わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

田中良新区長の所信表明に対して(一般質問)

区政一般に対する質問を行います。
はじめに、この度、山田前区長が突然辞任し、新しい区政が始まったことを、私は歓迎いたします。
山田前区長の新党結成と党首就任が伝えられた際、私たち「杉並わくわく会議」は国政の党首と区長の兼職をやめ、区長を辞職するよう申し入れました。結果的に、これに応える形で山田前区長が辞任したことを私たちは歓迎しました。
●「住民自治にもとづき杉並らしいまちづくりを」
その後行われた区長選において、「杉並わくわく会議」は特定の候補者を支持・推薦せず、それよりもむしろ区民が主体となって、自ら区政の政策をいわばマニフェストのようにまとめることに集中しました。文書は「私たちがめざす新しい杉並区政」と題し、田中区長を含む5名の区長候補全員に要望として提出しました。その内容は、「1.区民が主人公のまちへ 2.公的責任にもとづく質の高い区民サービス 3.福祉・保育を急いで充実する 4.雇用問題、産業政策に真剣にとりくむ」そして最後に「5.住民自治にもとづき杉並らしいまちづくりを」の5章から成ります。全文は、ホームページに掲げていますので、詳しく知りたい方はごらんください。
ここにかかげた「住民自治にもどつくまちづくり」への転換こそ、新しい区政に求めるものです。
一例をあげますと、この夏休み、区立中央図書館では、児童コーナーの2階にある児童資料室を、自由研究の場として開放しましたが、毎日交代で地域ボランティアの方がサポートしてくださったことにより、時にはあふれるほど多くの子どもたちがつめかける盛況となりました。ボランティアの方々の自発性に触発される形で、図書館が可能性を広げた今回の取り組みは、まさしく住民の創意にもとづく事業の好例だと思います。
田中区長のもとで、新しい杉並区政が文字通り住民自治にもとづく区政になっていくことを心から希望し、区政がその方向で進むかどうか、議会の立場からも、しっかりと監視し、また発言もしてまいりたいと思っております。
●区長の「福祉重視」表明に共感
さて、区長の所信表明について質問します。
所信表明演説には、共感できる点が多々ありました。中でも「区の最大の役割は、区民福祉の向上」という部分には共感します。山田前区長は「人間をむりやり平等にしようとすれば間違いがおきる」「金持ちから取り上げて貧乏人にやれば、みんなが貧しくなるだけ」などと発言して、福祉の役割を公然と否定する言動を繰り返しました。田中区長の言葉は、自治体として何ら特別ではない当たり前のことだと思いますが、それすらも前区政では常識として通用しませんでしたので、今回、田中区長が明確に福祉重視の姿勢を打ち出したことを評価するものです。
とりわけ、高齢者福祉について「介護保険だけでは支えきれない」と明確に述べて、「在宅への支援」を打ち出したことは重要であり、区が介護保険外の独自施策を、今後充実させていくことを大いに期待するものです。
また「杉並わくわく会議」の「私たちがめざす区政」の中でも提案した産業政策ですが、商店街から始めて、産業調査を行うことも、当然といえば当然のことですが、これまで、産業振興計画の見直しすらせずに何年も放置してきた山田区政からの方針転換として歓迎します。このほか、エアコン設置の機敏な対応や、減税自治体、教育憲章などに対する対応も適切なものと考えます。
このように、区長の所信には共感、賛同できる部分もありますが、他方、疑問に思う部分、確認したい部分もあるので、以下大きく4点について質問します。
●「地域主権改革」は自治体に財政負担を強いる
第一に住民自治と議会についてうかがいます。
区長の所信の中にもありましたが、国は現在「地域主権改革」を推進しています。地方分権地域主権といえば、あたかも中央集権から地方が権限をもつ民主的な政治に変わるようにうけとられます。しかし、これまでの自公政権下で行われてきた分権改革は、三位一体改革平成の大合併に見られるように、行財政改革地方交付税削減を目的とするものであって、その結果、地方財政は疲弊し、自治体間格差は拡大してきました。
