わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

児童館12館つぶしても焼け石に水の建築費増大(一般質問への答弁)

 一般質問に対する区側答弁の要旨です。なお、区長はいっさい答弁せず、各担当部長が答弁。「選挙について」は総務部長が区長代理で答弁。(Qの番号は質問に対応。かっこ内は松尾の補足と感想です)

(Q1-1)東京8区の選挙結果については、杉並区の地域の実情を吸い上げて、国民、区民の暮らしをよりよくするための議論をしていただくことを期待。(さすがに区長は答弁できないのか。部長も国会議員に対してはちょっと殊勝)

(Q1-2-1)首相は「国民の間に様々な意見があり引き続きしっかり議論すべき問題」とのべており、国会で議論していただきたい。(こんな後ろ向きの杉並区)

(Q1-2-2)男女共同参画の具体的な取組については現在改定作業を行っている行動計画で明らかにしていく。(全然わかってないと思う。総合計画にこそジェンダー主流化を徹底すべきなのですが。)

(Q2-1)説明会の参加者は91名、オープンハウスは126名。(7回の合計でコレですよ。説明会1回あたり13名。こんな不入りでもペナルティがないお気楽な商売)

(Q2-2)案内ちらしは区立施設、小中学校、区内関係団体に6700枚を配布した。(ええと、58万区民に6700枚なんですよね。お客さん来てほしくないっていうことですね)

(Q2-3)第一期計画の増加面積は約77000平米、減少は約54000平米。

(Q2-4)第一期計画の児童館機能移転(=廃止)は12館、面積は約7400平米。ゆうゆう館の機能移転(=廃止)は3館、面積は約1000平米。(児童館12館もつぶして7400平米減らしても、他で77000平米増えたら焼け石に水

(Q2-5)第一期計画の財政効果額は第一次・第二次合計で約244億円。うち施設転用の効果(=土地代の節約)が約220.5億円。なお、財政効果額はひとつの目安であり実績を示すことは困難。(実績を検証できない数字になんの意味があるのでしょう。誇大広告です)

(Q2-6)工事費圧縮の基準はもうけていない。(これがすべて。節約する気はまったくない)

(Q2-7)最小の経費で最大の効果を生み出す経営手法や民間事業者ならではの創意工夫によるアイデアなどを期待。(←これは発言したとおりの文章です。民間事業者だからできる公的サービスの改善なんかないっていうこと。空虚)

(Q2-8)集会室の利用率は平成25年度65.7%、令和元年度52.5%。今後はより多くの利用が見込まれると考える。(平成26年度から段階的に使用料を引き上げたことが直接影響していることを認めず「利用率は決して下がっていない」的な答弁でした。施設再編計画では利用率が低いから統廃合といっていることと矛盾しているし)

「財政が大変なので児童館を廃止する」は嘘っぱち(2021年11月18日杉並区議会本会議における一般質問)

 2021年11月18日、杉並区議会第四回定例会において一般質問しました。(答弁はこちら。動画配信はこちら。)

質問項目は、

1.区長の政治姿勢について((1)総選挙結果について(2)女性政策について)

 (1)小選挙区になって以来初めて東京8区で自民党が敗北、立憲民主党の吉田はるみさんが当選した総選挙結果について、自民党を熱心に応援していた区長の感想を求めました。

 (2)総合計画で、男女平等と動物愛護が並列なのはどういうことか。区はSDGsSDGsというけど、口先だけです。ジェンダー平等を区政のすべての分野に導入することがSDGsでは。

2.施設再編整備計画について

 施設再編計画(第二期)案がパブコメ中ですが、「財政が大変なので児童館を廃止する」というのは嘘っぱちです。第一期期間中に児童館12館が廃止され7400平米が削減されました。かたや区立施設の総面積は77000平米も増加しています。たくさんの子どもが悲しい思いをしているのに、財政が楽になるどころか、負担は増えていく一方なのです。こんな欺瞞はやめていただきたい。

(以下は発言原稿です。実際の発言と違う部分があります)

1.区長の政治姿勢について

【総選挙結果について】

 一般質問をいたします。最初に区長の政治姿勢についてうかがいます。第一に、先ごろ行われた第49回総選挙の結果についてうかがいます。選挙結果は、自民党議席を減らしたものの、引き続き自公政権が継続する結果となりました。私は政権交代を期待するものですが、残念ながら今回、野党は新たな選択肢を十分に示せなかったと思います。

【対米従属政治の転換を】

 とりわけ、対米従属政治の転換、日中、日韓、日朝関係の改善によりアジアの平和を確立する外交、安全保障政策が不足しています。かつての民主党鳩山由紀夫代表は、東アジア共同体、常時駐留なき日米安保を持論とし、選挙でも沖縄の米軍基地問題を大きな争点として争って、政権交代を実現しました。

 先日、都内で開催された対中国外交の転換を求める会合で発言された鳩山氏は「1972年、日中共同声明の精神に立ち戻るべき」と述べておられましたが、こうした国の根幹に関わる論点を回避することなく自公政権と対決していくことを野党の皆さんには期待したいと思います。

【区長が応援していた自民党候補の落選】

 さて、こうした中でも、区内東京8区では旧4区の金子みつさん以来の杉並選出の女性議員として吉田はるみさんが当選、自民党のベテラン大物議員が落選し、全国的にも注目されました。田中区長は自民党候補を熱心に応援されていましたが、どのような感想を持たれたか。

 また先日、わが会派の田中議員の質問に対して、総務部長は元代議士に大変お世話になった旨、答弁しましたが、この方の落選により、今後の区政にどのような影響があると考えるか、うかがいます。(Q1-1)

【選択的夫婦別姓について】

 第二に、女性政策についてうかがいます。まず、選択的夫婦別姓についてうかがいます。私自身、通称使用で社会生活をしている当事者として無関心ではいられません。総選挙でも大きな焦点の1つとなり、各党党首の記者クラブ会見では自民党以外のすべての党首が別姓に賛成して注目されましたが、田中区長は賛成・反対等どのように考えているか、見解をお示しください。(Q1-2)

【男女平等と動物愛護は並列なのか】

 女性政策について質問しなければと思った理由は、実は総合計画・実行計画案への疑問にあります。「男女共同参画」は「地域の支え合いと安心して暮らせる体制づくり」の5番目にやっと出てきます。また、驚いたのは、男女共同参画の次は、「動物との共生」だったことです。動物愛護と男女平等は並列なのかとショックでした。

SDGs全体をつらぬくジェンダー平等】

 今回の総合計画ではSDGsが意識されていますが、SDGsでは、ジェンダー平等は単なる1つのゴールではなく、アジェンダの前文において「すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性・女児のエンパワメントを達成することを目指す」とされる全体の大きな目標です。さらに本文においても、人権に次いで、ジェンダーを掲げ「ジェンダー平等の実現と女性・女児のエンパワメントは、すべての目標・ターゲットにおける進展に死活的に重要な貢献をするもの」として、17のゴールすべての達成において必須のものであることが明記されています。

 ジェンダー平等はアリバイ的にのせておけばいい、とでもいうような杉並区総合計画案の書きぶりは、国際標準から大きく後れをとっています。

ジェンダー主流化をとりいれる】

 そこで、ジェンダー主流化、すなわちあらゆる分野におけるジェンダー平等の視点の導入とその実現、についての区長の考えをうかがいます。また、総合計画・実行計画案においては、ジェンダー主流化を取り入れるべきと考えるがいかがか、うかがいます。

2.施設再編整備計画

【区政の中心は施設再編】

 次に、施設再編整備計画についてうかがいます。

 先の基本構想特別委員会において、私は、この基本構想には2つの転倒があり賛成することはできないと述べました。その1つは、住民自治の観点が不十分で、結果、行政が決めて区民が実行するかのような、区民と行政との主客転倒であり、もう1つが、この施設再編整備計画と基本構想の主客転倒です。委員会では、「杉並区政は基本構想にそって進められているというよりは、いまや、施設再編整備計画によって進められているというのが実態です」と指摘しました。以下、この観点から、施設再編整備計画に検討を加えます。

【不入りの説明会。原因は】

 現在、施設再編を含む6計画案が公表され、パブリックコメントが行われています。説明会もありました。私は2カ所の説明会に行きましたが、どちらも参加者は15~6名と大変低調でした。質問もあまりなく、説明する皆さんにとっては、らくちんな説明会だったのかもしれません。最初の施設再編整備計画には284件と多数のパブコメが提出されました。それと比べて、今回どれほどの意見が集まるか、大変心配です。

