わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

阿佐ヶ谷開発に驀進した昨年度の決算認定に反対しました(2020年10月12日決算特別委員会における発言)

 2020年10月12日、決算特別委員会の最終日にあたり、決算の認定に反対する意見を述べました。

 決算審査の対象となった昨年2019年度は、年間を通じて阿佐ヶ谷再開発を最大課題として区が驀進した年であり、区民の声どころか、法令順守もけちらし、違法すれすれの手法がまかり通ったのです。おさらいの意味でごらんください。

 区がなぜそこまで急ぐのか理解できません。病院が急いでいるのでしょうか。行政たるもの、公金を投入する事業なのに、周到さのかけれもみられず、このような出たとこ勝負のような進め方は許されません。

 ところで杉並区は区政100年の2032年をめざして区史編纂の検討を始めています。本格的な区史の編纂を求めたところ、田中区長から前向きな答弁がありました。珍しく私と区長の意見が一致した瞬間です。

(以下は質問原稿です。実際の発言とは異なる部分があります)

 杉並わくわく会議として、決算に対する意見を述べます。認定第1号令和元年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか4件の認定に対しては反対とし、以下その立場から意見を述べます。

(1)阿佐ヶ谷駅北東地区再開発

 決算当該2019年度は、なんといっても、阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発にむけて、手続きがいっきに進んだ年でした。ですので、このことを中心に述べないわけにはいきません。

【いっきに駆け出した開発】

 4月には私たち区議会の改選がありましたが、その後のこの問題の進行を私は6月の議会で次のように述べました。

「私たち区議会議員の選挙が終わったとたん、区役所はこの計画の実現へむかっていっきに駆け出したようです。開票から3日目には都市計画審議会が開かれ、10連休をはさんで連休明けの7日に土地利用構想の届け出、公告・縦覧開始、そして先々週は7日間の間になんと4回もの説明会およびオープンハウスが開かれるというハードスケジュールでした。」

 この発言を読み返し、考えるいとまを与えないような当時の前のめりな事業の進行を、あらためて思い出します。その後、7月には杉並区まちづくり条例による土地利用構想の意見募集、公聴会、8月には、土地区画整理事業を区長が施行認可、10月にははやくも仮換地指定が行われました。

 【前日にルール変更、対象者に知らせず】

 7月の土地利用構想の手続きでは、公述人の選定ルールが公聴会の公示前日に突然変更され、しかも公述の希望者には告知もされませんでした。旧ルールでは、希望者の中から10人を抽選で選び、希望者は抽選の立ち会いもできるとなっていたものが、新ルールでは区長の指名となりました。結果、28件の公述希望者のうち、賛成者は4人しかいなかったのにその全員が発言し、85%を占めた反対意見のうちからは6名しか選ばれませんでした。しかも、4人の賛成者がそれぞれ区と関係の深い団体の代表者や役員だったことは、出来レースを思わせました。

【区長が申請して区長が認可する茶番】

 8月、土地区画整理事業の施行認可が決定されました。杉並区を含む3法人による申請であり、杉並区長が申請して杉並区長が認可するという、一人二役の茶番でした。申請者と認可権者が同一人では公正な審査が行われるはずもありません。JR阿佐ヶ谷駅前であり、学校、病院、お寺、神社、そして貴重な森が存在するきわめて公共的な場所の開発ですから、本来なら公共施行で行うべき事業なのに規制のがれのため個人施行で行っている結果です。

【関係法令順守の確認を待たず】

 さらに、この時期はまだ、東京都の「東京における自然の保護と回復に関する条例」の義務付ける自然環境調査を行ったばかりで保全計画などまだまだ先でした。土地区画整理法は認可の条件として関係法令に違反がないこととしていますが、その点で都との協議が整っていない、即ち違反がないことが確認されていないのに認可されたことは脱法的な行為だったといえます。

 【仮換地の情報は秘匿されたまま】

 10月には仮換地指定が行われました。私は、この事業が提案された2017年、6月の一般質問の時点から、照応の原則に反する換地であることを指摘してきました。駅前一等地の杉一小と、軟弱地盤であり土壌汚染対策法の対象となる病院用地の交換は照応の原則が成り立ちません。しかし、杉並区は杉一小の土地の大半を河北病院用地と交換する仮換地指定に同意しました。

 この仮換地指定において、他の地権者の情報が秘匿されているため、価格や地積の上でも適正な交換であったかの確認はいまだとれません。これまで紹介してきた港区の例では、1年前から区議会に仮換地計画を説明してきたこととあまりの違いです。さらに、杉並区はこの土地評価は施行者会が指名した3人の評価員が了承していることをもって正当化していますが、3人の氏名・所属も秘匿されているため、そもそも実在の人物かどうかも知ることができません。そのため情報の公開を求める訴訟を起こしたことは先に報告したとおりです。今後この点については、司法の判断を求めていく事になります。

