わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

高円寺、上井草、あんさんぶる…杉並区政史上例のない住民ないがしろの年(2017年度決算の認定に反対しました)

 昨年度の決算に対する意見ですが、昨年度といえば、高円寺小中一貫校でスラップ訴訟があったり、上井草保育園の民営化で「標準偏差」で評価を逆転させて国立保育会に委託したり、そして、あんさんぶるが廃止された年でもあります。とんでもないことばかりが続きました。当然すべての認定に反対しました。項目を挙げます。
<2017年度の区政について>
(1)高円寺小中一貫校建設(2)上井草保育園民営化(3)あんさんぶる荻窪の財産交換(4)新しい施設の解体・事業廃止(5)区民負担増
<委員会で追及した区政の問題点>
(1)阿佐ヶ谷再開発(2)保育予算の流出と民営化(3)児童館廃止と学童クラブ民営化(4)区民センター利用率の低下(5)男女平等センター、プレミアム商品券、小学校警備など
《決算認定に反対する》
(以下原稿です。実際の発言とは違う部分があります。)
 杉並わくわく会議として、決算に対する意見を述べます。認定第1号平成29年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか5件の認定に対しては反対とし、以下その立場から意見を述べます。
(1)当該年度の区政について
 まず当該年度を振り返ると、杉並区政史上に例をみないほど、住民がないがしろにされ、田中区長の専横がきわまった年であったといえます。
●高円寺小中一貫校
 特に、高円寺小中一貫校をめぐってそれは顕著でした。
 5月の連休に高円寺の住民のもとに突然裁判所から書類が届いたのが、高円寺スラップ訴訟の始まりでした。自分の家の隣に高さ約30mという巨大な建物が建つというのにあいさつもなく、計画が決まってから突然知らされたという住民の抗議に対して、建設会社が区と結託して行ったのが仮処分申請でした。突然裁判所に呼び出された住民は大きなショックを受け、なかには体をこわした人もいます。
 このスラップ訴訟の過程で、事業者が工事説明会のときに住民を無断で隠し撮りしていたことも判明しました。また、建設会社の部長は住民の一人に対して暴行傷害の被害届を警察に提出し、この住民は何度も警察や検察に呼び出されて長時間の取り調べを受けました。しかし、当然のことながら、この事件は不起訴処分となりました。全くのぬれぎぬであったことを検察も認めたのです。
 住民の心と体に大きなダメージを与える様々な事件を繰り返して、高円寺小中一貫校は着工しました。
 しかもその後も、設計の不備による建築許可の遅れまで住民のせいにするなど、住民を容赦なく攻撃し続けた1年であったと言っても過言ではありません。なんとえげつない区政が展開されたことでしょうか。
●上井草保育園民営化
 もうひとつ、住民を敵視した対応が繰り広げられたのは上井草保育園の民営化でした。そもそも民営化が保護者に知らされたのが、計画発表よりも後というところから混乱が始まったものですが、当該年度はいよいよ事業者選定が行われました。驚くべきことに、素点では2位だった事業者が選定されて園舎を建設し、今年の開園に至っています。
 該当者なしとなった最初の選定後、強引に選定委員会を解散、委員会が存在しない状態で公募要項を制定して公募を開始、保護者には10日以内に委員を選出しないと選定委員会に参加させないと脅したあげく、標準偏差などという異例の手法を使って成績を逆転させるというやりたい放題の選定でした。事業者の提案した計画では、園舎の中に法人事務所があり、保育に使われるべき面積が犠牲になっているにもかかわらず選定されたことも不自然でした。
 委員会でこれらを指摘された区長や部長の答弁は、民営化と区のやり方に疑問を持つ保護者に対する敵意をむき出しにした異様なものでした。法人事務所の面積について減額対象から外すとのことでしたが、法人部分をきわめて小さく評価していることが、区の収入を減らす結果につながっていることは、質疑で指摘しました。区立保育園の民営化が加速化されようとしていますが、上井草の例をみるとき、民営化は慎重であるべきと言わざるをえません。
●あんさんぶる荻窪の財産交換
 第三に、当該年度は、あんさんぶる荻窪の財産交換へむけて、あんさんぶる廃止の計画が進んだ年でもありました。現ウェルファーム杉並の建設と桃二小の改築が行われ、今年の3月には荻窪北児童館が3月17日に閉鎖されたことを皮切りに、福祉事務所等が閉鎖され、移転しました。荻窪北児童館は3月末日をもって廃止され、子どもたちは保健所の「おぎきたプレイス」に仮住まい、不自由を強いられています。