【誰もしらない説明会】

 これまでの施設再編単独の説明会は、多いところで70~80名の参加が見られ、時間が足りないほど質疑応答が行われたものです。今回はコロナ対策として申し込み制であったことを割り引いても人数がきわめて少ないのは、説明会の告知が区民に届いていないからです。区政に関心が高く、説明会にはいつも参加するような方の多くが「知らなかった」「説明会はいつあったの」といいます。

 そこでまず、総合計画等6計画の説明会の参加者数、主な意見、またオープンハウスの参加者数についてうかがいます。(Q2-1)

 説明会の告知はいつ、どのように行われたか。また、私たち議員には説明会の案内ちらしが配布されましたが、あのちらしはどのように使われたものなのでしょうか。配布枚数、および配布先をうかがいます。(Q2-2)

【広報の告知がちぐはぐ】

 広報すぎなみ10月29日号に計画の概要とパブコメの告知が掲載され全戸配布されましたが、これには説明会の案内はのっていません。いっぽう、10月1日号に説明会の案内が掲載されましたが、となりのページは基本構想が大きく掲載されており、基本構想の説明会と勘違いしていた人もいました。

 パブコメの案内と説明会の案内が同じ紙面にのらなければ誤解を招くのは当然です。混乱したのは、コロナのためにスケジュールが押したせいですが、結局区民の知る機会がしわよせを受けたわけです。

【ある日突然、プールが閉鎖された】

 そもそも説明会以前に、毎回の計画案の決定まで、施設の廃止等が全く秘匿され、案の公表によって突然知らされるということがおかしいのです。

 事前に計画を知ることができればいいほうで、ほとんどの方が、ある日突然、施設が閉鎖されているのを不意打ち的に知るというのが現実です。特に廃止についての公の説明を行わないのは、反対意見を言わせないための卑怯な手口です。たとえば、阿佐ヶ谷のけやき公園プールは典型で、夏になると今でも、驚いた、どうなっているのか、とのお声があります。

 区民共有の財産である区立施設、特に身近な施設の統廃合については、パブコメにかけるよりもっと前に、住民に打診があってしかるべきです。施設の近隣地域ごとに、利用者、PTA、町会などとの事前調整、合意形成のプロセスが必要で、その積み上げこそ住民自治であり、区の説明責任です。区は抜本的に姿勢を改めるべきです。

【反対させないための3年サイクル】

 また、示される具体的なプランはたった3年間と短期、計画即実施で、反対するいとまを与えない。さらには、今般の善福寺児童館、西荻北児童館の廃止のように、その3年間の計画にすらなく、パブコメを経ていない計画が、突然「経営会議で意思決定した」として計画、実行される。明らかにパブコメ条例違反です。ここには民主主義のポーズすらありません。

【職員を追い立てる杉並区】

 計画のサイクルが3年間と短いことは、区役所にとっても見過ごせない影響があります。1年目に着手したと思ったら次の年度にはもう見直しが入り、最終年度はもう次の計画を発表するというあわただしさで、これでは落ち着いて事業の評価と改善を行うことなどできません。企画立案する部署も、事業を所管する部署も、施設再編に振り回される日常になっています。無理なスケジュールで、ムチを入れるように、次の計画策定を急がせる。施設再編整備計画によってかりたてられる杉並区政の姿は異様です。

【短期サイクルで工事を絶やさない】

 他区の公共施設等管理計画は、30~50年計画のものが多く、実施計画も短いものでも5年スパンです。杉並区のように短期サイクルで次々に施設を壊し、改修し、新築し続けるところはなく、きわめて特殊なやり方です。なぜこれほどまでに短いサイクルの計画なのか。

【区内事業者との癒着が問題に】

 先の第三回定例会では、区内事業者と区長、区幹部の会食、ゴルフ等癒着が問題になりました。切れ目なく建設工事を作り出して次々に発注していくのは誰のためか。建設利権の分配のためではないか。また、計画を絶対に変更させようとしないのは、すでに誰かと約束ができているからではないか。こうした疑惑を招いても不思議ではありません。

【財政効果を検証していない】

 こんな施設再編整備計画にも大義があるとすれば唯一、将来の財政負担を減らし、財政破綻を防ぐことですが、成果はあったのか。第一期8年間の再編の効果と課題を検証する必要があります。

 第二期計画案には第一期の成果として保育園の待機児童解消などが書かれていますが、肝心の財政効果については、検証にあたいする数字がありません。

【減るはずの施設面積が増えた】

 まず、施設面積について。第一期計画は「区立施設全体の規模を縮減することで今後の改築改修費等の軽減を図る」としましたが、この期間は逆に2万3000平米ほど増えました。区内の各地で身近な児童館が次々に廃止され、子ども、特に小中学生の居場所が激減し、児童福祉は大幅に後退しました。それだけの犠牲を払ったのに、総面積は増加したのです。

 そこで伺いますが、施設再編整備計画第一期計画期間の施設面積の増加約2万3000平米の内訳について、増加した面積と主な施設名、減少した面積と主な施設名を説明してください。(Q2-3)

 また、同期間において、児童館、ゆうゆう館の廃止数、および、廃止された面積はどのくらいだったかうかがいます。(Q2-4)

【架空の「財政効果額」】

 次に、「財政効果額」です。第一期計画では30年の効果額は137億円とされましたが、その大半の100億円は用地取得費の節約及び実際には売らなかった土地の売却益であり、いわば架空の数値です。改築改修経費の節約は37億円、1年あたりでは1億円あまりにすぎません。しかも、これはあくまで想定なので、実際の8年間の結果はどうだったのかを検証したいのですが、第一期の効果額の実績値は書かれていません。

 そこで、第一期計画における財政効果額とその内訳、および実績における財政効果額とその内訳について説明を求めます。(Q2-5)

【築浅建物の廃止・解体というムダづかい】

 なお、この間の再編においては、節約どころか、新築からまだ二十数年、三十数年という築浅建物の廃止・解体がいくつも行われ、特に、学校改築の際に、まだ新しい校舎も一括で解体して全面改築するなど、逆に財政負担を増加させたケースが目立ちました。財政負担を回避するためと言われて我慢しているのに、現実には節約どころかむしろ支出が増える。一方、身近な施設が廃止・再編されるのでは、区民は浮かばれません。

【第二期計画も財政効果は願望の数字】

 続いて、同様の観点から第二期計画案を検討します。まず、財政効果額について。40年間で221億円の効果とされていますが、うち用地取得費の節約が155億円ということです。これを除くと66億円で、年平均では1.6億円にしかなりません。そしてもちろん、これも想定というか願望の数字にすぎません。

【改築費用は1.3倍に高騰】

 他方、改築改修経費の軽減に資するとされる区立施設の総面積については具体的な抑制目標がありません。むしろ、「区立施設全体の面積は増加傾向にあります」などと、ひとごとのように述べ、面積が増大することは当然視されているようです。

 改築改修経費の試算については、今後40年間で4840億円、年平均120億円と予測されています。第一期計画では30年間で4000億円、年平均93億円とされていたことと比べると約1.3倍と大幅に高騰しているのに驚きます。しかも、第二期計画では新たに最大80年まで長寿命化する考え方を取り入れたので、さぞかし改築改修経費が軽減されると思いきや、現実は逆です。

【工事費を小さく見せる印象操作】

 第二期計画案では、施設関連経費をイニシャルコストとランニングコストに切り分け、氷山に模して、ランニングコストが約85%という説明をしていますが、ハードとソフトでみれば比率は1対3です。問題をすりかえ、工事費を小さくみせる印象操作です。

【複合化で余分な建築費】

 また、これは第一期からの一貫した問題ですが、財政負担の軽減といいながら、その方策は、複合化・多機能化の一本やりです。複合化・多機能化が共有部分等、少々の床面積の削減にはなったとしても、高層にすることで余分に建築費がかかり、財政的には逆効果になっている実例がいくつもあります。

 一例として、高円寺学園の建築は約80億円を費やし、6階建ての高層、しかも屋上に重たい25mプールが置かれたため、基礎構造に大きな費用がかかる建築となりました。ボーリングの不足を指摘されて追加調査し、杭の仕様が変更されたりもしています。無理に小中一体型にせず、3階建ての中学校の建て替えだけなら半額以下でした。工事規模拡大の方向に再編された一例です。

