わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

決算委員会日誌

(1)山田区長のいない決算委員会
決算審議が始まりました。区長が変わったため、さまざまな変化が見られます。なかでも、減税自治体構想。今年3月の議会で、あれだけ熱烈に賛成演説した人たち(当時の自民、公明、民主などの会派)、新区長が凍結を言い出したとたん追随してます。役所も役所で、私を含めて反対する議員の質問に対して「これは必要で、大事な事業」とつっぱっていた部長が「条例をとりまく環境は大きくかわった。条例制定後区長が変わったし…」。
他のテーマでも「幼稚園を教育委員会から保健福祉部に所管替えしたのはおかしい」「公共施設の特殊なデザインはコストがかかる。たとえばエコスクール。今後は汎用的なデザインを使うように」等々、言っていることは正しいけど、どうして山田区長のときに言わないかな?? いや、ほんとに、山田さんつれてきて座らせといてほしいですよ。区長変わったとたん、手の平返しですもん。ある意味同情しちゃいます。「区長がかわったら、山田区長を悪くいうのはおかしい」という自民党会派の方の発言、意見は違うけど、気持ちはよくわかります。だって、議決したのは区議会なんだから。
(2)「職員1000人削減」の今後は
さて、「職員1000人削減」を大目標に突き進んできた結果、どうなったか、が、私の最初の質問。年齢構成をみると、
・30歳未満職員は 15%(2000年)から11%へ(2009年)
・50歳以上職員は 26%から32%へ
グラフで見ても、25〜35歳ぐらいのところが、がくっと減っています。
人数では400人余対1200人余というものすごくバランス悪い状態になっています。要するに、「職員削減」といってもクビ切るわけじゃないから、退職不補充といって新規採用を抑制するわけですね。そのため若い人が少なくなってしまった。
次に、役職別でみると、管理職(部課長以上)が全く減っていないのに対して、肩書きのない一般職員は800人くらい激減していて(つまりここを減らしてきた)比率でいうと2000年の45%から現在31%になっています。「サービス提供は民間に。区は管理的な仕事をやればよい」という山田区政の結果、現場には職員がいなくなってしまったのです。
さらに非正規雇用の問題。常勤職員、非常勤(嘱託、パート)、民間委託先従業員の数は、それぞれ3700 2500 2560となっています(今年4月1日時点)。つまり「1000人削減」で3700人になった区役所ですが、実は9000人もの人たちにサービスは支えられている。しかも5000人以上が非正規雇用と考えられます。常勤職員の1.5倍にもなろうかという人数。どのように考えるか、という質問に対し、「年齢のバランス、とくに20代の若い職員が少ないことには問題がある」という答弁がありました。
(3)事務事業評価
「事務事業評価」というのは、区の仕事全部を650ぐらいの事業に分け、それぞれの事業について、経費がどれくらい、人件費がどれくらい(「正職員2.5人、パート3人」とか書く)、そして「経費削減は可能か」「受益者負担は増やせるか」「現状の経費のままで効果を向上できるか」のチェックシートになっています。
(例:区政資料のココ↓にあります)
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/library.asp?genre=316030
これを毎年毎年担当者が記入しなくてはならないんです。
今年の事務事業評価の集計では「現状の経費のままで効果向上できるか」に対して「できない」が39.5%、「コスト削減の余地はあるか」には「ない」がなんと66.5%でした。みんな絞りに絞られてもうヘトヘトなんです。「こういうやり方はもうやめたら?」と質問したところ、担当者からは「行政評価は必要ですが、やり方は今後検討する」との回答でした。
(4)区民センターと契約のありかた
区民センターは、昨年、セシオン杉並等の賃金不払い事件(東宝クリーンサービス事件)がおきて、民間委託先の労働条件がクローズアップされました。今回、私は民間委託先の職員さんからきいた疑問をなげかけました。
「4月に区の組織改正で、同じパートの中から区の直接雇用になった人と、委託先のパートの格差が生じた。不公平では?」
答弁によれば、いろいろ経過があって、直接雇用と委託先雇用に分かれたということですが、区民センターのパートさんたちは、直営だった時代からずっと働いている人もおり、当時は全員が同じ身分だったのですから区の都合で委託になったり直営に戻ったりというのは納得がいかないのは当然のことです。しかも、業者が変わるたびに入札で受注額が下がるので、委託先のパートは時給も次第に下がっています。賃金面で区のパートとは大きな差がついているのです。