 あんさんぶるの諸施設を移転したはずのウェルファーム杉並に新たに設置された天沼集会所の利用率がきわめて低いことも確認しました。あんさんぶる荻窪では60〜75%であった利用率が、天沼集会所ではひと桁から、高くて十数%と2割にも達していません。地元の強い反対の声を蹴散らして行われた、全くおろかな財産交換であったとしかいいようがありません。
 足を踏んだ者は忘れても、踏まれたほうは決して忘れないと言います。以上のべてきた、これら住民を踏みつけにした区のやりかたが、区政不信を招き、住民をふるさと納税に走らせる一因ともなっているのではないでしょうか。
●新しい施設の解体、事業廃止
 あんさんぶる荻窪も、過去廃止された科学館も永福南小も、現在取り壊しが始まったけやきプールも、また、今後廃止される予定の杉四小学校も、個性的で、杉並の歴史と記憶、文化を担う施設でした。あんさんぶるは築後14年足らず、杉四小は20数年で事業廃止、永福南小では30年と新しい施設が解体されました。区有財産の扱い方が粗略にすぎます。他区でこれほどぞんざいに新しい施設をつぶしたりしているところはまずないでしょう。ひたすら施設の文字通りスクラップ&ビルドを行っている田中区政は、区民の財産を棄損し、将来負担を増大させています。そして、本来であれば、施設に集う人々によって紡がれ続けていくはずだった文化はぷつりと途絶え、人と人のつながりは、また一から作り直しです。このやり方では、杉並の歴史はぶつ切りになり文化が育つことはなくなるでしょう。
 施設はただの箱であってはならず、住民の活動を保障し、子どもの育ちを保障するものとして魂を入れなくてはなりません。施設再編のありかたを転換するよう求めます。
●区民負担増
 さらに、当該年度中には、20年ぶりの保育料値上げと同時に区長・区議会議員等特別職の給与引き上げが決定されました。また、国民健康保険介護保険など大幅値上げとなったことも問題です。これらの区民負担を抑制するよう求めます。
(2)委員会で追及した区政の問題点
 次に、質疑の中で指摘してきた区政の問題点等について述べます。
●阿佐ヶ谷再開発
 第一に阿佐ヶ谷北東地域のまちづくりについてです。これまでも何度も指摘し、また今議会の一般質問でも取り上げたように、土地区画整理事業を中心とする北東地区の再開発計画には問題が多すぎます。
 駅前の一等地に立地する杉一小を移転させ、跡地を民間に手渡す計画はマンションディベロッパーにリボンをかけて差し出しているかのようです。 病院の跡地は汚染地であり、しかも、ハザードマップ上の浸水地です。小学校用地としては全く不適切です。区の試算によれば、徹底した土壌汚染対策には7億円以上かかるとのことであり、汚染の原因者である河北病院が果たしてそのような対策を行うかは不透明です。
 けやきのまち阿佐ヶ谷の象徴的な存在であるけやき屋敷の森はほとんどが伐採される計画です。区内を14ゾーンに分けたとき、阿佐ヶ谷は樹林率が最も低く、1.42%しかないことを確認しました。ほとんどゼロに近いのです。緑被率も高円寺ゾーンに次いで下から2番目となっています。これは井の頭線沿線など他地域の方には想像がつきにくいかもしれませんが、本当に阿佐谷は緑がないのです。そのなかでけやきの森が消滅することの意味を区長、区役所そして区議会の皆さんにはよくよく考えていただきたいと思います。
 北東まちづくりの意見交換会ではコンサルタントから「けやき屋敷といっても大して木はない」かのような説明もありましたが、みどりの実態調査によれば、けやき屋敷の敷地内は建物が建っていると思しき部分を除いてはほぼ全部が樹木被覆地すなわち樹木におおわれた土地とされていることも確認しました。今般の土地区画整理事業でこの被覆率を守れるとは到底思えず、根本的に計画変更が必要と考えます。
 「東京における自然の保護と回復に関する条例」についても説明を求めました。この条例に従って、区はこれから秋、春2回の自然環境調査を行うとのことです。東京都に対しては、既存樹木の保全、移植の計画、またはそれを検討したができない場合の理由を提出しなければならないことを確認しました。区がこれらを誠実に履行されるよう期待します。
 また「街並み誘導型地区計画」についても質問しました。道路の拡張などのかわりに斜線制限や容積率を緩和できる地区計画です。これが導入されて阿佐ヶ谷が開発される計画だということを知っている区民がどれだけいるでしょうか。