 今後のメンテナンスを考えたときに不都合と思われる事例もあります。永福図書館は区民集会施設、保育園との複合施設となりましたが、生活の場である保育園は配管の老朽化が早いことは想像に難くなく、改修時の図書館や集会施設への影響が今から心配です。それこそランニングコストを度外視した建設工事の肥大化です。

【建築コストの削減を考慮しない計画】

 面積が減らない、複合化もあまり貢献できないとすれば、あと考えられるのは設計の際の仕様や工法の見直しにより、少しでも建築コストを減らすことですが、これについては全く言及がありません。

 他自治体の公共施設等管理計画をみると、たとえば世田谷区の計画では基本方針の第一に、「施設はできるだけ長く使い、簡素にする」をかかげ、「必要最低限の仕様、できるだけ簡素で低廉な施設」と述べています。板橋区は大規模改修工事のコスト削減のため、改修内容を防水や機器交換などに限定したり、再利用できる部材の活用、既存樹木の活用、学校改築では夏休み中心に工程を組むことによる仮設費用の節減、などをあげています。調布市では、施設の標準仕様を定める、適切なグレードの建材や汎用品の活用など、それぞれ建築コストの縮減を意識して、手法を具体的にのべています。

 そこでうかがいますが、杉並区では、施設改築・改修にあたり、工事費の圧縮についてはどのような基準及び目標を設けているでしょうか。説明を求めます。(Q2-6)

【「質実剛健」はどこにある】

 公共施設、とりわけ学校は質実剛健が望ましいとは、先の決算特別委員会で、吉田副区長が述べられたことですが、私もこれには全く同感です。しかし、高円寺学園の例のほかにも、例えば桃二小校舎の改築では、建物が三角形で角が鋭角の部屋や廊下があり、部材の標準化や先々の他用途への変更には難があるなど、杉並区の区立施設はこれまで必ずしも質実剛健とはいえませんでした。

 施設再編にこれだけ力を入れながら、建設コストの軽減が全く省みられないのは、結局、財政負担軽減は本気ではないということです。

【「財政難」は欺瞞】

 財政負担の削減に本当に取り組むなら、施設再編にはやむを得ない部分もあるだろうと私も考えます。しかし、本計画はそうなっていないことを検証してきました。施設再編整備計画の本質は、統廃合と複合化を口実とした建設工事の増大と建設利権。返す刀で、児童館廃止や民営化などによる職員削減だということがわかります。財政難と区民を欺くのはやめて、工事費を膨張させる再編計画のありかたを根底から見直す必要があると指摘します。

【民間への貸出は公正か】

 さて、第二期計画案では新たに7つの基本方針が打ち出されました。うち方針①施設マネジメントの推進では、遊休地、遊休施設の民間への貸し出しなど活用が述べられていますが、区有地、区有施設は公共の目的に用いるものであり、いくばくかの料金をとるとしても、民間企業等の営利のために占有させることには疑義があります。

【学校跡地は高層マンションに?】

 そもそも遊休地・遊休施設が多いことが疑問です。旧若杉小学校は廃止されて10年以上経過しながら、ずっと暫定利用です。統合校である天沼小学校の厳しい教室不足とそれによる追加工事費用をみるにつけ、若杉小を廃止しなければよかったと思われてなりません。杉並中継所は負担付き譲与の期限切れから10年以上経過しながら、まだ施設利用の方針が決まっていません。新たな計画の中でも、杉一小をはじめ、富士見丘小、高円寺図書館、旧永福図書館など、大規模施設の跡地利用が未定という無計画さは問題です。

 特に杉一小や若杉小に関しては、JR駅近辺という好立地の大規模敷地ということで、方針⑤の民間活力の活用とあいまって、高層マンションを含む再開発の魔の手が伸びているのではという懸念はぬぐえません。

【民間「経営ノウハウ」とは】

 計画にはまた、民間の「経営ノウハウ」を活かすとありますが、このかん民営化されてきた保育園、学童クラブ、学校給食や用務など、なにか民間の優位性が示された例があるとは思えません。

 そこで、計画案の方針⑤において民間に期待する「経営ノウハウ」とは具体的に何を指しているか、説明を求めます。(Q2-7)

【ノウハウは労働者がもっている】

 たとえば、地域区民センターの運営委託においては、入札によって企業が交代しても、勤務している人はほとんど変わりません。なぜか。その施設を運営するノウハウは、そこで働いている人たちが持っているので、前の企業に雇われていた人をそのまま「居抜き」で雇ってノウハウを引き継ぐためです。つまり運営ノウハウを持っているのは労働者であって、企業ではありません。

【人買い、ピンハネのノウハウ】

 では、民間事業者のノウハウはなにかというと、要するに労働者を低賃金で雇い入れて差額を抜く、いわゆる「中抜き」、もっと露骨にいえば、ピンハネ、人買いのノウハウにすぎません。官製ワーキングプアという言葉が知られるようになって久しいですが、公共の仕事が区民の貧困を招くようなことは許されないことです。

【利用率低いから集会施設を統廃合?】

 最後に、区民集会施設についてうかがいます。第二期計画案の集会施設の部分に「利用率が50%程度にとどまっている」との記載があります。第一期計画では「60%ていど」と書かれていたのがぐっと下がった印象があります。そこで、集会施設の利用率が2013年から2019年の間にどう変わったか説明を求めます。また、利用率低下の原因は何か、所見をうかがいます。(Q2-8)

【利用率を上げることは考えない?】

 利用率が低いから施設の統廃合やむなしと印象づけるような計画案の記載です。しかし、施設が十分利用されていないというなら、普通は、どうすれば利用率を引き上げられるのかを考えるものではないでしょうか。ところが、区はこの間、団体割引の廃止等により、利用料を大幅に値上げして収入確保を図ろうとした結果、かえって区民を施設利用から遠ざけてしまいました。その結果がおしなべて50%という数字です。

 ここは、利用料の割引きを復活するなどして利用を増やす、前向きの方針に転じるべきではないでしょうか。

【公共施設は自治のゆりかご】

 集会施設に限らず、公共施設とはどういう意義があるのでしょうか。公共施設は、建設利権の食いものにするためのものでもなければ、財政のお荷物でもありません。

 一昨年の決算特別委員会でも述べたことですが、公共施設に住民が集まり様々な活動をすることで、地域のつながりが形成され、さらにはボランティア活動、行政への提言へと発展し、地域社会を豊かにします。それが住民自治の原点です。

 住民自治のゆりかご、住民自治の基盤となる公共施設の役割を、杉並区はいちから考え直していただきたい。そのことを最後にのべて質問を終わります。

生活保護に関する杉並福祉事務所の不適切な対応について(2021年9月14日の発言)

 2021年9月14日、杉並区議会本会議において質疑しました。生活保護受給者に対して区職員が虚偽の説明をするなどして苦痛を与えたとする裁判についての報告に対するものです。

(報告の内容はこちら↓ 文中の(1)(2)イ、エなどはこちらの引用です。

報告第11号 地方自治法第180条第1項の規定により指定された和解の専決処分をしたことの報告について

 区役所それも福祉事務所という、最も弱い立場の人とかかわる職員にあるまじき対応が見られたことは、杉並区役所全体が深く反省してほしい事案です。

(以下、発言原稿です。実際の発言とは異なる場合があります)

 報告11号について質問します。報告11号は、生活保護を受給している杉並区民の方が福祉事務所職員の対応により苦痛を受けたとして損害賠償を求めた裁判についての和解です。

 昨年3月10日の予算特別委員会において、私はこの訴訟について質問しました。当時は係争中であり、争いの内容について踏み込んでお聞きすることはしませんでしたが、和解という形で裁判が終結したので、報告書には書かれていないことも含め、やや詳しく訴訟の内容を確認した上で、質問は最後にまとめて述べます。

生活保護担当職員が虚偽の説明】

 原告が損害賠償請求の対象とした被告杉並区の職員の不法行為は2つありました。

 1点目は、報告書にもあるように、原告が当時申し立てていた審査請求について、この審査がまだ終わっていないにもかかわらず、当該職員が原告に対して請求は「棄却された」と虚偽の説明をして返還の書類にサインさせようとしたことです。

