告を待つのでなく検討状況については報告を得ながら保育料の検討に反映できるものは反映して、同時進行で進め、最終的な報告も受けて議会に情報提供、最終的には議案となる。
(松尾)報告を受けて、というよりは、負担の見直しをやりつつその裏付けに監査を使っていく、みたいなことが考えられる。
【「危機を回避」とは】
(松尾)次に、待機児童ゼロ、ができなかったこと。本会議でも言ったが「すぎなみの保育、危機を回避」という広報の記載に非常に違和感がある。「危機を回避」は誰にとっての危機なのか。しつこいようだが、お聞きしたい。29名の待機児童が出てしまった。さらに数百名の方が認可を希望しながら認可外に入っている。その方たちにとっては、危機は回避されたのかと疑問に思う。
(中村保育課長)保護者、子供たちのために取り組みを行ってきた。最終的に待機児童が発生したことは職員として全力でやってきたので悔しい思いがある。区としてはこの緊張感をもった取り組みを緩めることなくやっていく。さらに認可の整備を進め、需要にこたえていきたい。
(松尾)確かにたくさんの人が救われたとはいえると思う。ただ、危機を回避した、という「危機」とは行政にとっての危機ではないかという気がしてならない。仮に500名の待機児童を出したとすれば、行政が責められる、区長が責められる、そういう危機を回避したということに思えてならない。なぜなら危機が回避されていない当事者がいらっしゃるから。こういう表現は行政目線だし、保護者の立場によりそっていない表現と思われてならない。
【国の新しい待機児童の定義】
(松尾)ずっと問題にしてきたが、待機児童の定義の問題。本来、国の法律に則れば国の認可した保育施設に子どもを保育するのが自治体の義務であるということになっているが、区は独自の定義を使っている。国の定義が新しく厳しくなるということに対して、来年度は国の定義にそったカウントを当然するか。また、この総括の中で「当面は区定義ゼロをめざす」としているが、これは国が定義を改めたもとでも区定義をめざすのか。区定義のほうが厳しいのか。
(中村保育課長)来年4月に向けては、新しい定義に基づいた数値を発表する。目標は当面区の定義でのゼロを目指していく。
(松尾)他の自治体との比較だとかそういうことも必要となるので、国の定義が新しくされるというこの機会にそこにそろえたほうがいいのではないか。
<上井草保育園の民営化について>
【選定委員の個人別評点公表は初めて】
(松尾)選定委員9人の個人別の評点が配布された。このような形で配布された前例はあるか。
(森保育施設担当課長)議会に提出するのは初めて。「選定者なし」ということがこれまでなかったため、より詳しく報告をするため。
(松尾)さきほどから「0点をつけている人がいる」と問題になっているが、0点をつけてはいけないのか。
(森保育施設担当課長)すべて0点の人もいたのが事実。0点がいけないという言い方はしたつもりはない。
(松尾)「二度とこのようなことがないように」と言っている。こういう結果が出たことに対して、特に今回、個人がどういう点数をつけたかまで開示しているのだから、そこに問題があるといいたいのでは?
(有坂保健福祉部長)個人で0から92点、委員の中でも0から96点の開きがあり、前代未聞。0点が問題ではなくばらつきが問題。
(松尾)選定委員はいろいろな立場の人がいる。学識の人も、一般の保護者もいる。さまざまな観点からみて、それぞれの価値観で見るからこそ選定委員会の意味がある。ばらついていることが問題というのは解せない。
(有坂保健福祉部長)それぞれ責任ある事業者が応募して、それに対して、これだけの開きがある。どう考えても理解できない。問題だと思っている。
(松尾)低い点数をつけたことが問題だとおっしゃっている?
