わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

和田中のサピックス夜間塾についての天声人語コラム

1月9日付天声人語は和田中の夜間塾について天まで高く持ち上げていました。http://www.asahi.com/paper/column.html
午前中朝日新聞社に電話して広報部に意見を伝えるとともに、下記の文章をメールと郵送により送付しました。
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1.コラムには、この問題における重要なポイントが欠落しております。
(1)夜間塾は、少数の生徒を選抜し「都立の進学重点校や私立の中上位校を狙う」(和田中HPの校長コメント)ものです。
a)あくまでも受験に特化
コラムでは「できる子を伸ばす試み」と評価していますが、この夜間塾はあくまでも受験に特化した進学塾の授業であり、受験対策につきるものです。それをイコール「できる子を伸ばす」と受け止めるのであれば、受験だけが学力の評価であるという偏見にとらわれていると見られても仕方ありません。
b)希望しても参加できない場合も
希望しても夜間塾に参加することができるとはかぎりません。試験があります。また、発案者の校長自身が「学校の授業についていけない生徒にはむしろ負担になる。無理に参加しないで」(朝日新聞記事)と発言しており、あらかじめ一定の成績以下の子どもは排除されています。
(2)公立学校の施設を利用し、塾はその費用を負担しません。
コラムでは「塾へ行けない子への福音」とまで高く評価していますが、なぜ半額で塾ができるのか考えてみましたか。これについて藤原校長はTV出演して「そりゃ、募集手数料とか場所代がかかりませんからね」と明解に答えていました(「みのもんたの朝ズバッ!」12/11出演。発言は松尾メモにより正確ではありません)。つまり少数の子どもの進学指導の費用を区民が税金で負担するということです。都教委の指摘する、公共性に反するということでもあります。
学校の教員が教材作りなどに協力、参加生徒の保護者は強制的に運営ボランティアとして送迎などセキュリティ面の協力を行うことになっているので、塾側はこれらの経費も節約することができます。さらに、今回のこの騒動で、サピックスは何億円という広告料に相当する宣伝を打ったことになります(私だってこれまでサピックスという名前すら知りませんでした)。こうしたことは副次的効果どころか、企業活動としてあらかじめ折り込まれているはずです。
これらの点について、筆者の方は、きちんと情報を集め、かつ検討をなさった上で、コラムを執筆されたのでしょうか。私はこの点に非常に疑問を感じます。
2.コラムは都教委の指摘した3点の疑義について、きちんとした検証をしないまま、和田中のとりくみを礼賛しています。
区教委は「教育の地方自治分権が求められる今日、残念だ」とコメントしています(朝日新聞記事)が、ここでは、夜間塾についての疑義には反論せず、都と区の関係へと論点のすりかえが行われています。コラムはこのすりかえに見事にのせられているのではないでしょうか。肝心な疑義の中身については、本日9日の教育委員会でも教育長は「慎重に検討していく」として評価を保留したままです。
また、都教委は、たしかに法的にはこの夜間塾問題を左右する権限はないでしょうが、都民の税金をあずかり学校運営の少なからぬ負担をしている都行政の立場からは、当然にも意見をいう権利があります。ですから、区教委と和田中校長が地方分権の正義の旗をかかげ、都教委がそれを弾圧するかのように図式的にとらえるのは間違っています。
以上大きく2点について、けさほど電話にて広報部にお伝えした点を整理して再録いたしました。最後に1点付け加えます。
コラムの最後には「国の将来がかかる人づくりで、公と私をことさら分断しても無益だ」と書かれています。しかし、公と私とは厳密に分けられなくてはなりません。それは公のサービスが税によって成り立っているからです。この文章は「役に立つのであれば、税金を特定の企業が使おうがいいじゃないか」と言っているのと同じです。朝日新聞は税金を私するような態度には、きわめて厳正にこれまで批判してきたと私は思っていましたが、この文章はその対極にあり、残念です。税金のことは今問題にしてないとおっしゃると思いますが、今回のことは、まさに「誰が何を負担するのか」、つまり公共性や公平性という問題であることを肝に銘じていただきたいと思います。
天声人語」は日本全国の世論に多大な影響を与える最も有力なコラムであることは執筆者ご本人がよくご承知のところであると思います。その紙面で、十分な情報収集や研究もなく、報道の表層をなぞったような安易なコラムが書かれたことに、私は大変失望しております。コラムの内容について、執筆者、および朝日新聞が再考して下さるよう要望します。