 原告が裁判所に提出した訴状および録音によると、審査の結果がまだ出ていないと主張する原告に対し、当該職員は「棄却すべきである」と書かれた審査員意見書の「すべきである」の部分をあえて略して「棄却」と読んで聞かせ、「棄却になったんですね」「棄却、とあります」などと虚偽の説明により原告を誘導しようとしました。

【保護費を人質に長時間サインを迫る】

 二点目は、保護費の返還に同意する書類へサインを執拗に迫り、サインしないかぎり保護費を渡さない、と1時間にわたり執拗に原告を説得したことです。訴状および録音によると、サインを迫られた原告は「もう帰りたい」「書けません」「もう一度来ます」など、何度も断りましたが当該職員は「いや、返還を始めていただければ、お金、お渡しできます」などと述べ、返還に同意するサインをしなければ保護費を受け取れない状況に原告を追い込みました。

 詐欺的な言辞を弄して、虚偽の説明を行ったり、長時間にわたってサインを強要し、あろうことか保護費を人質にとったことは、きわめて悪質な対応と受けとめるものです。

 原告は、当該職員の一連の行為により極めて大きな精神的苦痛を受け、損害賠償を求めて本件提訴に踏み切りました。

【「著しく違法性の高い不法行為」】

訴状において、原告は「当該職員(訴状では実名)の行為は、保護受給者に対して、現場で生活保護を確保する直接の業務に従事するケースワーカーが、徴収金の天引きを約する書面にサインをしなければ、保護費を渡さないと迫り、強引に天引きを実現しようとして、保護受給者である原告の生存権を脅かすとともに、そのような手段によって、保護費の天引きに応じるか否かについての原告の自由を侵害したものであり、著しく違法性の高い不法行為である」と厳しく断じています。

【なぜこのような事件になったのか】 

 ところで、私の経験では、杉並区の生活保護の窓口はみなさん親身な対応でしたし、また他区の支援団体の方などからも、杉並区の評判は決して悪いものではありません。むしろ評判がいいといってもいいくらいです。

 それなのに、なぜこうした事件が起きてしまったのか。職員個人の問題なのか。福祉事務所に話を聞くと、当該職員は決して高圧的な人ではなく、むしろ日頃は丁寧な対応をしているとの評価でした。では、どこに原因があったのか。区の管理体制はどうか。職員への指導はどうだったか。

【区民の救済よりも債権回収を優先?】

 個人的な感想ですが、録音の反訳を読むと、この職員の執拗さの背景には何かしらの強いプレッシャーの存在があるのではとも感じられます。

 この問題は区にとっては債権の回収という問題であるため、もしも、福祉事務所内部、あるいは区全体の体制として、1円でも多く、1日でも早く返還させなければならないという圧力が働き、生活に困窮した原告の救済という、福祉事務所本来の責務よりも債権回収が優先されたとすれば、本末顛倒で許されることではありません。

 区はこのような事案を繰り返さないため、和解条項に確約した生活保護事務の改善を徹底していただきたいと思います。

【杉並区としての対応は?】

 以下、まとめて質問します。まず、一連の事実経過について2点質問します。

 第一に、訴訟に至る一連の事実の起点となった、原告のマンション売却とそれに対する福祉事務所の返還請求処分の経緯を時系列で説明してください。(Q1-1)

 第二に、提訴後の経緯として、杉並区内部、特に福祉事務所としての検討経過とその内容を説明してください。(Q1-2)

【和解条項の遵守を求める】

 次に、和解条項を踏まえて、今後の区の対応についてうかがいます。

 第一に、(1)で被告杉並区は原告への謝罪を行うとありますが、文書、口頭など、どのような形で、誰が、謝罪を行うのか。あるいは、行ったのか。(Q2-1)

 第二に、(2)のイにおいて状況により複数の職員で面談にあたるとあるが、これまでの生保事務においてそうした例はあるか。また、この条項の意義を説明するよう求めます。(Q2-2)

 第三に、(2)のエで、不利益処分については3事務所合同で検討する等とあるが、本件返還請求にあたってはどのような検討体制だったのか。また、これまで3事務所による検討の実績はなかったのか。(Q2-3)

 最後に、かなり具体的かつ詳しい和解条項ですが、これを誠実に履行し、生活保護事務を改善することが求められます。杉並区としての決意を伺って質問を終わります。(Q2-4)

【区側の答弁要約】(答弁:喜多川保健福祉部長)

Q1-1:生活保護法63条にもとづき原告所有のマンション売却を指示。2016年10月に売却され12月に原告から被告杉並区に対して収入申告があったため返還請求の決定を行った。その後、未申告の収入であると誤って判断し、法78条に基づく返還手続きをとった。原告はこれを不服とし処分取消の審査請求を行い、その後請求が却下されると、処分取消を求める訴訟、さらに本件賠償請求訴訟が提起された。

Q1-2:2020年にあらためて当時の担当者以外複数名で検討を行ったところ78条処分が不適当であったことが判明。2021年5月、同処分を取り消す決定を行った。

Q2-1:すでに文書で謝罪を行った。さらに今後、福祉事務所長と担当係長が面談して直接謝罪するとともに、以降の対応をご相談する。

Q2-2:これまでも担当職員のほかに複数で面談を行う場面もあった。担当以外が同席することで客観的な視点が入る意義があると考える。

Q2-3:78条処分などの不利益処分について、これまでは各事務所で判断していたが、困難事例などは3事務所(注:荻窪、高円寺、高井戸)合同で検討することとした。

Q2-4:和解条項を誠実に履行し、職員の研修、コミュニケーション能力の向上など、受給者に寄り添ったより適切な生活保護事務を履行していく。

阿佐ヶ谷再開発の情報公開を求める裁判で意見陳述しました

 2021年9月3日東京地裁で行われた公判(令和2年(行ウ)第299号 行政文書非公開処分取消請求事件)で意見陳述を行いました。

(以下原稿。小見出しはブログ掲載のためにつけました)

 本日は、お時間をいただきありがとうございます。原告として考えを述べさせていただきます。

1.提訴に至った経緯

(1)阿佐ヶ谷駅北東地区土地区画整理事業とは

 はじめに、本件請求の対象とした事業について説明します。

 被告杉並区は2016年より、区内阿佐谷北1丁目の区有地を含む土地区画整理事業を計画してきましたが、現在はすでに事業に着手した状態で、民家の解体や屋敷林の伐採などが始まっています。

 この事業については、その計画が明らかになるにつれ、近隣住民をはじめとする区民の中から、懸念や疑問の声が上がり始めました。

【事業の問題点:とくに公有地の処分】

 この事業の問題点は、屋敷林が伐採され、緑の少ない阿佐ヶ谷のまちに残った貴重な緑がなくなってしまうこと。病院や再開発ビルの高層化がこれまでの低層の住宅地にそぐわないこと。など多く指摘されてきましたが、なかでも、小学校を病院跡地に移転する計画には違和感が否めません。

 被告も認めているように、この杉並第一小学校の土地はJR中央線阿佐ヶ谷駅前で補助幹線道路に面する一等地です。一方、移転先である現在の病院用地は低地で軟弱地盤である上に、病院用地であったことから汚染地としての土壌の処理が必要となります。どう考えても等価交換となりようがありません。

【「照応の原則」を満たさない】

 また、土地区画整理法では、換地つまり土地の交換においては、位置、地積、土質、水利等がそれぞれ照応しなくてはならない、いわゆる「照応の原則」を満たす必要がありますが、この換地ではそれが満たされない可能性が非常に高いことも問題です。

 すなわち、杉並区は区有地のなかでも最も価値の高い杉並第一小学校の土地を、みすみす条件の悪い民間の土地と交換してしまうのではないか、つまり区の財産が毀損されてしまうのではないかという疑問に対し、私は、区議会議員として事実を明らかにする責務があると考えました。

(2)裁判に至った経緯

 次に、一連の経緯を述べます。

【港区は公開したのに杉並区は…】

 杉並区は2019年8月にこの事業を施行認可し、10月には事業の個人共同施行者である欅興産、河北医療財団とともに3者で仮換地処分を行いました。その際、区議会、区民に対しては一切説明がありませんでした。

 港区が同じ個人共同施行の土地区画整理事業を実施した折、1年も前から区議会に対して全面的に情報を提供して公開の委員会審議に付したことは証拠として提出しましたが、杉並区の態度は同じ行政としてきわめて不適切です。