「7つの区民センターそれぞれ事業者が違うので、時給も格差がある。これもおかしい」
これについては、「センターによって規模や事業内容も違うので」といいますが、こちらも、もともと同じ区のパートだった時には同じ時給だったのですから、やはり納得できません。
つぎに、「契約のありかた」および公契約条例についてききました。千葉県野田市の公契約条例は有名になりましたが、今年は国分寺市が「公共調達条例」を制定しようとがんばっています。これは、今までで一番トータルな条例案で、賃金についてはもちろん規制をかけていくし、そのほか、障害者、女性、高齢者の雇用促進や環境配慮などを契約時に義務づけていくことも盛り込まれています。
杉並区も何もしていないわけではない。東宝クリーンサービスの衝撃は大きかったようです。「労働法例遵守の報告書」を指定管理者、業務委託など160ぐらいの事業者から提出させています。これは年4回です。各事業者に対し、区は「履行評価連絡会」を最低年1回開かなければならないと定めているそうですが、区民センターだけは、昨年の事件への反省から、年4回提出されるごとに話し合いを持っているとのことです。そこには、区の担当者、事業者の代表、労働者の代表、利用者の代表(運協の人)の4者が参加。「就業規則」の明示について「行っている」と報告していたのに、労働者代表が「やってない」と指摘して改善された例など、一歩一歩ですが進んでいることがわかりました。
今後、野田市のように条例で賃金水準に規制をかけていくことについても、「何ができるのかできないのか、など検討していく」とのことです。
(5)緊急雇用創出
「緊急雇用創出」は、思い出していただけるでしょうか。予算審議のときに「たばこの過料徴収をする警察OBが月に23万ももらう事業が緊急雇用なの!?」と指摘したものが、やはり都の補助金から外されていたことが判明(でもやめたのではなく一般財源でやっている)。さらに「幼稚園介助ボランティア」や「理科実験補助アルバイト:週2日」などは、都の補助金対象になっています。こんな雇用にならないものを「雇用対策」だなんて。都も区もふざけています。
さらに、当時緊急雇用の枠で学校司書を雇いました(今年度も継続)。そのとき他の職種も含め「地域大学」受講が条件みたいになっていたのですが、「今年は条件にはしていません」とのことでした。
(6)「子ども・子育て行動計画(後期計画)案」
「……計画案」は、よく読むといろいろ問題があるので質問しました。
内容は「保育に関して、杉並区独自の基準を検討する」こと。いまの規制緩和の流れのなかで、面積基準を縮小する恐れがあるのでは? 区は基準を下げたりしませんよね?という質問。(答弁は「これから検討します」)。それと「保育料の見直し」つまり値上げの検討では? これも「これから検討」ですが、「現状で、おおむね適正な負担をいただいている」ということでした。
(7)子育て応援券
これは、「産後ヘルパー」事業の利用者からの声で、「出産の前に応援券を予約することができない」「3か月居住しないと申し込めないので、転入してすぐ子供が生まれてもヘルプを利用できない」という疑問があったので、「出産前に予約できませんか」「転入した場合、償還払いにできませんか」と質問しました。
子育て応援券は、区独自の施策で、子育て支援を見かけ上ふくらませたのですが(年間10億円ぐらい使っている)、利用者からは「使いたいサービスがない」「せっかくもらったから無理して使っている」、応援券をもらわない区民からは「英語やピアノの習い事に使われているのは税金の無駄づかい」との声も多いです。その一方、数少ない?本当に必要なサービスに使えないという声だったので、今回質問しました。
10月から自己負担が導入されたことで、利用額が大幅に減るのではないかとも思われますが、サービス内容はさらに見直しが必要です。
(8)福祉事務所と障害者相談支援事業所
これは福祉事務所が「生保事務所」とよばれる状態になってしまっている現状を変えよう、という話です。介護保険が始まったことにより、区は福祉事務所から高齢者のワーカーを引き上げてしまいました。そのため、生保のワーカーは「本庁の高齢者担当者とでは連携がとりにくい」と言っています。「夫婦と同じでね。別居すると心も離れるのよ」。福祉なんだから、福祉事務所にもワーカーはいるべきなんですよ。
いま障害者のケアプランみたいなものは相談支援事業所がつくっているので、介護保険の二の舞にならないかと心配で質問しました。課長はちゃんとバックアップ体制はとります、とはいっているけど。
(9)教職員の非行について
これは某区立中学校教員のセクハラ事件です。教員が女子生徒にセクハラ行為をしたので保護者が教育委員会に抗議した。そしていま処分を検討中とのことなのですが、そもそもの事件はなんと昨年の12月のことなのですよ! もう10月なのに、まだ結論が出ないなんておかしいじゃないですか!