本日、民主党代表選挙が行われますが、その中でも例えば、小沢一郎氏は、「地方に権限委譲すれば7割の金でやると言っている」と、地方への権限委譲の目的は国の歳出削減であることをあけすけに語っています。
結局のところ、民主党政権における地域主権改革とは、旧政権の分権改革を受け継ぎ、さらに加速させるものとなっており、つまりは肝心の財源は削減されてしまうという、自治体から見たときに望ましくない方向の改革ではないでしょうか。区長の見解をうかがいます。
●議会への不信を招く議会の「総与党化」
つぎに、議会と首長の関係についてうかがいます。
名古屋市阿久根市などで、市長が議会の存在そのものを否定するような動きが起きています。こうした市長らの言動は、全く非常識なものですが、市民の一定の支持を得ていることも事実です。長引く不況の中で、市民の間には、生活や雇用の深刻な問題に対応しようともしない政治や議会に対する強い不信感があり、そのことが、一種ファシズム的な市長らの突飛な行動を支持する背景にあります。議会は自らのありかたを振り返ってみる必要があります。
本来議会は行政と首長を厳しく監視し、住民のための行政を実現していかなくてはなりません。国会とちがい、地方自治体の二元代表制においては本来与野党の別はなく、どの議員も、首長の政策に対しては、常に是々非々で虚心に調査することが議会のあるべき姿です。しかし、多くの地方議会が総与党化し、首長の追認機関と化しており、住民の議会への不信感と議会不要論に勢いを与えています。
ここ杉並区議会においても、この間、議会の多数派が、山田前区長のとんでもない提案に対してすら、常に唯々諾々と丸呑みし、すべての議案に賛成するという、まことに情けない傾向がみられました。
また、山田前区長は、与党を標榜する会派・議員とそうでない会派・議員との間で、あらゆる場面で露骨に差をつけてふるまいました。意見の違いをこえて討論しようという態度は全く見られませんでした。そこで、田中区長は、今後議会に対してどのような態度でのぞむのかをうかがいます。議会人として20年のキャリアをお持ちの田中区長に対しては若干失礼な質問かとも思いますが、このような区長のあとですので、あえて伺います。
●住民主権を明記した「自治基本条例」へ
次に住民自治についてうかがいます。
地方自治体は、住民が主人公であることは当然のことです。しかし、区の自治基本条例には、肝心な住民主権を規定する条文がなく、そのため区民の権利規定が不十分なものになっています。区長も区議会も、その権能は主権者である区民の信託にもとづくものですが、そのことも規定されていません。この点は、昨年第4回定例会における自治基本条例改正の折に意見を述べたとおりですが、区長交代のいま、原則に立ち戻って、あらためて自治基本条例見直しの必要があると指摘し、この点について、見解を求めます。
関連して、区長の所信の中で「主体的・積極的な区民参画と協働」という言葉がありました。これは、区民主権をふまえたものなのでしょうか。
協働もけっこうですが、前提として主権者としての権威が規定されていないのでは、単なる行政のお手伝いになってしまいます。実際、これまで区の「協働」は、実態としては経費削減のため行政の下請けとしての区民のただ働き、もしくは民間企業の営利活動への公共サービスの開放を意味することが多かったのですが、区長は、「新しい公共」に関連して「民間団体、民間企業の活力をいっそう積極的に活用し、公共サービスを適切に提供する改革を進める」と述べました。つまりは、引き続き、前区政のやりかたを踏襲するということなのかどうか、区長の見解をうかがいます。
●新しい基本構想策定に広範な区民の参加を
次に基本構想についてうかがいます。今定例会において、基本構想審議会条例が提案される予定ですが、前回の基本構想制定時の仕組みをそのままひきうつしたような形では全く不十分ですので、ここで提案をいたします。