【区議会での質疑】

 そこで私は、同年11月の区議会において、区議会に対し事前の説明がないまま仮換地に同意したことは不当で、いったん撤回すべきこと、そして、不動産鑑定を行い適切な価格によって仮換地指定をやり直すこと、また、共同施行者2法人の仮換地情報は公開すべきこと、等を求めましたが、杉並区長はこれらを拒否したばかりか「ご納得いただけないというのであれば、あとは裁判にでも何にでもお訴えされる以外ない」と述べる始末でした。

【情報公開で「のり弁」】

 議会において情報が得られないので、次に私は情報公開請求を行いました。その請求に対する決定が、本件訴訟の対象となっている行政処分です。内容についてはこれまでの書面に詳しく述べていますので省略しますが、仮換地に関する書類が何枚も全面真っ黒に墨塗りされていたことには衝撃を受けました。当時は国会でもいわゆる「のり弁」が話題になっていましたが、まさか杉並区で同じものを見せられるとは思いませんでした。そこで、2020年3月に不服審査請求を提出しました。

【不服審査を行ったが】

 ところが、その提出時に、窓口で「現在2年半ほど前の請求を審査しているところなので、しばらくお待ちいただくことになる」と聞き、再度驚きました。

 不服審査の期限を設けている自治体も多いなか、杉並区は期限がないため、いつまでたっても審査が進まないのです。仮に請求が認められ情報を入手できたとしても、それが数年後では、事業は進んでしまい、あるいは完了してしまい、情報の意義がなくなってしまいます。形の上では不服審査という救済制度がありながら、杉並区では全く機能していないのが現実です。

 ここに至って、議会質問の際、あれほどかたくなに私の要望を突っぱねることができたのは、どんな情報も区が隠そうとすれば、それを牽制する機能は事実上どこにもないことを知っていたからだとわかりました。

 同僚議員も審査請求したが、2年たっても審査されず「どんな内容だったかなあ。思い出せない」と言います。そして「訴訟をしたほうが早く結果を得られるのでは」と言われました。

 この方の助言もあり、また、私自身、結果を早く得たいということ、さらに、杉並区が情報公開に対して真摯に向き合わないのであれば、訴訟もやむなしと思う一方、費用と労力のことを思えば正直、訴訟をしたくはありませんでした。

 しかし、杉並区の情報公開において、今後もこのような実態が放置されることがあってはならないという気持ちが勝ちました。先の区長発言も踏まえて、司法の判断を仰ぐしかないという思いで、本件訴訟に至ったものです。

2.法の網をかいくぐる所業

 最後に、訴えの原因となった杉並区の事業のありかたへの疑問を聞いていただきたいと思います。

 ひとことで言ってしまえば制度の悪用です。土地区画整理事業、しかも個人施行の手法を使うことにより、複雑な制度に精通した専門家であっても、まさかとおっしゃるようなことが起きています。

【売買ではないから議会で審議しない】

 第一に、土地の売買ではなく換地として所有権の移転が行われることです。

区有地は原則として区財産価格審議会および区議会の了解がなければ売買することは許されません。しかし土地区画整理事業は売買ではないため、この規制を逃れることができます。

 本件事業は土地区画整理事業の目的とする道路の整備がわずか数パーセントと極めて少なく制度の趣旨にそぐわないこと、また地権者が少数であり、区画整理でなければ事業目的が達成できないようなものではないこと、それにもかかわらず、この手法を選んだことには、財産処分の審査を逃れようとする意図が容易に想像されます。

【杉並区が主体なのに「個人施行」】

 第二に、区が主体で行うのに公共施行ではなく個人共同施行が選ばれていることです。公共施行の場合には、都市計画決定が必要ですが、個人施行なら必要ありません。また、公共施行は都知事の認可が必要ですが、個人施行は区長が認可します。つまり事業実施主体である区長が同時に認可権者といううまみがあります。

 第三に、開発許可の例外です。例えば東京都の「東京における自然の保護と回復に関する条例」による規制があります。同条例は大規模な自然地の開発行為について許可制としています。しかし、土地区画整理事業は例外的に許可ではなく協議の対象とされています。

区画整理事業法の理念とは】

 このような土地区画整理事業の例外的なありかたは歴史的経緯によるものです。

 そもそも、戦前の都市計画法が生きていた1954年に土地区画整理法はつくられました。1968年に現在の都市計画法がつくられ、開発行為は開発許可によって規制されるところとなりましたが、土地区画整理事業については、すでに存在する土地区画整理法により審査が担保されるということが前提で除外されたものです。1998年出版の「都市計画法規概説」には「都市計画上必要な規制が行われるので、開発許可については適用除外とされている」と解説されています。

 こうした法制度の仕組みや歴史を無視して、違法でなければ何をしてもよいかのようなやり方は、民間のディベロッパーならともかく行政としてはありえないことです。法の趣旨をはき違え、法の網の目をかいくぐるような行為といえます。

3.まとめ

 以上述べてきた通り、本件訴訟は、区民共有の区有地という財産が毀損されることのないよう、適正な情報公開を求めるものですが、私の思いは、自らが幼少時からなじんできた阿佐ヶ谷のまちとともにあります。

 今回開発対象となる屋敷林は400年以上の歴史を持ち、寺院、神社、小学校とともに鎌倉古道に連なる独特の風景を形成しています。明治時代に地域の一等地を選んでつくられた区内最古の杉並第一小学校は創立146年です。強引な再開発によるのではなくこうした阿佐ヶ谷の歴史的な、懐かしい風景を後世に残していきたいと願う一人の住民として、行政のありかたを正していきたいと考えています。

 裁判所におかれましては、こうした背景もご理解のうえ、原告の請求をお認めいただきますよう、心よりお願い申し上げます。

パラリンピック学校観戦中止の要望書を提出しました(2021年8月26日)

田中良杉並区長および白石高士杉並区教育委員会教育長に対し、杉並区のパラリンピック学校観戦を中止するよう申し入れました。(2021年8月26日付)

(以下、要望書)

<杉並区立学校児童・生徒のパラリンピック学校観戦は中止するよう求めます>

 日頃は、杉並の学校教育のためのご尽力に敬意を表します。

 ところで、杉並区は本年開催の東京2020パラリンピック大会への区立学校児童・生徒の学校観戦を中止することなく実施するとうかがいました。

 新型コロナウイルス感染が急激に拡大し、終息の道筋が見えない現在、東京都においても、医療資源が逼迫し、必要とする医療を受けられない方が多数存在する医療崩壊の状態にあることは、田中区長が常々警告しておられるとおりです。

 こうした情勢にかんがみ、観戦を予定していたほとんどの自治体は観戦を中止しており、杉並区・杉並区教育委員会におかれましても、中止の判断をされるよう下記の通り強く要望します。

 記

新型コロナ感染の急激な拡大下にあり以下の理由から、パラリンピック学校観戦(以下、学校観戦)を中止するよう求めます。

 一.感染拡大防止のため、東京都においても、不要不急の外出を避け、人出を減らすことが肝要と訴えています。オリンピックの際に小池知事が述べたようにパラリンピックも「おうちで」「テレビで」観戦することが可能であり、現場に赴き生で観戦することが唯一の手段ではありません。

 あくまでも学校観戦を進めるのは、教育的効果のためではなく、無観客のなかで、少しでも観客を入れたいという運営上の意図、そして「子どもという絵になる素材」を「背景として」利用する意図を持った、政治的な子どもの動員にすぎません。

 一.区立学校においては、そのほとんどが、一学期中に学校観戦を中止する判断をしたにもかかわらず、今回教育委員会が児童生徒及び保護者に観戦の希望の有無を尋ねたことは、学校の判断を否定する決定であり、学校教育における秩序の破壊といえます。まして、意思決定文書がなく、意思決定過程が不明であることは、行政全体の秩序の破壊ともいえます。

 一.実施にあたっての日数がきわめて限られていること(保護者意向調査から実施まで9日間)により、各学校現場及び教員、そして教育委員会事務局も大混乱を来しています。準備が不十分で混乱した現場では必ず不測の事態、最悪の事故が起こるものです。こうした「泥縄式」のやり方は大変危険です。

一.万が一の事故、熱中症やコロナ感染などが生じたときに、責任の所在が明らかではありません。学校長あるいは引率教員が責任を負わされるようなことがあってはなりません。

以 上

自由がない民間委託学童クラブ(2021年6月2日杉並区議会本会議における一般質問)

 2021年6月2日、杉並区議会第2回定例会で一般質問しました。

 今回とてもひどかったのは、阿佐ヶ谷開発についての質問で、まともな答弁が返ってこなかったことです。「けやき屋敷」を伐採して高層病院を建てる計画に関して、高さの抑制とみどりの創出(駐車場・駐輪場の予定を緑地に)、地区計画緑地の管理は誰が?などの質問を行いましたが、「法や条例に基づいて適切に設計されるものと理解する」しか答弁がない。「いろいろ聞いてるんだからそれぞれ答えて」と再質問しても、同じ答弁しか返ってこないどころか、さらにスルー。よほど都合が悪いのだろうか。

 いちおう補足しておくと、これらの質問はずっと前に通告して、一言一句確認済みのものです。それでこの答弁なので、通告は必要ないことがわかりました。

 

 質問概要は、

1.阿佐ヶ谷駅北東地区開発について

(1)河北総合病院の建築計画の説明会があったので、緑地をふやすための提案。それから、説明会が説明会になってないので認められないこと。

(2)河北病院工事のために、杉並第一小学校を工事して敷地内にトラックを通す!まわりの交通混雑、危険性を指摘。代替案を提案しました。

2.児童館・学童クラブについて

これまでベールにつつまれていた民間委託学童クラブの姿があらわに!

