わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

教育ビジョン推進計画への意見/ゆり

(区役所にファクスしました)
○p2「師範を育てる」p15「師範館」
・師範というのは戦前の教育勅語時代の教師の呼称であって、現在は使われないはずですが、なぜあえてこの言葉を使うのですか? 使うべきではないと思います。
・「師範館」は「杉並区の独自性」として「戦前の教育をいかす」「戦後の教育を再点検する」ことを掲げていますが、現在の教育行政は、戦前の軍国主義教育=教育勅語を否定して、民主主義教育を行うことを教育基本法に定められています。戦後教育を否定し、教育基本法を否定することは、行政として法令違反であり、認められません。
・教師は「師範」ではありませんし子ども達を「薫陶」するものでもないはずです。教育基本法をちゃんと読んでください。
・「杉並の目指す教育」とは何でしょうか。国の定めた教育基本法以外に理想がおありなのですか? それは前記「戦前の教育をいかす」ということでしょうか。公教育としてあるまじきことです。
・師範館は任意団体だそうですが、その任意団体と区の関係が不透明です。区がお金も人も出しているのに任意団体なら何をしてもいいのですか? たとえば教育基本法に違反することでも? そんな団体には予算をさく余裕はないと思います。
・師範館を卒塾(松下政経塾でもあるまいに)した人は杉並の教員に採用するといいますが、全員を無条件に採用するのですか? それだけの予算がとれるのですか? 
・応募者は都採用を落ちた人ばかりで能力的に劣るのではないでしょうか。他区市との人事交流が停滞し、杉並の教師の質が落ちていくことを心配します。
○p3「2 自立と責任ある学校をつくります」の「主な取り組み」
・現在推進されているものもあるが、新たな「地域教育委員会」「教育基金」「学校経営支援」など盛りだくさんであり、学校現場では消化しきれないと思います。区は自ら「財政難」ということを掲げています。だとすれば、何が本当に必要な政策かを精査し、力点を絞り込むべきではないでしょうか。現在の区のやりかたは、どの政策も1カ所2カ所でやらせて「あれもやったこれもやった」というマスコミ向けの話題づくりに学校がふりまわされていると感じます。
○p9「食育」
・「体にいい給食献立」とありますが、いままでの献立はそれでは体によくなかったのですか??不信感をもちます。
・食育というならば、調理員さんや栄養士さんを民間委託するのではなく、教職員と密接に連携できる体制をきちんととるべきでしょう。
・保育園の調理も民間委託するそうですが、食育の中でも一番大切な幼児の食事をないがしろにする区の政策は、まったく「食育」と矛盾しています。
○p9「教科用図書の独自発行」
・現在の検定を通った教科書ではいけないのですか? 教科書採択のとき教育長はじめ教育委員のみなさんは「すべて検定を通った教科書なのだから」という理由で、全国でもまれな扶桑社教科書を採択しましたが、検定を通ったというのは一定の水準を満たしたという意味ではなかったのですか? 
・あえて独自発行する必要が認められないのに、なぜ余分な経費をかけてわざわざ検定教科書以外の教科書(教科ドリルも)を使おうとするのでしょうか。予算の無駄遣いです。
○p11「育てたい人間像」、「就学前共通プログラム」
・よけいなお節介としか言いようがありません。生まれ落ちたときから、役所が育て方を決めるのであれば、子育てにかかる費用もすべて負担してください。私たちはそれぞれ親としての思いをこめて子どもを育てます。「こう育てろ」などと口出しは無用です。
・こんな「プログラム」をつくるために、またぞろどこかの民間研究機関にお金を出すのですか。無駄遣いです。
○p12「徳育」の推進
・この計画全般に「徳育」が前面に出されていることに違和感を覚えます。これも戦前の「修身」の反省から戦後教育では見直されてきたところであり、「徳育」の強調は復古的な教育につながると思います。
○p12「キャリア教育」について
・突然の中学での5日間の職場体験は唐突すぎました。学校の先生方がいかに大変だったかわかっているのでしょうか。区役所がもっと受け入れに協力的であるべきです。
・学校の独自性を謳っているくせに、この件については全校一斉で例外を認めないのもおかしいと思います。3日間の学校、1日間の学校もあっていいでしょう。
○p12「レスキュー隊」
・中学生は未成年、子どもです。いざというときに戦力として計算するのはやめてください。全校にレスキュー隊結成などという愚行はまさかしないでしょうね?
○p15「杉並教育会」
・先生方は現状でも研究活動をりっぱにやっておられると思います。なぜ新たな会をつくるのか。「戦後教育」に満足しない知識人に発言の場を与えるものなのではありませんか?
○p19「経営支援組織」
・公教育は税金によって平等に運営していくのが当然です。各学校の「経営」をそれぞれ独自にやらせるのは学校どうしを競争させ格差をつけていくことにつながります。私立ならよいでしょうが、公立では望ましくありません。教育長も区長も「私立のつもりで」とことあるごとに言っているようですが、公立学校と私立は厳然としてちがいます。私立は選ぶことができますが、公立は選べないのです(となりの学校と選べるというのは教育方針自体を選べるというのとは違います)。
○p22「地域本部」「地域運営学校」「地区教育委員会」の関係が不明
・やったらめったらいろんなものを作ればいいというものではありません。地域と学校の関係もいま混乱しています。地教連もありますし、学校評議会もあります。その上にこれらのものを作っていく必要がわかりませんし、地域と学校のあるべき連携の姿が全くみえません。まずは、地域と学校の役割をきちんと決めてから組織を作らないと、「いつも同じメンバー」の状況は変わらないでしょう。
・「地区教育委員会」の役割は何ですか? 形骸化しているとはいえ「教育委員会」は建前上行政から独立した教育運営機関ですから、「地区教育委員会」などというものができれば、教育行政は混乱するだけです。わけがわかりません。
○p23「教育基金
・学校ごとに地域の人が寄付をするといいますが、ということは、お金持ちのいる地域はリッチな学校、そしてその学校は「大口寄付者の○○さんには頭があがらない」ということになるのでしょう? 逆にお金持ちのいない地域では学校はボロボロに? そうなればもはや公教育とはいえませんね。
盛りだくさんのように見えて、学校がほんとうにやってほしいことが何ひとつ書いていないと感じました。このところの教育委員会は新奇(珍奇)な政策を次々に打ち出すことに夢中で、子どもたちの状況、学校や先生のおかれた状況に全く目が向いていません。
どの学校も校長先生はじめ先生方が、必死に工夫をして運営されているのに、その努力に報いるどころか、教育委員会の気まぐれでふりまわされています。「ゆびとま」も「職場体験」もあれもこれも、すべて、校長先生ですら新聞で初めて知るというトップダウンのやり方は、学校のやる気をそいでしまい、能力のある先生が杉並に来てくれなくなると思います。
全体として見たときに、この計画は杉並の公立学校を向上させるよりは公立離れを促進する内容であるように思います。
こうして意見募集をしながら1月にはもう決定してしまうというスケジュールは何なのでしょうか。区民意見、学校意見を真剣に聴く気があるとはとうてい思えません。
区民にオープンにしてから1年ぐらい時間をかけてPTAや学校関係者とじっくり意見交換して、よいものをつくっていこうという気はないのでしょうか。
この計画が実行に移されるなら杉並区の教育はますます混迷していくと思います。大変心配しております。