わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

杉並区立幼稚園を「子供園」に変える?

区長の思いつきで突然出てきた「子供園」の保護者向け説明会があるというので、今日午前・午後の2園に傍聴に行きました(西荻北、成田西)。
実は私は区立幼稚園というところに初めていきました。うちのほうには区立幼稚園がないので縁がなくて。しかし、いいですね、区立幼稚園。前に保育園のママが「区立幼稚園というところは、なんかウチの保育園みたいに自由保育でのびのびしてるよ。どろんこもやってるし」と話していたことがありましたが、ホントにそんな感じで。
だから、保護者の発言も、いろいろあるが、みんな「いまの幼稚園がとてもいい。すばらしい教育をしてくれている。これは杉並区の築いてきた財産なのに、なくさないで」という思いは同じようでした。お母さんたちの幼稚園への思いの深さ。みんなこの幼稚園が大好きで失いたくないんだなあと、こちらまでじわっと目頭が熱くなるような。
それに対して区の説明は「幼稚園は区立・私立ともだいたい定員の7割ぐらいしか入っていない。一方保育園が不足している。同じ幼児施設なのだから、区民全体の財産として待機児童解消に利用しなくてはならない」という以上の理由が伝わってきません。しかし、保育園が足りないのは区が(区長が)保育園を作らない怠慢のせいで、幼稚園が悪いのではありません。筋違いです。
現在2年保育で4歳児入園が基本ですが、各園とも現在の2クラスから1クラスに減り、しかも、そのうち半数は長時間保育の必要な子(保育園の対象になる子)とする、ということなので、幼稚園としての募集は64人から16人へと4分の1になってしまいます(しかも3歳児保育も開始するので、さらに半数は3歳児からの進級者で占められ、4歳児の募集はたった8名に)。
これから入園を希望している方たちからは、不安の声が続出しました。区立幼稚園は空いているので希望すれば入れると安心して4歳になるまでゆっくり家庭で育てようとしていたお母さん、児童館で説明を受けて、こんな素晴らしい幼稚園があるなら、4歳まで待って2年保育でお願いしようと思っていたお母さん、成田西幼稚園は素晴らしい幼稚園と評判を聞いてわざわざ引っ越してきた方もいました。
「結局、幼稚園を希望する人は、私立が空いているのだから私立に行けばいい、ということですか」「お金のことだけじゃなく、私立よりも区立のこの教育内容がいいから、選んで私たちは入っているんです」とお母さんたちは真剣に意見を述べていました。
「保育園が足りないから活用しなくてはならないことは理解するが、現状の幼稚園定員をなぜここまで減らさなくてはならないのか」「定員の7割入園しているんだから、残りの3割を保育に回せば」との疑問の声に対しても説得力のある説明はなく「現在の園舎のキャパの中で3歳児保育も始め、長時間保育も始めるから部屋が足りない」と言うだけ。「待機児解消のために幼稚園を犠牲にするのか」という声が何度も出ました。全くそのとおりです。
また、幼稚園と保育園の統合をさかんに言うが、簡単にできるのか。区立幼稚園では、これまで親子での行事、活動が多いことが魅力で、お母さんが子どもといっしょに登園時に種まきをしたり、それは働いているお母さんにはできないでしょ? という方もいました。
保育園の経験者の立場から言えば、もちろん、保育園でも親子の行事があり、親どうしの交流もあるのですが、幼稚園のママと保育園のママが同じ時間で動くのはどう考えても全く無理です。土日しかないでしょうね。毎日の生活によりそう幼稚園の親子活動とは全く違ってしまうでしょう。
他方、保育園を希望している親にとっても、「子供園」という中途半端な存在では満足できないと思います。生活面をばっちり見て、心のケアも怠りない、プロの保育士に囲まれた保育園でなければ。幼稚園は朝7時半から夜の7時8時まで在園している子どもを元来対象としていません。認可保育園に比べ、保育料も高く設定されるようです。昼間活動できない親にとって、PTAなどに参加できない引け目も感じられそう。
「幼保一元化」は昔から言われていますが、ずっとできなかったことには理由があるはずです。よく「文科省厚労省の縦割り行政で、両方が譲らないから」などと言われます。それもあるだろうけれど、やっぱり保育園と幼稚園は、ものすごく違うんですよ。それを統合していくには、ものすごく工夫が必要。神経を使わなくてはならない。
それなのに、肝心の「育成プログラム」がまだ白紙だというのですから、呆れたものです。子どもを荷物のように預ければそれでいいと思っている人には幼稚園も保育園も、内容なんてどうでもいいんでしょうね。
結論としては、とにかく性急すぎ。今言い出したのなら、1年ぐらいじっくり保護者や現場の教員と意見交換をして、本当に創造的で子どものためになる幼保一元化「プログラム」を作り上げて、それから「じゃあ、募集しましょう」とやるべきです。手順が全く逆です。
まだまだ言いたいことがたくさんある説明会が終わったあと、小さなお子さんを抱えたお母さんたちが、あちこちでこれからの対策を懸命に相談する姿に「がんばれ!」と思いながら帰ってきました。