自由遊びができない!工作ができない!泥だんご禁止!長靴外遊び禁止!などなど驚くべき現実です。杉並区が「児童館から学校への『機能移転』にすぎず、内容は変わらない」などと説明してきたことがウソ八百だったことは事実をもって証明されました。

 

(以下は原稿です。実際の発言とは違うところがあります)

1.阿佐ヶ谷駅北東地区開発について

 一般質問をいたします。第一に阿佐ヶ谷駅北東地区再開発についてです。

(1)河北病院の土地利用構想とみどりについて

【質問時間のない説明会】

 3月26、27日に杉並区まちづくり条例の大規模開発事業の手続きに基づき、河北総合病院の新築工事に関する説明会が開催されました。私も参加しましたが、所用時間は1時間、うち半分以上が説明に費やされ、十分な説明を全く得られないまま終わってしまいました。

 このように、開催しました、という形だけの説明会を開催実績として認めるのは、まちづくり条例を形骸化するものです。区は事業者に対し住民に再度、誠意ある説明をつくすよう指導すべきと考えるがいかがか、見解を求めます。(Q1-1)

【意見に対する見解書が出ない】 

 説明会と前後して区民意見募集が行われ4月12日に締め切られ、もうすぐ2か月になりますが、現在、事業者からはまだ見解書が提出されていないと聞きました。

 今後、提出時期の見込みはいかがでしょうか。また、あまりにも提出が遅ければ問題です。現在は特段の期限が設けられていませんが、今後、区は提出期限の基準を設けるべきではないでしょうか。見解を求めます。(Q1-2)

公聴会の開催を求める】

まちづくり条例では、見解書の提出後、区長は公聴会の開催およびまちづくり景観審議会に助言を求めることができるとされています。これらの手続きを必ず行うよう求めますが、いかがか。見解を求めます。(Q1-3)

【突出する高さ】 

 以下、計画の内容について述べます。第一に計画建築物の高さです。規制いっぱいの高さ40mで計画されていますが、これまで近隣には40mの建物はなく突出しています。特に、現在の病院用地に小学校が移転した場合、学校に影を落とすことは問題です。また、樹林に接して高層建物が建つので通風・日照に悪影響を与えます。

 したがって例えば地下を2層とする、あるいは各階の高さを少しずつ削るなどして高さを抑えるよう設計変更を指導するべきと考えますがいかがか、見解を求めます。(Q1-4)

【緑化率25%のからくり】

 次に緑地について述べます。本件計画地は、地区計画により25%以上の緑地の確保が義務づけられています。事業者は説明会で、25%を超えて緑地を確保できたと説明しましたが、実は、その半分以上は地区計画に定められた緑地1号です。地区計画緑地を除くと緑化率ははるかに未達です。

【緑地の保全・管理は誰が?】

 この開発計画の当初、病院の責任において保全管理を当然行うから緑地1号を病院敷地に算入するものと受けとめていたのですが、これまでの区議会での質疑や説明会における病院の話では「管理者はまだ決まっていない」「これから検討」「エリアマネジメントという話もある」などあやふやになってきました。

 そこであらためて伺いますが、病院敷地に組み込まれている緑地1号は河北病院が保全管理するのか否か。また「エリアマネジメント」を導入する場合の管理主体は誰か、答弁を求めます。(Q1-5)

【緑化率規制のがれ】

 区または第三者の負担による管理となるのに、病院の計画敷地に算入するのならば、緑化率の規制のがれの脱法的行為ともいえ、こうした手法がまかりとおるなら、隣接する緑地を計画敷地として建築計画を作成して、みかけだけ緑化率をクリアするような行為が今後も続き、せっかくの緑化率規制が空洞化する心配があります。

 緑地1号は病院計画敷地からはずし、残った面積で25%を達成するよう、杉並区は事業者に対し計画変更を指導するよう求めますが、いかがか。見解を求めます。(Q1-6)

【緑を保全する設計変更を】 

 ところで緑化率25%は、けやき屋敷に比べ格段に劣るものであることは指摘してきた通りです。今回大径木127本のうち半数近くが伐採される計画です。説明会では伐採の理由は病害虫などと濁していましたが、健全なのに建物や道路にかかるため伐採される樹木が実は多数あります。これらの樹木を少しでも保全できるような設計に変更すべきです。

【駐車場を緑地に】

 また新たな緑地の創出も必要ですが、計画ではわずかです。そこで、現在の分院部分に計画されている駐車場を緑地とするよう提案します。

 本計画における駐車場設置義務は110台とのことですが、近年は地下で120台設置でき、かつ建築物の構造基礎としても活用できる駐車場の導入事例もあるそうです。こうした技術を活用することで駐車場は地下に集約し、北側駐車場予定地を緑地に転換することができます。

【東南角地がなぜ駐輪場】

 また、最も日当たりのいい敷地の南東部分は職員用駐輪場とのことでしたが、自転車に日光をあててどうするのでしょうか。これも緑地とすることが最も適切な土地の利用法であり、区は変更を指導すべきと考えますがいかがか。見解を求めます。(Q1-7)

【ツミ保護のための条件を満たさない】 

 樹木に関する質問の最後に、ツミの保護に関する都条例の協議で条件とされている点が計画では不十分であることを指摘します。

 第一に、周辺に現存樹木の樹高以上の幅の残留緑地を確保すること、とありますが、北側は先に指摘したように駐車場とする計画であり、また、東側の緑地計画も幅は狭く、条件を満たしません。

 第二に、建築物等工作物は高木植栽等により可能な限り隠蔽することとありますが、周辺に残置する高木は高いもので20~25mであり、6階以上の壁面は隠蔽されません。特に営巣地に近い北側は高木植栽が予定されておらず、かつ、壁面緑化も3階北側のわずかな部分だけで、少なすぎ、建物はほとんど隠蔽されません。

 都条例協議の条件を満たすよう設計変更を指導すべきと考えますがいかがか。見解を求めます。(Q1-8)

(2)杉一小敷地内の工事用通路について

【杉一小敷地内を工事用車両が通過する】

 阿佐ヶ谷開発についての項目の第二に、杉一小敷地内の工事用車両搬入路について質問します。

  けやき屋敷の工事現場をめざす工事用車両は、中杉通りからこの通路を経由して神明宮前のT字路を右折、一方通行を逆走することになります。したがって、逆走部分については、道路使用許可が必要です。

 そこで警視庁に問い合わせたところ、このような長期にわたる工事の道路使用許可は、地域住民の理解と協力を得られることが前提であるとの見解でした。

 搬入路に接する世尊院前交差点は、阿佐ヶ谷駅の北口に住む人なら誰もが毎日利用するといっても過言ではありません。区は広範な住民に対して計画をきちんと説明し、納得と協力を得る義務があります。しかし、実態はどうかというと、地域のほとんどの人は、この計画を知りません。

【説明会なく見切り発車】 

 区は町会連合会の席で説明したとのことですが、北口の町会からは住民説明会が要望されています。現在は新型コロナの緊急事態のため開催できない事情は理解できますが、住民への説明会なしに見切り発車で工事が始まったことは容認できません。最低でも説明会が開催できるまでプロセスを中断すべきと考えるがいかがか。見解を求めます。(Q1-9)