基本構想が真に区民を主体とする、文字通り住民自治にもとづく構想になるためには、たとえば三鷹市が行った「みたか市民プラン21会議」のようなやりかたが考えられます。この会議は、あらかじめ行政が案をつくるのではなく、全く白紙の状態から市民が議論をして構想を提案するというやり方で行われました。人数に上限を設けず公募したところ市民約400人が応募して会議に参加、2年間、773回にも及ぶ会合を重ねて熱心に議論が行われました。このように、広く区民意見を募る方法を導入すべきではないか、区長の見解を求めます。
●「職員1000名削減」さらに続けるのか
大きな項目の2つめとして、行政改革と民営化についてうかがいます。
山田前区政の行政改革の最も集中的なターゲットとされたのは「職員1000名削減」でした。区役所の職場は限界を超えて人を減らされ、職員の心身の健康に大きな影響が出たばかりでなく、民営化、民間委託の推進により、区職員が現場から離れ、結果として区民の生活実態や要望をつかむことができなくなって、政策立案能力の低下を招きました。区長は所信表明の中で、山田前区長のトップダウン手法が区役所の活力をそぎ、妥当性、継続性に問題のある事業が行われた旨の評価を述べましたが、それだけではなく、人員削減、とくに現場での削減そのものが、直接的に政策の妥当性を奪っていたことを指摘いたします。
行政改革とは単純に人員を減らす一方であってはならないはずです。見掛け上の人件費が減っても、それ以上に委託料が増え、非常勤職員や民間で働く低賃金労働者の数が何倍にも膨れ上がっていることは、たびたび指摘してきました。お金の使い方としてはかえって非効率なものになっています。
どこまでもどこまでも、ひたすら職員を減らしていくだけなら、何も考えなくても、誰でもできます。そうではなく、最も効率的に政策目標を達成できる人員配置こそが求められるのであり、区役所の適正規模を見定める能力が区長はじめ管理者には問われます。
区民に直接サービスを手渡す現業の職場にも区の常勤職員は必要です。学校給食や保育園など、すでに民間委託が導入されている分野でも、一定数の職員がいなければ、民間事業者を評価したり管理したりする能力が区役所からは失われます。新規採用を抑制してきたために生じた職員の年齢構成のアンバランスも是正しなくてはなりません。また、失業率が高止まりしている現在、区役所の仕事は雇用対策としての意義もあります。こうした点をふまえて、区長は、今後も人員削減をさらに進めるのかどうか、あるいは、踏みとどまって方向転換するのか、見解をうかがいます。
民間委託は各地で行われていますが、たとえば、学校用務の現場で、委託先から派遣されている労働者に対し、校長先生が直接お茶出しを指示したり、図書館のカウンター業務委託で職員と委託先労働者が利用者対応について直接やりとりするなど、委託先の労働者に対する直接の指示命令と受け取られるケースが指摘されています。行き過ぎた民営化の結果、他の部門との連携が不可欠な部門までも委託したために、このような偽装委託を疑われるケースが出ていることに対応が必要です。仮に、区内において偽装委託が明瞭なケースが判明した場合、速やかに直営に戻すべきと考えますが、対応についての見解を求めます。
●労働条件確保へ公契約条例制定を
また、民営化に関しては、経費削減のための契約金額の低下により、サービス水準の低下と、委託先で働く人々の労働条件の低下、低賃金、いわゆる官製ワーキングプアといわれる問題を生んでいます。セシオン杉並等の賃金不払い事件はそのもっとも象徴的な事件でした。この事件をきっかけとしてつくられた労働組合・行政関連ユニオンは、その後も民間委託先の労働条件の改善をめざして運動を進めています。
先日、全国初の公契約条例を制定した野田市に視察にうかがいましたが、野田市では条例で規定された公契約の対象にならない指定管理者制度においても、人件費水準を満たさない提案は失格とする、あるいは、工事契約の総合評価制度においても、人件費水準をクリアしない企業はマイナス10ポイントなどの仕組みを作ったとのことでした。23区でも、たとえば板橋区では、一部委託事業について、毎月賃金支払い報告を求めるようにしました。これらのことは、公契約条例をつくらなくても実施できることです。区においても労働法令順守のチェックなどの改善がなされたところですが、今後はさらに抜本的に契約条件等をみなおし、民間委託先、指定管理者の労働条件を改善していくべきと考えます。