 高さについて、意見交換会で聞いたことを付け加えます。コンサルからは新進会通りの高さ制限を30mにする案が出されました。その理由は25mを超えるビルが1棟あるのでそれ以下の高さ制限だとこのビルがひっかかってしまうからということでした。しかし、それ以外の建物は4〜5階建てで仮に25mでも十分な余裕があります。ちなみにこのビルは河北病院のサテライト診療所ですが、この1棟だけのために大甘の高さ制限となることは容認できません。杉一小用地については60mが提案されました。これは南口の16階だてマンションと同じような高さです。しかも、杉一小だけでなく、その南側に並ぶ西友三菱銀行がいずれ同じ時期に建て替えられ、一斉に60mの高さになったら阿佐ヶ谷北口の環境・景観は大きく損なわれます。
 意見交換会では、北口でお店を営む方から、現状でも風害の問題があり、60mの高さには反対、との意見が出されました。コンサルは「皆さんからご意見があれば検討しますよ」といいながら、このご意見に対しては、何度も発言を遮ろうとし、「反対」と明言されたことにたいしては、あ、そうですか、とまともにとりあおうとしないのです。「意見交換会」と銘打っているものの、区とコンサルの案ありきの説明会になってしまっています。しかも、この会に来ている人は毎回十数人ときわめて少数です。地元阿佐ヶ谷も含む圧倒的多数の区民は全くこの計画を知りません。区民が知らない間に進めて、発表したときに意見をいうと「もう決まりました」という区のやりかたは、いつもの手口としかいいようがありません。
 すでに行われている不動産鑑定や緑地に関する情報、河北病院の設計案など、区画整理事業にかかわる情報は、区が事業主体としてかかわっている以上、区議会と区民に公表されてしかるべきものです。個人情報をタテに一切情報を公表しようとしない区の隠蔽体質は公有財産の適正な管理・処分の担保という点からも許されるものではありません。
 このままだと阿佐ヶ谷はみどりが消えて、駅前に高層マンションが林立して商店街が衰退し、どこにでもある殺風景なまちに変わってしまうことでしょう。私たちのまちはこれからも長く子孫に受け継いでいくものです。田中区長ひとりのお好みやご都合で勝手に作り変えていいものではありません。
●保育予算の流出と民営化
 第二に保育についてです。
 ほとんど全額が公費でまかなわれているにも拘わらず、私立認可保育園に投入される公費の十数%が運営法人によって、新規事業や他園の運営、高齢者など他分野の事業に流用されていることを指摘しました。ちなみに、公定価格では7割に設定されている人件費比率について他の委員からも質疑がありましたが、私の調査では、把握できた区内37園の認可保育園のうち人件費比率が7割を超えたのはたった7園でした。これでは保育士不足や保育士の待遇改善などといっても空語です。これは国の制度上の欠陥ですが、区は都や他区と連携して、保育士給与にきちんと使われるよう、制度改善にむけ努力していくべきです。
 また、区としても財務上改めるべき点があることも指摘しました。区有地の貸し付けです。区有地を活用して私立認可保育園を建てると基本的に当初3年間の地代が免除され、以降も3分の1に減額されるという優遇を、区は、向井公園や久我山東原公園などに建てた保育園に対して行っています。他区ではこのような例はないようだとの答弁でした。ただでさえ、建設費は事業者の持ち出しが16分の1のみ、運営ははほとんど公費、お客は放っておいてもおしかけてくるという事業で、その上に地代もただとなれば事業者は笑いがとまりません。
 保育園の費用拡大により経常収支比率も大きな声で言えなくなってしまった杉並区としては、土地代くらいは回収すべきではないでしょうか。
●児童館廃止と高井戸学童クラブ民営化
 第三に児童館について述べます。
 高井戸児童館・学童クラブについて質問しました。私たち議員が知らないうちに、いつのまにか学童クラブを民営化することになっていました。なお、担当部長の答弁では「現在の行革計画で4クラブの民営化が決まっている」とのことでしたが具体名は上がっていませんでした。
 私は先日、高井戸児童館に視察にうかがい、公園に隣接した環境、広々として、外の公園が見通せる開放的な遊戯室など、すばらしい児童館だと思いました。学童クラブの待機児童解消のためとはいえ、この遊戯室を削って他用途に振り向けるのは本当にもったいないと感じました。まして、将来的にこの館が乳幼児専用などということにならないようにと願うものです。