【世尊院前交差点が危険に】 

 ところで、地域からは、この通路の危険性を指摘し、計画変更を求める声が上がっています。

 懸念の第一は、既存の杉一馬橋公園通りが西行きの一方通行であるのに対し、その南側に沿って東行きの進入路としてつくられるため、実体上車両右側通行の変則的な道路となり、そのことにより中杉通り等周辺を通過するドライバーや歩行者・自転車の錯誤が引き起こされ、事故が誘発される危険性が高いことです。

 第二は、一日最大170台の計画で大型の工事車両が進入することにより、ただでも歩行者、自転車が集中している世尊院前交差点がいっそう混雑し、かつ混乱することです。

【警視庁も懸念】

 これについて警視庁の担当者は、敷地内について警察は差し止める権限がないものの、危険性については懸念を示しておられました。ちなみに、警視庁に対して区は住民説明会を行ったかのような報告をしているとのことで、大変驚きました。

 当該搬入路の設置によって起きる交通の混乱と混雑、交通安全への影響についての区の認識はいかがでしょうか。また、地域住民からは、中杉通りから三菱銀行裏へ進入するルートや青梅街道からけやき公園を経由するルートなど他のルートへの搬入路の分散、変更が要望されています。これについても区の見解を求めます。(Q1-10)

【搬入ルートの分散、変更を】

 また、杉一小北側道路はそもそも道路拡幅が予定されているのですから、拡幅を先行して正常な相互通行を可能にし、工事期間は暫定使用する計画に変更すべきと考えますがいかがか。見解を求めます。(Q1-11)

 なお、神明宮前の一方通行逆走について、道路使用許可権者はだれでしょうか。また万が一、住民が懸念しているような事故がこの通路にかかわって発生した場合の責任を明確にしていただきたい。答弁を求めます。(Q1-12)

 2.児童館・学童クラブについて

 次に児童館・学童クラブについて質問します。

【初めてわかった学童クラブ民営化後の姿】

 施設再編整備計画が策定されて以来7年、これまで、12館の児童館が廃止されてきました。一部の機能が学校に移されたあと何が起きているのかは、なかなか明らかになりませんでしたが、このたび旧東原学童クラブ、現在の杉九学童クラブの保護者グループが、現在の学童クラブの運営について、子どもたちの声を集め、それにもとづく要望書を区に提出しました。これにより初めて具体的に、児童館廃止の前とあとでどう変わったかを把握することができました。この調査は非常に貴重なものであり、区は間違ってもこれを「一部の保護者のクレーム」と受けとめることなく、事業改善の指針とし、さらには、児童館の価値を再評価する素材として真摯に受けとめていただきたいと考えます。

学童保育の質低下があきらか】

 調査を拝見した感想ですが、ひとことでいうと、施設再編整備計画案が発表されたときに多くの関係者が危惧したことが、まさにそのまま現実になり、特に保育の質の低下が著しいと感じました。

 非常に問題だと思ったことは、第一に、子どもの遊びが児童館にくらべ、非常に制限されていて、自由がないこと。第二に、委託先職員の管理的な態度、子どもに厳しい保育が行われており、児童館のような職員との信頼関係が築けないことです。

【遊びの自由がなくなった】 

 遊びの自由については、高学年の授業終了まで育成室で過ごし、校庭遊びの時間が短いことは予想の範囲でしたが、校庭、体育館では、その日職員が決めた以外の遊びができず、いわゆる自由遊びではないことは予想外でした。さらに驚いたのは、工作活動ができないことでした。事業者は月2回程度の工作プログラムを設定していますが、用意された一律の工作キットを組み立てるだけだそうです。

【工作は月に2回程度】

 児童館では、自由に図工室を使うことができ、また、職員さんが工作を教えてもくれました。我が子が初めて学童クラブに入会したとき、初日から毎日作り物を持ち帰るので驚いたことを思い返すと、そんな児童館と現在の委託学童はあまりにも違い過ぎます。

【同じ利用料でこの格差】 

 また、泥だんごが作りたいのに禁止された子や、雨の日に長靴をはいていって、長靴で校庭遊びは禁止と言われた子。こうした禁止事項も児童館にはなかったもので、機能移転・民営化しても児童館と変わらないと言ってきた区の説明と全く違い、しかも、児童館内の学童クラブと杉九学童クラブでは、同じ杉並の子ども、かつ同じ利用料を払っている利用者でありながら保育の質に大きな格差があることを問題にしないわけにはいきません。

 区は、こうした実情を認識しているでしょうか。また、事業者に対しては、遊びの選択の自由について、どのように指導しているのでしょうか。見解を求めます。(Q2-1)

【子どもへの叱責、管理的指導】

 第二に管理的な保育についてです。委託事業者の保育に対し、言い聞かせるのではなく叱責する指導、管理的な指導が目立つと子どもや保護者から指摘がありました。たとえば、問題が起きたときに「なにか言うことありませんか」などと感情的に叱責したり説教する場面がみられること。また、配慮の必要な子どもに対し、頭ごなしに怒ったり力で行動を規制する場面も見られるとのこと。

 こうした実態があることについて区は認識しているでしょうか。見解を求めます。(Q2-2)

【子どもは安心できる?】 

 学童クラブは、家庭にかわる放課後の子どもの居場所です。ときにはいたずらもし、また悩みを抱えてまわりにぶつけることもある生身の子どもを丸ごと受けとめて、守り、育てる大人が必要です。だからこそ、杉並区学童クラブ運営指針には「子どもが安心して自分らしさを出し、のびのびと過ごせる場になるように配慮する」とあるのです。委託事業者はこの運営指針に沿って運営することが義務づけられています。

【管理に都合のいい子ども像】

 しかし、この事業者の保育目標はどうか。「自分で正しいことを選び取れる子ども」「思いを適切に表現できる子ども」など、ぱっと見、よさそうなことが書いてありますが、よく考えると、これは、手のかからない、管理しやすい子ども像です。このような保育目標や杉九で指摘されている叱りつけ管理する保育は杉並区学童クラブ運営指針に適合していると考えられるでしょうか。見解を求めます。(Q2-2)

【職員の顔も名前もわからない】

 次に、事業者の運営姿勢についてのべます。ある保護者に職員体制をたずねたところ、非常勤については通知や掲示がなく、そもそも名前と顔が全くわからないとのことでした。非常勤の人は人数が多く、「知らない先生がたくさんいる」という子どもの声もあります。誰がクラブの職員なのかもわからない状態では、安全安心の根本が崩れています。質問通告後に知ったことなので答弁はけっこうですが、この点は即刻是正し保護者に職員の一覧を配布するよう求めます。

【保育園の卒園式が…】 

また、事業者の姿勢としてどうかと思うのは、今年度新入生の保護者説明会が近隣の大きな保育園2園の卒園式と同じ時間に設定されたことです。

 この件については、昨年度中に所管に伝えたところですが、あらためて区は事業者をどのように指導したのか、説明を求めます。(Q2-3)

宇都宮市で指定取り消しされた事業者】 

さらに、他の議員からも指摘がありましたが、3月、宇都宮市学童保育12か所の指定管理者として予定されていたこの事業者、株式会社明日葉は、指定を取り消され、それにより、宇都宮市の今年度予算が市議会でいったん否決されるという重大な事態に至ったとのことです。取り消しの理由は人員確保が困難になったことでした。施設の従前の職員をそのまま雇用すれば人員面の心配はないはずだったのに、雇用条件で折り合わなかったとのことです。

【都内で時給985円の違法求人】

 実は、同社が運営する学童クラブの職員募集の掲示を区外で見たことがあります。そこには有資格者時給1000円、無資格者985円とありました。つい先日のことです。いうまでもなく、この募集は最低賃金法違反です。この事実を区は把握しているでしょうか。お尋ねします。(Q2-5)

 杉九学童クラブの実態を垣間見て、職員の質が大いに問題があると感じましたが、よく考えると、こうした企業の労務体質に根本的に問題があり、職員が努力しても質の向上が容易でない実態があると思われます。

 【児童館事業が引き継がれない?】

 次に、東原地域子育てネットワークや児童館の行事についてこの1年のことを述べます。区は児童館が廃止されても子育てネットワークと行事は近隣の子ども子育てプラザ、放課後等居場所事業で引き継ぎ、これまでと変わらず実施すると説明してきました。