野田市長の考えは、自治体単独での公契約条例にはそもそも限界があり、国の法整備こそが必要である。しかし、国が動き出すのを待つわけにはいかないので、自治体でできるだけのことを行うという趣旨だそうです。川崎市国分寺市では、今年中の制定をめざした準備が進んでおり、これらを含む多くの自治体が公契約条例をつくることで、ともに国を動かしていこうという力強い激励をいただきました。
先日来の区長答弁において、契約のあり方を検討する庁内組織を発足させたとのことですので、そこでの議論にも期待しますが、今後、適正な賃金と事業者の利益確保を可能とする仕組みを強めること、さらには、公契約条例の制定について、区長の見解を求めます。これらの改善は、委託先企業にのみ負担を求めるのではなく、発注者である自治体が予算を確保して、それなりの契約金額を保障して支える必要があり、その財政的な裏付けも含めて検討する必要があることを付け加えます。
●公的保育の世界を壊す規制緩和、直接契約
大きな項目の3つ目として、保育園と子供園についてうかがいます。
区はこれまで、保育園の最低基準について、都内においては、最低基準、特に面積基準は過剰な規制であり、緩和すべきとの見解を示してきました。しかし、現在の最低基準は、60年以上前の全く貧弱な基準であり、本当に最低限の基準です。これさえ守れない保育園は詰め込みになる恐れがあり、事実、この間の定員等の規制緩和で死亡事故が急激に増えたことが再三指摘されています。
さらに、今年6月に発表された国の「子ども・子育て新システム」案では、幼保一元の新制度創設と、利用者が園と直接契約する制度の導入が目玉になっています。直接契約はこれまで何度も提案されてきましたが、いまだ導入されていません。それは、第一に児童福祉法に規定された保育所入所の公的責任を放棄するものであること。そして、第二に「保育所が選べるようになる」といううたい文句とは裏腹に、現在の圧倒的な保育園不足のもとでは、園側が利用者を選ぶようになりかねず、子どもの権利を損ねるからです。新システムは公的保育の世界を崩壊させる危険性があります。これら国の保育改革、最低基準、新システムなどについて、区長の見解をうかがいます。
●区立子供園募集は当面凍結を
次に区立子供園についてうかがいます。山田前区長主導で、それこそ「妥当性、継続性」に大きな疑問符がつけられながら、強引に実現された子供園ですが、国の認定子ども園の基準すら満たさず、法的には文科省認可の幼稚園のままです。一説には前区長が特定の教育カリキュラムを導入するための転換だったとも言われ、拙速は否めません。
第二回定例会で詳しく指摘したように、スタートした2園の、とりわけ長時間枠については、子どもたちの処遇が非常に貧弱で問題があります。さらに、来年度新たに長時間の子どもが倍以上に増えることにより、昼寝のスペースも確保できず、おやつの配膳すらできなくなり、健全な保育が行えるとはとうてい思えません。長時間枠はいまだに定員割れしている事実もあり、保育園待機児の受け皿としての役割も果たせていません。先日来、保護者は幼保一元について理解を示しているとの答弁が繰り返されていますが、現実には、幼稚園の保護者の皆さんは、4月から発足した2園がいかに大変な状況であるかを知り、危機感を募らせているのが実際です。
現在入園しておられるお子さんについては、できる限り良好な処遇をすることは当然ですが、これ以上の長時間枠の募集は園のキャパシティからして無理であり、園児にも職員にも大きな負担をかけることになりますので、当面、長時間枠の募集を凍結、来年転換予定の2園についても、当分延期して検証期間を設けることが望まれます。
また、再来年度転換予定の高井戸西、西荻北の2園については、当面幼稚園のまま存続することを求めます。この2園は、もともと定員充足率が100%近い人気の園です。しかも、近年、マンションが増え、幼児人口が増加しているため、人気の私立園には希望者が殺到して入園が容易ではないとのことです。そのため、かなり遠くの園まで通わなくてはならないケースもあり、区立幼稚園として存続してもらいたいとの切実な願いをうかがっています。区立幼稚園のこれまでの幼児教育も高く評価されていますので、拙速な子供園転換には慎重であるべきと考えますが、いかがか。見解をお示しください。