 一方、地区計画については、先ほども引用したように都市計画審議会が区議会選挙の開票3日後から矢継ぎ早に開かれ、区都計審による都市計画決定、さらに東京都の都計審により、容積率の緩和が3月に決定されました。

【阿佐ヶ谷の事業の進め方だけでも反対理由になる】 

 当該年度のこうした動きを振り返るとき、事業着手にむけ強引に驀進していった区の姿勢を痛感します。その結果、区民はいまだこの事業について十分に知ることなく、地域における合意形成もなされていません。換地そのものだけでも区の財産を大きく毀損する事業をなぜここまで全力で進めるのでしょうか。この事業は、現在と将来の杉並区民のための事業ではなく、地域の一部の有力者と開発に携わるであろう大企業、金融機関のための事業でしかなく、この一事のみをもってして、決算認定に対する反対理由に足るというべきです。

【杉並の医療をどうみるか】 

 質疑の中でこの事業にかかわるいくつかの議論がありましたので、言及します。

 まず、河北病院と杉並の医療についてです。新型コロナウイルス対応において、河北病院始め、区内医療機関、その職員の皆さんが奮闘して下さっていることには、頭が下がる思いです。しかし、そのことと、再開発は別です。

  今年3月の予算特別委員会では、他会派の委員から「阿佐ヶ谷から総合病院がなくなってしまったら、区の診療体制はいったいどうなってしまうのか」との質問があり、所管外の部長から「大きなダメージとなる」との答弁がありました。このやりとりに私は疑問を感じました。

【医療は区内だけで考えない】

 杉並区民の医療体制は杉並区だけで保障されるものではなく、国・都の医療計画において、杉並区は区西部二次医療圏に属する形で医療の提供量を保障されています。区単位だけで考えるものではないことは、区役所の人ならわかっていると思います。もちろん病院が近所にあったほうが便利には決まっていますが、それは区内にかぎりません。阿佐ヶ谷では中野区に移転してきた警察病院が近いので近年そちらを受診する方も増えています。

 また病院が区外に移転することだけで「大きなダメージ」というなら、中野区から杉並区に佼成病院が移転してきたことは中野区には大きなダメージになったのか。決してそんなことはないはずです。

 河北病院には私も子どものときから現在までお世話になっていますから、できるだけいい病院であってほしいという願いはあります。多くの住民の方もそうだと思います。しかしそれをもって、河北病院のために区は犠牲も払うべきという話になるなら違うのではないでしょうか。

容積率緩和は明らかに河北病院優遇】 

 また、容積率の話がありました。今回、河北病院が計画している病院は400床以上、32000平米以上の規模が予定されています。約1万平米の敷地に対して、従来の容積率200%では実現できなかった規模ですから、300%への容積率引き上げは、明らかに、河北病院の新築のために行われたといって過言ではありません。

容積率の影響を論じる以前に情報公開を】

 容積率の引き上げは土地取引の上で有利に働くことは常識ですが、河北病院には財産上の利益はないという趣旨の答弁がありました。普通に考えれば私もそれには賛成です。

 ただし、今回のケースで河北病院が財産上の利益を得るかどうかは、換地情報が公開されていない以上、判断することができないとしかいいようがありません。そういう議論をしたいなら、まず換地情報を公開して、公然と議論をなさるのがよろしいかと存じます。情報のない中で人の発言を「臆測だ」とかいってみても、仕方がないのではないでしょうか。

【自然保護「決着ついたこと」ではない】 

 この項目の最後に、本委員会の開催期間中に、ついに東京都との間で「自然保護条例」の協議が整ったとの報告がありました。質疑で述べたのでここでは詳細にはふれませんが、地権者の方と協働して、区は400年続いた森の保全のために力を尽くすべきであることを再度指摘します。

 なお、他委員に対し、吉田副区長から「決着した問題だ」などという発言がありましたが、病院の緑化計画もまだ定まらず、緑の保全はこれからが肝心と自覚して区の皆さんには取り組んでいただきたいと思います。

 (2)児童館・学童クラブ

 つぎに、児童館・学童クラブについて述べます。当該年度末の今年3月をもって、5つの児童館がいっきに廃止されました。暴挙というほかありません。

 私の地元でも、東原児童館が廃止されて、学童クラブは杉九小学校内へ移転、しかも民営化、それだけでも大変なのに、新型コロナ対応でクラブの閉鎖、利用自粛が重なり、児童、保護者は大変な思いをしました。6月に学校が再開した途端、事故が起きたことは先に一般質問で述べたとおりです。

【学童クラブの職員体制は人数だけではない】

 地元の学校での再編が行われたことで、これまで見えなかったことを保護者の方に教えていただきました。学童クラブの体制についてです。

 これまでも、学童クラブが民営化されると、私は必ず人員体制を確認してきました。そして、その都度、多くの人数が当てられていることに安心してきました。しかし、実はそれで満足してはいけなかったとわかりました。