【東原地域子育てネットワークはどこへ】

 ところが、東原児童館が廃止された2020年度、東原地域子育てネットワークおよび行事の開催実績が全てゼロでした。新型コロナの影響で対面での開催が難しかったことは理解できますが、オンラインなど別の手段はどうかなど、地域の方々になげかけることはできたはずです。しかし、地域の関係者に対して、担当する近隣の下井草プラザからの打診や中止の連絡はなかったとのこと。また、ネットワークのニュースすら発行されませんでした。地域の方々からは「新型コロナで学校が休校になるなど子どもたちが困難に直面している時だからこそ、子育てネットワークの役割は大きい」とのご意見もいただきました。

 東原に関しては、下井草プラザと話し合い、今年度はしっかり活動していくとの回答を得ています。しかし、今回、プラザの地元学区以外のことは、結局、軽く見られていると感じました。同様に児童館が廃止になった他の地域でも、担当するプラザが他学区のネットワークや行事はやらなくてもいいと考えるようなことがあると困るので、あらためて所管の反省を促すところです。答弁を求めます。(Q2-6) 

 また、昨年度はほかにも子育てネットワークニュースを発行しなかった館・地域があったとの説明を受けましたが、東原のほかに何カ所あったのか、説明を求めます。(Q2-7)

【移転と民営化、同時は無理】 

 次に、移転・民営化プロセスへの杉九学童クラブの保護者の要望を紹介します。民間委託ガイドラインの変更が必要な内容もありますので検討をお願いします。

 まず、学校内への移転から民営化まで最低でも1年間あけることです。先ほどのプラザの事例をみても、児童館廃止・機能移転と民営化が同時に行われてプラザの職員に過大な負担となり、結果として手がまわらなかったとも思えます。直営のまま移転し、おちついた時期をみはからって民営化することのほうがまだしも良いのではないかと思われますがいかがか。

 また、現在は学童クラブの民間への引き継ぎ期間が3か月と短く、全く不十分です。引き継ぎ期間を最低でも半年に延長するよう求めますがいかがか。以上見解を求めます。(Q2-8)

【学校との調整不足】 

 次に学校との調整です。現在は、事業が開始されるまで、学校施設がどのていど使用できるかわからず、全く準備不足です。たとえば杉九の場合には、年度途中から体育館の利用を増やすため利用者団体に枠を空けてもらうなど、混乱があったようです。

 区は事業開始の前年度までに、年間計画をたて、学校側と話し合って施設使用を確保する責任があると考えますがいかがか、見解を求めます。(Q2-9)

【保護者の意見、要望はきかれているか】 

 次に、保護者への対応です。杉並区学童クラブ運営指針にも「保護者の意見、要望をクラブの運営にとりいれる」ことが明記されています。当然、移転や民営化の是非についても、保護者の意見をきちんと聞き、父母会のあるクラブでは父母会としての意見を尊重すべきです。

【説明会等が延期されている】

 現在、善福寺、西荻北児童館の廃止が計画されていますが、新型コロナにより保護者説明会や父母会の会合が延期されたり、そもそも開催できない状況があります。区は一方的にプロセスを進めるのでなく、保護者との意見交換が適切に行えるまでスケジュールを延期すべきと考えるがいかがか。見解を求めます。(Q2-10)

【事業者選定委員は父母会が選出すべき】

 また、事業者選定委員会においては保護者委員4名とされていますが、保護者の意見を十分にまた公正に反映するため、委員選出は区の指名ではなく、話し合いにより父母会が主体で行うべきと考えますがいかがか。

【選定委員の守秘義務は限定的】

 杉九学童クラブの選定では、当初、保護者委員に対し、他の保護者に選定委員であることを明かしてはいけないとか、委員会の内容は一切、他の保護者に話してはならないなど、誤った説明がありました。私はこれを区議会で指摘し「保護者間で意見交換することは差し支えない」との答弁を得ました。

 今後の選定委員会にあたっても、守秘義務を強調しすぎることなく、保護者間で情報共有できることを周知徹底すべきと考えますがいかがか。見解を求めます。(Q2-11)

【選定委員に学童クラブの職員を】 

さらに、選定委員会には当該クラブの区職員を委員に任命すべきと考えます。保育園民営化の選定委員会では当該園の園長ほか現場の保育士が入っているのに対し、学童クラブは現場職員が入っていないのはバランスを欠きます。見解を求めます。(Q2-12)

【児童館全部廃止は見直しを】

 質問の最後に、あらためて施設再編整備計画の抜本的な見直しを求めます。

児童館を全館廃止する区の方針に対し、現在も多くの区民から疑問の声が上がっています。また、本日の質問で明らかにしてきたように、児童館を廃止して機能移転しても事業の中身は変わらないとする区の説明は全く空論で、もはや現実をもって反駁されてしまいました。

 社会情勢は、新型コロナの影響もあり、多くの子どもの心が以前よりも不安にさらされています。今こそ、杉並区の児童館の果たす役割は大きく、それは、これまで述べてきたような委託事業者の運営では代替できないものです。

 したがって、私はあらためて、児童館の全館廃止を抜本的に見直し、具体的には、残る30館の児童館と直営の学童クラブを維持すること、また、区立保育園の中核園に相当する学童クラブの制度創設を求めますが、いかがか。見解を伺って質問をおわります。(Q2-13)

阿佐ヶ谷の地形とまちのなりたち

 この記事は、2020年5月発行の「わくわくレポートNo.196」の付録として発行したものです。1年前の記事ですが、阿佐ヶ谷再開発の問題点を簡略にご理解いただけると思いこちらに掲載します。

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 図は明治時代の阿佐ヶ谷です(町丁目と中央線と中杉通りは現在のものを参考のため記入)。中杉通りは昔はなく、もともとの道路は、杉一小とけやき屋敷の間を通る道でした。大宮八幡からいまのパールセンターを通り、ちょうど駅のあたりでいったん右に湾曲して世尊院の前を通り松山通りに抜けて行きます。敵が攻めてきたときのために、わざと道路が湾曲されていたのだそうです。

 図にあるように、いま河北病院が建っている場所は、昔は「川」や「沼」でした。いまは暗渠となった桃園川が走り、土地が低く軟弱地盤です。

 それに対して、杉一小、けやき屋敷、世尊院などの場所は湿地に突き出た「丘」でした。いい土地だったので、代官所がおかれていました。杉一小の場所には、昔、天神様が祀られていたそうです(校庭に石碑があります)。だからこの場所に学校を建てたのでしょう。

  こうした阿佐ヶ谷駅前のまちの配置は、地形や水利など自然条件に従って形成されたものです。河北病院は昔は水が出たこともあり、地盤沈下はいまも続いています。それは抑えようのない自然の力です。自然への畏怖の念を忘れず、阿佐ヶ谷のまちの歴史にたいする敬意を払ってまちづくりを考えてほしいものです。

 

<杉一小建替え案 変更前(A案)後(B案)比較表>

 

現地建て替え(A案)

河北病院跡地へ移転(B案)

 

概要

4階建て 屋上(5階)校庭

4階建て 地上校庭

 

敷地面積

5400m

6400m

 

工期

2018年~2021年

2025~2028年

完成は7年(最短)延期

新校舎使用開始

2021年4月

2028年4月

 

校舎・校庭工事費

30億円

35億円

 

土地区画整理事業

なし

 

汚染土壌入れ替え費用

なし

7億円

 

軟弱地盤対策

なし

20~25億円?

杭打ち・地盤改良等

*汚染対策・軟弱地盤対策をしっかりやれば、本体工事と同額程度かかる。つまり工費は2倍に。

 

 杉並区は杉一小を、この由緒ある場所から、土地が低く軟弱地盤の河北病院に移転しようとしています。校庭が広くなると説明していますが、現在の場所でも、プールや体育館を校舎内に入れて高層化することで校庭を広げることは十分可能です。また、移転先はいまと違って住宅地密集地です。近隣騒音を防ぐため、校庭の外側部分はあまり使えないでしょう。実質的な校庭面積はあまり変わらないと思われます。

  ではなぜ移転するのでしょう。駅前の一等地にある学校の土地(区有地)を民間に安く払い下げてマンション開発など、営利に供するためではないのでしょうか。この点は区がぼやかしているのでまだはっきりとはわかりませんが、開発のために学校環境が犠牲になってはいけないと思います。(松尾ゆり)