 学童クラブは児童館内にある場合、児童館事業との分離が難しく偽装請負の危険があることから、学校内など児童館外に設置の場合のみ委託化と受け止めてきました。しかし、このたびの高井戸では児童館から動かないのに委託の計画が進んでいます。質疑では、児童館内の階段を閉鎖することを確認しました。偽装請負の危険を回避しつつ委託するためにやむを得ない措置と考えたのでしょう。しかし、これまで児童館内を自由に行き来して好きなところで遊ぶことができた学童クラブの子どもたちは、民営化後はわざわざ別の階段を通っていったん外に出て玄関から入りなおして1階の遊戯室などに遊びに行くことになります。しかも、学童クラブの運営事業者が引率しなくてはならず自由には行けません。学童クラブは子どもの福祉のために行っていることなのに、子どもの生活の質を引き下げてどうするのでしょう。民間委託にまい進するあまり、肝心な子どもたちが不利益をこうむります。
 しかも、そこまでやっても、偽装請負を回避することは難しいのではないでしょうか。なぜなら、1階で遊ぶ子どものうち学童と一般来館の子どもの区別はつきにくく、また、区職員と委託の職員が同じ現場に居合わせ、区職員から指示を受けるような場面が容易に想像つきます。違法となる可能性が高く、委託は中止するのが適切と考えます。
 児童館については、施設再編整備計画第二次プランでさらに9館が廃止されることになりました。加速しています。対象となった児童館をかかえる地域、私の地元の杉九小学校区もそうですが、それらの地域の皆さんにとっては晴天の霹靂です。しかも、区はこの計画をつくるにあたって、地域の事情や意見をまったく把握していませんでした。放課後子ども教室や土曜日学校などの実施状況も知らずに、いきなり放課後等居場所事業を学校で行うなどというものだから、学校支援本部に係る方々に混乱が生じています。施設の利用状況、たとえば杉九ゆうゆうハウスがどれだけ地域に必要とされているかも把握されていません。しかも、町会にも事前に何の説明もなかったと聞きました。これらは区役所が、いかに地域から乖離しているかを示すものです。もういい加減に仕事のやりかたを変えてください。区役所の皆さんは区長の手下ではなくて公僕です。区民全体のために働くことが使命です。所管の皆さんは、まず地域に入り、地域の方々に事情をよく聞いてください。区役所が勝手に決めた計画を上から押し付けるのではなく、地域が納得するやり方を探り、区民といっしょにものごとを作り上げる区役所に変わってほしいと思います。
●区民センター利用率の低下
 第四に区民施設の利用率と、施設使用料値上げの関係です。資料をいただいて確認したところ、地域区民センターの諸室のうち、区民が一般的に会合に使う集会室・和室の利用率の低さは衝撃でした。
 今年度の実績ですが、利用率が5割を割り込んでいるコマが55%にもおよび、2割未満すなわち数%から十数%しか使われていないコマが19%。惨憺たるものです。せっかくの施設がのきなみ半分以上空っぽなのです。しかも、施設使用料値上げと団体割引の廃止が進むにつれ、利用率がどんどん下がってきました。この現実を直視すべきです。
 そもそも区民施設は何のためにあるのか。住民どうしが様々なかたちでつながり、学び、活動することが地域を活性化させ、豊かな地域を作っていくことに有効だから、区が公費を投じて整備しているのではないでしょうか。また、団体割引を行ってきたのも、集まって活動するグループを形成することが組のまとまりを促すからではないでしょうか。杉並区はそのことを忘れ、使わせてやってるんだから、経費は負担しろといわんばかりの傲慢な姿勢で大幅な値上げを行い、無残な結果となってしまいました。使用料の大幅引き下げと団体割引の復活を再度強く求めます。
●男女平等センター、プレミアム商品券、小学校の警備
 このほか、質疑の中では、男女平等センターの委託事業者の一部契約不履行について指摘しました。公的な施設が開館日に閉まっているなど、あってはならない不祥事です。同センターの事業に対する区の軽視が緩みにつながっていると指摘します。所管の管理責任は重大です。猛省を求めます。
 プレミアム商品券についても述べました。来年には消費税の税率引き上げも待っています。予想される消費の冷え込みと商店街の苦境を打開するためにも、この事業は必要です。真剣に検討していただきたいと思います。
小学校の警備について質問しました。警備会社からシルバー人材センターへの変更は見送りとのことで安心しましたが、今後とも子どもの安全にかかわる経費については、出し惜しみすることのないよう求めます。
 以上をもちまして反対意見とします。
 最後になりましたが、審議にあたり、多数の資料を作成して下さり、さまざまな問題についてご教示くださり、また連日丁寧に答弁してくださった職員の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。