●「師範を育てる」!? 教育改革の転換を
区長は、所信表明において「地域と協働した自立と責任ある学校づくり、という教育委員会の考え方を了とする」と述べました。しかし、区の教育改革ビジョンの3つの方針「教師(師範)を育てます」「自立と責任のある学校をつくります」「地域の教育力を高めます」は見直しの必要があります。「師範」という教育勅語時代の用語を使うのは論外として、他の項目も、そもそもの理念に問題があります。
公立学校教育の向上は、個々の学校における経営の問題ではなく、公立学校全体を向上させていくという課題であって、個々の学校の「自立と責任」に転嫁することは、間違っています。ところが、山田区政下の教育行政においては、市場原理にもとづく「私立のような学校経営」が望ましいとされ、各学校が競い合うことが求められました。その結果、生じたのは、学校間格差でした。「いいまちはいい学校を育てる」というのが教育委員会のお気に入りのスローガンですが、この言葉は裏返せば、地域が協力しないところでは、良い学校は望めない。そればかりか、学校希望制で子どもが流出し、結果、統廃合され、廃校になっても仕方がないよというメッセージ、地域に対する脅しでもありました。また、民間の任意の人物を会長として運営される地域運営学校のしくみでは、特定の人物が強い影響力を発揮して学校の運営を決定づけたり、あるいは学校側と地域が対立するなど、公立学校としては問題の事例もありました。
公教育は第一義に教育委員会と学校組織の責任であり、地域の責任ではありません。教育ビジョンの3つの方針は見直しが必要です。この点について見解を求めます。
●市場原理の元凶、「学校希望制」は廃止を
こうした市場原理主義の教育行政が推進されてきた背景には、山田前区長の教育行政への介入がありました。田中区長は、教育行政は教育委員会の仕事であり介入はしないと明言しましたが、当然のことです。しかし、これまで杉並区では実質的に区長部局、具体的には教育立区推進本部でさまざまな教育改革方針が決められてきた経緯があります。区長の教育行政不介入の原則に従い、推進本部は解散し、教育行政への介入をやめて教育委員会の主導にもどすよう求めますがいかがか。区長の見解をお示しください。
さらに、先にも述べた学校希望制の廃止が求められます。学校希望制こそ、学校間格差の元凶でした。希望制廃止については過去にも一般質問で詳しく指摘いたしましたが、地域と学校との乖離、毎年児童・生徒数が大きく変動することによる学校経営の混乱など問題が多く、自治体によっては、いったん取り入れたものの、とりやめるところも出ています。「教育格差が生じないように」という田中区長の方向に沿うのであれば、まっさきに学校希望制を廃止すべきです。見解をうかがいます。
●すぐれた住民自治の伝統に、再び豊かな実りを
以上が質問ですが、発言のおわりにあたり、社会教育についてひとこと述べさせていただきます。区長の所信表明演説の中で、社会教育について、ひとことの言及もなかったことは残念なことでした。と申しますのは、話は最初に戻りますが、住民自治の大きな源は実は社会教育だからです。
 杉並区で住民自治を支えるさまざまな運動、福祉や教育や平和運動、環境問題、あるいは町会、商店会などの地域団体の人材を育て、母体となり基礎となってきたのは、PTA活動や公民館活動をはじめとする社会教育活動でした。冒頭に申し上げた図書館に協力するボランティアの方々も、その一例です。
区には図書館をはじめ、さまざまな社会教育施設があります。山田前区政のもとでは住民主体の社会教育活動は冷遇され、社会教育施設は経費削減の矢面に立たされ、住民自治の源泉はやせ細ってきました。新しい区政のもとで、社会教育活動の活性化と、社会教育施設の活用、これらを拠点とする杉並のすぐれた住民自治の伝統が、再び豊かな実りを迎えることを願い、また私もそのために努力していく決意を申し上げて結びとします。