(有坂保健福祉部長)92点の開きがあることが問題だと言っている。
(松尾)それは低い点数が問題なのか、高い点数が問題なのか。
(有坂保健福祉部長)同じように社会福祉法人でがんばっている4事業者に対して0から92というのは、恣意的になってしまうのではないか。客観的に申し上げている。
(松尾)それを言ってしまうと、選定委員会のありかたに踏み込んでいくことになってしまう。この評点を見ても、書類審査の段階ではそれほどの開きがないが、現地を見てこの保育はまずいなあと思ったのでは。恣意的に0点をつけようと思えば初めから0点をつければいいわけだが、二次審査の段階で0点やかなり低い点数が出てきているというのは、やはり現場を見に行って、上井草保育園の保育をうけつぐに値する事業者かという観点から見たときに、100点のうちのいろんな項目があって、それぞれに判断した結果そうなったのだと思う。そのことに問題があると言ってしまうと、問題になるのでは。
(有坂保健福祉部長)0〜10点の人がいる。この人については、評価の仕方について事前に十分議論して共通認識もつべきかと思う。0〜92というのは、私は十数年プロポーザルをやっているがこうした選定のしかたは初めて。これについては私ども反省すべき点が多々あると思う。
【現地視察には意義があった】
(松尾)大事だと思うのは、現地を見てこういう評価が出ているということ。一人二人ではなく、かなり低い点数をつけている人がほかにもいる。全体として、0点という極端な点数をつけているのが悪いといえるのか。むしろ現地視察を行ったことに意味があったというべきではないか。
 先ほどの、新たな保育園の整備について、プロポーザルの報告があったが、そちらでは現地視察をしていない。実際どんな保育をしているか、民間事業者を選定するにあたって、現地を見なくていいのかということをこの間も言ってきた。上井草のプロポーザルでは、現地を見て、こういういろんな評価も出てくる。これ以外の持ち込みとか公募型にしても、プロポーザルに現地視察を取り入れていくべきではないかと思うが。
(森保育施設担当課長)審査の内容として東京都の認可基準にそったものになるかどうかを中心に見ている。特に現地視察はしない。
(松尾)保育の質という話をさっきからずっとしている。現場を見なくて保育の質はわかりにくい。事業者の選定にあたって、現地を視察にいくことが大事だというのが今回の教訓ではないかと私は思っている。
【選定委員会がない状態での公募】
(松尾)プロポーザル選定委員会の手続きについて。選定委員会は終わったのか。普通に考えると選定できていないんだから終わっていないのではないか。選定委員会が開かれるということだが、そのまえに5月から公募が始まっていて、昨日公募が締め切られている、そのあと委員会が開かれるのは不整合ではないか。
 逆に、委員会が同じメンバーで続いているのであれば再選定にあたって、同じ要項でやること、選定委員会はそのあと開く、でいいと思う。でも区は、いったん選定委員会は終わりましたといいながら、やっていることは前回の委員会を引き継いでいる。どちらの立場をとるのか? 選定委員会はおわったという立場をとるなら、新たな選定委員会が組織されて要項についても、これでいいかという検討を行ってから公募すべきでは。
(森保育施設担当課長)さきの選定委員会は「選定者なし」で終了している。募集要項は保護者の多くの意見が入った要項を確認して、区として決定して、この要項で募集すると決断したうえで募集している。
【プロポーザルの手続きが逸脱していないか】
(松尾)区で判断したとか決断したとかいうが、プロポーザルの手続きについては選定委員会という第三者的な組織で手続きをするのがルール。プロポーザルとは何かというと、提案をしていただいて、その中から1者を選んで、随意にここと契約をしようというもの。随意に決めるときに区役所が勝手に引っ張ってくるわけにいかないから、民間の方も入って選定委員会でやるという条例も作ったはず。手続きの中で、いま委員会が空白の状態、その中で手続きが進んでいるのは、逸脱しているんじゃないかということを本会議でも指摘した。
(森保育施設担当課長)選定委員会の位置づけは、区長の諮問に応じて必要な事項を調査するもの。前回は募集要項から審議した。しかし今回は募集要項は区の決定で、審査する段階から区長の諮問事項としているので逸脱はない。
(松尾)委員が決まっていると思うが、前の委員会と重複している民間の人はいるのか。
(森保育施設担当課長)選定委員は選定後に公表する。
(松尾)では新しい委員が入っているという前提で話をさせてもらうが、新たな委員で新たな委員会を設置した、という段階で、要項が初めから決まっていますというのはありなのか? 要項を決めることは委員会の権限のなかにないということになる。前回の委員会は保護者からのつよい要望で要項をどうするかに相当時間をさいた。それだけの権限を持っているものと理解される。しかし今回の新しい委員会にはその権限が付与されないということになる。いちから議論しろということではなく、最低限「この要項でいいか」ということを新しい委員に確認してから募集するのが順当ではないか。
(森保育施設担当課長)選定委員会は条例にもとづき、区長の諮問に応じて必要な事項を審議することになっているので、要項を審議する権限がある機関ということではない。