先日も新聞の都内版に、ちかんを見つかった都の教員が処分されたと書いてありました。この人の事件は5月だそうです。他方、なんで去年の事件がいまだに?? この学校のPTAの中では、「うちの学校は全国的に有名だから、もみけされるんじゃないの」の声すらあるとか。
(10)教育改革の標語について
「自立と責任ある学校」は教育改革の3つの目標の一つ。日本語がヘンでしょ。ヘンと思いますよねえ?? ずっと気になっていたので、「自立のある学校」ってヘンですよね?と質問すると「おかしくありません」
「じゃあ、責任ある学校って、誰が何に責任をもつんですか?」「地域が学校を支援するという意味で」「地域が学校に責任をもつっておかしいでしょ」「そういう意味ではありません。学校の運営は教育委員会に責任があります」
つぎに「いいまちはいい学校を育てる」。「いいまちって何ですか」「地域が学校に支援をおしまないということです」「では悪いまちは」「悪いまちというのはありません」「行政が、いいまちとか悪いまちとか、いい学校とか悪い学校とか決めるのはおかしいでしょ」「教育委員会がいい地域、悪い地域を決めるということはありません。杉並全体としていいまちになればいということで」「いえいえ。いいまちがあれば悪いまちがある。いい学校があれば悪い学校がある。それは言わなくても暗に示しているんですよ。これらの標語は見直していただきたい」
「いいまちはいい学校を育てる。学校づくりはまちづくり」
いかにも優等生の先生がつくりそうな標語。私は初めからこの言葉が気持ち悪くてたまらないのです。「いいまち」「いい学校」って言えば、次は「いい子を育てる」でしょ。でも教育の目標ってそこですか? 「いいまち」という形容は「悪いまち」の存在が前提。この言葉自体、格差を容認しているのに、そのことに無自覚だとすれば、それは根が深いと思いました。
(11)「市場化事業委託」(放課後こども教室など)
この事業は、「民間事業化提案制度」によって選ばれたものです。民間事業化提案制度とは、杉並区独特の市場化テスト。区の事業すべてを対象に「もっと効率的にできる」という民間の提案を募るもの。しかし、ほとんど応募がなくなり、風前の灯。
同制度は「公募提案」という形をとりながら、実は行政が声をかけた事業者にやらせているケースが多いように思えます。前に追及した「自転車駐車場の民間委託」のケースも、提案としては特別目新しいものがなく、単なる民営化だろう、というものなのに、提案者だからと優先権が与えられていました。
今回質問したのは、「学校支援事業」中身は「放課後こども教室」と「土曜日学校」、PTA研修フォーラムなどです。
「今回決算3400万円中、1100万円が事務費、つまり法人の取り分ということだが、多くないか。この事業の効果は職員1名削減ということだったが、職員がやったほうが安くない?」「1100万のうち人件費は800万。300万はチラシの印刷代などなので、適正です。職員よりは効率的」
次に「随意契約で今年4年目ですが、随意契約の理由は?新たに入札などは考えないのか」に対しては、「次年度はプロポーザルなどを考えている」ということでしたが、まだ委託を続けるのか…。
「民間事業化提案制度は今どうなっているか。今後どうするのか」「委員会で検討中」「事業仕分けの対象にしないんですか」「それはまだ公表できません」
ここで松沼副区長が「やらないってはっきり言えばいいんだよ!」と私語しているので「副区長、何か?」と聞いたら、本人こたえず、部長が「対象にはしません」と再答弁。
「民間事業化提案制度」は山田前区長3期目の目玉で、「官から民へ」の象徴的な事業だった。それを仕分けしないの? 区長だけ代わっても、役所は継続なんだなあと思います。
「放課後子ども教室」は、「子ども・子育て後期計画」で「学童クラブとの連携」とあるが、学童クラブをこの事業で代替することを考えているのか、ということも聞きました。いま学童が足りないので、かなり増設するという計画があるのですが、放課後教室といっしょにされてはかなわないからです。
もらった資料の中の一番下に、たまたま久我山小と天沼小が並んで載っていたので目についたのですが、この2つの学校は、「放課後子ども教室」が全く対照的なのでした。何が対照的かというと、ボランティアひとりあたりの子どもの人数。久我山小はボランティア一人あたり子ども12人。天沼小は3人。つまり、ボランティアがよく集まっているので、単純に見れば手厚いと見ることができる(でも、ムダに人が集まって、余分な経費を食っているのかもしれないけど)。4倍も大人の密度が違うので、このような格差をそのまま学童に持ち込まれたらかなわないと思ったのですが、いちおう「放課後教室は学校によって全く実態が違うので、学童クラブのかわりにはできない」との答弁を得ました。