【毎日勤務の職員が少なすぎる】

 今回作成していただいた資料を見て驚いたのは、民間委託学童クラブを運営している4社のうち、1社だけは非常勤も含めてほぼすべての職員が5日勤務となっているのに対し、他の3社では、5日勤務は常勤のみ、5日勤務の非常勤は全くいなかったことです。すなわち非常勤の職員さんたちは、勤務日数が4日以下、多くは2日、3日の勤務で、学童クラブ、放課後等居場所事業に参加する子どもたちは、毎日入れ替わる大人と付き合っていたということが、はじめてわかりました。

 この問題については、一般質問を行い、また他の委員の質疑に対する答弁からも、区も問題意識をもって臨んでいることを知りました。子どもたちが大人と信頼関係を結び、学童クラブ・放課後等居場所事業が安心できる居場所となるように願っています。

【学童クラブ委託にも公契約条例適用を】

 しかし、なぜ、このような体制になってしまうのか。そこには、社会保険料の節約という経営側の意識、また、待遇がよくないために、毎日働ける人材を確保できないという事情があるのではないかと思います。

 そこで、公契約条例について質疑しました。現在のところ、学童クラブは公契約条例の対象となっていませんが、人材確保の観点から、あらためて前向きの検討を要望します。

【「スヌーズルーム」って??】 

 児童館の廃止に関連して、子ども子育てプラザ高円寺の「スヌーズルーム」について質問しました。照明をおとし、アロマなどでくつろぐ部屋なのだそうです。妊婦さんの時期から来館してほしいとの考えもあることを伺っています。スヌーズとは居眠りのことだそうです。妊婦さん、乳幼児をかかえるママがリラックスする機会がもてることは大事なことだと思います。しかし、それはこの施設でやることなのでしょうか。

【子ども子育てプラザは大人のための施設】

 私は高円寺の施設を内覧したとき、この一部屋が余っているなら、小中学生に開放すればいいのにどうして!?と驚きました。そしてこの施設が子どものための施設ではなく、大人のための施設だということを痛感しました。

 プラザは児童厚生施設との位置付けです。しかし、大人がリラックスするための部屋を設けるなら、少なくともそこは児童厚生施設ではありません。

 子育て支援の施設と子どもの施設、子ども支援の施設は全く違います。区政は大人のニーズだけでなく、子どものニーズにこたえる責務があることを自覚していただきたいと思います。

【さらなる児童館廃止は見直しを】 

 来年の春もさらに3か所の児童館の廃止が予定されていますが、いったん立ち止まり、計画を見直すべきです。昨年の例ですと、第四回定例会に廃止条例が提案されるのでしょうか。早すぎると思います。半年前に廃止を議決してしまうことの意味はなんでしょうか。決まってしまったからと区民、子ども達を諦めさせることに狙いがあるのではないでしょうか。議案を提出する区の側はもちろんですが、議会の側も慎重に対処すべきです。

(3)公文書管理と杉並区史

 最後に、公文書管理と杉並区の区史についてのべます。今回質問を準備する過程で、すでに23区中2区が、また、都内では八王子市も公文書管理条例を制定したことを知りました。杉並区も準備にはいる時期ではないでしょうか。

【公文書管理条例、2区が制定】

 図書館について調べたことを契機に、各種審議会の記録が5年保存で年限をすぎたものは残っていないことを知り愕然としました。板橋区であれば公文書館に歴史的文書として保存されているものです。たった5年前の歴史しか残らないならば、行政の継続性どころか、自治体としての体をなしていないといわなければなりません。

 廃棄された資料は回復することができません。区は今すぐにも、公文書管理規程を見直し、区政の貴重な記録が保存されるようにすべきです。

【なぜ歴史と記録が大事なのか】

「過去に目を閉ざすものは現在にも盲目となる」という有名な言葉があります。ナチス戦争犯罪について語った言葉ですが、あらためて含蓄のある言葉だと思います。

 歴史を知ることはなぜ重要か。単なる興味でももちろんいいのですが、それだけでなく、現在の物事の本質を知るには歴史やなりたちを知ることだということです。

 例えば阿佐ヶ谷で、400年続いた地主さんの森とその周囲の寺社、学校、それらの場所にはどういう歴史があり、どういう意味があったのかを知れば、その土地への尊敬の念が生まれ、やすやすと開発に供することはできないはずです。

【区長は区史編纂で見識ある答弁】 

 杉並区は比較的新しい都市なので、区役所も区民も、杉並の歴史なんて、と思っているフシがどうもあるような気がします。その点、区長は区史編纂に前向きの答弁で、見識を示されたと思います。

 行政と区民が杉並の歴史を知り、杉並をもっと深く理解していくために、記録の保存と本格的な区史の編纂を望みます。

 以上をもちまして意見とします。

 審議にあたり多数の資料を作成して下さり、また、さまざまな問題について丁寧に説明、さらに答弁してくださった職員の皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。

 また、新型コロナウイルス対策において、連日の激務にあたっておられる職員の皆様、エッセンシャルワーカーの皆様に、改めて感謝と敬意を表明し、結びといたします。