わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

住基ネット訴訟で杉並区敗訴

この見出しを書くのは3回目か。ついに最高裁でも杉並区の訴えが退けられました。誰一人勝つと思っていないし、期待すらしていない訴訟だったわけで。
振り返れば2002年住基ネットに不参加を表明した当時、山田区長は全国ネットのニュース番組、新聞などのメディアに出まくり、翌年二期目の選挙に圧勝しています。区民もこの政策を支持し、山田区長は先進的な区長とのイメージが全国で植え付けられました。
しかし当選直後の2003年6月、杉並区は「横浜方式」(選択制)への変更を表明しました。「横浜方式」とは「将来の全員参加を前提としつつも当面、不参加を希望する区民の情報を送付しない」(区の説明)もので、あくまでも過渡的措置にすぎません。つまり、これまでの「不参加」から「将来の全員参加」へ180度方針転換が行われたわけです。この時点での方針転換は(選択制という留保つきであったにせよ)直前の選挙での十数万区民の支持を完全に裏切るものであったといえます。翌年、区は「選択制による住基ネット参加を求めて」提訴しました。  
注意しなくてはならないのは、「離脱」を宣言した当初から現在までの間に2003年の方針転換があったので、現在の杉並区は「離脱」ではなく「接続」を目指して動いているということです。ねじれた経過をたどっているために、今回の裁判も「離脱を認めさせるための裁判」と誤解している人が多いのではないかと思いますが、事実は「接続を求める」裁判です。
今回区長は「区の主張が認められず、非常に残念です。内容については、判決文を見ていないのでコメントできませんが、最高裁の判断が下った以上、行政官としては、判決に従います。今後は、これまでの区の主張を踏まえ、対応してまいります」との短いコメントを発表したのみです。これを受けて各紙は一斉に「杉並区も接続」と報道しています。しかし、今回の裁判はあくまでも杉並区が接続を求める裁判であって、負けたからといって裁判所から接続の命令が出たわけではありません。杉並区があくまでも接続しないと言い張ればいいだけの話ですが、山田区長は接続に動くでしょう。
もともと今回の裁判は「杉並区は頑張ったのに、裁判所も認めてくれなかった。だから仕方ない」と幕引きするためのアリバイづくりのためだということはたびたび指摘してきました(杉並区政レポートバックナンバーをごらんください)。あれだけ華々しく「杉並区は離脱します」と全国的に宣言した手前、前言を翻したことをどう誤魔化すかには苦心したに違いありません。
区長は住基ネットの問題点を「第1に費用対効果が明確ではないこと。第2に、こうした強制加入の制度は、年金や保険制度のようにいずれ不効率とサービスの劣化を招き、制度が崩壊するに違いないこと。そして第3に、国民共通番号は、個人情報の国家への集積をもたらし、国のおせっかいな政策を増長させ、国民の自立心を萎えさせてしまうだろうこと」と述べています。(松下政経塾に学ぶ人間磨き 第8回http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/matsushita/080512_8th/)これらの問題点はひとつも解消していません。裁判で負けようが、杉並区は国立市や矢祭町のように、毅然として「ネット接続はしない」と言うべきなのです。区の勧めにしたがって「接続したくない」と申告した私たち8万人の区民の意思はどうなるのでしょうか。