(松尾)委嘱文を見ていないのでわからないが、前回と今回では委嘱文が違うということか。
(森保育施設担当課長)最初の選定委員会のときに委嘱状とともに「こういう内容を諮問する」ということを話している。それにもとづいて委員会では調査してもらっている。
(松尾)委嘱の内容は同じか、違うか。
(森保育施設担当課長)違います。
【保護者選定委員の選出期間が10日しかない】
(松尾)保護者から新たに選定委員を10日間で選ぶように、という通知が来たというが10日間で選べると思ったのか。
(森保育施設担当課長)10日間でお願いした。
(松尾)100人からの子どものいる保育園、100家庭の保護者の中から、誰が出るというのを顔を合わせて話し合いをするとか、誰かが手をあげて、それでいいですよという合意形成をするとかしなきゃいけない。それを10日間でできると本当に思いますか。
(森保育施設担当課長)一番最初の選定委員会のときは1か月以上期間を延ばした経緯もある。区は民営化のあと、跡地を活用する事業もある。区全体の計画の流れを考えて10日間でお願いした。
(松尾)普通に考えて無理でしょ。あなた方のように仕事でやっている人はいいですよ。じゃあ、明日打ち合わせして決めましょう、とできますよ。保護者は仕事は別にあるから。保育園のことは仕事じゃない。空いた時間にやること。お子さんが小さいから家に帰ってからやることも山ほどある。こういう人たちが10日間で選ぶことはできっこない。できないとわかっていて10日間と指定したということですよね。皆さんが選出できなければ保護者は入れません、そして有識者5名でやりますという通知もされている。実際にそのようになっている。見切り発車でやるということを通知されている。これは脅しですよね。当初保護者が選ばれないということで学識5名とされた。なんでここ、区役所の職員がいなくて学識5名という判断をしたのか。
(有坂保健福祉部長)跡地を重度障碍者施設にということもあって10日間とした。保護者に入ってほしいという思いはあった。最終的には期日を過ぎたが保護者に入っていただいた。学識5名で進めようとしたのは、保護者がいないなかで中立性の観点から職員が入らないほうがよいという判断。現場の園長にも確認して、その後の準備期間含めて選定委員会に入らなくても、自分たちがしっかりと準備期間をもうけてもらえれば円滑にいくよう努力するという打ち合わせもしたうえの決断。
(松尾)有識者5名のみの選定委員会と聞いて驚いた。ガイドラインをつくって、そこに「職員5名、有識者3名、保護者2名」というルールを自分たちで決めている。ところが、その最初の選定でいきなり違うことをやるのはどうなの。あくまでも保護者2名が出てくるのを待つべきではないかと思った。
【民営化ガイドライン、改定を求める】
(松尾)ガイドラインに関して、このガイドラインが委員会に報告事項として入っていないのはどういうわけか。
(森保育施設担当課長)これまでの民営化の中で公募要項や保護者の説明会で示していたものをまとめたもの。新たなものをつくったものではないので報告しなかった。
(松尾)内容的にも注文がある。世田谷区のガイドラインは、時間をかけ、外部の有識者を招いて保護者もまじえて1年くらい意見交換会をして区民の意見も募集して定めたというもので、内容も保育の質にわたるような詳しいことをいろいろ書いてる。しかし、今回区で出されたガイドラインは単に事務手続きを定めたものになっている。今後は、世田谷区のように、職員、外部の有識者、保護者もまじえてきちんと議論したうえで、質の高い保育をしていくためのガイドラインを今後、改定していくことを保護者も望んでいるのではないか。そういった考えはあるか。
(森保育施設担当課長)今回のガイドラインは事務的な流れを示した。しかし、全く区の職員だけでつくりあげたものではなく、これまで10園を民営化するなかで、保護者、学識経験者の意見を積み重ねてきた。
(松尾)世田谷区のガイドラインは、選定にあたっての、事業者の質を見極めるための事項が具体的に書かれている。そうした内容を今後加味していく必要がある。
【財務診断結果の提供が遅すぎる】
(松尾)最後に、この選定についての財務診断結果について保護者の意見が届いている。診断に時間がかかったこと、公表が最後のヒアリングの日であったこと。最低でも現地視察の日に見ることができれば、事業者に対する判断基準が豊富化できたのではないか。保育の質を考えるにあたって、財務の内容を詳しく検討することはきわめて重要。
(森保育施設担当課長)前回の選定委員会の中で、財務診断については最終のヒアリングの日に示す、ただ、決算書などの生データについては視察の際のバスの中で示すということで委員にも了解いただいた。次回の財務診断結果はいつ出すかは、選定委員会の中で意見をきき決定していく。
(松尾)保護者から議員に対してメールが届いている。そのなかで財務診断結果についてたとえばこんな状況がある。「最近の新設園の受託により資金流出があり収益性に影響している。人件費や人事配置の工夫により収益性を確保」ということで、保育士の処遇に問題が出てくるんじゃないかということを保護者は指摘している。生データを提供するという話があったが、なかなか一般の私たちが読んでわかるものではないので、会計士が所見を述べることによって理解できることもある。できるだけ早期に公表するように要望する。